勇者「魔王を倒しに行こうぜ」back

勇者「魔王を倒しに行こうぜ」


続き・詳細・画像をみる

1:
戦士「なにお前、本当に勇者になれたのか!」
勇者「ああ、まさか勇者試験合格するとは俺でも驚いたよ」
勇者「これで勇者特権も思いのままだし、魔王も倒せば……」ゴクリ
勇者「って訳でお前も行こうぜ」
戦士「いいのか?! 悪いなー俺も勇者特権の甘い汁を啜らせて貰うぜ」
勇者「どうせ本気で魔王を倒す事を考えている奴なんていないだろうし」
勇者「のんびりやっていこうぜ!」
元スレ
ニュース報(VIP)@2
勇者「魔王を倒しに行こうぜ」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1388390258/
http://rank.i2i.jp/"> src="http://rc7.i2i.jp/bin/img/i2i_pr2.gif" alt="アクセスランキング" border="0" />
http://rank.i2i.jp/" target="_blank">アクセスランキング

 
3:
戦士「だけど俺もお前も旅なんてしたことないだろ? 大丈夫か?」
勇者「まあ適当に装備揃えていけば大丈夫だろう」
戦士「それもそうか」
勇者「とっとと準備して出発しようか」
勇戦(飢餓)「」
「……」
「……」ヒョイヒョイ
「……」ノッシノッシ
5:
「そっちの成果は……おい、何だそれは」
「倒れてた」
「そうじゃない。人間じゃないか。そんなものを拾って来るな馬鹿!」
「しっかりとした鎧、助けたら少し位あたし達も助けてくれそう」
「行き倒れてたんだろ?! 金なんかないだろうし、無意味な期待をしてるんじゃない!」
「ったく、こっちだって分けるような蓄えないんだぞ」
7:
「あら、劣等種のお二人は帰りがお早いですわね」
「よう落ちこぼれ」
「おかえり、出戻り」
「うるさいですわね! なによ貴女達のそれは! 遂に人食いに身を落とすの?!」
「そんなわけないだろう。ていうかお前がうるさいよ」
戦士「うぅう」
戦士「……こ、ここ、は」
9:
ゴーレム娘「気付いた?」ノソリ
戦士「! ば、化け物、ゆ、勇者!」バンバン
勇者「うぐ……生きて? うおお!」
リザードマン娘「だからあたしは嫌だったんだよ」
ハーピー娘「あら……てっきり貴女が連れてきたのかと思いましたわ」
リザードマン娘「一人でこれを運べるのはこいつだけだろ」
ゴーレム娘「はい」ノ
11:
勇者「……」パチクリ
戦士「ゆ、勇者! 俺ら! 俺ら食われるー!」
勇者「……」ドッ
戦士「ぐぇっごほ、げっほげっほ!」
リザ娘「おお、手刀」
勇者「……」ザッ
ゴレ娘「……土下座?」
勇者「助けて頂いたのに無礼な行いをした事をお詫びする」
リザ娘「へえ……人間にしてはまともだな」
12:
……
戦士「えーとなんだ。俺らは攫われたんじゃなくて介抱されていたのか」サスサス
勇者「そうみたいだ……それにしてもここは? 君達は一体? 魔物ではないんだよな」
リザ娘「ここはあたしらが暮らしている場所、とっくの昔に廃墟になった町だ」
ゴレ娘「あたし達、人間と魔物のハーフ」
戦士「噂は聞いた事があるが……まさか実在しているとは」
勇者「君は……ゴーレムか?」
ゴレ娘「見ての通り」サッ
勇者「左腕と右頬が……触ってみてもいいか?」
ゴレ娘「いいけど?」
勇者「本当に石なのか……何ていうか凄いな」スリスリ
14:
戦士「礫石作りのゴーレムって珍しくね?」
勇者「普通はレンガ作りだもんな」
ゴレ娘「ゴツゴツしてて嫌い」ムー
戦士「女の子には酷な話だよなぁ……そっちの娘はリザードマン?」
リザ娘「ま、あたしも見ての通りだ」
リザ娘「両足とも膝からと右腕に腹部と背中、左目とその周りがこんな有様さ」スッ
リザ娘「お陰で力には自信があるがゴレ娘には負けるからなぁ。ま、脚力なら自信があるぞ」
15:
勇者「少し髪で顔を隠してるのはそれでか……ちょっと掻き揚げてくれないか?」
リザ娘「見ても面白い事はないと思うぞ?」サラッ
戦士「……見事に蛇眼だな」
ゴレ娘「リザ娘ちゃん可愛い」
リザ娘「いや、鱗肌とかあたしはうんざりしているんだけど」
戦士「すげー本当に鱗だ」
リザ娘「凄いけどこんな顔じゃなぁ……」
16:
ハピ娘(ふふん、ここで麗しい私の出番ね)ファサ
リザ娘「それにしてもお前ら、あたしらに抵抗を感じないのか?」
勇者「驚いたけど普通に女性だし」
戦士「落ち着いていて見れば美人だしなぁ」
ハピ娘「ちょっと! 私を無視しないでいただけません?!」
勇者「え? 君もハーフなのか?」
戦士「てっきり羽をつけたコスプレかと思ったぜ」
ハピ娘「そんなわけ無いでしょ!」
18:
勇者「にしても一体なんの魔物のハーフだろう……」
戦士「羽……鳥、ロック鳥やヘルコンドルとか」
ハピ娘「私はハーピーとのハーフよ。そこらの人の姿でもないハーフとは一線を画しているわ」フフン
勇者「ハーピー? 腕が翼じゃないのか?」
戦士「背中から生えてるよな。足も普通に人間だし……遺伝の仕方おかしくねえか?」
ハピ娘「何とでも言いなさい。この天使のような姿、そこの二人と違って、美しくない訳が無いじゃない」フフン
戦士「そこの二人がここで暮らす理由は分かるが、あんたはなんでここに?」
リザ娘「出戻り」
ゴレ娘「同じ落ちこぼれ」
19:
リザ娘「こいつは元々あたしらと一緒に転々としていたんだよ」
ゴレ娘「魔物からは人間、人間からは魔物と蔑まれてた」
リザ娘「ある時、貴族に私の下に来ないか、とこいつが誘われたわけだ」
ハピ娘「ね、ねえ……その話はお止めになさらないかしら?」
勇者「聞きたい」
戦士「是非とも聞きたいな」
ハピ娘「うぐぐ」
20:
勇者「にしても一体何処で貴族に見られたんだ?」
リザ娘「あー街道から外れたところだ。どっか住めそうな所が無いかと旅をしていたからな」
ゴレ娘「貴族、別の街道からショートカットしてきた」
リザ娘「で、話を戻すとだ。その数日後、凄い勢いで飛んであたしらのところに飛んできたんだ」
リザ娘「そして開口一番声高々に食われる!」
戦士「まーそりゃあそうだよな」
ハピ娘「違うのよ……違うのよ……」ブツブツ
勇者「?」
21:
リザ娘「貴族に手羽先として食われそうになったそうだ」
戦士「何言っているか分かんね」
勇者「ただのカニバリズムじゃないか……」
リザ娘「しかも回復魔法が効くもんだから食べ放題とまで言われたとさ」
勇者「維持費を考えると鶏肉買って来いよと思ってしまうが……」
ゴレ娘「美しい女性の手羽先だなんて最高じゃないか、って言われたって」
ハピ娘「あれは恐ろしい体験でしたわ……鬼畜外道の成せる業ですわ」ワナワナ
戦士「さんざん色々言っていたが……あんたも人として見られていなかったという事か」
22:
リザ娘「そういえば、お前達の名前は聞いたが何で行き倒れていたんだ?」
ゴレ娘「ご飯、改め川魚スープできたよ」コトコト
ハピ娘「全く私が取って来た魚とリザ娘さんの木の実だけですか」
ゴレ娘「十分贅沢。はい」スッ
勇者「かたじけない」
戦士「俺らは魔王を倒す為に旅を始めたんだが……甘く見すぎていた」
勇者「食料が尽きて行くも退くもできなくなったんだ」
戦士「最後に食ったのは焼いたイナゴだったな」
リザ娘「あたしらでもそこまではないな」
23:
ハピ娘「それにしても貴方達が魔王を? 人間達は何をやっているのやら」
ゴレ娘「連合軍でGO」
リザ娘「多すぎると目立ちすぎて叩きやすくなるんじゃないか?」
勇者「一度は試みたが返り討ちにあったらしい」
戦士「だもんだから少数精鋭の暗殺って事で、試験に合格したものを勇者とし、様々な特権を与えているんだ」
リザ娘「え? 何か功績があって勇者を名乗っているんじゃないのか?」
勇者「試験に合格した、ぐらいしかないな」
ハピ娘「人の事をやれ魔物だの何だの蔑む割に、低能もいいところですわ」
ゴレ娘「あたし達でも魔物倒せる」
24:
勇者「……」
戦士「そりゃあ基本的な能力値が違うだろうし……そういえばハピ娘は強いのか?」
ハピ娘「失礼ね! 私の手に掛かればそこらの魔物、いくら徒党を組もうとも薙ぎ払って差し上げますわ!」
リザ娘「肉体的には脆いが魔法が滅茶苦茶強いんだよ。典型的な魔法使いタイプって奴かな」
リザ娘「あたしは見ての通り武具の扱いに慣れているし、ゴレ娘も……まあ見ての通りインファイターだ」
ゴレ娘「むん」
勇者「でもそれは左腕だけの話だよな」
リザ娘「いや……この娘、左腕以外は細い癖して凄い力があるから」
ゴレ娘「左で勇者、右で戦士担いで運んだよ」
戦士「……マジか」
26:
ハピ娘「そういった訳ですので、私達は魔物の襲撃なんて屁でもないですわ」
戦士「俺らよかよっぽど戦力なんだろうな」
リザ娘「まあ、こればっかりは血統による優位性だからな」
ゴレ娘「悲観はしてないよ」
ハピ娘「でもたまにはベッドで寝てみたいですわね」ハァ
勇者「……なあ、もし今の生活を改善できるチャンスがあったら、危険でも乗る気はあったりするか?」
リザ娘「危険の度合い次第だな」
ハピ娘「命の心配なく生きているのに、命を掛けるのもあれですわね」
27:
戦士「あー……」
勇者「もし、そちらにその気があるなら、俺らと共に魔王を倒さないか?」
リザ娘「え?」
ゴレ娘「えー?」
ハピ娘「本気で言っているのかしら?」
勇者「割かし真面目なつもりだ」
リザ娘「可笑しな奴だ。あたし達と共にいれば迫害されるのはお前達だぞ」
ゴレ娘「それに町にも入れない」
勇者「多少の不便さはあるが、勇者の特権と言うのは実に嫌らしいものなんだ」ニヤリ
戦士「あー……そうだな、そうなんだよなぁ」ニヤ
28:
勇者「今の話で関わる事として。勇者である者は国から様々な支援を受けられる。が、それは魔物の討伐数に比例する」
リザ娘「ふむ?」
勇者「三人が加わって、より敵を多く倒せるようになるとそれだけ給金や支給物資の量や質が上がる」
勇者「次に、勇者は如何なる言動を取ろうとも、多少の法なら触れてもお咎め無し、というか結構な事してるのに罰せられた者はまだいない」
勇者「更には仮に君達を魔物という扱いにしたとしても、魔物を連れる事を罰する法は無い」
ゴレ娘「町の中入れる?」
戦士「平たく言えばそれでどうのこうのは起きない、いや起こせないんだよ。勇者への誹謗中傷暴言その他諸々は、重罪扱いだからな」
ハピ娘「聞く限りですと、恐ろしく頭の悪い特権に聞こえますわね」
勇者「悪いのさ。殆どの勇者は悪さばかりしている。あんまりな法に触れないようにな」
29:
リザ娘「しかもそれを裁けないなんて腐っているな」
戦士「腐っているさ。大概の勇者はな」
勇者「唯一どうにかできるのは国のお偉いさんクラスだが、そんな事をすればその勇者を輩出した国と気まずくなるからしない」
勇者「まあ……唯一とは言ったが、勇者同士の争いであれば罪に問われる事もないけどな」
戦士「とまあそんな訳だから、あんたら三人を仲間に加えるのはなんら問題ないんだなぁこれが」
ハピ娘「話は分かりましたがどうにも解せませんね。貴方方に何のメリットが?」
勇者「君達が凄い戦力である事。君達の野営経験は心強い事」
勇者「後は下心かな」
戦士「馬鹿! そこは隠せよ!」
30:
ハピ娘「下、心?」キョトン
ゴレ娘「いやーん」
リザ娘「本気で言っているのか……? お前達、頭がおかしいんじゃないか?」
勇者「す、凄い言われ様だ」
戦士「しかも焦点はそこか」
リザ娘「ハピ娘はまだ分かる。悔しいがまだ分かる。だがあたし達は岩と爬虫類だぞ」
リザ娘「見ろ。あたしの右手を! この鱗だらけの肌に鋭い爪と四本の指の手だぞ!」
リザ娘「足だってそうだ! これが人間の女か! お前達の言う女か!」
戦士「そりゃあちげーな」
勇者「流石にな」
ハピ娘「あ、あっさり?!」
31:
リザ娘「なんなんだよお前ら……訳が分からない」
勇者「いや一般的ではないけど問題無いというか」
戦士「余裕でいける。綺麗と可愛いし」
ハピ娘「ま、私が綺麗なのは当然ですけども」ファサ
リザ娘「……参考までに誰かどうか聞いていいか?」
勇者「前者がハピ娘さん」
戦士「えー? リザ娘もだろ?」
リザ娘「そ、そうか?」カァ
ゴレ娘「可愛い……」カァ
戦士「なんだこの爬虫類可愛いぞ」
32:
ハピ娘「けれども、いざ旅立つとなると少々名残惜しいですわね」
リザ娘「確かに……住める所を探した中で安住と呼べるのはここが初めてだったからな」
勇者「聞いて良いか分からないが、その……親は?」
ゴレ娘「お父さんがゴーレム」
リザ娘「母がリザードマン」
ハピ娘「お母様がハーピーですわ」
戦士「いや俺らは存命の事を……え、ちょっと待て」
勇者「人間とは業が深いものだ……」
33:
リザ娘「二人とは別の場所で暮らしていたんだが……まあ迫害が酷くて魔女狩りの体になってな」
ハピ娘「ゴレ娘さんと私はお母様と二人で、リザ娘さんはご両親共に暮らしていました」
戦士「夫にしてある意味本物の勇者がいるな」
リザ娘「あー……まあ、な。話を戻すが、人間達の攻撃が激しくなってな」
ゴレ娘「魔物は無差別に襲ってくる」
ハピ娘「ある時、私達三家族が偶然鉢合わせ致しまして……結果、人間達に包囲される事となってしまったのです」
勇者「あー……そうなるよな」
ハピ娘「お二人の親御さんが包囲の突破口を作ると共に、その場に残り足止め」
リザ娘「あたし達三人とハピ娘の母親がその場を離脱、が多数の弓兵の前にハピ娘の母親が盾となってあたし達を逃がしてくれたんだ」
36:
勇者「そうか……」
リザ娘「ま、五年も前の事だ。気にするな」
ゴレ娘「もう吹っ切れた」
戦士「じゃあ……やっぱり三人共両親は」
ハピ娘「私の人間の父親とゴレ娘さんのゴーレムの父親はどうかは分かりませんがね」
リザ娘「ま、そんな訳であたし達三人協力して生きてきた中で、唯一家と呼べる場所がここだった訳だ」
37:
ゴレ娘「……」
リザ娘「ゴレ娘?」
ハピ娘「忘れ物でもなさいましたか?」
ゴレ娘「行ってきます」ペコ
リザ娘「……ああ、そうだな。そうだよな。行ってきます」
ハピ娘「行ってきますわ」
40:
……
勇者「俺達の最終的な目的は魔王討伐だが、他にも色々とやる事……いや、やれる事があるんだ」
リザ娘「やれる事?」
勇者「廃墟に集まる魔物の掃討。恐ろしく強い魔物を指名手配とする討伐」
勇者「危険区域への物資運搬、あるいはその区域の先への運搬……まあ魔物を倒す力あっての依頼だ」
*魔物の群れが現れた!*
ハピ娘「私達だけで十分な内容です事」
ゴレ娘「とーりゃー」ブォン
勇者「ただ、大きな町で三人を正式にPTとして登録しないといけないんだ」
*ゴレ娘を魔物の群れを薙ぎ払った! 魔物の群れに勝利した!*
42:
戦士「こっからだと勇者ギルドがあるのは二つ先の町になるな」
リザ娘「勇者ギルド? そこが勇者達に関する情報を管理しているのか?」
勇者「町の勇者ギルドはPTの登録や、重罪人の報告、その他諸々の情報提供を行っているんだ」
勇者「都市の勇者ギルドでは更に勇者の登録、試験を行っている」
ハピ娘「勇者さんは魔法はいかほどで?」
勇者「簡単な魔法なら使えるよ。最も剣で戦った方がいから、魔法なんて使わないが」
ハピ娘「……となると、私達の中でも勇者になれそうですわね」
戦士「まあ魔物っていう認識が高いから、流石に勇者に推薦はこいつがゴリ押せる発言力無いと難しいだろうけどな」
43:
リザ娘「……待て、それだとそもそもにしてどうやって勇者ギルドまであたし達を連れて行くんだ?」
勇者「勇者が連れているって時点で誰も口出しできないさ」
戦士「触らぬ神になんとやらだ」
*魔物が現れた!*
ハピ娘「それならいいですけども……大きい町? は! わ、私がもしもまた」
リザ娘「……」スラン
勇者「別に貴族に売ったりしないって。ちゃんと守るし、勇者のPTになったら貴族だっておいそれと手を出せないからさ」
*リザ娘は魔物を三枚におろした! 魔物に勝利した!*
戦士「ごめん、そろそろ俺達も戦わせて。というか鍛えさせて」
44:
*勇者と戦士は魔物の群れを斬り殺した! 魔物の群れに勝利した!*
ハピ娘「全く……あんまり遅いものですから欠伸が出てしまいましたわ」ファ
リザ娘「実戦経験はそれなりにあるのか?」
勇者「実際に魔物と戦った事は数えるほどだな。俺も戦士も対人剣術はそれなりの腕ってぐらいだし」
戦士「それなりって……俺とお前道場でもそこそこ上位をキープしてんのに」
リザ娘「へえ……飽くまで対人剣術磨いてて、これだけ戦えるなら結構なもんじゃないか」
ゴレ娘「勇者達格好良い」
戦士「おお、好感度が上がったっ」
ゴレ娘「リザ娘ちゃんも格好良い」
勇者(武具の有無……?)
45:

