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男「釣りロマンを求めて」幼馴染「ブラックバス編です」


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男「釣りロマンを求めて」幼馴染「ブラックバス編です」
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SS深夜VIP
男「釣りロマンを求めて」幼馴染「仕方ないから付き合います」
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298:
男「おはようございます」
幼馴染「これはどういう事でしょう」
男「何がですか」
幼馴染「今は午前九時です」
男「確かに、それが何か」
幼馴染「迎えに来るのが早朝ではなく普通の時間帯です」
男「どうあがいても朝まずめに釣り場に着く事はできませんので、今回は夕まずめから釣るつもりで行きます」
幼馴染「えーとえーと…何に対する怒りで目を覚ませば良いのでしょうか」
男「別に怒りを朝の原動力にしなくても良いのでは………ほら」チュッ
幼馴染「てーい!てーい!」
男「痛いです。目覚めの口づけは前回の貴女が求めた事です」
幼馴染「貴様男の偽物だな!男をどこにやった!」
男「いいから早く着替えて下さい」
299:
幼馴染「今回も車はハイラックスサーフですか」
男「そして例のごとく無断借用です」
幼馴染「二泊三日と言っていましたが、そんなに長く無断借用して大丈夫なのでしょうか」
男「最近父親はサーフだと燃料代がかかるからと母親を言いくるめて買ったコペンばかり乗っているので心配ありません」
幼馴染「また随分可愛らしいのを購入したのですね」
男「おかげでガレージを開ける度に(°∀°)に、ワクワクして『乗る?乗る?』と言われている気になります」
300:
男「では出発しましょう、乗って下さい」バタンッ
幼馴染「………」バタンッ、キョロキョロ
男「……?」
幼馴染「…いませんね」
男「ああ…幼友ちゃんは今日は外せない用があるらしく、明日の午前中に旅先の駅で合流の約束になっています」
幼馴染「仮にも奴は『幼友』なのですが、なぜ最近こういう連絡を直接男がしますか」ムスー
男「…他意は無いのですが」
幼馴染「少し弁えて下さい、男は私のかっ…か…かっ…」
男「……か…?」
幼馴染「か…かっ………てーい!てーい!てーい!」
男「痛いです。途中で心折れるなら無理に『彼氏』とか言わなくてもいいです」
幼馴染「迎えの時間が違うからでしょうか。なにやら今朝は自分が空回っている気がします…」
305:
幼馴染「そもそもブラックバスとはどんな魚なのでしょう」
男「その質問に対してよく『シーバスと呼ばれる海のスズキの仲間なんだよ』という答えを返す人がいます」
幼馴染「違うのですか」
男「これがスズキ目の話であるなら、違いはしなくとも浅い知識の知ったかぶりです。スズキ科だというなら、間違いになります」
幼馴染「ほほう」
男「まずスズキ目としては、スズキ亜目に限定しても3000種を超える魚が含まれ、アジですらスズキの仲間という言い方になってしまいます」
幼馴染「アジもですか、それは大雑把すぎます」
男「スズキ科の話だとすれば、日本にはスズキ科の魚はスズキ・ヒラスズキなど数種しかおらず、見当外れです」
幼馴染「スズキの仲間…という言い方だといかにも食べられそうですが」
男「おそらく『ブラックバスは食べられるんだよ』という話題を膨らませるために併せて語られ、適当なままに認知されているのでしょう」
幼馴染「なるほど」
男「魚としての性質はご存知の通り他の魚を捕食するフィッシュイーターであり、虫などを食べる雑食性ももっています」
幼馴染「…思う以上に専門的な話で、あまり面白くありませんでした」
男「ギョギョー」
306:
…高道路走行中
男「ふわーりぃーハネのよーう、竿ーのーぎょぎょライートー揺れるぅー」
幼馴染「………」ソワソワ
男「スズーキとー呼べーるーサイズじゃなーい、60センチ以下ーだーかーらぁー」
幼馴染「………」モジモジ
男「…どうかしましたか、何か様子がおかしいです」
幼馴染「そ、そんな事はありゃません」
男(……噛んだ)
幼馴染(……久しぶりに幼友がいないと、何か緊張します)
男「まだまだ遠いので、寝てても構いません」
幼馴染「大丈夫れふ」
男「……今夜は安いけど、温泉旅館をとってあります」
幼馴染(温泉…旅館…二人きり…婚前旅行…)ブツブツ
男「もしかして緊張していますか?そこのサービスエリアのドッグランでも走っては」
幼馴染「犬じゃありません…」
312:
…サービスエリア
幼馴染「お待たせしました」
男「やはり女性のトイレは長いものです」
幼馴染「そういうのは思っても口に出すものではありません」
男「何か買い食いでもしますか」
幼馴染「頂きます」
男「奢るとは言っていません」
幼馴染「じゃあお言葉に甘えて、たこ焼きを」
男「…聞いちゃいねえ」
313:
幼馴染「サービスエリアのファストフードにしてはふわとろで美味です」
男「………」
幼馴染「どうかしましたか」
男「…普通、この流れなら『はい、あーん』があるものではないでしょうか」
幼馴染「爪楊枝は二本あります」
男「…もういいです、自分で食べるから一個下さい」
幼馴染「ふっふっふっ…引っかかりましたね」チッチッ
男「はい?」
幼馴染「たこ焼きに爪楊枝が二本ついているのは、二人で食べるためではありません」
男「丸いたこ焼きが回らないように二本使うのでしょう」
幼馴染「………」
男「………」
幼馴染「てーいっ!」ガバッ、モグモグ
男「ああっ!全部いっぺんに食べないで下さい!」
314:
…再び、高道路走行中
幼馴染「…眠くなってきました」
男「緊張したり緩んだり忙しいことです」
幼馴染「リクライニングさせていいでしょうか」
男「おやすみなさい」
幼馴染「寝てる間にお尻とか触らないで下さい」
男「そう言われると触りたくなります」
幼馴染「じゃあ触って下さい」
男「解りました、必ず」
幼馴染「どうしろと」
男「冗談です、触りません」
幼馴染「…でも眠気覚ましにちょっとならいいです」
男「運転を誤りそうな事を言わないで下さい」
319:
(誰だよ俺の尻触った奴)
320:
やらないか?
323:
     | │     〈   !
     | |/ノ二__‐──ァ  ヽニニ二二二ヾ } ,'⌒ヽ
     /⌒!|  =彳o。ト ̄ヽ  '´ !o_シ`ヾ | i/ ヽ !
     ! ハ!| ー─ ' i !    `'   '' "   ||ヽ l |
_______∧,、_| | /ヽ!  |    |ヽ i !_ ______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ ヽ {  |          !   |ノ  /  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ヽ  |   _   ,、            ! , ′
    \ !        '-゙ ‐ ゙  レ'
      `!           /
     ヽ  ゙  ̄   ̄ `  / |
              |\    ー ─‐       , ′ !
324:
>>323
とーう( ゚∀゚)=◯)`Д゚)・;'
326:
(誰かがケツをさわったような・・・)
327:
ホモォ「男のケツ触るか…」
328:
     | │     〈   !
     | |/ノ二__‐──ァ  ヽニニ二二二ヾ } ,'⌒ヽ
     /⌒!|  =彳o。ト ̄ヽ  '´ !o_シ`ヾ | i/ ヽ !
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_______∧,、_| | /ヽ!  |    |ヽ i !_ ______
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    ヽ  |   _   ,、            ! , ′
    \ !        '-゙ ‐ ゙  レ'
      `!           /
     ヽ  ゙  ̄   ̄ `  / |
              |\    ー ─‐       , ′ !
