ハニー・ポッター「どうして、スネイプなんかを……」【後編】back

ハニー・ポッター「どうして、スネイプなんかを……」【後編】


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3:
日曜夜
談話室
ハニー「……」
ハーマイオニー「……どれだけ真剣な顔でページを眺めてもステキなだけで、スラグホーンから記憶をもらう手がかりがその教科書から見つかることは絶対にないわよ、ハニー」
ハニー「……あら、わからないじゃない?聞き出すのに丁度いい呪文とか、薬のことが書かれているかもしれないわ」
ロン「さすがハニーの持ち物。もとの奴、さては豚だな!五十年前からの!」
ハーマイオニー「時空を超えさせないで。そもそもね、ハニー?ダンブルドアは、あなた『だから』できること、そう言ったんでしょう?」
ハニー「……そうね」
ハーマイオニー「呪いや薬で何とかなるなら、誰だって出来るわ。あなたがするべきなのは――」
ロン「スラッギーじいさんは首が見えないからなぁ」
ハーマイオニー「そういう方向じゃなくて! いいえ、ハニーがそれでいいなら、えぇ、それが一番、そうね。手っ取り早いわくやくて頭が痛いことに」
ハニー「それは、やよ」
ハーマイオニー「そうでしょ?ならやり方を間違えてるわ……あなたもね、ロン。あなた、いつから名前を『ローニル・ワズリブ』に変えたわけ?」
ロン「はぁ?誰だよそれ、どこの豚の骨……うわっ!?ぼ、僕の渾身のレポートの名前欄が!」
ハーマイオニー「書いておいて気づかない時点で身を入れていないことが丸わかりだわ」
534:
ロン「どうなってんだろ……これはあれかな、ハニーっていう女神から夢の中で与えられた洗礼名、いや、豚名?」
ハニー「えぇ、そうね。しっかり励みなさい、ローニル」
ローニル「ヒンヒン!」
ハーマイオニー「謝っておじさまとおばさまに。そういうことじゃないんじゃないかしら……ほら、あなたのレポート、所々に致命的な誤字があるわ」
ローニル「Honeyの綴りがHannyになってたとか?そりゃ屠殺もんだね」
ハーマイオニー「レポートでどうしてハニーの名前を出す必要が――あぁ、あったわね、あなたは。二行に一回」
ローニル「『この手法はまさに僕のハニーくらい完璧な対処法と言える』ってな具合に、ハニーへの賛美の言葉は呼吸するレベルで吐き出すし書き出さなきゃいけないしね、一番の豚として」
ハニー「当然の義務ね、えぇ」
ハーマイオニー「あなたの豚一同落第一直線よそれ……ほら、ここ。『吸魂鬼』が『球根木』になっているし、『卜占』が『木占』になってるわ。どんな羽ペンを使ってるの?」
ローニル「……双子からもらった、綴り修正機能付き、ってやつだ。マーリンの髭! ちょっと待ってくれよ、それじゃ全部書き直し!?ま、マーリンの髭!髭!」
ハーマイオニー「あなたっていつになったら魔法使いになるのかしらね。少しの綴りくらいなら、ほら。呪文で直せるわ。ちょっと待ってて」
ハニー「文字が動いて、正しいつづりに変わっていくわ。ふふっ、ロンが退院してから随分と優しいわね、ハーマイオニー?」
ローニル「あぁ、よかった。まったく……愛してるよハーマイオニー」
ハニー「」
ハーマイオニー「」
ローニル「………!? の、杖!!!」
ハニー「……ロン」
ハーマイオニー「……そう、それならよーくみせてさしあげるわ。そちらも修正しなくちゃいけないようだもの、丁度いいでしょう?」
535:
ロン「ペッペッ!インク壷をぶつけるこたぁないじゃないか!マーリンの髭!」
ハーマイオニー「それで少しでもレポートに身を入れればどうかしらということよ、ローニルさん」
ギャーギャー!
ハニー「……じれったいわ……これでも進展したけれど」
ハニー「いっそのこと、この教科書にそういういい雰囲気を作ったりする呪文や薬が、書かれていないかしら……他人に頼るのは私らしくないけれど、この本は特別ね」
ハニー「……ないわ。プリンスは、そういった方面には疎かったのかしらね」
ハニー「代わりに……随分あらあらしく殴り書きされた呪いをみつけたわ」
ハニー「……『敵に対して使え! 「セクタムセンプラ!」』」
ハニー「ふぅん? この私に敵なんていないけれど、覚えておき――」
バチンッ! バチンッ!!