戦士「この視線を独占する快感」ザワ ザワ
勇者「間違っても良い視線じゃないけどな」
ゴレ娘「……」ソワソワ
ハピ娘「……」ビクビク
リザ娘「二人とも……彼らの話を聞いていたのか?」
ハピ娘「だからと言って安心できるリザ娘さんがおかしいですわ」
勇者「部屋はどうする?」
リザ娘「流石にまだ正式なメンバーじゃないから隔離されると怖いな」
戦士「五人部屋ってあるもんかな……」
46:
ハピ娘「あって良かったですわ」ホッ
リザ娘「流石にここであたし達三人だけにされたら心細いからな」
戦士「あんだけ強いのに?」
ゴレ娘「人殺しにはなりたくない」
勇者「……あー、うん、とりあえず俺らも付いているし寛いで欲しい」
ハピ娘「そうですわ! ここまで来たのですから十分に寛がなくては! 数年ぶりのまともなベッドぉ!」ボフン
ゴレ娘「ふかふか〜!」ボッフンギッシギシ
戦士「……」
勇者「本人には聞けないが彼女の腕って……」
リザ娘「かなり重たいぞ」
47:
リザ娘「……」ウズウズ
ハピ娘「どうしたのです? ベッドですよベッド。まともな壊れていないベッドですよ?」ポフポフ
リザ娘「あ、あたしはお前達みたく子供じゃないからな」ポス
リザ娘「……」ポフポフ
ゴレ娘「暖か〜」ヌクヌク
戦士「可愛い過ぎる」フルフル
勇者「俺は今までどんな生活だったかを考えさせられて、同情を禁じえないというのにお前と言う奴は……」
48:
勇者「夕食の前に買い物に行かないか?」
戦士「ハピ娘は回復魔法使えるのか?」
ハピ娘「当然ですわ」
リザ娘「だからあたし達も回復薬無しでやってこれたんだ」
勇者「だいぶ助かるなぁ」
ハピ娘「なんだかんだで勇者さん方もそれなりですし、火力が厚いと私は暇で暇で仕方が無いですわ」
ゴレ娘「前衛四人ー」
戦士「とすると、装備や食料品につぎ込む事が出来る訳か……」
店主(とっとと帰って欲しいなー……魔物のハーフなんぞ連れてるなんて、勇者ってキチガイ多すぎだろ)
49:
ゴレ娘「美味しい!」キラキラ
ハピ娘「やはり調味料が揃っていると言うだけで幸せなことですわね……」パク
リザ娘「これが毎日食べられるのか……羨ましいものだな」モグモグ
勇者「……」パク
戦士「……」パク
ハピ娘「あら……貴方方には粗食だとでも?」
勇者「いや……」プルプル
戦士「一介の宿屋の食事がこんな豪華だなんて……」ズゥゥン
リザ娘「人間側も生活水準の格差が酷いのか……」
50:
リザ娘「入浴はどうする?」
勇者「そちらに任せるよ。先でも後でもどうぞ」
ハピ娘「川で水浴びという訳でもありませんし、私達もどちらでもいいですわ」
戦士「いや……男の後は嫌とかさ」
リザ娘「冬場に川で水浴びする事に比べてたら大した事はないだろう?」
ゴレ娘「お湯ーお湯ー」ワーイ
勇者「俺、泣いてしまいそう」
戦士「せめてこの旅の間、幸せにさせてやろうぜ……」
52:
リザ娘「数年ぶりのお湯は身に沁みるな」サッパリ
戦士「っぶう!」
勇者「ちょ、もうちょっとちゃんと着てくれ! 目のやり場に困る!」
リザ娘「お前達、本当にあたし達の事を……」
リザ娘「そーらそーぅら」ペロン
戦士「止めて! 嬉しいけど男として恥を晒す事になる!」
勇者「服を捲り上げるな! 貞節をもってくれぇ!」
ハピ娘「今までの反動かリザ娘さんが壊れましたわ」
ゴレ娘「勇者戦士ー」ペロン
ハピ娘「ゴレ娘さんさえ?!」
53:
戦士「俺らも男だから……頼むからそういう挑発は止めてくれ」ガッシ
勇者「しかもこっちが暴発したら、確実に返り討ちにあって轟沈するし」ガッシ
リザ娘「ほんの冗談じゃないか」
勇者「目が本気だったように見えたんだが!」
戦士「あれで冗談な訳がない」
リザ娘「……そ、そりゃあ、あたしだって嬉しいし」ボソボソ
ハピ娘「……」ニヤニヤ
リザ娘「そこの手羽先喧嘩売ってるのか?」
ハピ娘「別に何でもありませんわよぉ?」ニヤニヤ
54:
戦士(思ったんだが俺達って既に好感度高くね?)ヒソヒソ
勇者(友達、仲間……そんなレベルだろうけどなぁ)ヒソ
リザ娘「何を二人で話しているんだ?」
戦士「いやーははは。これからどうするかって話さ」
ハピ娘「それこそお二人だけで話されていても困りますわ」
リザ娘「全くだな」
戦士「は、はは……」
勇者「まー正直に話すと何気に三人から信頼されてるんじゃないか、って話をしていたんだ」
戦士(こいつ飄々とこういう言い方するから油断ならねえんだよなぁ)
55:
ハピ娘「そういう事でしたか」
ゴレ娘「ハピ娘ちゃん出たよー。何の話?」ホカホカ
リザ娘「あたし達が勇者達を信頼しているって話だ」
ゴレ娘「ん〜……逆」
勇者「え?」
ゴレ娘「勇者達があたし達を信頼してくれた。だからあたし達も信頼する」
戦士「……」ポカーン
リザ娘「一応言っておくが、言動はあれだがしっかりと考えている子だからな」
56:
ハピ娘「後は殿方だけですわ」シットリ
戦士「……」ゴクリ
勇者「なまじっかスタイルが良い分、存在自体が危険だ」
ハピ娘「き、危険!?」
リザ娘「あたし達にはそこまで魅力が無いという事か……」
ゴレ娘「む〜」
勇者「魅力と言っても一概には言えないんだよ」
戦士「リザ娘達はリザ娘達の良さがあるんだよなぁ……」ジー
リザ娘「戦士……目が本気だから向こうを向いていてくれないか?」
57:
戦士「いやー良い湯だった。色んな意味で」
勇者「全くだな」ガサガサ
ハピ娘「でも貴方方は普段から利用されているのでしょう」
戦士「そういう言い方は止めて欲しいんだがなぁ……」
リザ娘「流石に意地が悪いな」
ゴレ娘「ハピ娘ちゃんお上品なのに卑しい」
戦士「えーショックだわー」
ハピ娘「そ、そんな事はないですわよ?」
58:
戦士「てか勇者は何を見ているんだ?」
勇者「地図だ。折角だしどっか温泉とか寄ろうかと思ってさ」
戦士「もう旅行気分だな……お前」
ハピ娘「温泉!」
リザ娘「それは楽しみだが……流石にあたし達は入れないんじゃないのか?」
ゴレ娘「この体……」
戦士「どうにかなっちゃうのが勇者特権なんだよなぁ」
ハピ娘「それを享受する側とは言え、本当に腐っていますわね」
59:
リザ娘「勇者は風呂が好きなのか?」
勇者「普通かなー?」
ゴレ娘「なんで温泉?」
勇者「できれば三人にも楽しんでもらいたいな、と思ってさ」
リザ娘「気を使わせてしまってすまないな……」
勇者「いや、君らが喜んでくれるなら俺らも嬉しいよ」
ゴレ娘「勇者格好良い」
戦士(不味い! 勇者ばかり株が上がっていく予感)ハッ
60:
ゴレ娘「……こうして他の人と一緒に眠るの久しぶり」
ハピ娘「しかもそれが殿方というのも、私達には思いもしない事でしたわ」
戦士「正直俺、緊張しているんだけど皆普通すぎじゃないか?」
リザ娘「いくら男二人がかりとは言え、こっちは三人。一対一ならゴレ娘とあたしなら負ける要素もないし」ゴロリ
勇者「根本的な感覚が違うんだよなー」
ゴレ娘「そうかな?」
リザ娘「緊張……そうだな、明日が楽しみという意味では緊張しているな」
戦士「ワクワク的な?」
ハピ娘「そうですわね……こんな人間だらけの所で過ごす事が一時でもあるとは思いもしませんでしたわ」
61:
勇者「さて、そろそろ出発するか」
ゴレ娘「朝ごはんも美味しかった」ウットリ
リザ娘「次の町まではどれくらいかかりそうなんだ?」
勇者「えーとだな、現在地がここで次の町がここだ」ガサ
戦士「確か丸三日くらいか?」
リザ娘「どれどれ」
勇者「そこからギルドがある町まで五日だから……大目に見て九」
ハピ娘「この距離なら七日で着きそうですわね」
ゴレ娘「補給しなくてもいけそう」
戦士「……え?」
63:
*勇者と戦士の筋力と耐久が上がった*
勇戦「……」
リザ娘「でかいな……こんな所、近寄りもしなかったからな」
ハピ娘「よくもまあ人間はこんな雑踏で暮らせます事」
リザ娘「二人ともどうした?」
勇者「君達がいかにハードな生活だったか思い知った……」
ゴレ娘「あたしも疲れたよ?」ノビー
戦士「そうは見えない」
64:
勇者「先にギルドに行こうか。正式なメンバーになっていれば、はぐれても問題ないし」
リザ娘「どういう事だ?」
戦士「この魔石の首飾りを見てくれ」
ハピ娘「青い魔石ですわね」
勇者「これを勇者並びにその仲間専用の装備として支給されるんだが、戦士のは戦士以外が持つと魔石が赤くなる」
勇者「本来の持ち主であるかどうかが判別できるようにしてあるんだ」
戦士「で、これをギルドに持って行って照会すると、どの勇者の仲間かを確認できるんだ」
ゴレ娘「あたし達が青い魔石を持っていると、孤立してても手が出せない?」
戦士「勇者の仲間の証だからな」
65:
「え、えっと……」
勇者「彼女達は優秀な仲間だ。正式にメンバーとして迎え入れたい」
勇者「確か……勇者の了解されあれば、如何なる者も正式登録が行える、はずだったよな?」ギロ
「あ、は、はい……ではこちらの書類に必要事項を記入して下さい」
「こちらが書けましたらあちらの部屋へ向かって下さい。あちらで個々の魔力を魔石に込めて登録を行います」
リザ娘「へー綺麗なもんだな」
ハピ娘「しかしこれが男女兼用ですか」
ゴレ娘「首飾りー」キラッ
66:
宿屋
リザ娘「そういえば勇者は何処へ?」
戦士「大きい町だから依頼が無いかを見に行ったよ」
ハピ娘「討伐、でしたか?」
勇者「ただいまー」
ゴレ娘「おかえりー」
戦士「どうだったよ?」
勇者「極秘の依頼があった」
戦士「なにそれ怖い」
67:
勇者「国のお偉いさんと勇者のみが使って良い施設がある」
戦士「ああ、あれか」
リザ娘「施設……それが襲撃されているとかか?」
勇者「似たようなものかな。それは様々な地域を繋ぐ……テレポートができるような所なんだ」
勇者「一度使うと半月ほどは使えなくなり、大気中に含まれる魔力を吸収し、蓄えきると再び使えるようになる」
戦士「緊急時の移動にも使われる為、公にはされていないんだよな」
勇者「そこに今魔物が集まっているらしいが、近くに他の勇者がいないからな」
ハピ娘「なるほど……」
69:
勇者「真面目に依頼をこなす勇者もあまり多くないが、これはかなり報酬がいいからな」
勇者「他に知れたらこぞって討伐に当たるだろう。やるなら明日だ」
ゴレ娘「腕試しー腕試しー」ブンブン
リザ娘「敵勢力はどの程度とされているんだ?」
勇者「野良魔物って事だが、状況が状況だから中堅クラスが指揮している可能性が高いって」
勇者「野良も数が多いから危険度はそこそこにされているな」
ハピ娘「雑魚如きいくら群れようと私の魔法で一蹴して差し上げますわ」
勇者「だろうと思って依頼を受けておいた」
72:
勇者「あれが例の施設、祠だ」
戦士「旧時代のものだっけか?」
リザ娘「祠……ああ、そういえば聞いた事があるな」
ハピ娘「世界各地を繋ぐ祠とは聞いた事がありましたが、こんな所にある物だとは……」
ゴレ娘「敵いっぱい」
戦士「こっからでもよぉく見えるな」
勇者「距離2分の1マイル、敵構成……獣型大多数、犬鳥を確認」
勇者「ゴブリンの編隊確認、数10以上。オークソルジャー3、オークナイト1確認」
リザ娘「え?」
戦士「すげー大編成だな」
73:
ハピ娘「ゆ、勇者さん?」
戦士「こいつ斥候の訓練も受けてたんだよ」
勇者「やっぱり数が多いなぁ」
リザ娘「どう立ち向かう?」
勇者「ハピ娘の魔法による砲撃後、前衛部隊で突入しよう」
戦士「普通だな」
勇者「いや……戦法らしい戦法は今回が初めてな気が……」
リザ娘「あたしが先陣で撃破」
ゴレ娘「あたしがどーん」ムン
戦士「だなぁ……」
75:
勇者「何時も通り陣形! 行くぞ!」
陣形
 勇 リ
戦  ゴ
  ハ
戦士「本当に何時も通りだ……」
リザ娘「スタンダードに戦えるからな」
ハピ娘「跪き命乞いをしなさい!」キィィィン
77:
ドンッ ドドンッ
勇者「ハピ娘の迫撃砲開始、全員突撃!」スラァン