329:
>>328
てーい( ゚∀゚)=◯)`Д゚)・;'
ててーい( ゚∀゚)=◯)`Д゚)・;'
331:
(はよ書かな…ホモが湧いとる…)
ハモォ…鱧ォ…
334:
男「おはようございます、着きました」
幼馴染「…おはようございます、今は何時ですか」
男「午後三時です。まだマズメ時には早いですが、ルアーに慣れて貰うためにも釣り始めましょう」
幼馴染「バスもやはりマズメ時がよく釣れるのですか」
男「海釣りと違って潮汐の影響はほぼ無いので、いつが釣れるか…といえばやはりマズメ時となります」
幼馴染「昼間は?」
男「春や秋なら昼でも釣果は期待できます。夏場はさすがに朝夕に集中して釣れますが。では、こちらをどうぞ」
幼馴染「これがバス竿ですか」
男「いえす、扱いやすい6フィートのスピニングを使って下さい」
幼馴染「短いけど硬い…男と一緒」ポッ
男「悪かったな」
344:
男「まずはやはり、ただ巻き系のルアーを使って貰います」
幼馴染「ただ巻き?」
男「もちろん止めたり緩急をつけたりという技術もありますが、基本的には巻くだけという事です」
幼馴染「何だかずんぐりむっくりなルアーで可愛いです」
男「クランクベイトと言います。先のリップが長ければディープレンジを攻めるタイプ、短ければシャローレンジ用です」
幼馴染「リップと言う割には唇というより舌みたいです」
男「これは水深2.0m位を探る、比較的ディープクランク寄りなものになります。巻き抵抗は強く手が疲れるかもしれませんが、根気良く探ってみましょう」
幼馴染「ディープな感じに唇と舌で責めればいいのですね」
男「なぜわざとそういう言い回しにしますか」
345:
男「ただ巻き系ルアーは広範囲を探るのに向いています。ここから一投ずつ放射状に探ってみて下さい」
幼馴染「てーい」
男「このクランクは巻かなければ浮くフローティングタイプなので、着水後に焦る必要はありません」
幼馴染「では巻いていきます」
男「ちょっと待った。人によって様々ですが、俺は探りでクランクを使う場合は、着水の波紋が落ち着いてからリーリングします」
幼馴染「ほほう、それによって何かが?」
男「なんとなくです」
幼馴染「…はい?」
男「なんとなくそれがいい気がするのです。釣りなんてそんなもんです」
幼馴染「あれこれ道具や仕掛けにこだわる割には、身も蓋もない言い方ですね」
男「たぶん釣り人は皆、自分はなんとなくこうするのが良い…というジンクスめいたものを持っています」
幼馴染「そんなものですか」
男「そんなものです」
346:
幼馴染「おお…手にぶるぶる伝わります」
男「クランクという言葉には『がたがたする』『ぐらぐらする』という意味があり、まさにその通りの動きをします」
幼馴染「わ…!?アタッてる…!?」
男「いいえ、これは底のゴロタを叩いているだけです」
幼馴染「あんなに針がたくさん付いていたら、根がかりしそうです。無くしたらまた身体で払わなければならなくなります」
男「身体で払わせた覚えはありません、人聞きの悪い。ロングリップのクランクは前傾姿勢で泳ぐため、針より先にリップが底に着き意外と根がかりしません」
幼馴染「ほほう…しかし何事も予想外の事態というのは起こり得るものです」
男「まあ、そうですね。絶対ではありませんが…」
幼馴染「やはりそういった想定範囲外の出来事に対して寛容になれてこそ、器の大きな人間というものです」
男「ほほう、つまり現在の状態を解りやすく表すと?」
幼馴染「根がかりました」
男「身体で払え」
349:
男「では更に根がかる危険の少ないルアーを使って頂きます」
幼馴染「この奇妙な針金細工は何なのでしょう」
男「スピナーベイトというルアーです。見ての通り針先が上側を向いていて、ワイヤー部は横三角形になっているので、非常に根がかりにくいルアーになります」
幼馴染「これもただ巻きですか」
男「基本的にはそうです。小型な1/4オンスなので、スピニングでも投げられると思います」
幼馴染「てーい」
男「これは沈むルアーなので、着水後すぐに巻き始めます。ゆっくり巻けば深い層を、早く巻けば浅い層を攻めることになります」
幼馴染「ん…?ぐいっと重くなって…また軽くなりました」
男「おそらく沈み岩を乗り越えたのだと思います。よく、その岩の裏からバスが追ってきて…」
幼馴染「うわっ!…食った……!?」
男「上に引き過ぎてはいけません、水面に出すとエラ洗いと呼ばれるアクションで針を外される場合があります」
幼馴染「そんな事言われても、どうすればいいのか…!うわわ、水面に出ます!止まれー!てーい!てーい!」ジタバタ
男「竿を寝かすのです!」
幼馴染「はいっ!」ピッ
男「前にじゃなーい!」ブフォッ
350:
幼馴染「バラしました…」
男「竿は横に寝かして下さい。前に寝かすとルアーからラインと竿が一直線になってしまい、最悪ラインが切れます」
幼馴染「しかしこのスピナーベイトというのは、見掛けによらず釣れるのですね。いかにも上手い人向けなルアーに見えますが…」
男「略してスピナベは使い方の幅広いルアーです。針に着けるトレーラーの種類、更に攻める層や緩急をつけた引き方など初心者から上級者まで、様々な使い方で釣果を得られます」
幼馴染「スピナベですか、略すと一気に日本語っぽくなります」
男「更に略せば『ナベ』です」
幼馴染「ナベ…小学生の仇名みたいです」
男「さあ、スピナベが有効と判ったら後は手数勝負です。ガンガン行きましょう」
幼馴染「てーい!」
351:
幼馴染「ところで、男は釣らないのですか?」
男「貴女もペースが掴めてきたようなので、そろそろ始めようと思います。」シャキーン
幼馴染「またまたご冗談を。竿を持つ向きが裏表逆です」
男「これはベイトタイプのロッドなので、これで良いのです」
幼馴染「何か違いが?」
男「使いこなすには技術が必要ですが、飛距離の調整など精密なコントロールが可能です。また直接スプールに糸を巻き取ってゆくので、重いルアーや抵抗の強いルアーを使う事ができます」
幼馴染「よく解りませんが、私には使えないという事は解りました。ん…?何やら真剣な顔をしています」
男「実に二年ぶり程になるバス釣りです。少し…感慨深いものがあります」
幼馴染「男…」
男「この国においては、本来好ましくない釣りです。それでもこのような特別な場所だけで許された、バスとの勝負…」
幼馴染「今、BGMは『A Question of Honour』あたりですね」
男「宿敵よ、俺は帰ってきた…お前の潜む水辺に…!殺すためでも、喰らうためでもなく…少しでも大きなお前と出会うためにっ!…いくぞっ!」シュッ!
幼馴染「おお…!」
男「……バックラッシュしました…」
352:
幼馴染「男が投げているルアーはまた違うようですが、何なのでしょう」
男「バイブです」
幼馴染「はわ…はわわ…私は今夜どうなるのでしょう…」ドキドキ、プルプル…
男「全く違うものを想像していると思います。バイブレーションといい、リップの無い細身なルアーです」
幼馴染「その名の通り、振動するわけですね」
男「いかにも。基本的にはこれも沈むルアーです。巻き抵抗が弱いのでクランクより素早く広範囲を探れる、サーチベイトにも向いたルアーです」
幼馴染「さーちべいと…やはりバス釣りは横文字の用語が多数使われるのですね」
男「まあ、そもそもが北アメリカ大陸で盛んな釣りですので」
幼馴染「なんか格好つけた感じがして抵抗あります」
男「解らなくもありませんが、例えばサーチベイトを無理に日本語化すると『探り向けルアー』、バイブレーションなら『ぶるぶる』といった感じになりますが」
幼馴染「…やっぱり英語でいいです」
353:
幼馴染「ところでこのスピナベの針に着けているプニプニのピロピロは何ですか」
男「トレーラーとして着けているカーリーテールグラブと呼ばれるソフトルアーです」
幼馴染「芋虫に尻尾がついている感じですね」
男「基本中の基本、ゲーリーヤマモトの4インチシングルテールになります。釣れないわけが無いレベルの定番品です」
幼馴染「外国人なのか日本人なのか解らない名前です」
男「日系ハワイアンの方です。ちなみに高校時代の同級生の山本君はこのソフトルアーが好きで、いつも使っていました」
幼馴染「ヤマモトだけに」
男「結果『ゲリヤマ君』という、響きの悪いニックネームをつけられていた記憶があります」
幼馴染「可哀想…釣り仲間の内だけでですか」
男「まあ…そう呼んでいたのは、ほぼ俺ですが」
幼馴染「さては、呼び始めたのも男でしょう」
男「仰る通りです」
354:
幼馴染「てーい」
幼馴染(…男、岸沿いを歩いて行ってしまいました)
幼馴染(キャンプ場の時みたいに、私がナンパされたらどうするつもりなのでしょう)ムスー
幼馴染(…あの時は幼友がいたから、まだ気持ちに余裕がありましたが…)
幼馴染「てーい」
幼馴染(幼友…明日の午前中に合流との事でしたね)
幼馴染(外せない用事って、なんだったのでしょうか)
幼馴染(…今夜の内に、たくさん男に甘えておくとしましょう)
幼馴染(そろそろ夕方ですね…冷えてきました)フルフルッ
355:
……………
………

…地元、洋食居酒屋
幼友「こんばんはー」
同級女「あー!幼友ちゃん、こっちこっちー!」
チャラ男「うぇーい!巨乳ちゃんじゃねっすか…!」
ギャル男「いんじゃね、このコ?はい、お持ち帰り狙いましたー!」
幼友(うわ…人数合わせに呼ばれたけど、このコンパひどいな…)
同級女「幼友ちゃん、こんな可愛いけど彼氏いないからオススメよー?」
チャラ男「まじでー!?今夜は燃え上がっちゃいますわー!」
ギャル男「チャラ男の良いトコ見てみたいー、そーれ!」
幼友(はぁ、釣り…今日から行きたかったな…)
357:
……………
………

男「さあ、夕まずめ…今日は軽く程度に攻めておきましょう」
幼馴染「せっかく来たのに軽くで良いのですか?」
男「せっかくというなら、旅館を予約したのもせっかくの話です」
幼馴染(……緊張が再発します…)ドキドキ
男「…夕まずめはバスの捕食活動が活発になります。水面直下の浅いレンジで食ってくる事も多く、面白い釣りが出来る時間帯です」
幼馴染「…面白い釣り?」
男「こちらをお使い下さい、ポッパーと呼ばれるルアーです。水には浮くタイプなので心置きなく投げて下さい」
幼馴染「てーい!」
男「クランクの時のように波紋が落ち着くまで待ちます。ラインのたるみだけ巻き取っておいて下さい」
幼馴染「らじゃー」
男「では竿を軽く一度、シャクって下さい」
幼馴染「てい」…ポワッ
幼馴染「何ですかこれ、音が可愛いです」
365:
男「いいからいいから…ラインを巻いて二発目と三発目を連続でいきましょう」
幼馴染「てい、てい」
ポワッ…ピシャッ…
…ユラリ
男「!!……次、一発どうぞ。もし食ったら、慌てずに」
幼馴染「ていっ」
ポワッ………ズバッ!
