ほむら「からあげが食べたいわ」back

ほむら「からあげが食べたいわ」


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1:
まどか「はい! ほむらちゃんもからあげ食べて!」
ほむら「う、うん。ありがとう」
まどか「違う違う、お弁当箱に入れるんじゃないの。はい、あーん」
ほむら「え? ええっ!?」
まどか「ほらほら、ほむらちゃん早く!」
ほむら「うう……あ、あ?ん……」
パクッ
5:
ほむら「……」
ほむら「何の味もしないわ」
ほむら「今や私は全知全能。まどかとの関係も良好」
ほむら「からあげをあーんしてもらうことくらい造作もないはず」
ほむら「どうしてこんな夢を見るのかしら」
ほむら「……」
ほむら「……からあげが食べたいわ」
7:
ほむら「というわけでスーパーにやってきたわ」
ほむら「……」
ほむら「違うのよ」
ほむら「今や私は全知全能。まどかにからあげを作ってもらうことくらい造作もないこと」
ほむら「むしろまどかが作ってくれたものとまったく同じものを自ら作り出すことすら、赤子の手を捻るより簡単なことだわ」
ほむら「……」
ほむら「鶏肉って色々売ってるのね……どれを買えばいいのかしら」
8:
ほむら「胸、モモ、手羽……」
ほむら「大きさでいえば手羽かしら?」
ほむら「まどか……」
ほむら「まどかで胸かモモかと言われたら僅差でモモかしらね」
ピンポンパンポーン タダイマヨリタイムサービスをカイシシマース
ほむら「……何かしら、この地鳴りのような足音は」
ほむら「こちらへ向かって水牛の群れのように主婦が迫ってきているような気がするのだけど気のせ」ドドドドド…
9:
ほむら「……ひどい目にあったわ」
ほむら「それでもちゃんとモモ肉を確保した自分を褒めてあげたい」
ほむら「ちゃんとからあげ用って書かれたパックをあの中で見つけられたのは奇跡と言っても過言ではないわ」
ほむら「まどかに頭を撫でてもらえるくらいの功績ね」
ほむら「……いえ、今や私は全知全能。この程度の奇跡はむしろ必然だったわ」ファサァ
ほむら「……」
ほむら「……さて、この一口サイズのモモ肉をどうしたらからあげになるのかしら」
11:
ほむら「からあげというくらいだから、油で揚げるのは間違いないわね」
ほむら「……普通のサラダ油でいいのかしら」
ほむら「こんな時のためにフライパン以外に鍋を買っておいてよかったわ。初出陣ね」トクトク
ほむら「火にかけておいて……」
ほむら「とはいえ、このままのモモ肉を油へ投入してもからあげになりそうもないことは私にもわかるわ」
ほむら「まだ何か処理が必要なはず」
ほむら「……」
ほむら「そう、衣」
ほむら「あのカリッとした部分を作るには、モモ肉と油の間に何かが必要なはず」
ほむら「冴えてるわ暁美ほむら。冴え渡っているわ」
12:
ほむら「たしか、カツの衣はパン粉というのは聞いたことがあるわ」
ほむら「それなら何か粉ね。粉をまぶせばいいわね」
ほむら「粉……それらしいものは何か買ってたかしら」ゴソゴソ
ほむら「片栗粉があったわ。これ使えるかしらね」
ほむら「……何だかキュッキュしてまぶしづらいわ」
ほむら「そういえば、からあげに関する歌を聞いたことがあるような……ええ、この状況で使えそうな気がする」
15:
ほむら「……」
ほむら「からっあげー! おいっしくつくっるならー」
ほむら「ほむっほむー」モミッモミッ
ほむら「ほむっほむー」モミッモミッ
ドサッ
さやか「……」
ほむら「ほ……えっ」
17:
ほむら「……美樹さやか。あなたどこから」
さやか「あ、あたし何も見てないよ」
ほむら「目を見なさい美樹さやか。だいたいなぜ断りもなく私の家に」
さやか「あたしはその、うまく言えないけど……あんたが悪魔だって、どうしてかわからないけどそう思って、このままじゃいけないって」
ほむら「美樹さやか……そう、やっぱりあなたはまだ世界の理に馴染んでいないのね」
ほむら「あなたとは決着をつけなければならないのかしら……もっとも、あなたに勝ち目はなつっ!? 熱っ!? 何、背中が熱い!?」
さやか「ちょっ、鍋から火が! 消火器消火器!」ブシューッ!!