ハピ娘「落石魔法の次は爆炎魔法ですわ!」キィィン
戦士「おっしゃあ! 切り込むぜ!」バッ
リザ娘「……」スラァン
ゴレ娘「ゴーゴー」ブンブン
78:
*魔物の群れを殲滅した!*
戦士「で、これが祠か」
勇者「魔力が感じられない……こいつらまさか、祠を使ってここに来たのか?」
ハピ娘「だとすれば、ここから繋がる所は……」
リザ娘「……どうする? 復興に対する救援は国がすべき事ではないか?」
ゴレ娘「報酬は?」
勇者「リーダーとなる勇者の魔石に記録されているから、誰かにでっち上げられて横取りされる事はないよ」
勇者「……うーん、救援準備にも時間がかかるし、国ならこの先が何処に繋がっているかも把握しているだろうし」
勇者「復旧次第、俺らが先に行って様子を調べてみるか」
勇者「もしかしたら、まだ魔物がいて近隣の町が占拠されているかもしれないし」
80:
勇者「……」キィィン
ハピ娘「……」キィィィン
戦士「誰か来た時の為の書置きは済んだぞ。出発は明日か?」
勇者「今から向かって野営場所が無かったら困るしな。魔力補填もそろそろ止めておくか」
ハピ娘「いきなり起動するものかしら?」
勇者「復旧直後は一時的に向こうと繋がるらしい。その場に居合わせると強制転移だ」
リザ娘「後どのくらいで魔力の充填は完了しそうなんだ?」
ハピ娘「そうですわねぇ……2,3時間といったところ」ィィィィン
ゴレ娘「あ、魔」ヒュン
82:
ゴレ娘「力凄いあふれてる」ヒュン
勇者「……」ダラダラ
ハピ娘「……」ダラダラ
戦士「状況報告」
勇ハ「転移された」
リザ娘「と、というか……ここは何処だ……なんだこの寒さは」ガタガタ
勇者「勇者も利用を可としてはいたが、ある程度の魔物の撃破数や討伐数が無いと信頼が低く」ブルル
勇者「何処がどう繋がっているかは教えてもらえないんだ」
戦士「……やばい凍える」ガタガタ
ゴレ娘「どうするの?」
勇者「ここにいても凍える。外に出て町を探そう」
84:
ビュオオォォォ
戦士「なんだこの猛吹雪……」
勇者「くそ……どこら辺だ」
ハピ娘「こ、これって……まさか」
リザ娘「数時間の内に吹雪を凌げる場所が確保できなければ死ぬかもな」
ゴレ娘「祠に篭城?」
リザ娘「……この状況で祠にいても明日まで生きていられる保証は無いだろうな」
86:
勇者「駄目だ……現在地が分からない」
戦士「ど、どうするんだ……本当に祠で凌ぐのか?」
ゴレ娘「よいしょよいしょ」バッサバッサ
勇者「どんなにくても救助は二週間後……この吹雪、すぐに止むとは思えない」
ハピ娘「いくら私でもあの祠を一晩中暖かくするには戦闘での消耗が激しすぎますわよ!」
リザ娘「しかし闇雲に町を探すのも……」
戦士「空を飛んで明かりを探したりとか」
ハピ娘「こんな吹雪の中飛ぶ鳥さえもいませんわよ! 地面に叩きつけられて終わりですわ!」
88:
ゴレ娘「よいしょよいしょ」モソモソ
勇者「なんで雪なんか掘っているんだ……」
リザ娘「その手があったか!」
戦士「え? なに? かまくらでも作るのか?」
ゴレ娘「土見えた」ピト
ハピ娘「ゴーレム種は皆そうなのか……ゴレ娘さんは大地の声、というよりも地脈を通して情報を得る事ができるそうです」
戦士「おお、マジか!」
ゴレ娘「……あっちに人が住んでるっぽい」ピッ
リザ娘「い、急ごう」ガタガタガタ
勇者「なんとかもってくれればいいんだが……」
89:
戦士「お……見えてきたぞ」ザッザッ
勇者「灯り一つついていない?」ザッザッ
リザ娘「まさか廃墟……」
ハピ娘「いえ……あれは窓に板を打ち付けているようですわ」
ゴレ娘「吹雪なのに?」
勇者「宿屋あるといいんだが……」
戦士「あの大き目のじゃね?」
勇者「戦士でかした!」
90:
『……どちら様でしょう?』
勇者「この雪で困っている。五人いるのだが宿を頼めないだろうか?」
『……すみませんがその人数となると。この先に大きなお屋敷がありますので、そちらを訪ねられてはいかがでしょうか?』
勇者「分かりました。ありがとうございます」
『もしそちらも駄目でしたら向かいの家とこちらで、分散してお泊めしますのでまたお立ち寄り下さい』
勇者「? 感謝します」
戦士「勇者である事、何で言わないんだ?」
勇者「流石に状況がな……それにしても今のどういう意味だろう」
ハピ娘「な、何でもいいから早く」ガタガタガタ
リザ娘「一層冷えて……このままでは町中で死ぬぞ」
ゴレ娘「……」ガクガクガタガタ
91:
『どちら様でしょうか?』
勇者「この雪で困っている。宿屋らしき所に訪ねた所、こちらに訪ねてくれと言われたんだ」
勇者「五人ほどいるのだが泊めては貰えないだろうか?」
『主に確認を取ります。今扉を開けますので』
戦士「た、助かった?」ブルル
勇者「もしも開いたら素早く入るんだ」
ハピ娘「わわ分かっているわよ」ガタガタガタ
リザ娘「ゴレ娘、あと少しだから」ガタガタ
ゴレ娘「ふぁぁ……」ガタガタガタガタ
93:
バタン
勇者「ふう……」
メイドA「こちらでしばらく……」
ゴレ娘「ぁぁぅぅ」ガタガタ
リザ娘「……ふぅ」ブルブル
ハピ娘「ぅぅ……」ガタガタ
勇者「申し送れました。自分を勇者をしている者で、この者達は仲間です」
メイドB「……Aは早くご主人様の所へ」
メイドA「は、はい」パタタタ
勇者(駄目かなー……)ブルル
94:
メイドA「どうぞこちらへ」ガチャ
勇者「随分と大きな扉ですね……」
メイド達「!」ザワ
勇者(大きい部屋にメイドがたくさん……それにやたらと荷物があるしこれは)
戦士「悪いが彼女達を暖炉の傍に行かせてやってくれないか?」
メイドA「そこ、もう少し詰めて」
主「君達が勇者一向かね?」
勇者「はい、この度は泊めさせて頂く許可を下さり、真にありがとうございます」
勇者「しかしこれは一体……」
主「とにかく君達もこの毛布に包まりなさい。客人に熱い飲み物を」
97:
ゴレ娘「ぅぅぅ沁みるぅ」ガタガタ
リザ娘「今まで幾度と無く火の有り難味を感じたが、今日ほど有り難く感じた事は無いな」ブルル
ハピ娘「涙が出る暖かさですわ」
メイド達「」ヒソヒソ
主「君達も何と言う時期に来てしまったのやら」フゥ
勇者「色々と事故がありまして……」
主「何処かの国王直下の魔術士にでも転移魔法を頼んだのかね?」
戦士「そういう訳じゃないが……似た様なもんだ」
98:
主「それでは知らないのも無理はないな。この地域は『氷龍の渡り』というのがあってな」
主「年に一度、必ず猛吹雪が続くのだよ。実際に龍がいる訳ではないが一年毎に強弱があって」
主「それがこの地に帰ってくる、この地を出て行くというのもあってそう言われているのだよ」
勇者「まさか今年は戻ってくる……」
主「その通りだ」
戦士「大災害だな……」
主「ここらの家は何処もこういった大きな部屋を持ち、寝る時以外は集団生活をするのだよ」
勇者「そういえば火らしきものは……あれは魔石?」
主「煙突は使えないからね。どうしても火炎系の魔法を溜め込んだ魔石を代用する他無いのさ」
100:
勇者「あの……俺達本当に居ていいのですか?」
主「ここは大きいからね。緊急用に食糧の備蓄も多くしているから気にする事は無い」
主「何よりここで放り出すという事は死ねと言っているものだからね」
戦士「……本当に助かります。色んな意味で」
主「はっはっ、こちらとしても退屈な一週間、他所の国の話を聞いて潰せると思えば安いものだ」
ゴレ娘「勇者ー」モソモソ ギュゥ
勇者「おっと、もう大丈夫か?」
ゴレ娘「うん、暖かい?」ヌクヌク
勇者「ああ、暖かいよ。ありがとう」ナデナデ
102:
主「噂には聞いた事があるが……魔物とのハーフかね」
勇者「……ええ」
メイドC「おかわり要ります?」
リザ娘「す、すまない……頂きたい」
メイドD「羽……大丈夫ですか?」
ハピ娘「……凍るかと思いましたわ」
戦士「すげー打ち解けているな……」
主「可愛らしいお嬢さん達だ。流石に一目見た時は皆警戒していたようだが、少し交流を持てばそれも払拭されて当然だろう」
戦士(雪国の人は大人だな)
勇者(全くだ)
104:
メイドA「トイレはここを出て右に行くとあります。今晩からもっと冷え込みますので、外に出る時は二人以上でお願いします」
ゴレ娘「二人?」
メイドB「いざという時に困りますので。またその時に暖炉近くのこの魔石いくつか持って行ってください」
リザ娘「魔石……? ああこれ、あっつ!!」
メイドC「炎を蓄えた魔石ですので注意して下さい。持ち運びはこちらに入れて下さいね」
メイドA「入浴は三日後の昼間のみです。……どう致しましょうか?」
主「これだけいればいいだろう。男女別々で入るとしよう」
戦士(この人、このメイド達と入っていたとか羨ましすぎる! は! 俺一人だったらもしか)
勇者「……」ドゴ
107:
メイドA「こちらの方が人数多いですし、ご主人様方が先に入り下さい」
主「お嬢さん方もそれで構わないか?」
リザ娘「問題ない」
ゴレ娘「大丈夫ー」
ハピ娘「迷惑をお掛けしてますし、お気遣い無く」
主「一日の大半はここで過ごし、就寝は四人部屋で眠るのだがどう分けたものか」
メイドB「部屋は二部屋余っておりますし、そこでお分けすれば」
戦士「やー……それは厚かましすぎて申し訳が無いような」
勇者「流石にな」
108:
主「ふむ……では私は彼らと共にすれば、そちらのお嬢さん方の部屋だけで済むかね?」
メイドB「そうですね」
主「お嬢さん方は一つの部屋に三人で、君達は私と相部屋になるのだがよろしいか?」
勇者「それでお願いします」
戦士「にしても、これから更に冷え込むって信じられないな」
主「魔石がなかったら越せない吹雪だからね。下手をしなくても凍死する家が出たりもするものだ」
戦士「恐ろしい地域だ」
主「全くだがこうして上手く折り合いつけて生活できてしまうからな」
主「他の地域ではこんな生活はないだろう」
勇者「それはもう……どうりでここの床はこんなにふかふかな訳だ」
ゴレ娘「寝やすいー」ゴロリ
109:
主「勇者と言えば、王様との謁見があるそうだが、どういう話をしたのだい?」
戦士「そういやそういう話だな。気になるな、話せよ」
勇者「なんか魔王の事とか色々と聞いた気がするな……」
『魔王とはここ数十年で現れたものではない……遥か数百年前から存在していた』
『秘密裏に各国の国王と共に協議を行い、不可侵条約を取り付けていたのだ。が、何故今になってこの様な侵攻を……』
『魔王は我々人間に比べると非常に長い寿命だと言う。未だに世代交代をしていないそうだ』
『とは言え、そろそろ老人と言う年頃のはずだが……よもや呆けによるものではないと信じたい』
勇者「あー……」
戦士「歯切れ悪すぎじゃね?」
110:
主「よほど難しい事を言われたと見る」ハッハッ
勇者「何処から話せば良いか……」ウーン
『この話は外部には漏らさぬ事。無用な不安を煽る事となるのでな』
『因みに漏らした場合、重い刑罰がある事を忘れぬようにな』
勇者「と思ったら喋ったら投獄とかありえる」
主「それはいかんなぁ……」
戦士「どんな重要機密なんだ」
122:
戦士「俺達の町は……」
主「それは中々……」
勇者(にしてもやたらと本棚が多いな……暇つぶし用か)キョロキョロ
メイドA「そちらの本はご自由にお読み下さい。土地柄の物も多いのできっと珍しいでしょう」
勇者「風土記とかですか?」
メイドB「あるにはありますが……読まれますか?」
勇者「是非とも」
メイドA「若い方がこちらを手に取るの……初めて見ました」
勇者「よく言われます」
124:
戦士「お前伝承とか大好きだもんな」
勇者「大好物だ」
ハピ娘「そういった教養……私達にはとんとないですから羨ましいですわ」
リザ娘「時々、文字の練習とかしないといけないぐらいだしな」
ゴレ娘「使わないー」
勇者「時間はあるんだ。文字の読み書きをみっちり練習できるし、教えも出来るからな」