幼馴染「……!?」
男「ワンテンポ入れて…アワセて!」
幼馴染「てーい!」ビシィッ
男「バッチリです!今度は竿を寝かすのは横向きに…!」
幼馴染「なんかリールがチリチリ言います…!?」
男「ドラグを緩めに設定しているだけです!時間をかけていきましょう、まあまあのサイズです!」
366:
幼馴染「てーいっ!横倒しで浮いてきました!」
男「ランディングの際はルアーのフックに気をつけて下さい」
幼馴染「やった!バス釣りました!これは大きいのでしょうか?」
男「40cmは無さそうです…どれどれ、38cm…初めてのバスにしては充分良型です」
幼馴染「アレやってみたいです!男の部屋の雑誌で、よく表紙や広告でしてるポーズ!」
男「下顎のバス持ちですか。親指の皮膚がざらざらになるかもしれませんが、いいですか?」
幼馴染「…男がそんな手の女が嫌いなら、やめておきます」
男「くっそ可愛い事を言いますね。実にあざといです」
幼馴染「それほどでも」フフン
男「まあ、俺は寧ろそんな彼女の方が嬉しいです。どうぞ…写真、撮ります」
幼馴染「秋葉のオタクくらいローアングルなショットです」
男「その方が魚が大きく見えるので…はい、撮ります」
幼馴染「見せて下さい…うわ!これ詐欺です!…雑誌の表紙ってこんな撮り方で大きく見せていたのですね…」
367:
幼馴染「てい、ていていっ…ポッパーの釣り、やってるだけで楽しいです」
男「トップウォーターの釣りは視覚的な楽しみも大きいので、面白さも格別です」
幼馴染「てい……てい、ていっ」ポワッ…ピシャッ…
男「では俺も、バズベイトでトップを狙ってみたいと思います」
幼馴染「スピナベみたいです」
男「そうですね、ただブレード部分がペラになっています。これまた意外なほど良く釣れる、楽しいルアーです」
幼馴染「ほほう、拝見しましょう」
男「とーう」
幼馴染「!!」
男「桟橋際を引いて…ダメか。今度はこっちに、とーう…痛たたたっ?」
幼馴染「てーい!てーい!」ポカポカ
男「痛いです、何をしますか」
幼馴染「男は『とーう』はダメです!『てーい』です!」ポカポカ
371:
……………
………

…再び地元の居酒屋
チャラ男(へへ…幼友ちゃんをガンガン呑ませて、介抱&お持ち帰りコースっしょ!)
ギャル男「幼友ちゃん、何呑んじゃうー?」
幼友「…生」
チャラ男「サーセーン!生中ひとつ…」
幼友「はぁ…?私が生って言ったら、大ジョッキなんだけど」
同級女「ちょ…幼友ちゃんっ」
ギャル男「まじすか!?いくんだねー!」
チャラ男(こりゃ、勝手に潰れるかな…?あー、早くあの巨乳揉んでみてー!)
幼友(…うっざ……)
372:
……………
………

男「さて、七時までに旅館にチェックインしないと、夕食の配膳とかで迷惑をかけてしまいます」
幼馴染「旅館はここから遠いのでしょうか」
男「車で三十分というところです。しかし、お腹が空きました」
幼馴染「…男と温泉旅館に二人で宿泊する日がくるとは」
男「思っていませんでしたか」
幼馴染「解りません、でも考えた事は…少なくとも最初、海釣りに誘われた日の夜まではありませんでした」
男「あの時は緊張しました」
幼馴染「親ももうすっかり、『男と釣りに出掛ける=泊りがけ』という認識になってしまいました」
男「怒られたりはしませんか?」
幼馴染「これで男が私を捨てたりしたら、ひどく怒ると思います…男を」
男「それは怖い事です」
幼馴染「…可能性は?」
男「幼馴染が俺を捨てる確率と同じです」
385:
中居「本日はようこそおいで下さいました」
男「いえいえ」
幼馴染「それほどでも」
中居「お若いご夫婦で、微笑ましい限りです。どうぞごゆっくり…じきにお料理をお持ちいたしますので」
幼馴染「ふっ…!!」
男「よろしくお願いします」
中居「では失礼いたします、ご用の際はお呼び下さいませね」ニッコリ
男「温泉は食事の後です、空腹に勝てません」
幼馴染(夫婦…)
男「料理、楽しみです」
幼馴染「お、お茶飲みましょう」
男「そうですね、じゃあアテの茶菓子も開けますか。熱ちち…」ズズー
幼馴染「…はいどうぞ、あなた」キャッ
男「!!」ブフォッ
386:
幼馴染「おお…豪勢な料理です」
男「これでも割と安いプランなのですが」
幼馴染「山菜やお肉…山の幸中心で、お造りはちょびっとです」
男「わざとそうしました。正直、魚料理は自分で釣ったものには勝てません」
幼馴染「前に幼友の家で食べたお魚づくしは美味しかったです」
男「また今度は船の上で直ぐに捌いて活け造りを賞味頂きましょう」
幼馴染「楽しみにしてます」
男「地鶏の小鍋、お酒が進みます」
幼馴染「どど、どうぞ…」トクトク…
男「…幼馴染も飲みますか?」
幼馴染「じゃあ、ちょっとだけ」
男「こんな贅沢は滅多とできませんが、やはりいいものです」
幼馴染(明日、幼友に言ったら羨ましがるかな…)
387:
……………
………

…居酒屋、店の外
チャラ男「うえぇっ……」エレエレエレ
ギャル男「苦し…うへぇ…」キュー
幼友「はっ…口程にも無い。そんなんで私をお持ち帰りできると思ったわけ?」
同級女「幼友ちゃんが強過ぎるんだよ…本当に大丈夫?」
幼友「余裕だよ。私、これから深夜バス乗るから」
同級女「え…!?し、深夜バスって酔ってたら断られるよ…!?」
幼友「酔ってないもん。ブレスケア噛んどけば大丈夫でしょ」
同級女「はぁ…幼友ちゃん、そんなんじゃ彼氏できないよ?」
幼友「別に、今は欲しくないから」
同級女「好きな人とか、いないの…?」
幼友「…いない…でもないけど」
388:
同級女「そうなんだ、じゃあ今日は誘っちゃって悪かったね…」
幼友「いいの、気にしないで」
同級女「上手くいくといいね」
幼友「それは…無いかな」
同級女「え…」
幼友「私の好きな人はね」
幼友「もっとお酒が強くて」
幼友「あそこでのびてる人達みたいにチャラチャラしてなくて」
幼友「おっとりしてるけど、なよなよはしてなくて」
幼友「一緒にいたらすごく楽しくて」
幼友「私のおっぱいはガン見するくせに、彼女に一途で」
幼友「誘ってもきっと、靡かない人だから」
同級女「…そうなんだ」
幼友「じゃあ、行くよ。また遊ぼうね!」
400:
…深夜バス停留所
幼友(…ほんと、解ってるんだよ)
幼友(あの人は振り向かない)
幼友(そんな人だから…好きになっちゃったのかな)
幼友(…今の関係、楽しいし)
幼友(からかう事はあっても、本気で攻めるなんて…できないもの)
幼友(………)
幼友(…自分で言って自分で凹んじゃってるし)
幼友(バス…まだかな)
幼友(明日は、からかいまくってやるんだから)
幼友(幼馴染ちゃんに嫌われない程度に…)
幼友(………)
幼友(…自分の気持ちに、ブレーキが効かなくならない位に)
406:
……………
………

…旅館、露天風呂
幼馴染(…少し酔ってしまいました)
幼馴染(温かい温泉と、肩を撫でる冷たい風…)
幼馴染(ごくらく、ごくらく…)
幼馴染(…そういえば、明日の夜の宿泊はどうするのでしょうか)
幼馴染(まあ車が大きいので、車中泊も可能ですね)
幼馴染(もしそうにしても、ここに温泉だけ浸かりに来られたらいいな…)
幼馴染(…幼友も温泉…好きですから)
幼馴染(………)
幼馴染(ちょっと差を思い知らされますが…)
幼馴染(………)モミッ
幼馴染(…ちょっとじゃないか)ハァ…
407:
…旅館の部屋
幼馴染「ふー、いい湯でした」
男「おかえりなさい」グビグビ
幼馴染「また飲んでいるのですか、際限の無い」ヤレヤレ
男「失敬な、これで最後です」
幼馴染「あまり飲み過ぎては身体が心配です」
男「そういう言い方をされると反論できなくて困ります」
幼馴染「そう思って言っているので」
男「しかし幼友ちゃんもよく飲みますね」
幼馴染「話を逸らさないで下さい、私は心配しています」
男「ほほう…さすが、できた嫁です」
幼馴染「て、てーい!そう言えば私が照れて、話が逸れると思っているでしょう!」
男「バレましたか」チッ
幼馴染「…で、でももう一回言ってみて下さい」ドキドキ
415:
………

…深夜バス、車内
幼友(ん…?ケータイ…メッセージ?)