ハニー「きゃぁ!?」
ロン「うわっ!」
ハーマイオニー「きゃっ!」
ドビー「ハニー・ポッター!ドビーめは仰せの通りハニー・ポッターへ定期的な報告に……これは一番豚様!ハニー・ポッターのみならず両手に花で抱きかかえておいでとは!」
ロン「あ、な、なんだ君かよドビー、それにクリーチャー。いやこれはさ、ハニーを不測の事態から身をだして守るのは僕のあれだし、それに、あー、ハーマイオニーは、ほら……マーリンの、ほらね?」
クリーチャー「もげればいいのに」
537:
ハーマイオニー「あー、どうして、ドビーとクリーチャーが?報告?えーっと、あなたたちのあの集まりの件とか、そういうことなの?ローニル?」
ロン「それやめろよ。えぇっと、うん。そうじゃないんだ、あー」
クリーチャー「もげあがればいいのに」
ハニー「そう言うのはやめなさい。そうね、ハーマイオニーには言ってなかったわ……えーっと」
ドビー「ドビーとクリーチャーは、ハニー・ポッターからあのフォイを監視するよう頼まれていたのです!」
クリーチャー「昼も夜も、休まずに」
ハーマイオニー「……ハニー?」
ハニー「……えっと」
ドビー「ドビーは一週間寝ておりません、ハニー・ポッター!」
クリーチャー「あの一等星クズもここまでの仕打ちはしませんでした。全く新しい女ご主人様は性格まであの方ににておられる」
ハーマイオニー「…………ハニー・ポッター?」
ハニー「……や、やめてよ」
ロン「いい仕事したぜ君たち、しおらしいハニーは久しぶりで……」
ハニー「ロン」
ロン「ヒンヒン!なんだいハニー!」
ハニー「向こう一週間、ちょっと眠らずにハーマイオニーのことを考えてみればどうかしら」
539:
ハーマイオニー「奴隷労働!よ!まったく!!まったく!!!」
ハニー「ごめんなさい、ってば……ど、ドビー?それにクリーチャーも。眠らずにやれとまでは言っていないわ。少しは休みなさい、いいわね?」
ドビー「承知しましたハニー・ポッタぐーっ、ぐーっ、Zzz……」
ハーマイオニー「ほら!!こんなに無理させていたのよ!?」
ロン「いやこれは豚としてハニーの提案に答えたまでだけどね……一週間かぁ」
クリーチャー「我々を豚と表現する始末、まっこと高貴さとはかけ離れた思考で」
ハニー「残念だけれどあなたは豚じゃないわよ。それに、なぁに?高貴?呼んだかしら」
ロン「ハニー・リリー・フローレンス・高貴・可憐・儚げ・伝説的・道徳的・家庭的・模範的・ポッターさぁん!」
ハニー「ハァイ?」
ロン「ヒンヒン!」
ハーマイオニー「……ダンブルドアも真っ青ね」
541:
ハニー「それで、ドビー?クリーチャー?マルフォイの方は、どうだったのかしら」
ハーマイオニー「屋敷しもべ妖精への奴隷労働に気を取られていたけど、ハニーったらまたマルフォイのことで何か動いていたのね……」
ロン「マルフォイのくせにハニーの思考に居座るなんて贅沢だよな、マぁいいじゃないか、すきにやらせルフォイ」
ハーマイオニー「あなたほんと医務室行った方がいいわよそろそろ」
クリーチャー「マルフォイ様は純血に相応しい振る舞いをなさいます。あれこそ、高貴な者の行いです」
ロン「マジかよそれじゃ僕一生平庶民でいいや」
クリーチャー「心配しなくてもそうだが」
ロン「わぁぶっとばしたいいい加減にしろよお前」
クリーチャー「マルフォイ様の顔立ちはクリーチャーのかつての女ご主人様を思いださせ、その立ち居振る舞いはまさしくブラック家の真の」
ハニー「あなたのマルフォイへの愛の告白はどうだっていいわ。あいつは、どこを出歩いているの?」
クリーチャー「……マルフォイ様は起床されるとすぐにご学友の二人をゆり起こし、ご自分の着替えの後に、ローブを上下さかさまに着ようとするご学友を」
ハニー「そこも、どうでもいいわ……聞きたくないわそれは」
543:
ロン「このままだとこいつ、『マルフォイ坊ちゃまのマル秘私生活録だフォイ!』をおっぱじめっちまうぜ……へい同胞、君が報告しろよ」
ハニー「そうね、その方がよさそうだわ。ドビー?あいつは、どこかいくべきではない所へ行かなかった?」