リザ娘「それは有り難いが果たして私達に使う機会があるのだろうか?」
126:
主「さて、そろそろ就寝とするか、二人はこちらへ」
メイドB「お三方はこちらとなります」
ハピ娘「お二人ともお休みなさい」
リザ娘「お休み、また明日な」
ゴレ娘「ふあぁぁ……おやすみ〜……」
勇者「ああ、お休み」
戦士「おう、お休み」
127:
ハピ娘「う〜ん、温いですわ幸せですわ」モゾモゾ
ゴレ娘「スー……スー……」
リザ娘「これから一週間近くここで生活か……少し気が滅入るな」
ハピ娘「体が動かせなくてかしら?」
主「……」
勇者「……」
戦士「……」
勇戦(気が滅入る)
128:
二日目
リザ娘「……」ウズウズ
ゴレ娘「リザ娘ちゃんトレーニングしたそー」
ハピ娘「止めて下さらない? ご迷惑おかけしているのに悪臭を振りまくおつもりで?」
リザ娘「そんな事は分っている!」ウズウズ
戦士「じゃー気を紛らわせる為にも何かするか」スッ
ハピ娘「なんですの? その本は?」
戦士「簡単な学術書ってところか」
132:
リザ娘「数学、か……」ペラ
ハピ娘「見るのも久しいですわ……」
戦士「学問苦手だが流石の俺でも三人になら教えられるぜ」フフン
ゴレ娘「おおー」
ゴレ娘「次こっちの本ー」
リザ娘「ここら辺はまだ覚えているな」ペララ
ハピ娘「この辺りから怪しいですわね……解説を、あら?」
戦士「」ビクンビクン
勇者「……これ結構レベル高い本なんだよな」
135:
メイドA「つまりここでの式は……」
リザ娘「ふむ」
ハピ娘「思い出してきましたわ」
ゴレ娘「ふむふむ。ふむ?」
戦士「なんだよあいつら……めっちゃ勉強できるんじゃねえか」グス
勇者「俺でも分からないなーあそこら辺。混じって教わってくるかな」
戦士「一人にしないで!」ガッシ
136:
三日目
リザ娘「ご教授願います」
メイドA「はい、畏まりました♪」
勇者「とりあえず三人はこの一週間、勉強会で乗り切りそうだな」ドササ
戦士「で、お前は?」
勇者「まあ、見ての通りかな」ドサドサ
主「その本……全て読むつもりかい?」
勇者「旅で使えそうな知恵を掻い摘んで、ですかね」
138:
メイドA「〜〜〜」
リゴハ「……」ガリガリガリ
勇者「……」ペラ ペラ ペラ ペラ
主「……」スス
戦士「……」
戦士「な、なんだこの疎外感……」
主「? 君も紅茶を飲むかい?」
141:
戦士「お前ら楽しそうだな……」
勇者「そりゃあ楽しいよ」
リザ娘「勉学もたまにはいいな」
ゴレ娘「お勉強ー」
ハピ娘「本当に久々の事ですからね」
戦士「こいつら……勉強苦手なの俺だけかー」
主「ふむ……ならば私とチェスでも」
戦士「結局頭使う系?!」
メイドA「ご主人様……」フゥ
160:
メイドC「はい、どうぞ」
ゴレ娘「ご飯♪ ご飯♪」
リザ娘「それにしても……一週間缶詰になるというのに、なんでこんなにしっかりとした料理なんだ?」
主「普段であればこの一週間、楽しみと言えばこれだからね」
主「何も無い部屋でしたらそれこそ魚すらそうは腐らない始末。備蓄さえあれば食材には困らないのだよ」
ハピ娘「このお屋敷で遭難したら凍死するという訳ですね……」
勇者「裏を返すと恐ろしい話だよな」
163:
戦士「ああ……生きてるって心地がする」
勇者「これを機にお前も勉強に励めばいいのに」
戦士「それができたら戦士なんてやってねーよ!」
リザ娘「あたしは戦士肌だがこうして学問に励んでいるぞ」
ゴレ娘「勉強楽しー」
ハピ娘「それにしても……ゴレ娘さんより学問に疎い方がいるとは思ってもいませんでしたわ」
勇者「え? 二人とそんなにレベル違わなくないか?」
ゴレ娘「今日の勉強さっぱり分らなかった」
メイドA「え?! 熱心に聞いているからてっきり……」
164:
ゴォォォォ
勇者「今日は一段と吹雪いていますね」
主「と言っても、私達にはもう普通になってしまったからねぇ。これくらいよくある方だ」
戦士「思ったんだけどよ、これって家が押し潰されたりしないのか?」
勇者「そういえばそうだな……これだけの吹雪が一週間。とても持ちこたえられるものとは思えない……」
主「そういえば説明していなかったか。朝方、非常に静かだとは思わないかね?」
戦士「そうだっけか?」
勇者「あれは偶然ではなくてそういう気象なのですか?」
主「うむ。そしてこの期間の雪だけは何故か大量の魔力が蓄積されているのだ。これも伝承めかせた要因なのだろうな」
165:
主「して、朝方になると吹雪が止み雪が溶け、そして魔力が濃縮された雪だけが残る。これが一週間続くのだ」
戦士「ほー?」
勇者「……。あ? え? まさか雪水晶って!」
主「その通りだ。ここで採れる貴重な資源なのだよ」
戦士「雪水晶? なんだそりゃ」
勇者「お前には氷結石って言えば分るか」
戦士「それ……価値だけならミスリル銀を越えるっていうあれか!」
戦士「斬れば凍てつき、振るえば吹雪く! 天然の魔法剣の材料じゃねーか!」
167:
勇者「とすると、この吹雪が止んだら……」
主「その通り、その採取が始まる。しかし日に長く晒されると雪水晶そのものが溶けてしまう」
主「日の出と共に雪雲が霧散していく。それから一時間の間のみだ」
戦士「どうやって回収すりゃあいいんだ?」
主「真水に漬けるだけでいい。と言っても一分は漬けないといけないから、水を撒くという方法はとれない」
勇者「完全に肉体労働ですね……俺達も手伝わせて下さい」
主「正直、若者が協力してくれるのは本当に有り難いよ」
戦士「あれって採取量めっちゃ低いって話だけど、俺らが手伝ったぐらいで宿泊代って足りるのか?」
主「上手く採取できれば十分すぎるほどになるかと」
168:
四日目
リザ娘「へーそんなものがあるのか」
ゴレ娘「お高い」
ハピ娘「ミスリル銀より高価だなんて凄いですわね」
戦士「そこらの魔法剣よりよっぽど強力な武器になるしな」
勇者「まあ、それが手に入るんじゃなくて、その素材を宿代として採取してくるって話なんだけどさ」
リザ娘「食うだけ食って、去る事に比べればというところだな」
169:
ハピ娘「真水に漬けるだけ、と言われましても……もっと具体的にはどうされているのですか?」
メイドB「シャベルで雪の根元を掘って雪を払う、そうしたら水桶にいれて一分後に取り出し」
メイドB「水を拭いて保管……これを四人一組で行います」
リザ娘「四人も……? 多くないか?」
メイドC「掘る人、雪を払い水桶に入れる人、水桶から取り出し拭く人、これら運搬し収納箱に収める人の計四人です」
戦士「根元……泥がついていると駄目なのか」
勇者「水に漬けた時に吸着して、不純物混じりになるらしい。武具には使えないんですよね」
メイドC「その通りです」
170:
ゴレ娘「分担どうしよう?」
リザ娘「水から出すのが一番の重労働だな……」
ゴレ娘「あたしやろうかー?」
戦士「え? いや、だが」
ハピ娘「ゴレ娘さんの腕は感覚が鈍いらしいのですよ」
勇者「いや……あの腕で雪水晶を傷つけずに拭けるのか?」
リザ娘「だろうなぁ……」
172:
メイドB「防寒防水グローブがありますからどなたでも大丈夫ですよ」
リザ娘「あたしとゴレ娘は使えなさそうだな」
ゴレ娘「雪払って水に入れるのやるー」
ハピ娘「私は水から引き揚げるのをやりますわ」
戦士「いいのか?」
ハピ娘「耐冷魔法をかけてやりますし、更に道具もあるのでしたら難しくないかと思いますわ」
勇者「運搬か雪かきか……」
戦士「水に漬けっぱなしって駄目なのか?」
メイドA「それをしてしまうと雪結晶の魔力が失われてしまうんですよ」
173:
勇者「よし、作戦はこうだ」
勇者「俺と戦士が掘りまくる」
ゴレ娘「あたしが雪払って水桶に入れるー」
ハピ娘「私が雪水晶を取り出し拭く」
リザ娘「で、あたしが運ぶと」
勇者「何気にリザ娘も重労働だな……」
戦士「だなぁ……てかゴレ娘大丈夫なのか? 雪払うんだぞ」
ゴレ娘「平気平気ー」
181:
リザ娘「あたしはまあ、この腕と足があるから大した事無いさ」
ハピ娘「リザ娘さんのその足が大いに役立つのって初めてじゃないかしら」
リザ娘「あたしが駆けつけなくちゃならない状況って、この二人と一緒にいるとないしな」
ゴレ娘「移動する時、皆で一緒」
戦士「? ああ、足並み揃えるって事か」
リザ娘「ま、久々に全力で突っ走ってやるさ。任せておけ」
187:
八日目 早朝
メイドC「こちらが防寒具です。魔法が込められておりおおよそ一時間程度であれば」
メイドC「かなりの寒さを遮断できます」
戦士「雪遊びしたくなってきた」
勇者「雪水晶掘りの後に体力が残っていれば」
リザ娘「体力残らない勢いでやってもらって構わないからな」
ハピ娘「ゴレ娘さんとハピ娘さんはもっと寄って下さらない?」
ハピ娘「耐冷魔法を全力で施しますわよ」
190:
主「さて、と。私も用意をするか」
メイドA「え?」
メイドB「ご主人様の防寒着はありませんよ?」
メイドC「元々お使いになっていたのも予備も、勇者様達にお貸ししてしまっていますからね」
メイドF「紅茶淹れてきますね」
主「毎年この為に体を鍛えているんだがなぁ……」
191:
メイドA「もう間もなくです」
勇者「気合入れていくぜ!」
戦士「おう!」
メイドB「始まった!」キィィィン
リザ娘「な!」ブル
ゴレ娘「!」ブルブル
ハピ娘「なんて魔力……凄いわね」
勇者「よし、いくぞ!」
192:
一時間後
勇者「」グッタリ
戦士「」グッタリ
ゴレ娘「終わった〜」
ハピ娘「う、腕が痺れましたわ……」プルプル
リザ娘「流石にこれだけ走っていると疲れるな」フゥ
メイドC「……」
メイドA「すっご……」
メイドB「計測急ぎなさい」
194:
勇者「やっぱシャベルを使う筋肉は剣では身に付かないな」
戦士「全くだ。明日は筋肉痛だ」
リザ娘「シャベルか……多分あたし達が使っても痛めるだろうな」
ハピ娘「それにしても私達の採取した量はどうだったのでしょうね……」
ゴレ娘「計測してるって言ってたー」
勇者「まだ出ていないのか? もう三十分は経ってるだろ」
戦士「面倒なのかねぇ」
198:
戦士「にしてもゴレ娘の雪の払い方は斬新だったな」
勇者「雪水晶を持ったかと思ったらグルングルン腕を回し始めたからな」
リザ娘「遠心力でも使わない限り、ゴレ娘にあれを傷つけずに雪を払う術があると思っているのか」
メイドA「……は二階をお願いします。私達は外の板を外してきます」カツカツ
勇者「あ、計測終わりましたか?」
メイドA「はい、採取のご協力本当にありがとうございました」
戦士「ってか今何してんだ?」
リザ娘「氷龍の渡り対策を外しているところじゃないか?」
ゴレ娘「手伝うー」
199:
勇者「よっと」ベリベリベリ
戦士「そういやぁ結局、どんぐらい採れたんだ?」
メイドB「あー……あは、ふふふ」
メイドA「B」
メイドB「失礼しました。ちょっと笑みが抑えられなくて」
勇者「でもそれだけ凄かった、って事ですよね」
メイドB「はてさてさてはて」
201:
メイドA「何時も氷龍の渡りの後の晩は豪勢に振舞うんですよ」
メイドA「町としての採取量の報告とかも夕方ぐらいに届く事もありまして」
メイドA「各個に伝えられるのはその時がだいたいです」
戦士「食料とかどうするんだ? 備蓄で豪勢に、か?」
メイドB「渡りが終わった直後に近くで待機している行商がこちらに来るんです」
勇者「あー確かに書き入れ時か」
メイドB「腕に寄りをかけて振舞いますので、たくさん食べて下さいね」
勇者「あー……流石にもう一泊は」
メイドA「いえいえ、お気になさらないで下さい。主も是非と申しています」
203:
主「皆、ご苦労だった。勇者君達も色々と手伝わせてもらいすまなかった」
戦士「いやー一宿一飯……ん? あれ?」
勇者「後も考えると八泊二十飯の恩だな」
主「明日の朝発つのか? もっとゆっくりしていってくれていいというのに」