《幼馴染:今、こっちに向かっているのですか?》
幼友(『そうだよー、夜行バスに乗ってるよ』っと…)
《幼馴染:今夜は温泉旅館に泊まっています。料理も美味しくて、幸せです》
幼友(『いいご身分ですね、こんちきしょー』)
《幼馴染:幼友がいないと、なんとなくものたりません》
幼友(『そんな事言って、二人でイチャイチャしてるくせに』)
《幼馴染:てーい》
幼友(『とーう』…くっそー、憎らしいのに嫌いになれないなぁ)クスッ
《幼馴染:では明日会いましょう。おやすみなさい、ホルスタイン》
幼友(『おやすみ、前面絶壁』)
《幼馴染:てーーーい!!!》
幼友(『とーーーう!!!』)
416:
………

…旅館の部屋
男「さて…そろそろ明日に備えましょうか」
幼馴染「お布団、もう敷いてあります」
男「ん?…ケータイにメッセージが…」
《幼友:明日はよろしくお願いしまーす》
男「幼友ちゃんからです。『こちらこそ、おやすみなさい』…と」
《幼友:では、良い夢を》
男「添付画像…?」
幼馴染「何でしょう」
男「ダウンロードしてみます。………おおおぉぉぉ!?」ブハーッ
幼馴染「ちょ…!?あの女狐、何で男に胸の谷間画像送りますか!」
男「保存保存、保護保護!」
幼馴染「消去消去!」バッ
男「嫌です!ケータイ返せー!」
418:
男「はあ…ケータイの奪い合いで一日の疲れが、どっと増しました」
幼馴染「抵抗するのが悪いのです」
男「まあ…明日はせっかく旅館の朝食もあるので、朝マズメの釣行はしません。後はゆっくり寝ましょう」
幼馴染「えっ、寝るのですか」
男「…嘘です、もう一つ大事な営みが残っています」
幼馴染「ひどいです。…では疲れにトドメを刺しますか」
男「変な言い方です。そうそう…それと、言い忘れていた事もありました」
幼馴染「何でしょう」
男「…旅館の浴衣、色っぽいです」
幼馴染「てーい!てーい!」
男「痛いです。もはや様式化したやりとりになっています」
幼馴染「じゃあ………たくさん、愛して下さい」ポッ
男「て、てーい!てーい!」
幼馴染「ふふふ…様式を崩してみました」ニヤリ
421:
………

…翌朝、旅先の駅前
幼友(もう九時かぁ…まだかな。…お、メッセージ来た)
《幼馴染:もうすぐ着きます。どこですか?》
幼友(『駅前のマックだよ。朝の七時から入ってるから、もう限界。寂しくて死んじゃう、あと何分?』)
《幼馴染:男いわく、あと五分です》
幼友(『じゃあホットコーヒーのテイクアウトしとくからね』)
《幼馴染:アップルパイもぷりーず。それで昨夜のメッセージの事は許します》
幼友(あらあら、そんな簡単に許しちゃっていいのかな?…男さんは堅いけど、幼馴染ちゃんは隙だらけなんだから)
………
店員「お待たせしました。ホットコーヒー3つとホットアップルパイ2つでございます」
幼友(あ、あのサーフかな?…やっぱりそうだ)
幼友(…ちぇっ、仲良く揃って手を振っちゃって。妬けるわ…ったく)
幼友(よーし…いつもの自分に戻るぞー!)
幼友「…おっはよー!もーう、遅いってばー!」
422:
らしくないシーン、おしまい
…とまで区切るわけじゃないけど、釣り再開するよー
449:
………

…湖に移動中
幼馴染「そうですか、コンパの付き合いだったのですね」
幼友「ほんっと、時間の無駄だったわ」
幼馴染「まあまあ、次はいいオトコがいるかもしれません」
幼友「オトコよりサカナだー!ちきしょーめ!」
男「あと20分位で釣り場です、ちょっと峠道だから酔わないように遠くを見ておいて下さい」
幼友「はーい、遠い目をしてまーす」
幼馴染「見事に哀愁を漂わせています、役者ですね」
450:
男「そうそう、釣り始める前に今夜の事を決めておきましょう」
幼馴染「宿泊についてですか」
幼友「二人は昨日、温泉でしょ?いいなー」
男「車が大きいので車中泊も可能ですし、昨夜の温泉地にもう一泊する事もできます」
幼友「ふんふん」
男「またキャンプ場も近いので、またバンガローを借りる事もできると思います」
幼馴染「旅館の場合、費用は大丈夫なのでしょうか」
男「さすがに二泊目は割り勘にさせて下さい。それなら、まあ大丈夫です」
幼友「どうする?私は通い湯で温泉に浸かれたら、あとはどこでもいいよ?」
幼馴染「そうですね…」
(車中泊・旅館・バンガローのいずれか、>>452)
457:
男「さて、湖に帰ってきました」
幼友「私は初訪問ですけど」
幼馴染「ふふん、私は昨日もう釣っていますので」
幼友「どーせ小っちゃいんでしょ?」
幼馴染「失敬な、初めてにしては良型だと男に言われました」
男「それは間違い無いです。でも今回はせっかくですので、二人共に40cm超…間違い無いキロフィッシュを釣って頂こうと思っています」
幼馴染「キロフィッシュ…1kg超えという事ですか」
幼友「よーし、私が先にキロオーバー達成してやるんだから!」
男「では、二人には不公平が生じないように同じ系統のルアーを使って貰いましょう。それと幼馴染だけが使い慣れている、昨日のルアーは当面お預けとします」
幼友「じゃあ、勝負だね…幼馴染ちゃん」
幼馴染「上等です」ニヤリ
幼友「調子乗ってられるのも、今だけよ?」キラーン
男「ではまずは、ただ巻き系で…シャロークランクをお使い下さい。…スタート!」
幼馴染「てーい!」
幼友「とーう!」
458:
男「幼友ちゃん、少し巻くのが早いです。シャロークランクは水面直下、それこそ引き波がたつ位で泳がせるのが良いと思います」
幼友「この位かな…?」
男「はい、いい感じです。あとはロッドを横に向けて下さい、前に延べていると竿の弾性を生かしきれません」
幼馴染「こんな感じですか?…よく解んない」
男「ちょっと失礼…身体をこの向きで、竿を…こう」スッ…
幼友(…後ろから抱かれてるみたいだなぁ)ドキドキ
男「アタリにアワセられるように、後ろに竿を引き過ぎて構えてもいけません」グイッ
幼友(いけない、男さんはそんなつもりはない…他意なんか、無いんだから)
男「…で、顔だけキャスト方向を見てて下さい。この位置からだと、ナイス谷間です」
幼友「今、他意ありましたね」
幼馴染「………」ジトー
459:
幼馴染(…ずるい、なんで男は幼友ばっかり)
幼馴染「…男、私もフォームがよく解りません。教えて下さい…」
男「なかなかサマになってます、さすがですね」ウンウン
幼馴染「…そいつぁありがとよ」チッ
幼友「男さん!何か引いてます!」
男「お!すぐ行きます!」ダッ
幼馴染「………」イライラ
幼友「釣れたー!何これー!?」
男「あー、残念…ブルーギルです」
幼馴染「…ん?」クイクイッ
男「幼馴染…それ、アタッて…」
幼馴染「てーい!」ビシィッ!
男「…やはりさすがです。幼馴染はもう放っといても大丈夫ですね」パチパチ
幼馴染(しまったああぁぁ!)
460:
幼馴染「結局それで釣れたのはブルーギルでした」ピチピチ
男「バス釣りでのギルは税金のようなものです。必ずかかります」
幼友「よくこの小さな口で、三本針を喰ってきますよね」
男「時々トリプルフックが丸々口に入り上下の顎を縫い合わせた状態になっていて、外すのに手間どる事がある程です」
幼馴染「結構バカです」
男「結構どころじゃないかもしれません。酷い時は針だけとか、葉っぱを針につけておいても喰ってきます」
幼友「毒々しい色をしてるけど、食べられないんですか?」
男「小骨が非常に多いですが、味はバスより美味しいと思います」
幼馴染&幼友(食った事あるんだ…)
461:
幼馴染「てーい」
幼友「とーう」
男「…あ、もしもし。昨日、泊まらせて頂いた者ですが……はい、そうです。ええ、今夜……いえ、今度は三人です」
幼馴染「ててーい!釣れましたー!」
男「…ええ、できれば二部屋。女性が二人なので………え?…そうですか…」
幼友「バスなのー?見に行こうかー?」
幼馴染「バ…バスです!立派な青いバスです!でも来なくていいです!」
幼友「青かったらギルじゃん、ざまーみろー」フフン
男「うーん、ちょっと検討します」
幼馴染「男ー!針が外れませんー!」
男「…あ、いえいえ…ちょっと検討させて下さい。え…?聞こえませんか」
幼馴染「男ー!男ー!」
男「また電話します、すみません後ろが騒がしくて」
幼馴染「おーとーこー!」
462:
男「声が大きい!電話中です!」
幼馴染「………」ビクッ
男「貸して下さい……はい、外れました」
幼馴染「すみません…」グスッ
男「ギルを泳がせておけば、ちょっとくらい待てるはずです」
幼馴染「でも…」ジワッ
男「何か次のキャストを急ぐ理由でも?」
幼馴染「幼友より先に大きいバスを釣りたかったから…」
男「…実際のところ、どっちが先だろうと構わないと思いますが」
幼馴染「………」グスッ
男「すみません、言い過ぎました。…がんばって下さい」ヨシヨシ
幼馴染「私は男の彼女だから…」
男「ん?」
幼馴染「…幼友より釣りが上手くなければ、駄目でしょう?」
男「てーい!可愛い事を言いよってからに!」ナデナデナデナデ
469:
男「浅場ではギルのアタックが激しいようなので、ポイントを変更しました」
幼友「ここは?」
男「切り立った崖肌で、岸際からドン深になっています。釣り用に整備された浮き桟橋から狙っていきます」
幼馴染「おおぅ…若干揺れます」
男「落ちないように気をつけて下さい。さすがに寒いです」
幼友「あの岸壁際を狙うんですか?」
幼馴染「なんだかルアーを壊してしまいそうです」
男「そこでこれを使います…ラバァージグゥー」ターッタラーッタタラララー
幼馴染「旧ドラえもんが何か出しました」
幼友「でも効果音が違ったような」
男「しまった、これはキテレツ大百科でした」
幼馴染「オゲレツ大百科?」
幼友「御下劣斎様の子孫、オゲレツが発明品で…!みよちゃん、逃げてー!」
474:
男「岸壁に対面している場合は、水面ギリギリ上の岩に当てて…」シュッ
…コン、ポチャッ
幼友「うわ!本当に水面ギリギリ!」
男「…こうして出来るだけ静かに着水させて、暫くフォール…糸は張らずにたるみだけとって」スゥー
幼馴染「ほほう」
男「…不自然にフォールが止まったら」ピタッ
幼友「止まった…!」
男「アワセるっ!」ビシィッ
幼馴染&幼友「おおおぉぉぉ!」
男「…まあ大抵、岩の出っ張りに乗っただけなのですが」シーン
幼友「釣れてないんかい」
475:
男「それから岸壁に対して並行に攻める事が可能な場合は、こうして出来るだけ岸壁沿いにキャストして…」シュピッ
幼馴染「おぉ、スレスレです」
男「今度は糸を張ってフォールするも良しです。数秒…イメージ的には2m程度沈めて、柔らかくシャクります」スイッ
幼馴染「ふむふむ」
男「シャクり上げた分だけフォールさせ、またシャクる…こんなっ…風にっ…繰り返してっ…で、たまに小さく刻みます」チョンチョンチョン…
幼友「揺らす気満点な動作ですね」
男「リフト&フォールといいます。是非、幼友ちゃんに実践して頂きたいメソッドですね………おっ!」ビシッ!