18:
さやか「危なかった……」
ほむら「なぜ鍋から火柱が……謎だわ」
さやか「いやいや、油入れた鍋を強火でほっといたらああなるのが普通だからね?」
ほむら「おかしいわね、まだ沸騰もしてなかったのに」
さやか「油沸騰させたら大惨事だからね!?」
19:
ほむら「それにしても相変わらず消火器が似合うわね、美樹さやか……タイミングが良すぎるように思うのだけど」
さやか「いや、奇襲に使えるかなって」
ほむら「あなたにとって消火器は武装のカテゴライズなのね……それも、魔法より信頼のおける……」
さやか「いいから早く消火剤片付けなさいよ、手伝うから。コンロの火はちゃんと切った? 元栓は?」
ほむら「手際がいいわね……というか、敵である私を手助けして構わないの? 今こそあなたにとっては千載一隅のチャンスなんじゃないかしら?」
さやか「ああ、あれはあたしが間違ってたわ」
ほむら「そう、あなたと私は所詮水と油……えっ」
さやか「だって魔法少女として倒さなきゃいけないような悪魔がからあげの歌にあわせて踊ってたり、油火にかけっぱなしでテンパってたりするわけないじゃん」
ほむら「」
20:
さやか「ふーん、からあげ作ろうとしてたんだ」
ほむら「ええ……あなたの邪魔さえ入らなければ今ごろ食事中だったと思うのだけど」
さやか「消火活動と後片付けまでしてあげたのにこの言われよう。おかしくない?」
ほむら「さあ、私が悪魔でなかったならもう用はないでしょう。私はからげ作りで忙しいから帰りなさい」
さやか「え、まだやるの?」
ほむら「当然よ。何かの間違いで鍋から火柱はたってしまったけれど、アクシデントさえなければ簡単にこなせるはずだわ」
ほむら「何せ今の私は全知全能。からあげくらい」
さやか「あーわかったわかった、あたしが手伝ってあげるから、一回落ち着いて作り方の確認から始めようか」
25:
ほむら「これが作業工程中のモモ肉よ」
さやか「これがって……何これ。パックのまま片栗粉かけただけなの?」
ほむら「ちゃんともみもみしてたわ」
さやか「あのね……これでもそれっぽいものができなくもないけど、あんた味付けはどうするの?」
ほむら「味……付け……?」
さやか「そ。からあげってそのまま食べても美味しいものでしょ? これだと何の味もしないからあげができるよ」
ほむら「……」
さやか「いや、そんな『ああー、言われてみれば』みたいな顔されても困るんだけど……もー、ちょっと調味料が何あるか見せてよ!」ガチャ
29:
さやか「はい、それじゃあ暁美ほむらくん。あたしのことはさやか先生と呼ぶように」
ほむら「……」
さやか「ちょっと返事は?」
ほむら「……先生ということは、上条恭介とは卵の焼き加減の好みの違いで上手くいかなかったのかしら?」
さやか「ああー……うん、やっぱり先生じゃなくていいや……じゃあ、始めていきます……」
ほむら「美樹さやか、そんなにやる気のなさそうな姿勢では困るわ。しっかり指導してくれないと」
さやか「誰のせいなのかわかって言ってる? ねえ?」
ほむら「?」
さやか「不思議そうな顔して首傾げるんじゃ……うん、いいや……じゃ、このモモ肉はビニール袋に入れて」バサッ
33:
ほむら「ちょっと美樹さやか」
さやか「もー、今度は何?」
ほむら「確かにもしかすると……万が一にもありえないことだけど……私の下処理が間違っていたのかもしれない」