リザ娘「流石にこれ以上ご迷惑をお掛けする事も……」
ハピ娘「そもそも宿ではありませんしねぇ……」
ゴレ娘「魔王も倒さないとー」
主「そうか、残念ではあるが致し方ない。また何時でも寄ってくれ」
205:
主「さて、少し話もそれたが雪水晶の採取量についてだ」
戦士「お、待ってました」
メイドA「前年対比で……170%ほどの量になりました」
勇者「……うん? 170%?」
ハピ娘「私達だけで70%も……」
メイドD「実際の所、ご主人様は手伝われていない事を考えると……」
主「80%ぐらいだな。やはり若さには勝てんという事だな」ハッハッ
戦士「金額的にはどうだったんだ? 迷惑料差し引けたんか?」
メイドA「何を馬鹿な事を……後三ヶ月ほどこちらで豪遊していかれる気ですか?」
勇者「お、おお……」
206:
主「さて、話はこれぐらいにしてそろそろ食べるとするか。冷めてしまっては元も子もないだろう」
ゴレ娘「ほれおいひい!」
勇者「すっげー……こんな豪華なもの、初めてかもしれん」
戦士「はっぐ、はぐ、っぷはぁ!」
リザ娘「このソース一体なんだろう」カチャカチャ
メイドF「そちらは山葡萄のソースですね。気候が気候ですから長持ちするんですよ」
ハピ娘「今度試してみようかしら……」
リザ娘「だな」
209:
勇者「ああ……なんて贅沢だ。幸せだ」
戦士「全くだな」
リザ娘「今日はゆっくり休んで明日に備えるか」
ハピ娘「少し名残惜しいですわね」
ゴレ娘「……久々のお家だったね」
メイドA「やはり三人は根無し草をされて……?」
勇者「ええ、そんな所で出会ってこうして仲間になるよう交渉したんです」
241:
翌日
勇者「お世話になりました」
主「ああ、また何時でも寄ってくれ。それと」
メイドA「はい、こちらに」
戦士「なんだ? 剣か?」
リザ娘「魔力を感じるな……魔法剣か」スラン
ハピ娘「蒼い刀身……綺麗」
ゴレ娘「氷の魔力……雪水晶?」
勇戦「え?!」
242:
リザ娘「たあ!」ビュァン
ハピ娘「ほ、本物?!」
主「あれだけの量を採取してくれたのだし、私達にできる形で返したかったのだよ」
勇者「い、いいんですか……?」
戦士「これ絶対俺らの採取量よりも……」
メイドA「これでも黒字ですよ」
ゴレ娘「宿泊代はー?」
メイドB「……トントンですね」
243:
勇者「えぇぇ……」
リザ娘「本当によろしいですか?」
主「その代りと言っては何だが、またこの時期に寄ってくれ」
戦士「なるほどそういう事か」
勇者「そういう事でしたら、有り難く使わせ貰います」
リザ娘「じゃああたしのお古は勇者に」
勇者「……」
戦士「……」
244:
戦士「なんでそうなるんだよ!」
リザ娘「力任せに使う剣じゃない。言わば技の剣」
ハピ娘「であればリザ娘さん行きですわね」
ゴレ娘「お古も戦士向きじゃない?」
リザ娘「そういう事だ」
勇者「戦力的ヒエラレルキーが低いな……」
戦士「仕方が無いとはいえな……」
245:
主「ここから西の山……こちらに面した崖に洞窟がある」
主「そこに魔王城の近くに通ずる道があるという。もしも早急に魔王城に向かうつもりなら」
主「そちらを行くといいだろう」
勇者「そんなところに道? だとしても距離がおかしいな」
戦士「てか、先週の魔物討伐の報酬は……」
リザ娘「勇者のペンダントに記録されているのだろう? であれば先の町でもいいんじゃないか」
ゴレ娘「ゴーゴー」
247:
勇者「ふう……」ザッザッ
戦士「まだ距離があるなぁ」
リザ娘「だがこのまま行けば今日中には着けそうだな」
ハピ娘「詳しい位置までは分かりませんし、何処かに一泊すべきでは?」
ゴレ娘「寒いねー」ボスボス
勇者「この先の街道を右に曲がると宿があるらしいし、そこかなぁ」
戦士「あーあったけぇ湯に浸かりてぇ……」
リザ娘(贅沢な)
ハピ娘(なんて贅沢な事を!)
ゴレ娘(贅沢者ー)
248:
宿屋
女将「ここは天然の温泉が湧いているんですよ。心行くまで浸かっていって下さい」
勇者「ふああぁぁ……」
戦士「たまんねぇなぁ……」
勇者「全くだな……ま、期せずして彼女らに温泉を体験してもらえて良かったよ」
戦士「……この壁の向こうに」ゴクリ
勇者「殴るぞ」
250:
ゴレ娘「はふぅ〜〜」
ハピ娘「う〜……何なんですのこの臭い」
リザ娘「これが所謂腐った卵の臭いか」
ゴレ娘「卵とか趣向品」
ハピ娘「私達には手が出せなかった代物ですわね」
リザ娘「飼う以外の選択肢がなかったからな。ま、今はある程度自由に食べられる訳だが」
ゴレ娘「あんまり感動なかったね」
ハピ娘「ですわね……」
252:
リザ娘「……ん?」
ハピ娘「どうかしましたか?」
リザ娘「いや、ここに何かあるな……あれ? 卵か?」
ハピ娘「温泉でゆで卵を作って……この程度の温度でできるものなのかしら」
ゴレ娘「看板ー。温泉卵だってー」
リザ娘「ふむふむ、ん? 食べていいのか、これ」
ハピ娘「温泉卵……リザ娘さん、毒見をどうぞ」
リザ娘「お前……」
253:
リザ娘「まあ、食べるけどさ」カンカン
ゴレ娘「あたしも食べるー」
リザ娘「ほら」パキャ
ゴレ娘「……? 半熟卵?」
ハピ娘「か、変わってらっしゃいますわね」
リザ娘「いざ、いただきます」
ウマーーーー!
勇戦「!?」ビクッ
勇者「な、何があったんだ向こうは?」パキャ
戦士「温泉卵、か? いやいや、叫ぶほどか?」ズルッ
1:
ハピ娘「はぁ〜」ホクホク
リザ娘「良い湯だったな」ホカホカ
ゴレ娘「気持ちよかったー」ホコホコ
戦士「おかえり」
勇者「満喫しているようで何よりだ」
リザ娘「なんだ、もう上がっていたのか」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1388390258/
2:
勇者「ところで思ったんだがゴレ娘は大丈夫なのか?」
戦士「硫黄と腕とかさ」
ゴレ娘「二人に虐められた〜」メソメソ
リザ娘「そこはあたし達も心配だったから」
ハピ娘「ちゃんと真水で洗っておきましたわ」
ゴレ娘「暖かくなかったー」
戦士「そりゃご愁傷様だな」
ハピ娘「念の為に私の羽もリザ娘さんの鱗も洗いましたけどね」
3:
翌日
勇者「ここらの筈だが……」
戦士「洞窟らしいもんはねーな」
リザ娘「ゴレ娘」
ゴレ娘「ヤイヤイサー」ザッザッ
ゴレ娘「……」
ゴレ娘「……目の前に通路があるっぽい」
ハピ娘「……崖ですわね」
4:
リザ娘「ゴレ娘!」
ゴレ娘「ヤイヤイサー!」ブォン
ゴレ娘「とぉー!」ドゴォン
勇者「わー……」ガラガラガラ
戦士「超パワープレイ」ガランガラ ガラン
ハピ娘「土砂崩れか何かで埋まってしまっていたようですわね……」
5:
勇者「う、お……」
戦士「これは因縁の祠だな」
ハピ娘「魔力は安定しているようですわね」
リザ娘「どうする、行くのか?」
勇者「まあ……行かなきゃ来た道戻って、あの祠に行かないとだしなぁ」
ゴレ娘「迂回路も無し?」
戦士「こっからどう迂回するんだよ……完全に雪山越えだぞ」
6:
シュン
勇者「っと」
戦士「結構こっちも冷え込んできたな」
リザ娘「そうか?」
ゴレ娘「そーでもない」
ハピ娘「まだまだこれからですわ」
勇者「三人の……三人の感覚に涙が」
戦士「頑張れ、耐えるんだ……」
7:
勇者「にしてもここはどの辺りだ……」
ハピ娘「飛んで様子を見てきましょうか?」
戦士「いや、結構山とかあるし、地図だけで分かるんじゃねーかな。どうよ?」
勇者「……。え? ここ?!」
リザ娘「そこなのか? なんだ、魔王城最寄の国じゃないか」
戦士「お、近いところに拠点があるな」
ゴレ娘「最終決戦?」
勇者「いや、ここらは敵も強いから今までほど快進撃って訳にいかないだろうな」
8:
勇者「敵やその拠点を叩く場合、何よりも面倒な事がある」
戦士「あー」
リザ娘「む、我々の力を過小評価していないか?」
戦士「そこじゃないんだよなぁー」
ハピ娘「どういう事ですの?」
勇者「以前話したよな。大抵の勇者が金稼ぎしかしてないって」
ゴレ娘「特権様様ー?」
戦士「金稼ぎが目的の連中、稼ぎ方が二通りなんだわ」
9:
勇者「一つは犯罪行為。ま、特権すするだけのクズどもだ」
戦士「もう一つが魔物討伐や依頼を受けて稼ぐ連中だ」
リザ娘「へえ」
ハピ娘「後者は随分とまともですわね」
ゴレ娘「だねー」
戦士「ところがどっこい……」
勇者「魔物が強ければ強いほど稼ぎが良い。ともすればそこでの衝突がある訳なんだ」
ハピ娘「なるほど……けれども、それほど問題なのかしら?」
10:
勇者「こんな所で戦っている連中ってのは大概、馬鹿みたいに強いんだ」
戦士「言っちゃあ何だが、まあ戦闘狂が多いって話だな」
リザ娘「彼らの狩場に紛れ込んだら襲われる、と?」
勇者「それで潰れたPTがいくつかあるからなぁ」
戦士「縄張り争いってのも十分あるんだろうけどもさ」
ゴレ娘「罪に問われないの?」
戦士「やー……状況を立証する者がいないから。勝ったら正義がガチなんだよ」
11:
勇者「そんな訳だから衝突を回避しつつ進みたい訳だ」
リザ娘「なるほどな。ならば街道を……って街道すら見当たらないんだな」
戦士「最短で南8kmはあるな」
勇者「そして4km先に魔物の砦があるらしい訳で」
荒くれ者達「あァんだゴラァ!」
ハピ娘「こうなる訳ですわね」
ゴレ娘「こうなる訳だー」
13:
勇者「俺達は貴方達の邪魔をしたい訳でも手柄を奪うつもりない」
勇者「ここを通させて欲しい」
荒くれ者A「アァ?! んなモン信じられっかよぉ!」
荒くれ者B「おい! よく見りゃあの女共魔物とのハーフだぜぇ!」
荒くれ者C「気持ちわりぃ!」
リザ娘「……」ピク
荒くれ者A「見ろよあの腕! 岩くっつけてやがるぜぇ!」
ゴレ娘「む!」
14:
荒くれ者D「だけど顔は悪くはねーな」
荒くれ者C「羽のねーちゃんはおっぱいでけぇじゃねぇか。そいつらのお粗末なもんでも挟んでんのか!」
ハピ娘「……げ、下品な」ピクピク
荒くれ者A「その牝豚どもを置いてくってんなら、てめぇら二人は見逃してやらん事もねぇな。なあお前ら!」
荒くれ者B「ちげぇねぇ!」ゲラゲラ
荒くれ者C「そーそー、坊やはてめぇの手で慰めなぁ!」
15:
荒くれ者D「まずは羽のねーちゃんのおっ」ヒュン
荒くれD首「っは」ゴト
荒くれ者ABC「……。は?」
リザ娘「え……?」
ハピ娘「な、なん……」
ゴレ娘「……ゆ、勇者?」
勇者「……」ヒュン
16:
戦士「仮にも好いた相手だ。ここまで言われて引きさがれっかよ」スラン
リザ娘「お、おま……相手は人間なんだぞ!」
勇者「だからこそだ。余計に性質が悪い」
荒くれ者A「ざっけんなよぉ!」
荒くれ者B「ぶっ殺してやる!」
戦士「おらぁ、来いよ! 返り討ちにしてやんぜ!」
19:
荒くれ者B「こひゅー……こひゅー」
戦士「よっと」ザッ
荒くれ者AC「」
リザ娘「何も殺す事は……」
勇者「荒くれ者四兄弟、危険勇者として注意喚起はされてはいたんだよ」
戦士「稼ぎ方が二通りって言ったな。ありゃ嘘だ、両方やってる連中もいてこいつらそうなんだよ」
ハピ娘「だからと言っても……」
ゴレ娘「……勇者達、人殺し?」
勇者「……一応ね、用心棒で小銭稼いでいた時に窃盗団と、な」
21:
リザ娘「……」
勇者「……俺達が怖くなったか?」
戦士「強制するつもりはねーよ。今から抜けるか?」
ハピ娘「馬鹿を仰らないでいただけません事? 過去がどうあれ、お二人とは四六時中共に過ごしたのですよ」
リザ娘「正直驚いてはいるが、二人を軽蔑したりはしないさ」
ゴレ娘「……んー。ありがとう」
勇者「え?」
ゴレ娘「あたし達の事で怒ってくれて。守ってくれて、ありがとう」
22:
勇者「礼を言われるような事は……」
戦士「人殺しは人殺しだもんな」
リザ娘「この者達を生かして捕らえる事が難しかっただからだろ?」