幼馴染「また岩の出っ張りでしょうか」
幼友「でも、横に走ってるよ」
…ザバッ、ズバババッ!
男「うーん、まずまずのバスです。これはとっておいてあげたかったですね…」
幼友「もう、私が投げるところのバス釣らないで下さいよー」
幼馴染(…よかった)ホッ
476:
幼馴染「てーい」シュッ
…コン、ポチャッ
男「おお、なかなか上手いです」パチパチパチ
幼馴染「…スーッと落として」スーッ
男「そうそう」
幼馴染「…止まりません」
男「3m以上ほど落ちたと思ったら、回収していきます。せっかくなので、リフト&フォールを使って浮いたバスがいれば拾いましょう」
幼馴染「ていっ…ていっ…ていていていっ…ていっ」
男「……幼馴染も、すっかり釣り人になりましたね」シミジミ…
幼馴染「アナタ色に染められました…」ポッ
コーイツゥー、キャッキャウフフ…
幼友「とーう」シュッ
幼馴染「痛ぁっ!?」スコーン
幼友「失礼、ミスキャストしたわ」
幼馴染「う…後ろ向きに…ですか…?」ヒリヒリ
480:
幼友「とーう」シュピッ
…ポチョンッ
幼友「まずまずかな…数秒沈めて…」
男「はい、シャクります」
幼友「とーう…とーう…」スイッ…ポヨーン…スイッ…ポヨヨーン
男「いい揺れ…いや、いいリズムです。思わずバスもバストにむしゃぶりつきそうです」ハアハア
幼友(見てる見てる…こんなんどうかな?)ギュッ
男(なな…何故、ロッドのグリップを挟みますか!?)ブフォッ
幼友「とう、とう、とう…」フニフニフニ
男「じ…実に良いアクションです!ロッドになりたいです!」
ヤダーエッチー、イヤースミマセン…ツイ…
幼馴染「てーい」シュッ
男「痛いぃっ!ナイスフッキンッ!?」ビシッ!サクッ!
幼馴染「失礼、アワセの練習をしてしまいましたー」キャッ
男「…本っ当にバーブレスにしといて良かった…」
484:
幼友「…きたっ!とーうっ!」ビシッ
幼馴染「何ィッ!?」
男「おっけー!アワセも揺れもバッチリです!」
幼友「おお…ギルとは明らかに引きが違う…!」グググッ
男「竿を寝かして、できるだけ水面に出さないように…!」
幼友「あっ…やぁ…だめっ、出ちゃうのっ…!?」
男「言い方がエロいです!…エラ洗い中はラインを張り過ぎずに凌いで下さい!」
…ズバババッ!
幼友「うわ!大きい…!」
幼馴染「さっきの後だから、それもエロく聞こえます!」
男「幼馴染、タモを!」
幼馴染「明日、来てくれるかなー?」
男「それ、もう番組終わります」
幼馴染「空耳ー、………誰も『アーワー』を言ってくれませんでした」チッ
幼友「海ではそのネタにノッたけど、自分がファイト中だと腹たつわー」
485:
幼馴染「もうちょい…ああ、まだ暴れます」
幼友「腕が疲れたよー」
男「がんばって、胸を支えましょうか」
幼馴染「それに何の意味が」
男「寄ってきました。幼馴染、もう一度タモを」
幼馴染「すたんばーい」
幼友「とーう…!」
男「…よし、タモに入りました」
幼馴染「おお…重い、これは先にやられてしまいました」
男「フィッシュスケールに吊るします。…1,062g…おめでとう、文句無しのキロフィッシュですね」
幼友「やったあぁぁー!」
幼馴染「負けてられません、がんばりますっ」フンス
486:
…夕方、五時半頃
男「…さて、そろそろ旅館に向かいましょう」
幼友「楽しかったー、あれからは小っちゃいのばっかだったけど」
男「初めてのバス釣りにしては、上等過ぎる釣果です。バス持ちの写真、さっきメールで送っときました」
幼友「やったあ、友達に送りまくっちゃお!…先に車行ってますねー」
男「幼馴染、じゃあ竿を片付けて…」
幼馴染「てーい!」シュッ
男「…下さい…?」
幼馴染「てーいっ…!」シュピッ
男「………」
幼馴染「ててーいっ!」シュンッ
男(…幼馴染…)
幼馴染「てーいっ…」シュッ…
487:
男「…幼馴染、今日はもうおしまいです」
幼馴染「………てない」
男「…はい?」
幼馴染「まだっ…大きいバス、釣ってない…!」グスッ
男「…明日もあります。夕方になって寒くなりました、早く車に行きましょう」
幼馴染「幼友より釣りが下手なのは嫌です…」ジワッ
男「釣りなんて、釣れる時も釣れない時もあるものです」
幼馴染「男を…とられるから…」ポロッ
男「そんな事にはなりません。釣れない事を悔しく思うのは、一人前の釣り人への第一歩…」
幼馴染「………」グスッ
男「…俺は自分の嫁になる娘が、そんな釣り好きで…嬉しいです」
幼馴染「…本当ですか」
男「もし嘘だったら、俺は釣りをやめます」
幼馴染「…男が釣りをやめるわけ、ありません」ニコッ
男「だから、本当です」ナデナデ
496:
………

…旅館への移動中
幼友「それで、旅館の部屋はとれたんですか?」
男「それが…二部屋とろうと思ったのですが、本館の二人部屋と離れの四人部屋の一室ずつしか空いてないそうで…」
幼友「え?…じゃあ離れでいいんじゃないの?」
男「バンガローでは同室としましたが、あれはやはりキャンプのようなものかと」
幼馴染「まあ、確かに」
男「旅館…となると、女性二人との同室は気がひけます。二人で本館の部屋を使って下さい」
幼馴染「…男はどうするのでしょう」
男「俺は車中泊します。宿泊代は三分の一もたせてもらうので、ご心配なく」
幼友「………」チラッ
幼馴染「………」コクッ
497:
…旅館の受付
女将「いらっしゃいませ、ようこそお帰りなさい」
男「昨日はどうも」
女将「あの、お部屋は二人部屋おひとつと伺っておりますが…」
男「はい、俺は二人を送ってきただけなので」
女将「左様でございましたか、それでは本館のお部屋に…」
幼友「ちょっと待って」
幼馴染「まだ、離れの部屋は空いているでしょうか」
男「ちょ…!?」
女将「は、はあ…四人用の離れなら空いておりますが、そちらになさいますか?」
幼友「はい、それでお願いします」
男「あ、あの」
幼馴染「いいから」
女将「それではお部屋に案内させます、少々お待ち下さい」
498:
…離れ部屋
中居「お風呂は部屋に備えつけの露天風呂がございます。お食事もすぐにお持ち致します、ごゆっくりお寛ぎになってお待ち下さい」
幼友「どーもー」
幼馴染「お茶、淹れます」
幼友「おー!露天風呂、コンパクトだけど綺麗ー!」
幼馴染「…男、どうしましたか」
男「どうも、落ち着きません…」
幼友「何をいってるんですか、今さら。今夜は飲みますよー!」
幼馴染「昨日も飲んだくせに」ボソッ
幼友「うるさーい、あんなつまらん席の酒と一緒にするなー」
男「一人はお付き合いしている相手とはいえ、女性二人と同室で旅館って…なんだかすごい事です」
幼友「男さんがそんなにウブだとはねー。まーまー、私達の仲じゃないですか。今夜は寝かしませんぜ…?へっへっへっ」ハアハア
男「ああっ、いけません…私には心に決めた御方がっ…」
幼馴染「てーい」ベシッ
500:
男(食事の前に二人とも風呂に行ってしまいました…)
男(…どう考えても、この離れの庭先に出れば覗けてしまいますが…)
悪魔男『何強がってんだよ、片方は彼女だろ?覗いたって怒りゃしねえよ!』
天使男『いけません!それは幼友ちゃんに悪いだけでなく、幼馴染への裏切りです!』
悪魔男『昼間はさんざんあのパイオツカイデーを凝視したくせに、今更いい子ちゃんぶりやがって。馬鹿かっての!』
天使男『どうしても目がいくのと、故意に風呂を覗くのじゃ大違いです!』
悪魔男『ほら、目はいくんじゃねえの』
天使男『え!?…い、いや…それは言葉のあやで…!』
悪魔男『あーあ…露天風呂じゃ今、ささやかなてーいと豊かなとーうが並んでんだろーなー。両方楽しめる機会なんて、もう無いだろーなー?』
天使男『…両方……』ゴクッ
悪魔男『いやー、生きてる内に拝みたかったなー。見るだけなんだけどなー』
天使男(見るだけ…か…)
悪魔男『きっと心洗われるような眺めなんだろーなー』
天使男『こ、心を洗うためなら…仕方ない…かなっ?』テヘッ
男(……いざ、ゆかん!てーいととーうの真実を見届けに…!)