ドビー「あのフォイは、色んな生徒と一緒に出歩いているようにおもいます!ハニー・ポッター!」
ハーマイオニー「そういえば以前、見たことのない女生徒と一緒だったわね」
ハニー「この間も、二人も引き連れていたわ」
ロン「マルフォイのくせに!マーリンの髭!」
クリーチャー「もげロン」
ロン「うるさいな!なんなんだよお前はさっきから!」
ドビー「とくに、八階に行っているようにおもいます。そこで、他の生徒達に見張らせて、自分は――」
ハニー「……! 『必要の部屋』!!あぁ、あいつ……あいつの企みは、あそこで進んでたのね!」
ロン「……ハーマイオニー、なんかそろそろ現実味帯びてきたんだけど」
ハーマイオニー「……ひょっとしたら、ひょっとして」
ハニー「だから言ったじゃない、この私が! そうよ、あの部屋は、パパとリーマスとあの鼠、それに、シリウスが作った地図でも!」
ロン「奴さんは一まとめにしないあたり特別なんだよね名前をあげるものわかっていたい!ありがとう!」
ハニー「『部屋を出現させた人が必要だと想えば』地図に映ることがないんだわ……ドビー?私の豚?そうね、まずはほめてあげなきゃ」フーッ
ドビー「うひゃぁありがとうございます!ヒンヒン!ヒン!」
ロン「蹴られるのもたまにはいいもんだぜ、同胞」
ハーマイオニー「……ねぇ、あなた本当にマゾじゃないの?」
544:
ハニー「ドビー、そこまで突き止めたのなら……マルフォイがあの部屋で何をしているのか、も?」
ドビー「申し訳ありません、ハニー・ポッター。それは不可能なのです……あの部屋には、部屋を望んだ者とその部屋が何の目的で開かれたのかを知る者しか、入れません」
ハニー「……マルフォイは、去年……」
ハーマイオニー「あれはお馬鹿なマリエッタがペラペラと喋ってくれたおかげで、あの部屋がDAの集会所になってるとバレていたから、よ。ハニー」
ハニー「……マルフォイが何かを企んでる部屋、って、望んだらどうかしら?」
ロン「君が望んだら僕ならなーんだって用意するんだけどなぁ、あぁ」
ハニー「……なんとか、するわ。しなくちゃ。ドビー、本当にありがとう。かえって休みなさい?」
ドビー「とんでもございません、ハニー・ポッター!おやすみなさいませ!」
ハーマイオニー「あなたもね、クリーチャー。お疲れ様!」
クリーチャー「穢れた血がクリーチャーに話しかけるな」
ロン「お前こそ二度とその口が開かないようにしてやろうかこの野郎!!!!」
バチンッ!バチンッ!
ロン「あぁ、逃げやがった!マーリンの髭!髭!あいつ!今度あったらただじゃ!」
ハーマイオニー「……思えばいつもロンってこうやって怒ってくれるわね。一年生の、時から」
ハニー「あらハーマイオニー。一週間と言わず夜眠れないのは、あなたもなのかしら」
ハーマイオニー「……ニヤニヤしないで!」
546:
ハニー「これで、はっきりしたわ。マルフォイはお供を引き連れて、『必要の部屋』で何かしてる」
ロン「ヒンヒン!あぁハニー!君の推理はいつだって正しいよね!知ってた!」
ハニー「その通りよ、えぇ。とうとう追い詰めてやったわ」
ハーマイオニー「でも、色んな生徒と一緒に、っていうのはどういうことかしら……えーっと、マルフォイがそこまで大勢の人間を信用して、そのなんだか企てに関わらせるとおもう?」
ハニー「……それも、そうだわ。あのクリスマスの晩に聞いた限りじゃ、マルフォイにはそう多くの助けはないようだったもの」
ロン「あんなのに付き合うのは、せいぜいがあの腰巾着二人だよな。君を支えるのは豚一同総員だけどさ、もちのロンで」
ハニー「えぇ、そうね。天井知らずに増えて……二人!そうよ、いつも……それでここのところ、別行動を!」
ロン「?」
ハーマイオニー「ハニー?」
ハニー「そう、そうだわ!辻褄があうじゃない!スリザリン寮のすぐ近く!魔法薬の貯蔵桶には、スラグホーンが学期の初めに煎じたポリジュース薬が残されてる!材料なんてものじゃない、薬そのものが!」
ロン「……うーわぁ。マルフォイの奴、自分の取り巻きを女の子に変身させてたのかよ。おっどろきー」
ハーマイオニー「……ラベンダーとパーバティには聞かせたくないわね」
バタンッ!