ハピ娘「正直……私達は本気で人間相手となると及び腰になってしまいますわ。私達とて人を殺すのは……」
ゴレ娘「三人だけだったら、多分誰か捕まってた」
リザ娘「汚れ役を押し付けてしまって……すまない」
戦士「お前らが守れんならこんなの大した事ぁねーよ」
23:
……
戦士「さって……砦の魔物もなんとかなったなぁ」
リザ娘「雪水晶の剣の力があまりにも大きいな」
ハピ娘「町が見えてきましたわね」
勇者「少しゆっくり休むか」
ゴレ娘「……二人とも大丈夫?」
戦士「何がよ?」
ゴレ娘「無理してない?」
勇者「初犯じゃないしなぁ」
戦士「待て、それだと今回も前回も俺達が全面的に悪い事になるぞ」
24:
ゴレ娘「くつろぎ〜」ボッフンギッシギシ
ハピ娘「ベッドにも慣れてきてしまいましたわね……」
リザ娘「中々あの生活には戻れないだろうなぁ」
戦士「いいじゃねえの。魔王を倒せば俺達は英雄だぜ。そりゃあもう遊んで暮らせるだろうなぁ」
リザ娘「英雄となるのであれば英雄としての義務もあるだろう。決して遊んでは暮らせないだろ」
ハピ娘「それでもサクセスストーリーですわね」
ゴレ娘「贅沢できる?」
勇者「……」
勇者「ちょっと皆に話しておくか」
25:
戦士「何だよ改まって」
勇者「機密に触れるから全ては話せないんだが、一応の着地は魔王討伐じゃないんだ」
戦士「そうなのか?」
ハピ娘「戦士さんでも驚くのですね」
リザ娘「何処見ても魔王は討伐して然るべき、とした触れ込みだしな」
ゴレ娘「なんで討伐じゃないのー?」
勇者「一応、国王達は今までのような魔物の襲撃が無い世であればいいとしている」
戦士「それだって魔王が現れた所為じゃねーのかよ」
勇者「あー……うーん」
26:
勇者「魔王城が突如現れた訳じゃないんだ。魔物の襲撃が始まったその時に魔王城が出来上がった訳じゃないというか」
リザ娘「……機密だから深くは聞かないが、どれほど前からかは定かでないが魔王達は以前から存在していたと」
ハピ娘「何が要因でこちらを攻撃し始めたのか、そこの解決が勇者達に与えられた任務である、と?」
勇者「そんな所だ」
戦士「しっかし、話し合いが通じんのかねぇ」
ゴレ娘「いきなり襲い掛かってきそー」
勇者「その時は戦うしかないなぁ……」
リザ娘「一先ずは和解という線で考えておけばいいのだな」
勇者「そういう事で」
27:
勇者「とりあえず今日はゆっくり休んで買い物は明日にするか」
戦士「報酬もたんまりもらったしな」
ゴレ娘「あたし観光してくるー」
勇者「俺も着いていくよ。こんな所まで来る事なんてそうそうないしなぁ」
ハピ娘「私は羽の手入れをしていようかしら……」
リザ娘「特にやる事無いな……」
戦士「俺はゆっくり宿で休んでるよ」
28:
ゴレ娘「お店ー」
勇者「何か食べるか?」
ゴレ娘「いいのー?」
勇者「これでも結構懐が暖かいからな。何食べるか?」
ゴレ娘「……美味しい!」
勇者「はは、そりゃ良かった」
29:
ゴレ娘「……勇者」
勇者「どうした?」
ゴレ娘「大好き」スリ
勇者「ありがとう、俺も大好きだよ」
ゴレ娘「大好きだよ?」
勇者「んん?」
ゴレ娘「勇者の事が……好きだよ」
勇者「……」
勇者「……え? え?」カァァ
30:
ゴレ娘「イヤ?」
勇者「そんな訳無いだろ……あーくそ」ガシガシ
勇者「先に言われたら格好がつかないじゃないか」
勇者「愛してるよゴレ娘。俺と付き合ってくれ」
ゴレ娘「うん、勇者。愛してる」ギュ
勇者「……ああ、俺もだよ」ギュ
31:
リザ娘「にしても……」
戦士「どうした?」
リザ娘「なんだかんだでこんな所まで来たんだな」
戦士「だな」
リザ娘「……お前達はこの旅が終わったらどうするつもりだ」
戦士「そうだなぁのんびり暮らしてーよなぁ」
リザ娘「お前は本当に何時でもそんな感じだな」
戦士「何時も気張ってたって良い事ねーしな」
32:
リザ娘「あたし達は……どうするかなぁ」
戦士「立場的な事か」
リザ娘「結構重たい話なんだよ……こうして人前にも出てしまった以上はな」
戦士「んじゃあハーフの権利でも勝ち取りにいくか?」
リザ娘「生憎、そうした難しい事は苦手なんだよ」
戦士「だろうな」
戦士「んじゃあさくっと地位向上を目指すか?」
リザ娘「それが出来れば苦労はしないさ」
戦士「いやいや、勿論俺達が魔王をどうにか出来ればだが、結構簡単にできるんだぜ?」
33:
リザ娘「そりゃあいい。お前にどんな案があるんだ?」
戦士「リザ娘、俺はお前の事が好きだ。付き合ってくれ」
リザ娘「……は?」
リザ娘「……」
リザ娘「……はぁ?!」カァァ
戦士「冗談でも何でもねーからな。お前に惚れてんだからな」
リザ娘「ちょ、ちょっと待て! 落ち着かせてくれ!」
35:
リザ娘「……ほ、本気で言っているのか?」
戦士「冗談じゃねーって言ってるだろ」ズイ
リザ娘「う……待て待て、近い近い!」
戦士「お前は俺の事をどう思っているんだ?」
リザ娘「そ、それは……あ、あたしは見ての通りの体だぞ! こんなだぞ!」
戦士「んな事を一々気にしてたら告白なんかしねーよ」サラ
リザ娘「っ! や、止めてくれ……右顔はその、本当に見られるのが嫌なんだ」
戦士「俺はお前のこの顔も手足も、愛せる自信があるぞ……つーか全部ひっくるめて好きだ」
リザ娘「……馬鹿」カァァ
36:
リザ娘「あたしなんかで……本当にいいんだな」
戦士「お前じゃなきゃ嫌なんだよ」
リザ娘「……全く、そんな真面目な顔が出来るなら普段からすればいいものを」
戦士「俺が真面目になんのは特別な事だけって決めてんの」
リザ娘「……」
リザ娘「その……嬉しいよ、戦士。正直、告白されるだなんて思っていなかった」
リザ娘「好きだよ、戦士」ギュ
38:
ハピ娘「ふんふーん♪」バサァ
ハピ娘「うーん、羽が綺麗になると気持ちも清々しくなりますわぁ」ノビー
ハピ娘「さて、と……手入れはこれぐらいにして宿に戻りましょうかしら?」
勇者「お。おかえりー」
ゴレ娘「おかえりー」
戦士「結構遅かったな」
リザ娘「羽の手入れは何時も時間がかかるからな」
ハピ娘「な、何なんですの……二人ずつその距離間は何なんですの?!」
39:
……
ハピ娘「酷いですわ……」メソメソ
ゴレ娘「ごめんね」
リザ娘「正直すまないが」
ゴレ娘「勇者渡せない」
リザ娘「あたしも譲れないなぁ」
ハピ娘「むきぃぃぃ!!」
勇者「意外だな……お前はハピ娘に告白すると思ったよ」
戦士「んな事言われても俺はリザ娘に惚れちまったんだから仕方ないだろ」
41:
ハピ娘「うっ……うっ……」シクシク
勇者「あーなんだ、ハピ娘にはハピ娘の魅力があるからさ」
戦士「そ、そーそー、別にお前が何か悪いって話じゃないんだしさ」
ハピ娘「でもお二人はリザ娘とゴレ娘がいいんでしょ?!」
勇者「ああ」
戦士「おう」
ハピ娘「うぇーーん!」
42:
リザ娘「もうちょっとオブラートに包む気は無いのか?」
戦士「いや、だってここは覆しようがないしな」
勇者「圧倒的な事実を前にしてどう言っても変わらないだろ」
ゴレ娘「勇者好きー」ギュ
戦士「まあなんだ、ハピ娘だって美人だし器量良いしすぐに良い人見つかるって」
ハピ娘「なら私も貰って下さってもよろしいのですよ」キッ
勇者「いやー重婚は認められてないし」
ハピ娘「なら魔王討伐による褒賞として法律の改定をして下さるのですね」キッ
勇者(不味い)
戦士(目が本気だ)
43:
ハピ娘「お二人も酷いですわ……親友だと信じていたのに」ブツブツ
リザ娘「別に裏切るつもりはなかったんだが……まあ誰か一人はあぶれる人数だったわけだしな」
ゴレ娘「うんうん」
リザ娘「因みにハピ娘は勇者と戦士、どっちが好きだったんだ?」
ハピ娘「どちらとも魅力的ですわよ! いっその事、お二人から告白されたいぐらいでしたわよ!」
リザ娘「お前……それはそれでどうなんだ」
ゴレ娘「ハピ娘ちゃん、浮気者ー」
ハピ娘「ち、違いますわ!」
44:
勇者「まあなんだ。旅の仲間である事には変わりは無いんだ」
戦士「これからも一緒に頼むぜ」
ハピ娘「分っていますわよ……うぅ、何なんですの、この疎外感」
ハピ娘「っは! まだチャンスはありますわ! であるならば既成事実をっ」
リザ娘「まあ流石にそれは許さないけどな」
ゴレ娘「はっ倒すー」
勇者「二人も結構ドライだな」
45:
翌日
ハピ娘「……」ドンヨリ
戦士「何とか元気付けられねーかな?」
リザ娘「無理だろう」
勇者「俺達も二人も原因だからなぁ」
ゴレ娘「ハピ娘ちゃんハピ娘ちゃん」
ハピ娘「何よ……」
46:
ゴレ娘「勇者、戦士、ハピ娘ちゃん好き?」
勇者「え? ああ」
戦士「そりゃあな」
ゴレ娘「褒賞で重婚許可で皆ハッピー?」
リザ娘「あ、こら、そういい加減な事を言」
ハピ娘「……」ギラッ
ハピ娘「おーっほっほっほ! 見てなさい魔王! 首を洗っているといいですわ!」
勇者「え」
戦士「なんて事を……」
47:
ゴレ娘「……ダメ?」
勇者「え? いや、例えでも何でもなく、俺がハピ娘と抱き合っていたら嫌じゃないか?」
ゴレ娘「んー……あたしは」
ゴレ娘「あたしは皆と一緒がいいな」
リザ娘「……そうだな、何だかんだであたし達三人はもう家族みたいなものだからな」
戦士「五人で一緒に暮らそうってか?」
勇者「常にお前と顔を合わせるのか……」
戦士「それはそれでなぁ」
リザ娘「え……お前達はそんな感じなのか」
48:
勇者「親友ではあるがそこまではなぁ」
戦士「一つ屋根の下で暮らしている訳でもねーし」
リザ娘「ああ……そういうものか」
ゴレ娘「ふーん?」
ハピ娘「おーっほっほっほ! おーーーほっほっほっほ!!」
勇者「というかハピ娘は大丈夫なのかあれ」
リザ娘「深い落ち込みの反動だ。貴族の所から帰ってきた時もそうだったからそっとしてやってくれ」
49:
勇者「……」ガチャガチャ
勇者「なんだこの鎧、すげー軽いのに頑丈だ」ガンガン
リザ娘「最前線ともなる国だと違うな」
戦士「へっへ、全装備換装だぜ……なんだお前ら、フルプレートにしなかったのか」
リザ娘「お前と違ってパワータイプじゃないからな」
勇者「ある程度体が動かしやすくないと逆にウィークポイントになるだろ」
50:
ハピ娘「はー……まさか私が鎧を着る日が来るだなんて思っても見ませんでしたわ」
戦士「羽がある分、童話のヴァルキリーそのものだな」
ハピ娘「ふふん、私になびいてもよろしくてよ?」
ゴレ娘「着れたー」ガシャガシャ
リザ娘「ゴレ娘はフルプレ……」
戦士「全身甲冑にすっごいごつい岩の左腕が……」
ゴレ娘「似合ってる?」クルッ
勇者「似合ってる似合ってる。というか凄い格好良いなそれ」
ハピ娘「ま、まさかの調和ですわね」
51:
翌日
勇者「ここから先は敵も強いし慎重に行くか」
ゴレ娘「悪い勇者もいっぱいー?」
戦士「確認してきたが何とか鉢合わせせずに済みそうだ」
リザ娘「なんで分……ペンダントか。何気に優秀だな、これ」
ハピ娘「魔物も人も避けて行かないと、というのは面倒ですわね」
勇者「あと、魔王城に向かう的な発言も控えるように」
リザ娘「不味い事があるのか?」
戦士「そらなー」
52:
勇者「金稼ぎしている連中は勇者だから稼げんのさ」
ハピ娘「あ……前提が崩れさって」
勇者「見つかったら袋叩きにされるだろうな」
リザ娘「恐ろしい話だな」
戦士「もっと恐ろしいのはそういうの危惧して、常に全勇者の位置を追っているやつだ」
ゴレ娘「あたし達の進路バレバレー」
勇者「だから迅に慎重かつ隠密に進まないとなんだ」
戦士「ある程度魔王城の領域に入っちまえば追ってこないだろうがな。連中も死にたくねーだろうし」
53:
三週間後
勇者「あれが魔王城だ」
戦士「夜をまって侵入するのか?」
リザ娘「それが無難だろうな」
ハピ娘「それにしてもなんて強い魔力なんでしょう……」
ゴレ娘「魔力に呑まれそう……」
勇者「皆、気を張って行くぞ」
戦士「おうよ」
54:

勇者「……」ザッザッ
勇者「……」ザッザッ
勇者「」クラッ
勇者「っは」ビク
勇者「やばい、呑まれかけた……皆大丈夫か」
戦士「え……」ボー
リザ娘「……なに」ボー
55:
勇者「皆っ」
ゴレ娘「!」ビクン
ハピ娘「っは!」ビク
戦士「えっあ?!」
リザ娘「ぐ……魔力に呑まれていた、のか」クラ
56:
勇者「! ここは、城門か」
戦士「う! お! や、やべぇ、どうす」ギギ ギギギギ
リザ娘「城門が開く……」
ハピ娘「!!」バッ
ゴレ娘「……誰もいないー?」
勇者「いや……」
側近「……」
57:
側近「お待ちしておりました、魔王様がお待ちです。どうぞこちらへ」ペコ
勇者「戦う意思は無い、という事か」
側近「少なくとも我々には」
戦士「じゃああの魔物達は何なんだよ!」
側近「それも含めて魔王様は貴方方人間と話をしたいと思ってらっしゃいます」
リザ娘「信じていいのか、これ」
ハピ娘「臨戦態勢で臨みますわよ」
ゴレ娘「奇襲ー……」
58:
魔王「よく来てくれた、君達人間と話ができて嬉しいよ」
ハピ娘「王にしては若いですわね」
ゴレ娘「王子様ー?」
戦士「魔王ってんだし寿命が長いんだろ」
リザ娘「あたし達の姿を見ても人間だと……」
魔王「我からして見れば人間よ」
勇者「……」
59:
魔王「まずは魔物達の事だ。我々による統制が取り切れなかった事を謝罪しよう」
リザ娘「暴徒化している、というのか?」
魔王「今現在、あの魔物達は我々にも攻撃をしかけてきている」
魔王「お陰でこちらの居住区に防衛線を敷くだけで手一杯なのだよ」
ハピ娘「人間側に支援をする余裕は無かった、と?」
魔王「その通りだ……本当にすまなかった」
勇者「……」
60:
魔王「可能であれば我々と人間、双方の調和の為にも手を貸して欲しい」
魔王「無論、今すぐに信頼して貰えるとは思っていない」
魔王「城内の一部区画を自由に使っていい。すぐに答えも求めないし自由にしてくれたまえ」
勇者「と言われたが」
戦士「不安だしな」
リザ娘「ああ、孤立した所で各個撃破されては堪ったもんじゃないから」
ハピ娘「とは言え、五人で過ごせる部屋が八人部屋だけというのも落ち着かないですわ」
ゴレ娘「広ーい」
61:
勇者「……」
戦士「つーかマジでこれからどうすんだ」
リザ娘「飽くまで魔物の襲撃を止めなくちゃならないとなると……」
ハピ娘「協力以前に騒動を治める方向に動く他ありませんわね」
ゴレ娘「どーするの?」
戦士「そこら辺は明日、話し合う感じか?」
リザ娘「そもそも何故暴走しているのか、というのもあるしな」
62:
勇者「……」
戦士「んじゃまあ明日に備えてとっとと寝るか?」
リザ娘「野営時のように見張りを立てるか」
ハピ娘「う……確かに危険ですわね」
ゴレ娘「勇者どーしたの?」
勇者「何か引っかかるんだよ……だけどそれが何なのかさっぱり思い出せないんだ」
リザ娘「違和感か? しかし初めて来たのだろう?」
ハピ娘「そういえばあの魔力、感じられなくなりましたわね」
戦士「それなんじゃね?」
勇者「うーん……」
63:
翌朝
側近「申し訳ありません。魔王様は急務ができてしまい、謁見の方はお控え頂きたく」
勇者「タイミングが悪いな……」
側近「城内の案内でしたら私めが承り致します」
戦士「んじゃあ見させてもらおうか。ま、不都合なもんはとっくに隠してるんだろうがよ」
リザ娘「戦士」ゲシ
側近「皆さんからすれば我々は諸悪の根源。であるにも関わらず、こうして理解をしようとして下さっている」
側近「それだけで私どもは嬉しいのですよ」
64:
ハピ娘「……あら? あれは?」
側近「兵士の宿舎を新しく建てているところです」
ゴレ娘「なんでー?」
側近「この状況ですからね。入隊希望者を受け入れている所なのです」
リザ娘「なるほど、な……ん?」
戦士「どうかしたか?」
リザ娘「あ、あ……あれ、嘘……なんで?」
ハピ娘「……? え? 人間?!」
65:
戦士「奴隷って雰囲気でもないな」
側近「あの中にも我々同様魔族もいますが、彼らは保護した者達です」
勇者「保護?」
側近「魔物の襲撃で行き場を失った者や、一方的な差別を受けて追われる者等……」
リザ娘「そうじゃない! あれは……あれはあたしの父さんだ!」
ハピ娘「なんですって!?」
側近「なんと……そうですか、貴女達はあの時魔女狩りで追われていた……」
66:
リザ娘「生きて……いたんだ……」ホロ
戦士「良かったな」
側近「申し訳ありません……」
勇者「何がだ?」
側近「あの中で一命を取り止めたのは、その男性とハーピーだけなのです」
ハピ娘「お、お母様?! ほ、本当に生きているの?!」
側近「彼女は近隣の町の対空部隊として働いておりますので、こちらにはいませんが」
ハピ娘「うっく……いいんです、生きている事が分かっただけでも……」グズ
ゴレ娘「良かったね」ナデナデ
67:
ハピ娘「ご、ごめんなさい、ゴレ娘さんは……ぐす」
ゴレ娘「謝らないでよー」
戦士「今、あの人に会えないか?」
側近「申し訳ありませんが他の者との直接の接触は禁止しておりまして」
戦士「なんだ? なんかやましい事があるのか?」
側近「申し訳ありません……ですが、中には人間に追われた者もいます」
側近「同じ追われた者同士だからこそ共存できている面もあります」
戦士「なら一人だけ連れて……」
ハピ娘「人間を警戒している以上、角が立つかもしれない、と」
68:
……
リザ娘「……」
ハピ娘「……」
戦士「一先ず、協力するという方向性を伝えないか?」
ゴレ娘「さんせー」
勇者「うーん……」
戦士「なんだよ、お前反対なのか?」
勇者「どうしても気にかかってさぁ……」ボリボリ
69:
戦士「お前らしくもねーな。何がそんなに引っかかるんだ?」
勇者「分からないから困っているんだ……もういい、寝る」
リザ娘「……勇者、どうしたんだろうな」
ハピ娘「さあ……」
ゴレ娘「大丈夫かなー……」
70:
『魔王は我々人間に比べると非常に長い寿命だと言う。未だに世代交代をしていないそうだ』
『とは言え、そろそろ老人と言う年頃のはずだが……よもや呆けによるものではないと信じたい』
勇者「!」ガバッ
ゴレ娘「んー……どーしたの?」ムク
勇者「……着いて来てくれないか?」
ゴレ娘「いいよー」
71:
勇者「……建物の構造とかって把握できるのか?」ソロリ
ゴレ娘「大雑把にならー」ノソリ
勇者「何か幽閉場所のようなものを探してくれ……後は居住区のような場所とか、最悪召使でも接触できれば……」
ゴレ娘「ヤイヤイサー」ピト
勇者「……」
ゴレ娘「地下室に壁が足りない部屋がいっぱいー」
勇者「……? 壁が三枚だけか?」
ゴレ娘「うん、通路に面して壁がないよ」
勇者「牢屋……案内してくれ」
72:
ゴレ娘「バレたらすっごい怒られそー」コソ
勇者「だろうな。でも行かないと不味いんだ」
ゴレ娘「なんでー?」
勇者「あの魔王、偽者かもしれない」
ゴレ娘「本物幽閉?」
勇者「だといいな。クーデターだとしたら……生きているといいんだがなぁ」
73:
地下室
「なんじゃ……人間が何故このような……いよいよわしも天に召されるのが近いのかのう」
勇者「! 当たりか……? 貴方は本物の魔王でしょうか?」
「さあてのう……ほれ、この通りだからのう」
勇者「それでも構いません! 貴方には人間との和平の意思があるんですよね」
「当然じゃ。その為に人間側の国王と契りを交わしたのだ」
ゴレ娘「偽者悪者? だまし討ち?」
勇者「ああ……俺達が協力に乗り出したら何かしらの策に嵌めるつもりだったんだろう」
75:
勇者「……ここは魔物や人間に追われた者達を保護しているのですか?」
「保護? ある訳なかろう。殆どの魔物魔族は侵略に向かっておるのだぞ」
ゴレ娘「え……?」
勇者「側近、は?」
「おらんよ……いや、今魔王を名乗っておるのが側近だ」
勇者「……」
ゴレ娘「どういう事?」
勇者「ハピ娘って幻術破る魔法とか使える?」
ゴレ娘「ハピ娘ちゃん、魔法のエキスパートだよ」
勇者「よし」
76:
翌日
魔王「先日はすまないな」
勇者「いえ……ハピ娘」
ハピ娘「ほ、本気なのですの?」
戦士「あんま無意味に波風立てんのもよー」
リザ娘「いや、あたしは勇者を信じよう」
魔王「何かあったのか?」
側近「勇者様方?」
ハピ娘「覚醒魔法!」カッ
77:
城内 ボロ ボロ ボロ
側近「」シュン
魔王「……」
戦士「おいおい内装がボロボロじゃねーか」
ハピ娘「そんな……何? これは?」
魔王「やれやれ……幻に現を抜かしておけば良かったものを」
リザ娘「……なあ。あれはなんだったんだ。兵士の宿舎は……そこで働く人々は」
魔王「まやかしに決まっているだろう……体よくハーフがいたものだからな」
78:
勇者「……ゴレ娘、俺はあの時7人くらいいたんだが、君にはどう見えた?」
ゴレ娘「え……15人くらいはいた」
戦士「……俺、きっかり10人だったから班なんだと思った……」
リザ娘「これがまやかしの正体か……」
ハピ娘「じゃあ……じゃあ私達の両親は……」
魔王「さあてな。私が知る訳なかろう」
リザ娘「っ!!」ギリ
87:
勇者「たあああ!」ギィィン
魔王「ふんっ!」ギィン
戦士「てんめぇぇぇぇ!!!」ヒュン
魔王「はっ!」ガギィン
リザ娘「お前だけは……お前だけは!!」カッ
勇者「離れろ!」バッ
戦士「おう!」ダッ
リザ娘「はぁっ!」ビュァン
魔王「ぐ……雪水晶の剣か」ピキピキ
88:
ゴレ娘「止まった! くっらえー!」ブォン
魔王「ぐぅ!」ドゴン
ハピ娘「雷撃魔法!!」ズガァン
魔王「ぐあああ!」
戦士「やったぜ!」
勇者「まだだ! 畳み掛けろ!」
ゴレ娘「ガンガンいくよー!」ブォ
魔王「……ふざけるな、人間如きがぁ!!」ブァ
89:
勇者「ぐ!」ドゴゴゴ
戦士「なんだこの衝撃!」
リザ娘「魔力を放出させて衝撃波を……」
ハピ娘「あれだけ大々的な幻術をかけてきただけの事はありますわね」