501:
男(…いい具合に、庭先には灯りがありません)
男(砂利は踏まずに…そーっと、そーっと…)ジリジリ
…アイカワラズスレンダーデイイヨネー
ワタシハモット、オオキクナッテホシイデス…
ナニヨー、タクサンモンデモラッテルクセニー!
ソ、ソンナコトアリマセン!
ジャア、ワタシガモンデアゲヨウカー?
ヤッ…ヤメテクダサイ!アンッ…
ホレホレ、ヨイデハナイカ…ヨイデハナイカ…!
ダ…ダメッ…!
男(聞こえる…花園で天使達が戯れている…!この、竹垣の向こうに桃源郷がっ…)ソーッ
男(ナイスな隙間のある竹垣です…鉄砲垣ですね)ププッ
男(では、ご拝見…!)チラッ
幼馴染「てーい」ブスッ
男「ぎゃあああぁぁぁ!目が…!目がぁーっ!」ゴロゴロゴロ
幼友「容赦無い目潰しだねー」
幼馴染「見ろ、男がゴミのようだ」
504:
…夕食、配膳後
幼友「おー、豪華ー!」
幼馴染「昨日は地鶏の小鍋がついていましたが、今日は牡丹鍋のようです」
男「目が痛いです」
幼友「ビール!ビール!」
男「今日はどうせたっぷり飲むと思って、氷桶に瓶ビールを何本も漬けて置いてもらいました、目が痛いです」シュポンッ
幼友「わ、先に注いで貰ってごめんなさい」トットットッ…
幼馴染「私も一杯だけ頂きます」
幼友「じゃあ今度は私が注ぎますよ、どーぞ」
男「ありがとうございます、目が痛いです」
幼馴染「自業自得です」
幼友「それじゃ、いつもの三人組で過ごす夜に…」
三人「…乾杯ー!」
505:
幼馴染「それにしても幼友、昨日のコンパはそんなに酷かったのですか」モグモグ
幼友「そりゃそーよ、よりによって両隣りが、チャラい・キモい・ゲスいの三拍子って感じ?」グビグビ
幼馴染「それは災難でしたね」
男「コンパとか、よくするのでしょうか」グビグビ
幼友「んー、そんなでも。たまたま人数合わせにね…」
幼馴染「それなら尚更めんどくさいですね」チビチビ
男「…幼馴染は、出席の経験は?」
幼馴染「ありません…というべきなのでしょうが、一度だけあります」
男「ほほう、初耳です」
幼友「………」キラーン
幼馴染「でも、つまらな」
幼友「あー、あの時は楽しかったよねー。ね…幼馴染ちゃん?」メクバセ
男「…そうなんですか」
幼友(幼馴染ちゃん、話合わせて)ヒソヒソ
幼馴染(…何を企んでいるのでしょう)
506:
幼友「そういえば、あの時に携帯番号交換したヒトとは、最近どーなの?」
幼馴染「え…?」
幼友「すごく馬が合ってたじゃない、何回か遊んだんじゃないのー?」ニヤニヤ
男「………」
幼友「けっこう格好良かったし、二人で二軒目に行ったんでしょ?」ニヤニヤ
幼馴染「は…はい、まあ…」
男「…それは聞いていません」ボソッ
幼友「そりゃ言う必要も無いもの、二人が付き合う前でしょ?」
男「うっ…」
幼友「あれあれー?男さんって、意外と束縛きつい感じですか?」ニヤニヤ
幼馴染「ちょ…幼友…」
男「べ、別にそんな事…気にしません」グビグビッ
幼友「私、携帯にその時の写真ありますよ?…たしか幼馴染ちゃんとその人が腕組んでる写真、いやキスしてたんだっけ…あれー?消しちゃったのかなー」
男「なっ…」ピクッ
507:
幼友「あれ?やっぱり気になっちゃいます?」ニヤニヤ
男「………」ゴクゴク
幼友「まあ、幼馴染ちゃんだって子供じゃないし…ねえ?」
幼馴染「…いや、あの」ハラハラ
男「…幼馴染っ」ゴトンッ…
幼友(…きたーっ)ピッ
男「…俺は、他の女に目をくれた事はありません」
幼馴染「え…え…あの…」アセアセ
幼友「おっぱいにはあるけどね」
男「あの海釣りに行くより前から、昔からずっと幼馴染だけを想ってきました…」
幼馴染「………!」
男「それなのに幼馴染は、そんな浮ついた事をしていたのですか」
幼馴染「し、してな…」
男「言い訳はいいです、付き合う前なのだから…本当は口を出す権利はありません」
幼馴染「男…違います…」
508:
男「お願いだから…もうしないで下さい。大事な幼馴染を誰かにとられるのは…我慢できません」
幼友「はい、頂きましたー」ピコッ
男&幼馴染「はい?」
幼友「HD画質で録画おっけーです。二人の結婚式で流そうね」
男「ちょ、何を」
幼友「もちろん全部ウッソーですよ。いつも男さん飄々としてるから、たまには余裕の無いとこ見てみたかっただけ」
男「え?…えっ?」
幼友「よかったねー、『大事な幼馴染』ちゃん?」
幼馴染「てーい!てーい!」ベシベシ
幼友「痛いってば…いいじゃん、嬉しかったでしょー?」
男「お、幼馴染…!その携帯を奪って、削除です!」アセアセ
幼馴染「……しません。幼友、後で送って下さい」エヘッ
幼友「よしきた」
男「やめて、まじで勘弁して。お願い、素に戻って頼むから」
幼馴染「昔から想われてたんですね…」キャッ
510:
男「うぃー、もっと酒だー」ベロベロ
幼馴染「飲み過ぎです」
男「飲まなきゃやってられません、あんな恥かかされて…穴があったらアナゴになりたいです」
幼友「まあまあ、そんな怒らなくてもいいじゃないですか。…ホッとしたでしょ?」トクトク…
男「…まあ」グビッ
幼馴染「それはそうと、幼友はどうなのでしょう」モグモグ
幼友「何が?」
幼馴染「好きな人とか、いないのでしょうか」
幼友「うっ」ブフォッ
男「おかわりー」
幼馴染「仕方がないです…どうぞ」トクトク
幼友「私の好きな人…かあ。そうだねえ…いるよ?」
幼馴染「ほほう」
幼友「…でも、教えない」
514:
幼馴染「ずるいです、言いなさい」
幼友「嫌でーす」
幼馴染「どんな人かだけでも」
幼友「………」フイッ
幼馴染「………?」
男「熱い鍋に冷酒、堪りません…」
幼友「……いい人…だよ」
男「牛スジの佃煮、ナイスおつまみです」ゴキュゴキュ
幼友「楽しくて」
男「おお、茶碗蒸しの中に松茸が潜んでいました…!」
幼友「優しくてね」
男「んー、いい香りです」
幼友「…いい人過ぎて、意地悪したくなっちゃうくらい…いい人なんだ」チラッ
幼馴染「……ん?」
男「ふわぁ…酔った、酔ったよー」ケラケラ
516:
なんか今回、釣りから脱線した恋バナが多くてごめんねー
518:
かまわんよ
これはこれで大いに面白いし可愛い
563:
…翌朝
男「おはよおっぱい」
幼馴染「おはようございます」
幼友「おはよー」
男「最終日、昼過ぎには帰路につく事を思えば、チャンスは短いです」
幼馴染「凄まじく気が焦ります」
幼友「余裕しゃくしゃくでーす」
男「…と言っても、もう寒いので朝マズメの恩恵は薄いです。せっかくなので旅館の朝食を頂いてから、すぐに出ましょう」
幼馴染「ご飯に焼き魚、生卵、お味噌汁と味付け海苔とお漬物」
幼友「正しい日本の朝食だね、家じゃ滅多としないけど」
男「酒を浴びた次の日は、こういった朝食が格別に美味いものです」
幼友「未来の嫁、メモった?」
幼馴染「面倒そうなので聞こえなかった事にします」
565:
男「さて、釣り場に戻ってきました」
幼馴染「早く竿をてーいさせて下さい、大きなバスを釣らなくてはなりません」
幼友「ふっふっふ、無駄だよ幼馴染くん。私のキロフィッシュを超えられるとでも?」
男「俺は今日は基本的に幼馴染への個人レッスンに集中します」
幼馴染「そう言うと男は自らの竿を露出し、私の手を半ば無理矢理にそこへと誘う。それがこの個人レッスンの名を借りた、愛の調教の開講となった。私が恥じらいに目を背けようと、男はそれを気にする事もなく寧ろ下卑た笑いさえ浮かべt」
幼友「幼馴染ちゃん、実はちっとも焦ってなくない?」
男「幼友ちゃんも質問やトラブルなどあったらご遠慮なく。使いたいルアーがあったら言って下さい」
幼友「若干の依怙贔屓に不満を感じつつ、今日もまずはラバジで大物を狙います」
幼馴染「目指せ10キロ超え!」
男「それ、世界記録クラスです」
567:
男「この辺りは水面下数十センチまで立ち上がった水草の密生地になっています。その中に潜むバスを狙いましょう」
幼馴染「なんだか難しそうです」
男「どんなルアーを使うか次第です。まずは昨日使って慣れているスピナベで攻めていきます」
幼馴染「なるほど、これなら水草にかかり難そうです」
男「ただしリーリング中は常に水草の抵抗を受けるので、ヒットした場合は強いアワセが必要となります」
幼馴染「それでラインが切れたりしないのでしょうか」
男「今日はスプールを予備で持ってきていたPEラインが巻かれたものに替えておきました。まず心配ありません」
幼馴染「ぴーーーライン?」
男「禁止用語じゃありません。伸ばす棒の間に『い』が入る『ぴーいー』ラインです」
幼馴染「どんなものなのでしょう」
男「複数の細い糸を編み込んだラインで、ナイロンやフロロカーボンのラインの数倍の強度があります」
幼馴染「昨日は何を使っていたのでしょうか」
男「フロロを使ってもらっていました。感度に優れた普通のラインです」
幼馴染「なぜ伏字なのでしょう」
男「いちいち禁止用語にしないで下さい。『□』じゃなくカタカナの『ロ』で、『ふろろ』です」
568:
幼馴染「てーい!」シュピッ
男「ナイスキャスト、次々休まず攻めていきましょう」
幼馴染「『ガンガンいこうぜ!』ですね」
男「ルアー釣りのスタイルはそれに尽きます」
幼友「『命を大事に』」ボソッ
男「…まあ、水際ですからそれも大切な事です」
幼馴染「今日の私には余裕がないので『ガンガンいこうぜ』のスタンスは変えません、てーい!」シュピッ
幼友「『じゅもんつかうな』」ボソッ
男「釣れる呪文があるなら知りたいです」
幼馴染「あくまでガンガンいきます、てーい!」シュピッ
幼友「『めいれいさせろ』」ボソッ
幼馴染「そこのマネマネ、うるさいです」
569:
幼友「ひっとおおぉぉぉー!」ビシィッ
幼馴染「何という事でしょう」
男「大きそうですか?」
幼友「けっこう重い…!でもあんまり暴れない…!?」
幼馴染「フィッシュオフ!フィッシュオフ!」
幼友「ひどっ…やっぱ『じゅもんつかうな』だわ。とーう!…うわー!?何これー!」
男「ああ…ナマズでしたか」
幼友「地震クルー!?」