ほむら「それでも、調理途中の材料を捨てるのはあんまりだとは思わないかしら?」
さやか「ん? ああー! あはは、大丈夫大丈夫。このビニール袋を使って料理するんだよ」
ほむら「そうやって私を罠にかけようというわけね……これだから優位に立ったと勘違いした輩は」
さやか「ほむらはどうしてそんなになっちゃったかなあ」
34:
さやか「ほら、袋にしょうゆ、おろししょうが、お酒を入れて下味をつけるよ」
さやか「チューブのおろししょうがと料理酒があってよかったね。他にもにんにく、みりん、砂糖、ネギなんかを入れても美味しくなるよ」
ほむら「私のように全知全能ともなると、調味料も必要最低限でまかなえてしまうから仕方ないわね」
さやか「自炊しないだけでしょーが……はい」スッ
ほむら「えっ、何?」
さやか「ここで袋の上から揉んでいくんだよ。下味がしっかりつくし、肉も柔らかくなるからね」
36:
ほむら「で、どうして私に渡したのかしら」
さやか「だって揉むの好きなんでしょ? あんなにノリノリで踊ってたし」
ほむら「別に好きじゃないわ」
さやか「からっあげーおいっしくつくーるならー?」
ほむら「ほむっほむー」モミモミッ
ほむら「って何やらせるのよ!」
さやか「いや、何でやったのさ」
38:
ノリの良い悪魔だな
39:
さやか「うん、そのくらいでいいかな」
ほむら「もう二度とやらない……もう二度とやらない……」ブツブツ
さやか「次は衣をつけるためのものをまぶすよ」
さやか「さらにもう一手間で溶き卵をつけておいてもいいんだけど、今回はシンプルにいこうか」
さやか「粉は小麦粉か片栗粉。どっちか片方でも両方でもOK。もちろん売ってるからあげ粉でもいいよ」
さやか「袋から出してまぶしてもいいけど、調味料の量をちゃんと調整してるならこのまま袋に粉を入れちゃってもOK!」
さやか「ほむらんちには小麦粉がないから片栗粉を入れて……はい」スッ
ほむら「……まさか」
さやか「そう、まただよ」
ほむら「美樹さやか……あなたはやはり魔女だわ……!」
45:
ホムッホムー ホムッホムー
さやか「これで準備はOK!」
ほむら「私の威厳は……全知全能とは……」ブツブツ
さやか「ちなみに粉は全体にまぶす感じで行き渡ればいいので、ここではあんまり揉まなくていいよ」
ほむら「!?」
46:
さやか「続いて油の準備をするよ!」
さやか「下処理をしながら火にかけてもいいんだけど、油の温度は変わりやすいから慣れないうちはしっかり油に集中した方がいいね」
さやか「フライパンで少量の油で揚げ焼きにすると油も節約になるけど、その分温度の管理がもっと難しくなるから慣れないうちはお勧めしないよ!」
さやか「揚げ物のコツは一定の温度で。多めの油を使うのは材料を入れた時に油の温度が下がりにくいからってことだね」
さやか「ちょっとほむら、聞いてる? そんな隅っこで膝抱えてないで、ここ大事だからね!?」
ほむら「……」
49:
さやか「からあげを揚げる温度は180度くらい。ここが一番大事だよ!」
さやか「温度が低すぎると衣が固まる前に油が染みてびちゃびちゃになるし、温度が高すぎると焦げるうえに衣がはがれちゃうから注意!」
ほむら「で、いつになったら180度なのかしら?」
さやか「見分け方は色々あるよ。油を測るための温度計を使ったり、先に衣だけ揚げてみるのが確実だけど」