ゴレ娘「強いー」
魔王「滅べ! 人間などという害虫は滅び去るべきなのだ!」ゴァァ
90:
戦士「ちぃ!」バッ
戦士「ぐあああああ!」ドガガガガ
リザ娘「戦士!」
ハピ娘「治癒魔法! 治癒魔法!」
魔王「盾になったか!」
勇者「この隙を逃すな!」
ゴレ娘「たああ!」ドゴォン
魔王「ぐぅ!」
勇者「はあ!」ザンッ
91:
魔王「ぐぬぅっ! 紫電魔法!!」
戦士「まだまだぁ! ぐあああ!」バヂヂヂィ
勇者「戦士……くそ!」バッ
魔王「返り討ちにしてくれる!」
リザ娘「……」バッ
魔王「しまっ」
リザ娘「たあああああ!!」ザザン
92:
魔王「く……」ヨロ
ゴレ娘「とぉ!」ドゴン
魔王「がっ!」
勇者「はぁっ!」ザン
魔王「ぐぅ! くそ!」バッ
戦士「どりゃあ!」ザン
魔王「がぁっ!」ヨロ
ハピ娘「狙い撃ちですわ……光線魔法!」カッ
魔王「ぐぅ!」ジュッ
93:
魔王「お前達如きに! 人間如きにぃ!!」
勇者「たあああ!!」
魔王「がっ!」ドッ
魔王首「」ゴロンゴロン
勇者「はぁっ! はぁっ! はぁっ!」
戦士「やった……のか」
リザ娘「ああ……あたし達の勝ちだ」
94:
勇者「早く本物の魔王を救出して魔物達を戻してもらわないと……」
戦士「つーかそんな簡単にいくものなのか?」
勇者「他に方法がある訳じゃないし、真魔王頼みなんだよ」
真魔王「ふぉっふぉっふぉ、よもやまたお天道様を拝めるとはのう……」
リザ娘「このご老人が魔王……?」
戦士「よくよく考えたらどうして生きていたんだ? 何年も幽閉しておく必要なくないか?」
魔王「仮死魔法でしばらく眠っておったんじゃ。側近の奴め、わしが死んだと思って牢屋に放置しよるからに」
魔王「目覚めてからは全ての魔力を生命維持に割り当てたんじゃよ」
95:
戦士「それにしたって粉々にして生き返らないようにしてやるぜーとかさ」
魔王「恐らくじゃが、わしが魔力を溜め込んだ」
魔王「爆弾の状態になっていると勘違いしたのやもしれんなぁ」
魔王「よく物に魔力を込めて触れたら爆発するもので、側近とコミュニケーションをじゃな」
戦士(おい、クーデターの理由って)
勇者(い、いや、人間を恨むような発言していたし、違うと信じたいな)
ハピ娘「その所為で貴方が支持する人間をも嫌いになったんじゃないかしら……?」
魔王「そんな短気な奴じゃないと思ったんじゃがなぁ……」
96:
勇者「今回の騒動によって、各国は貴方に疑心を抱いています。ですが必ずや我々がそれを払拭致します」
勇者「なので可能でしたら今すぐに各地の魔物を引き揚げて頂きたい」
魔王「分っておる分っておる……わしとて無闇に波風立てたくは無いからのう」
魔王「どれ」キィィン
リザ娘「ぐ……」ピリ
ハピ娘「う……」ピリ
ゴレ娘「……?」ピリ
勇者「どうした?」
ゴレ娘「多分、魔物の血が反応したんだと思うー」
戦士「え? あ……だ、大丈夫か?!」
リザ娘「ああ、大丈夫だよ」
97:
魔王「魔物達は直にここへ集まる。なに、人への攻撃は禁止しておいたから気にせんでいいぞぉ」
戦士「つってもこれ以上、俺らがする事ってねえしな」
勇者「一度、話し合いの場も設けるべきでしょうか?」
魔王「そうじゃのう……直接謝罪もしたいところだし、可能であればそう働きかけてくれんかの」
リザ娘「日取りは何時頃でよろしいのでしょうか?」
魔王「そちらで自由に決めておくれ。連絡手段は何時もの通りと伝えれば、向こうも理解するじゃろう」
ゴレ娘「了解でーす」ピシ
ハピ娘「それじゃあ行きますわよ。早く報告する必要があるのでしょう?」
98:
勇者「やっと着いたか」
リザ娘「しかも結局隠密するハメになったし……」
戦士「事後でも襲われる可能性あるしなぁ」
ゴレ娘「暗殺ー」
ハピ娘「本当に人間というのは……」
勇者「まあこれが終われば、俺達の事を公表しないよう取り付ければ一先ずはな」
戦士「ペンダントもなくなるし判断もつきにくいだろ」
リザ娘「しかし噂はされるだろ。ただでさえあたし達は一目を引くのだし」
勇者「そこはまあ仕方が無いかな」
戦士「ま、なんだかんだで王宮は出入りしているから、人目につかない入り口知ってるしそこ使おうぜ」
99:
リザ娘「……出入り?」
ハピ娘「なんで……?」
ゴレ娘「ドロボー?」
戦士「ち、ちげーよ! 一時は兵士になろうとしたりしてたんだよ!」
勇者「結局ならなかったけども、城内で務めている人と仲良くなってさ。時々その人の所に会いに行ってたんだ」
リザ娘「それはそれで凄い話だな」
ハピ娘「ですわね……」
戦士「ま、そんな訳だしこっそり行こうぜ」
100:
国王「何とそのような事が……」
勇者「はい、今後の魔王側の体制をどうするか、という所まで分りませんが」
勇者「以前同様、不可侵条約を結びたいとの事です」
国王「ふむ……」
勇者「確かにこの戦いで多くの者が犠牲になりました」
勇者「その原因であるクーデターを起こした側近は既に討ち取りました」
勇者「私としては何卒ご理解と穏便なご判断を頂きたく思います」
国王「我々とて穏便に済むのならそれに乗らずにはおれんよ。ただでさえ消費も酷いのだしなぁ」
勇者(勇者のシステム作った奴と賛同者吊るし上げろよ……)
101:
戦士「どうだったよ」
勇者「一先ずは何とか円く収まりそう」
リザ娘「しかし……表に立たないとなるとこの先どうするんだ?」
ゴレ娘「ハーフの地位に同棲重婚ー」
ハピ娘「……ああ?!」
勇者「ハーフの問題は前々から検討されていたらしい。魔物との戦いが終わったら」
勇者「各国で大々的に保護する動きなんだと」
リザ娘「少し釈然としないな」
戦士「まあしゃーないんじゃないの」
102:
勇者「重婚は……まあ俗な話過ぎてできなかった」
ハピ娘「ちょ!」
勇者「とりあえず俺達の現状と狙われる可能性を伝えて、軍事施設近辺に五人で生活できる家を貰う事はできたよ」
戦士「お、治安バッチリだな」
勇者「しばらくは物資も送ってもらえるってさ」
リザ娘「ほとぼり冷めるまでは日中の出歩きは危険、か?」
勇者「いや、保護の動きが始まれば大丈夫かな。城下町の一角に空きスペースが彼ら彼女らの居住区になるって」
戦士「ああ、あそこ……何の為かと思ったらそういう事だったのか」
勇者「兵士を常勤させるから治安問題もなさそうだ」
103:
勇者「で、ここが俺達の家な訳だ」
ゴレ娘「広ーい」キラキラ
リザ娘「ここがあたし達の家……」
戦士「ま、何時かはそれぞれ家を持ったりするんだろーがしばらくは、て事だ」
ハピ娘「あら? そういえばお二人の家は?」
勇者「俺ら実家は別だからな」
戦士「貸家は引き払っちまった。生きて帰れる保障はねーし、生活するだけなら遠くで稼いでそこで暮らすし」
リザ娘「なるほどな」
104:
戦士「部屋割りどうすんのさ」
勇者「俺ゴレ娘戦士リザ娘ハピ娘、とか?」
リザ娘「なるほど……防音か」
ハピ娘「腫れ物のように扱わないで下さらない!?」
ゴレ娘「そー言われても」
ハピ娘「ゴレ娘さんでさえ!?」
勇者「陛下は一応、こちらを気にかけてくれて保護を即時行うって事だからさ」
戦士「すぐ町に出られるようになんだろ」
ハピ娘「他の男性を見つけて来いと?!」
105:
二週間後
ハピ娘「うわーーん!!」バタン
勇者「またか……」
ゴレ娘「ハピ娘ちゃん、大丈夫?」
ハピ娘「嫌ですわ嫌ですわ! 何なんですの?! 貴族には食用に見られ、一般市民は私の胸しか見ていないなんてー!!」
戦士「ああ……確かに大きいしな」
リザ娘「……」ゲシ
勇者「ま、まあまあ……それも魅力の一つというか」
戦士「何時かきっと良い人見つかるって」
ハピ娘「……」グズグズ
106:
ハピ娘「私、一つ分りましたの……リザ娘さん達と共に暮らせて、勇者さんと戦士さんがいればもういいと」
勇戦「えっ」
ハピ娘「例え結婚できなくても体だけの関係でもっ!」グッ
勇戦「えっ?!」
ゴレ娘「ハピ娘ちゃんがそう言うのならいいかなぁ」
リザ娘「流石に居た堪れなくなってきたしなぁ」
勇戦「えぇっ?!」
ハピ娘「お二人とも慰めてーー!!」バッ
勇戦「えーーー!!」
勇者の役目を果たしたのは何者なのか、それが分からぬまま平穏の日々は戻った所為か、
一風変わった伴侶を持つ者達が王都において噂の的となったと言う。
が、世間の目や偏見をものともせずに、五人は大層幸せに暮らしたそうだ。
  勇者「魔王を倒しに行こうぜ」 終
110:
乙でした
112:
おつ面白かったよ
また勇者ものかいてくれ
113:
ゴレ娘←←←←←←←←←・
↓ ↓ 恋人 ↑
レズ ・→→→→→→→勇者→→↓
↑ ↑ ↓
ハピ娘→→→セフレ→→→・ ホモ
↓ ↓ ↑
レズ ・→→→→→→→戦士→→↑
↑ ↑ 恋人 ↓
リザ娘←←←←←←←←←・
こういうことか?
116:
おつ!
11

続き・詳細・画像をみる


ロックマン「和斗くん、インフルエンザなの?」俺「ああ・・・」

【画像】ガールフレンド(仮)にスゴい奴がいたwwwwwwwwwwww

アニオタ「ふーん、アイマスってのが流行ってるんだ、アニメ見よう」

おいwwwwwヤフオクでやばいもん売ってるwwwwww

劇場版『るろうに剣心』に未公開ビッグキャスト! 福山雅治が比古清十郎役に……!?

【芸能】暴行騒動を起こした楽しんごの現在wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

実家から荷物が届いた。

2013年の音楽ソフト売り上げ1割減・・・初の3000億円割れ

最強スニーカーベスト10作ったったwwwwwwwww

アニメHUNTER×HUNTERのキメラアント編予想以上に面白いな

NYの韓国人老人たちが朝から閉店までマクドナルドを占拠「韓国人追い出して欲しい」警察出動

ふと『可愛いなぁ』と思ってしまう時って?

back 過去ログ 削除依頼&連絡先