幼馴染「おめでとうございます」
幼友「外道だと分かった途端にそれか」
570:
幼馴染「私もきました!…てーい!」ビシィッ
男「おお、忙しいです」
幼友「フィッシュオフぷりーず!」
幼馴染「でも、あんまり暴れません…てーい!うわ、蛇です!?」
男「カムルチーです。そう大きくないので抜き上げちゃって下さい」
幼友「かむるちー?なんか沖縄の魚みたいな名前ですね」
男「沖縄っぽいですが、朝鮮半島での呼び名です。いわゆる雷魚なので…」
幼馴染「てーい!…男、外して下さい」ヒョイッ
男「…噛まれないように気を」カプッ
幼友「雷、鳴るといいねー」
幼馴染「ねー」
578:
幼友「男さーん、違うルアー使いたいですー」
男「では幼友ちゃんも、トップウォーターにチャレンジしてみましょう」
幼馴染「ポッパーでしょうか」
男「いいえ、お酒好きな幼友ちゃんにピッタリなルアーがあります」
幼友「そんな言い方したら、私がすっごく酒豪みたいじゃないですか」
幼馴染「…みたい……?」
男「こちらです…ビッグバドォー」トテトテンッ、ホワンホワァーン…
幼馴染「今のは確かに旧ドラえもんですが、何か違うような」
男「しまった、今度はタイトルコールでした」
579:
幼友「だから旧ドラえもんが道具を出す時は『ピョン、キカカキーッ』ですってば」
幼馴染「いいえ、『ピャコ、キコキコキコーン』です」
男「自分が発端とはいえ、きのこ×たけのこ戦争くらいどうでもいいです」
幼馴染&幼友「……あぁ…?」ピキッ
男「え?」
幼友「…男さん、どっち派ですか……?」
幼馴染「男は私の彼氏なのですから、タケノコひと筋に決まっています」
男「いや…どうでも…」アセアセ
幼友「はあぁ…?あの甘いチョコと甘いクッキーの、しつこい組合せがいいっての?」
幼馴染「甘々の組合せがダメなら、何故おつまみではしょっぱいクラッカーとしょっぱいチーズを組み合わせるのでしょう」フッ…
幼友「違う食べ物の話にすり替えないでくれるかなあ…?」チッ
幼馴染「それで、男の意見はどうなのでしょうか」
男「俺はパイの実が好きです」
幼友「ぱいの実?」ムギュ
588:
男「で、このビッグバドですが」
幼友「なんだか冗談みたいなルアーですね…釣れるのかなー」
幼馴染「さっきトップウォーターと言っていた割には、リップがついています」
男「その通り、このリップで水を受けてクランクに近い動きをします」
幼友「じゃあ潜るの?」
男「いいえ、ビール缶を模したこのボディの高すぎる浮力によって、潜る事はできません」
幼馴染「潜りたいのに潜れない…なんか可哀想です」
男「では代わりに幼友ちゃんの谷間にダイブしましょうか」
幼馴染「てーい」ボフッ、ムニュッ
幼友「あっ…や…幼馴染ちゃんっ」
男「くっそ…間に合わんか」
幼馴染「ふふふ…精神的ダメージを負いつつも、防いだぞ…ぐふっ」ガクッ
589:
幼友「とーう」シュルルルル…タッパーン
幼馴染「ものすごい飛びようです」
男「そこからゆっくりと巻いていって下さい。テールのスプーンをカチャカチャ言わせるイメージです」
幼友「ゆーっくりねー」カチャコチョカチャコチョ
幼馴染「見た目も冗談なら、アクションも冗談みたいなルアーです」
男「これが意外とデカバスキラーなのです」
幼友「とーうとうとう…うわっ」カチャコチョ…バシャッ
幼馴染「今、何か食ってきました」
男「たぶん30cmにも満たない小バスでしょう。たまーに針掛かりしますが、まずバドは食えません」
幼友「てゆーか、食おうとするのがすごいわ」
男「過去に親鳥の後ろをついて泳ぐ水鳥のヒナが、バスのアタックを受けているのを見たことがあります」
幼馴染「食物連鎖の下克上です」
男「ちなみに俺は夜に川でシーバスを釣っていて、川鵜を釣った事があります」
幼友「川鵜って、黒い鳥ですよね」
男「アワセと同時に空に引っ張られたのは初めての経験でした」
590:
幼馴染「男、あとどの位の時間がありますか」
男「焦らないで、じっくり狙っていきましょう。気持ちが先走ってはここぞというチャンスを逃します」
幼馴染「そうはいっても焦ります」
幼友「ふははは、焦るだけ無駄というものだよ!幼馴染ちゃん!」
男「大丈夫、きっと釣れます」
幼馴染「…男を信じます、てーい!」シュピッ
幼友「…きたーっ!」ビシッ
幼馴染「!!」
男「おお、よく引いています。ドラグを出しながら、ゆっくりいきましょう」
幼馴染「き、きっとナマズです」
幼友「うわー、皿洗いしたー!」ドバドバッ
男「バスのようですね、ただ皿洗いではなくエラ洗いです」
幼馴染「……いいな…」
591:
幼馴染「…と思ってたら、こっちもヒットです!」ビシィッ
男「おお、ちょっとファイトしてて下さい」
幼馴染「大丈夫…残念ながら、あまり大きくなさそうです。でも、バスでありますように…」
幼友「男さん、タモー!」
男「おっけーい、ナイスサイズです。40cmまでは無さそうですが」
幼馴染「てーい!」バシャッ
幼友「ん?幼馴染ちゃんの、ナマズや雷魚じゃなさそうだけど…」
男「ああ、あれはハスです」
幼馴染「そのバスを狙ってる身としては、嫌がらせとしか思えないネーミングは何なのでしょう」
幼友「名前だけ惜しい!」
男「幼友ちゃんのバスは…重さは915gです。はい、リリースしてあげて下さい。幼馴染、すぐ行きます」
幼馴染「男、車にマジックは無いでしょうか」
男「…点々を書いても、バスにはなりません」
592:
男「ポイントを変わります。おそらく時間的に、これが最後の移動になります」
幼馴染「気合い入れます」
幼友「余裕しゃくしゃくでーす」
男「ここからは、幼馴染には何としてもキロサイズを釣ってもらうために、ちょっとセコイかもしれないソフトルアーを使って頂きます」
幼友「私は引き続きビッグバドでデカイの狙いまーす」
幼馴染「この際、プライドは捨てて何でもします」
男「別にルール違反というわけではありません、堂々といきましょう」
幼馴染「このポイントはどういう所なのでしょう」
男「湖に川が流れ込む、瀬と深場の入り組んだポイントです。ベイトとなる小魚も多く、一発を狙うには適しています」
幼友「目指せ、記録更新!いくぞー!」ポヨヨーン
男「見てませんね…幼馴染、おまじないです…」チュッ
幼馴染「…がんばります」ニコッ
593:
男「それでは、このソフトルアーを使ってもらいます」
幼馴染「オモリがついていませんが」
男「ノーシンカーで、ストレートタイプのワームの重心部分にマス針をチョン掛けしています。軽くて難しいですが、まずはキャストしてみて下さい」
幼馴染「てーい」
男「瀬になったところに落とし、自然に流します。ノーシンカーなので流れがあるところではほとんど沈みません」
幼馴染「ほほう」
男「流れが弛んで沈み込んでゆくのを待ち、竿を横に寝かしたまま小さくツンツンとアクションを入れます」
幼馴染「…バカじゃないのっ…この鈍感男っ」ボソッ
男「ツンツンという言葉を使った俺が悪いのか」
594:
男「瀬に流されてきたミミズのイメージです。小さくアクションすると『く』の字にフニフニと動きます」
幼馴染「ミミズです、美味しいです、食べるといいです」ツンツンツン…
男「そうそう、あまり引き過ぎると浮き上がってしまうので、あくまで小さく…時には間をとりながら」
幼馴染「むう、だめでした」
男「ルアーが軽いので、スプールの糸に弛みができていないかは時々チェックして下さい」
幼馴染「てーい」シュピッ
男「さすが、渓流でスプーンを投げた経験があるだけにナイススナップ。軽いルアーでも上手く投げています」ウンウン
幼馴染「もっと褒めてもいいですよ」
男「幼馴染、格好いい!」
幼馴染「可愛いの方が嬉しいです」
男「幼馴染、可愛い!」
幼馴染「もうひと声!」
男「幼馴染、ロリ可愛い!」
幼馴染「喜んで良いのでしょうか」
599:
幼友(なーんか、イチャイチャやってるねえ…妬けるわ、全く)
幼友(…だからって略奪愛しようってんじゃないけど)
幼友(でも、意地悪はしたくなっても仕方ないよね…?)ニヤリ
幼友「男さーん、助けて下さーい」
男「どうしましたかー」
幼友「ルアーの針が服に刺さっちゃって…」
男「ふう…どこでしょう、針のカエシは潰しているのですぐ取れるはずですが」
幼友「それが、トリプルフックの内二本が刺さっちゃってて…ほら、ここ」ポヨーン
男「ちょ…胸ですかっ」ブフォッ
幼友「針先が怖くて上手くとれないです、お願いできますか?」
男「幼馴染に頼んで…」アセアセ
幼友「女の子に頼むんなら自分でやっても一緒じゃないですかー」
男「わ、解りました…とります」ソーッ
幼友「あれー、ブラの生地まで引っかかってるみたい…ちょっと緩めますね」プチッ、タユン…
男「はぅあ」ズキューン
600:
幼友「あれー?どうしたんです、変な声出して…もしかしてヤラシイ事、考えちゃいました…?」
男「めめめ滅相もない!」ドキドキ
幼友「だったらちょっとくらい当たっても構いませんから、服が破れないようにお願いします」グイッ…ムニュッ
男「はわわわわわ…」
幼友「…とれました?」フニフニ
男「もも…もうちょい……とれたっ!とれました!」
幼友「ふう、ありがとーでした」
男「どういたしまして…」
幼友「…男さん?」
男「は、はい」
幼友「……えっち」クスッ
男「はぅ」
幼馴染「お帰りなさい、幼友はどうかしたのですか?」
男「イイエ、ナンデモナカッタデス」
幼馴染「…怪しい」
601:
幼馴染「てーい!」ビシィッ
男「おお、引きはどうですか?」
幼馴染「いまいち」ダバダバダバ
男「それでもちゃんとバスです、30cmくらいでしょうか」
幼馴染「もっと大きいのを…」チャプン
男「幼馴染…気負い過ぎないようにしましょう」
幼馴染「でも」
幼友「きたーっ!大きいかもー!?」バシャアッ
男「…悪いですが」
幼馴染「いいです、行ってあげて下さい」
男「幼友ちゃん、すぐ行くので大事にファイトして下さい!」
幼友「うわー!ドラグ止まらないー!」
幼馴染「………」シュピッ
602:
ダイジニ ダイジニー!