さやか「一番手軽なのは箸をつけてみることかな。箸をつけた瞬間いっぱい泡が出るようなら温度が高すぎだから一度火を止めて。ちょっとずつ出てる泡が絶え間なくなってきたら揚げごろだよ!」シュワー
53:
ほむら「……」
さやか「ほむら? ほら、揚げごろだってば」
ほむら「えっ、私が入れるの?」
さやか「当たり前でしょ。揚げ物は油に慣れるのが一番なんだから」
ほむら「そう……わかったわ、全知全能の私にかかればこのくらい」プルプル
さやか「ほら、そんな先っぽの方で持たない! 目を反らさない! 箸が滑ったら思いっきり油がはねるからね!」
さやか「恐がったり熱がったりして体が離れてたり、高いところから油に入れてるとかえって危ないんだよ。熱くてもしっかり正面に立って、低い位置から入れるの」
ほむら「わわわ、私のどこがビビッてるって証拠よ……」ジュ、ジュワー
さやか「はいはい、焦ってまとめて入れないようにね。ちゃんと一つ一つ入れないとくっついちゃうからね」
57:
さやか「よし! それじゃあ引き上げるよ!」
ほむら「えっ、もうなの?」
さやか「そう! 揚げ物はすぐに火が通るし、揚げすぎるとどんどん油が染みこんでくからね! 上げる時は手早く!」
さやか「普段使わないからって面倒くさがらないで、ちゃんと網を買っておくと便利だよ!」
ほむら「わ、わかったわよ。買っておくわよ」チマチマ
60:
さやか「それじゃ、引き上げたからあげはそのまま4、5分おいておくよ」
ほむら「え、出来上がったんじゃなかったかしら」
さやか「そんなわけなじゃん。2分も揚げてないんだよ? 全然生焼けだって」
ほむら「……あなた、喧嘩でも売ってるのかしら?」
さやか「違う違う。油からは引き上げたけど、まだ調理は続いてるんだよ」
ほむら「……?」
さやか「外側の衣がちゃんと固まったら、中までじっくり火を通すのは余熱で十分! こうすれば油っぽくならないんだよ!」
ほむら「はあ、なるほど……」
さやか「あれ? 全知全能なんじゃなかったっけー?」
ほむら「もも、もちろんよ……これは再確認。再確認だから」
64:
ほむら「……そろそろ5分かしら」
さやか「そうだね。じゃあ油に戻して!」
ほむら「えっ!?」
さやか「仕上げだよ! 熱の落ち着いたからあげを油に戻して、衣をパリッとさせるの。1分も揚げなくて十分、油は高温にしてもOK!」
ほむら「1分!? ええと、もういいかしら……まだ?」
さやか「まだだよ、まだ……よし今!」
ほむら「時を止め……駄目だわ、私が触れれば油は動くから意味がない! 自力で、自力で手早く……!」
さやか「頑張れほむら、もう少し!」
66:
ほむら「上げ切ったわ!」
さやか「お疲れ様っ! あとは今度はしっかり油を切って、少し落ち着いたら完成だよ!」
さやか「クッキングシートに置いてもいいし、魚を焼くグリルがあるなら網部分で油を切るのもありかもね」
ほむら「やったわ……この揚げ色、確かにまどかのと同じ……」
ほむら「……」ハッ
ほむら「実に簡単な……全知全能の私の手にかかれば児戯に等しいものだったわね」ファサァ
さやか「あ、まだ続けるの? それ」
71:
参考
73:
さやか「ほらほら、もう油は十分切れたと思うよ。揚げたてを味見してみなよ」
ほむら「そう慌てるものではないわ、美樹さやか……では」ヒョイ
サクッ ジュワア…!!
ほむら「熱っ……! でも柔らか……んんっ!」ハフッホフッ
さやか「おおっ……じゃああたしも一つ」サクッ
さやか「んん?っ! 料理した者の役得ですなーっ!」
75:
ほむら「揚げ物だけど、こんなに口当たりが軽いものなのね」
さやか「んー、そうだね。今回は片栗粉だけで揚げたから、竜田揚げみたいなものになってるからね」
さやか「片栗粉で揚げるとサクサクの軽い感じの衣に、小麦粉で揚げると逆にカリッとしたジューシーなからあげになるよっ!」
ほむら「小麦粉、買ってこようかしら」
さやか「いいんじゃない? 下味もしっかりつけたからそのままでも美味しいけど、何かつけるものがあっても美味しいよ!」
ほむら「つ、追加を買ってくるわ……美樹さやか、ちょっと留守番してなさい……!」ガチャッ バタン
さやか「え、ちょっ……ああ、行っちゃった。完全に全知全能忘れてるなー、はしゃいじゃって」
さやか「あんなほむら久々に……いや、初めて見たんだっけ?」
さやか「……まあいいや。さて、携帯携帯っと」カチカチ…
77:
翌日・昼休み
ほむら「まどか」
まどか「あっ……何? ほむらちゃん?」
ほむら「よかったら一緒に昼食をどうかしら? 今日は私もお弁当を作ってきてて」
まどか「え? えっと、私、あの……」
ほむら「嫌なのかしら?」
まどか「う、ううん。嫌なわけじゃないの、嫌じゃないんだけどね?」
ほむら「……」
ほむら(警戒されたものね……まどか、唯一私の思い通りにならない)
ほむら(いえ、そうあるべきだわ……まどかを思い通りにしてしまったら、この世界の意味がない。まどかは自由で、普通でなければならない)
ほむら(……)
80:
さやか「まーどかっ!」
まどか「ひゃっ、さやかちゃん!?」
さやか「どうしたのさ、早く行こうよ。杏子やマミさんも早くお昼にしようって待ってるよ?」
まどか「う、うん。あの、ほむらちゃん……私、先に誘われてて」
ほむら「……そう」
さやか「……」
さやか「……そうそう! だから二人とも早く来なって!」
ほむまど「えっ?」
82:
さやか「あっ、まどかに言ってなかったっけ? 今日はほむらも誘っててさー」
さやか「ほむらにまどかと一緒に先に行っててもらうようにお願いしてたんだけど、ごめんごめん戸惑わせちゃって」
まどか「そうなの? もー、さやかちゃんひどいよー、それなら早く言ってくれないとー!」
さやか「あはは、だからごめんって! お詫びにあたしのおかず一つあげるからさー」
さやか「あ、連帯責任でほむらもおかず一つあげること! いいね?」
ほむら「えっ!? ……ええ」
84:
これは濃厚なほむさや
87:
杏子「へーさやか、こいつと仲よかったんだ? 初耳だな」
さやか「まあ、あたしも最近になってからだけどね」
マミ「ふふっ……鹿目さんに続いて新しいお友達が増えて、賑やかになったわね。暁美さん、よろしくね?」
ほむら「……ええ」
さやか「はい、じゃああたしからは卵焼きね」
まどか「わー、ありがとう! 私さやかちゃんの卵焼き好きなんだー!」
さやか「ほら、忘れないうちにほむらも! そのからあげとかいいんじゃない?」
ほむら「え? ああ、そうね……まどか、いいかしら?」
まどか「本当にいいの? えっと、じゃあもらうね?」
88:
サクッ
まどか「……あ、このからあげ美味しい!」
ほむら「ほ、本当!?」
まどか「うん、お弁当だから冷めてるのにサクサクのままで……」
杏子「へえ、そんなに美味いのか? どれどれ」ヒョイパク
ほむら「あっ」
杏子「おおーっ、本当に美味いじゃん! さやかと同じくらいいけるんじゃない?」
さやか「そ、そう? じゃああたしも……マミさんももらったらどうですか?」
マミ「それじゃ暁美さんのお弁当がなくなっちゃうわよ。暁美さん、何かおかずと交換でいいかしら?」