オモイデスー!ウデガー!
モウチョット…モウチョット…
幼馴染「………」シュピッ
ナガレノ キツイホウニ ハシラセナイヨウニ…!
ソンナコト イワレテモー!
ウマイウマイ…サカナ ツカレテルヨー
幼馴染「………」ツンツンツン
モウチョイ、ヨセテ…!
エ、ムネヲデスカ?
ソッチハ ヨセナクテモ ジュウブンデス!
幼馴染「………」シュッ
オッケー!キャッチ デス!
ヤッター!キロクコウシン…!?
チョット マッテ…ハカッテ ミマス
幼馴染「………」ツンツンツン
オオ、オミゴト デス!1200gオーバー!
ヤッタ…!
スゴイデス!40cmハ オオキク コエテマス!
幼馴染「………」ピシュッ
611:
幼馴染「………」シュッ
男「いい感じに使えています」
幼馴染「………」ツンツンツン
男「でも…幼馴染、そろそろ」
幼馴染「………」シュピッ
男「今回は幼友ちゃんにツキがあっただけです」
幼馴染「………」ツンツンツン
男「…もしくは、今日の俺の判断が悪かったかもしれません」
幼馴染「………」ピシュッ
男「昨日も言ったように、幼友ちゃんに釣り負けたからといって俺が変な気を起こすような事は…」
幼馴染「………」ツンツンツン
男「幼馴染…」
幼馴染「…次を、最後の一投にします」
男「…見守っています」
612:
幼馴染「………」スーッ
男「…幼馴染」
幼馴染「……?」ピタッ
男「一緒に、言いましょう」
幼馴染「……男…」
男「振りかぶって、手首のスナップを意識して」
幼馴染「はい」
男「キャスト先をじっと睨んで」
幼馴染「はい」
男「その先にバスがいるとイメージして…!」
幼馴染「いきます…!」
男&幼馴染「てーーーい!!!」シュパァッ
.
615:
男「流して…待って…沈み始めてから、アクションを入れて」
幼馴染「ていていていっ」ツンツンツンッ
男「たまに止めて…」
幼馴染「………」ピタッ
男「ワンアクションだけ」
幼馴染「ていっ」ツンッ
男「……ん?」
幼馴染「…根掛かった……最後がこれですか…」シュン…
男「…いや」
幼馴染「?」
男「アワセろ!幼馴染っ!」
幼馴染「て、てーーいっ!!」ビシィッ
617:
幼馴染「う…わ…!?ドラグが…!」ジィーーーーッ
男「やっぱり…!この食い方はデカイです!」
幼馴染「すごく重い…!けど、あまり暴れません…ナマズ…!?」グググッ
男「いや、頭を振っています…」
幼馴染「エラ洗いしません…!」
男「本当に大きなサイズのバスはエラ洗いが少ないものです」
幼馴染「…水面に出ます!」ドバァッ
男「大きい…!」
幼友「どうしたの…!?うわ、デカいっ!」
男「大事に…時間をかけて!」
幼馴染「これを釣ったら…男が褒めてくれる…!」
幼友「幼馴染ちゃん…」
618:
幼馴染「あ…だめ…!暴れます…!」ダババッ
男「…がんば」
幼友「頑張れ!幼馴染ちゃん!男さんの彼女なら、釣れるよっ!絶対、釣れるからっ!!」
幼馴染「幼友…」
幼友「タモ、すたんばーい!!」シャキーーーン
男「いい感じです、魚が横になりかけています!」
幼友「あとちょっとー!いけーっ!」
幼馴染「……てーーーいっ!!」
.
626:
…帰り道
幼友「男さん、運転に疲れたら交代しますからね?」
男「ありがとうございます、今のところ大丈夫」
幼馴染「………」
幼友「幼馴染ちゃん、元気出しなよ…」
男「…最後のファイト、本当に惜しかったです」
幼馴染「悔しいです…まさかキャッチ寸前でまた暴れだすとは」
幼友「もう完全にとったと思ったんだけどなー」
男「たぶん50cmオーバー、重さは2000g超えだったと思います」
幼馴染「ううう…」グスッ
幼友「手がすっぽり入りそうな口してたもんねー」
627:
男「…でも、釣らなくて良かったのかもしれません」
幼馴染「…え」
男「初めてのバス釣りで、釣って良いサイズじゃありません」
幼友「そんな意地悪言っちゃだめですよう」
男「意地悪で言うんじゃないです。ランカークラスは長年狙って、憧れて…その末に手にする事に価値があるものです」
幼馴染「ランカークラス…」
男「最初の釣行からそれを果たしてしまったら、その後の目標を見失ってしまいます」
幼友「うーん、解らなくもない」
男「かくいう俺も、初めてのランカーサイズはバス釣り三年目にしてようやく手にしました。それはもう嬉しかったです」
幼馴染「…男でも、三年かかったのですか」
男「最初はなかなか40cmを超えない、次は45cmに壁があり、その後の5cmの壁はとてつもなく高い…48cmは出るのに、どうしても50cmを超えませんでした」
628:
男「他の釣りでも同じです。シーバスの80cmオーバー、更には90cm、100cm…俺もまだメーターは超えられていません」
幼友「メーターって、すごい話ですよね」
男「マダイの80cm、チヌの60cm、アイナメの60cm、ヘラブナの尺七、岸からの一円玉メバル、渓流の尺半、イシダイなどもサンバソウではなくクチジロやクチグロサイズ…憧れを挙げればキリがありません」
幼馴染「…先は長いのですね」
男「おそらく一生かかっても、まだ見ぬ大物はたくさん残す事になるでしょう。…幸せな事です」
幼友「いい趣味ですよねー、釣り」
男「バス釣りの後で言うのもなんですが、誰かが殺した生き物を食べる事しか無い昨今、釣りは自らの手で相手の命と駆け引きをする数少ない機会だと思います」
幼馴染「魚は美味しいです」
629:
男「…そんな趣味を気の置けない仲間と共に楽しめる、俺は幸せ者の極みです」
幼友(…仲間…か)
幼馴染「次はいつ釣行に臨みますか」
男「こんな遠出はなかなかできませんが、近場の釣りならいつでも。…最近は二人の掛け声が聞こえない釣り場を寂しく感じるようになってきました」
幼馴染「てーい」
幼友「とーう」
男「また、すぐに誘います。都合があえば来て下さい」
幼友「…男さんが寂しがったらいけないもんね」
幼馴染「仕方ないから付き合います」
(おしまい)
630:
乙てーい!
631:
しつこいようですが、この話は管理釣り場でのバス釣りを題材に書いたつもりです。
遊漁が認められた管理釣り場以外ではブラックバスなど外来魚の放流やリリースは違法なので絶対にしないで下さい。
633:
乙ー
634:
乙! これはブラックバス編が終わりってことでこの話が完結編ではないよな!?
635:
乙でした。楽しかったです。
また書いて下さい。
636:
あざっす
このスレはこれからもゆったり続けます
短い魚種別のオムニバス形式とか、三人の日常とかをまったりと
…いつか、そんなやり方で2スレ目とかいったら怒られるだろうか
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