ほむら「ええ……構わないわ」
89:
さやか「うんうん、オイシイナー」
マミ「ええ、暁美さんって料理上手なのね」
ほむら「え? ええ、それはもう。これくらいなら」
杏子「へー、じゃあ次も期待していいんだな? これからはあんたも一緒に食おーぜ! おかず交換できる相手は多い方がいいっ!」
ほむら「えっ」
まどか「そうだね。私もほむらちゃんのこと恐い人かもって思っちゃってたけど、ちょっと親しみやすくなったかも」
ほむら「!!」
ほむら「そう……そこまで期待されては仕方ないわね。これからも大船に乗ったつもりで期待するといいわ」
杏子「おっ、やりぃー!」
さやか「……」
90:
ほむら「……」
ほむら「やってしまったわ」
ほむら「……」
ほむら「い、いえ……私は全知全能。何もやってしまってないわ」
ほむら「そう、からあげだって簡単に作れるようになったじゃない……他の料理だってちょろいものよ」
ほむら「……からあげ」
92:
冷蔵庫「」パンパン
ほむら「……さすがに作りすぎたわ」
ほむら「……」ゴソゴソ
ほむら「……」パク
ほむら「……固いわ」
ほむら「片栗粉の衣のせいなのかしら、時間が経つとこんなにパサパサになるなんて」
ほむら「どうしよう、明日はパサパサからあげ弁当かしら」
94:
杏子『うえ、何だこのからあげ。パッサパサじゃねーか!』
マミ『昨日とまったく同じって……作り置きなの? 暁美さん、苦労してるのね』
まどか『えっと……ほむらちゃん、おかず少し分けてあげようか? あっううん、交換はしなくていいよ、いらない……』
さやか『あはは……みんな聞いてよ、実はほむらってさー……』
ほむら「……」
ほむら「……」グス
ピンポーン ピンポーン
97:
ほむら「うるさいわね……また新聞の勧誘かしら」
ピンポーンピンポーン ピンポンピンポンピンピンピピピピ
ほむら「ああもう、しつこいわね!」ガチャ
杏子「なんだよ、ちゃんといるじゃねーか」
さやか「だからってあんな呼び鈴の押し方ないでしょ、あんたは本当にーっ!」
マミ「遅くにごめんなさいね?」
まどか「あはは……えっと、こんばんは」
ほむら「あなたたち、どうして……?」
100:
さやか「えっとー……ほむら、しゃべっちゃった! ごめん!」
ほむら「えっ」
杏子「いやー、料理できない奴だとは知らなかったからさ。変なプレッシャーかけちまってごめんな?」
ほむら「えっ……えっ」
マミ「誰だって最初は初心者だもの。大丈夫、あんなに美味しいからあげが作れるんだからすぐに料理上手になると思うわ」
ほむら「あの、ちょっと」
まどか「ごめんねほむらちゃん、無理しなくていいからね?」
ほむら「」
102:
ほむら天使化ですね
103:
さやか「はいはい、それじゃあお邪魔しまーす」
杏子「うわ、何もない家だなー」
ほむら「え、どうして勝手に上がってるのよ!?」
ほむら「それよりちょっと、そこは駄目! 冷蔵庫は駄目!」
杏子「うわー、見事にからあげ一色だなー」
ほむら「」
108:
マミ「ああもう、暁美さんごめんなさいね。佐倉さん、いくらなんでも遠慮がなさすぎでしょう!?」
まどか「……ほむらちゃん?」
ほむら「そう……そうなのね」
ほむら「こんな方法で追い詰められるなんて予想してなかったわ……そうよ、所詮私は悪。あなたたちとは相容れない存在」
ほむら「でも考えが甘いわ……この程度の精神攻撃で、全知全能たる私をおさえられるはずがない」
ほむら「そう、今すぐにあなたたちの記憶を改竄することだって私には!」
さやか「はいどいてどいて、台所借りるよ」
マミ「あ、材料持ったままだったわ。暁美さん、私たちも入っていいかしら?」
ほむら「……ん?」
112:
さやか「さーて、じゃあ一品目を始めるとしましょうか!」
ほむら「いやいやいや、待ちなさい。話が見えないわ。何をしに来たのよ、何を」
杏子「そりゃーあんた、このからあげを処理するための料理を教えにきたのさ」
ほむら「えっ」
マミ「レパートリーを増やすなら別のものを一つ一つ覚えるよりも、覚えたものの応用から広げていくのが一番よ」
まどか「えっと、私もあんまり料理上手じゃないけど……パパからちゃんと教わってきたから! 安心してね?」
ほむら「まどか……」
115:
さやか「というわけで、まどかの番だと思った? 残念、トップバッターはもちろんさやかちゃんでした!」
さやか「片栗粉の衣のからあげは時間を置くとパサパサになるけど、逆に言えばソースが絡みやすい常態なんだよね」
さやか「温め直して、絡めるソースのバリエーションさえ増やせれば、残りものから一気に常備菜に昇格できる一品なんだよ!」
さやか「しょうゆ、ごま油、お酢、砂糖をベースにして、たっぷりのみじん切りにした長ネギ、刻みニンニク、おろししょうがをプラス!」
さやか「たったのこれだけで絶品、油淋鶏(ユーリンチー)ソースの出来上がり!」
さやか「衣が固い時はソースの一部をかけて軽く煮込むか、レンジでチンするだけでもやわらかくなるし味も染みるよ!」
さやか「お好みで摩り下ろしたリンゴとか、大根おろしを入れても合うから色々試してみてもいいかもね」
123:
杏子「お次はあたしだな。これでもさやかに料理を習ってるからな、それなりの腕前になったんだぜ?」
杏子「酢豚みたいに揚げ物ってのは甘酸っぱい味とよく合うんだよなー」
杏子「鍋に酢、砂糖、鶏ガラスープ、ケチャップ、あとしょうゆを少し入れて一煮立ち! そしたら火を止めて水溶き片栗粉でとろみをつければ」
杏子「ご飯によく合う、お手軽な甘酢あんかけの出来上がり!」
杏子「そのままからあげだけにかけてもいいけど、キャベツとかの野菜と一緒に食うとまた合うんだ!」
杏子「温野菜にするとか、刻んだのを1、2分レンジにかけとくだけでもしんなりして食べやすくなるぞー!」
128:
マミ「私からはちょっと変り種。洋風というか、イタリアンを紹介するわね」
マミ「フライパンに油を引いて、刻みニンニクで香り付け。オリーブオイルだと最高ね」
マミ「スライスしたたまねぎを炒めて、透き通ってきたらここにからあげを入れて炒めちゃうわ」
マミ「からあげが温まったら牛乳を入れて、さらに弱火にしてチーズ投入、柔らかくなったら塩と黒胡椒で味付けね」
マミ「仕上げに溶き卵を全体に入れて火から下ろし、混ぜながら荒熱がおさまるまで余熱で火を通せば」
マミ「カルボナーラ風の完成よ!」
マミ「もちろんソースを多めにしてパスタに絡めてもいいし、キノコなんかの具を増やしても美味しいわよ」
136:
まどか「最後は私だね。本当に簡単なのだけど、私にとってはまだ難しいから頑張るよ!」
まどか「えっと、小鍋にだし汁、しょうゆ、お酒、みりんを入れて火にかけながら味を調えて、スライスしたたまねぎを入れるよ」
まどか「沸騰してきたらからあげを入れて、そのまま一煮立ち。からあげが大きいなら切っておいた方がいいかな」
まどか「からあげがあったまったら緩めに溶いた卵を全体に回しかけて、すぐに火から下ろす!」
まどか「蓋をして余熱で火を通して、卵が好きな固さになったら出来上がり!」
まどか「親子丼のからあげ版だね。だし多めの薄味にすれば単品でもいいし、卵とじにすると不思議と冷めても柔らかいんだよ!」
まどか「コツは卵をかき混ぜすぎないことと、すぐに火から下ろすこと。あと、少なめの煮汁で作ることかな」
まどか「うん、今日は上手くできたよ!」
146:
ほむら「……」
まどか「あれ、ほむらちゃん? 気に入らなかったかな?」
ほむら「いえ、違うの……あの、みんなどうして……?」
さやか「そりゃあ昨日あれだけ追加で買ってきちゃってたからね。作りすぎで困ってるのは予想できたし」
マミ「美樹さんは本当に迷って、最初は私だけに相談してくれてたんだけど……こういうのは抱え込むより、早いうちにみんなで解決した方がいいと思って」
杏子「あたしはまた美味いもんが食いたいからなー。これで上達してくれればこれから先も期待できるし、先行投資ってやつ?」
まどか「それに、一人暮らしで頑張ってるほむらちゃんには失礼かもしれないけど……」
まどか「ほむらちゃんもお料理練習中だって聞いたら、私と同じだって。そしたら、ちょっと嬉しくなっちゃって」
まどか「それで、一緒にお料理上手くなっていけたら、すっごく嬉しいなって」
ほむら「……」
147:
パク
ほむら「……」
ほむら「う……」
まどか「えっ、ほむらちゃんどうしたの!? しょっぱかった!?」
ほむら「ううん、違うの……」
ほむら「さっきまで冷たくて固かったのに」
ほむら「こんなに、暖かくて柔らかくなるんだなって……」
150:
QB「……」
QB「ん?」
QB「この世界全体の穢れが、少し減った気がする……」
154:
ほむら「……ここでよかったかしら」
まどか「あ、ほむらちゃーん! こっちこっち」
ほむら「まどか! よかった、待ち合わせ場所が間違ってなくてよかったわ」
まどか「あとはマミさんと杏子ちゃんだね」
さやか「マミさんはちょっと遅れそうだから先に出発しててってさ。杏子が捕まらないんだよねー、どこ行っちゃったのかな」
158:
ほむら(あれからまどかたちとの交流も増え)
ほむら(今ではこうして一緒に出かけるまで、関係を修復することができた)
ほむら(本当、世界の概念よりも人の心の方がままならないものだわ)
ほむら(唯一私に敵対の意思を残していた美樹さやかも、あれからはすっかり警戒を解いている)
ほむら(以前より思い通りにいかないことは増えた気がするのだけど)
ほむら(今の方が、居心地はいいと思う)
ほむら(美樹さやかには感謝しなければならないかな……)
ほむら「あの、美樹さやか」
160:
カラッアゲー オイッシクツクールーナラー ホムッホムー
ほむら「!?」
さやか「あ、ごめんあたしだわ。もしもし、杏子?」ホムッホ ピッ
ほむら「!!?」
165:
さやか「ああ、やっと捕まった! 杏子のやつ場所間違えてたみたいでさー、もう5分もすれば着くって」
さやか「ん、どしたの?」
まどか「えっと、さやかちゃん……今の着信音って」
ほむら「……っ」パクパク
さやか「んふふ……聞いちゃった? 作詞・暁美ほむら、歌・暁美ほむら『からあげのうた』」
さやか「いやー初めてからあげの作り方教えた時にノリノリで何度もやってくれからさー、ついつい録音しちゃって」
さやか「それで、テンション上がっちゃった誰かさんが留守番までお願いするもんだからもう暇で暇で」
さやか「ついつい着信音に設定する時間までできちゃったからねー、まあ仕方ないよね!」
ほむら「」
169:
さやか「そんなわけだから……まあ、これからもよろしくね? ほ・む・ほ・む?」
ほむら「あ……あ……」
ほむら「あなたって本当に魔女だわ!」
《おしまい》
172:

面白かった
晩飯の唐揚げ食ってくる
17

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【マナー違反】このせいで電車止まった!携帯電話使用を注意するおじさんとキレる若者

屋根裏に潜伏中の忍者の会話劇を描いたアニメシリーズ『Peeping Life』が面白い!!

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