ラベンダー「邪道よ!」
パーバティ「悪いけどそういうニーズにはこたえられないわ!!」
ハーマイオニー「答えなくていいから引っ込んで頂戴悪かったから」
548:
ロン「……あぁ、びっくりした。心臓が止まるかとおもった。マーリンの髭」
ハニー「えぇ、そうね。ロンがこわばって座り心地が悪くなるのは嫌だもの、ラベンダーには急に現れないでほしいところだわ」
ハーマイオニー「色んな意味でね、えぇ……ハニーがあの『姿くらまし』の初回の授業で聞いたクラッブ、ゴイルの不満っていうのも、きっとその変身させられてることについてだったんだわ」
ロン「女の子になれて不満だなんて、贅沢な奴らだよなぁ」
ハーマイオニー「あなたのその思考回路は不憫だけどね……」
ハニー「それでも、やめられることは出来なかったんだわ。だって、マルフォイが腕にある『闇の印』をみせて、脅したに違いないもの!」
ハーマイオニー「……それは、確定ではないわ、ハニー」
ロン「そろそろ苦しくなってきたよな、否定するのも」
ハーマイオニー「でも、うぅん……でも、そうだわ!ハニー、ほら、あなたはもっと他に目を向けるべきことがあるじゃない?」
ハニー「なぁに?あなたとロンのこととか?秒読みじゃない」
ロン「あ!あそこにあるのなんだろう!マーリンの髭かな!」
ハーマイオニー「なんのことかしら!おほん! あのね、ハニー?二兎追う者は一兎も得ず、という言葉はわかるでしょう?あなたはとにかくマルフォイのことよりもまず、ダンブルドアとの約束……きゃぁ!?」
ハニー「平気よ、ハーマイオニー。この私にかかれば二兎どころか、おまけに豚だってたくさんついてくるわ。そうね、加えてかわいいカワウソなんて、どうかしら……?」
ハーマイオニー「ちょっ、ハニー、それは、今の談話室には、私達しかその、だめ、あぁ、そんな、獲物を狙う、バジリスクみたいな視線じゃ、動けなく、なるわ……」
ロン「真上でつづけて!どうぞ!やったね!」
567:
数日後
八階の廊下
ハニー「……私はマルフォイがここで何をしているのか知る必要がある、私はマルフォイがここで何をしているのか知る必要が――」
ハニー「……必要な事を考えながら、この壁の前を三度通って、と」
ハニー「さぁ、どうかしら。この私のお願いなわけだけれど」
ハニー「……」
ハニー「元の壁のまま」
ハニー「へぇ? この私を無視だなんて、いい度胸しているわ。そうね、望みが間違っていた、そういうこと?」
ハニー「……マルフォイが何度もやってくる場所になりなさい、マルフォイが――」
ハニー「さぁ、これで……」
ハニー「……駄目ね」
ハニー「それじゃ、今度は……そうね、ここのところ一番フォイフォイ鳴っている場所、なんてどうかしら?」
ハニー「どうおもう、ロン?」
ロン「ゼェ、ゼェ、ゼェ、うん、はに、ゼェ、君って最高だよな!もちの、ゼェ、僕で!」
ハニー「違いないわ。さぁ、ロン。空き時間が惜しいもの、急いで」
ロン「ヒンヒン!あぁハニー!君のためなら僕ぁ廊下の端から端まで何千往復だってしてみせるよ!あぁ!」
シェーマス「ロンのやつ、午前の空き時間ずーーーーーーーっとあそこをダッシュしてるぜ。ハニー背負って。羨まヒン」
ディーン「幸せな重みだよな。一番豚の特権ってやつかぁ」
ネビル「……で、でもあの汗の量はそろそろまずいと、おも、ろ、ローーーーーン!!!」
570:
地下教室
ハニー「たくさん試してみたけれど、必要の部屋は変化しなかったわ……何様なのかしら」
ロン「豚じゃないことは確かだよな、あぁ。あぁハニー!僕ら豚は君にとっての必要の家畜だよ!ヒンヒン!」
ハニー「えぇ、そうね。いつだって私の望みどおりでいなさい? 次は、スネイプの授業ね……あぁ、丁度教室が開いたところみたいで……」
スネイプ「ポッター、またまた遅刻とは随分とお偉いつもりのようですなぁ?鼻持ちならないどこぞのレンズとフレームを思い出させる行いに十点減点」
ハニー「まだ始業のベルも鳴っていないのに絶好調のようね『先生』」
スネイプ「何度言えば分かるのだ教授を睨むな十五点減点。ウィーズリー、貴様もだ」
ロン「おいおいとばっちりはネビルの特権だぜ。マーリンの髭」
ネビル「ローン!マダム・ポンフリーから脱水に効く薬……あれ?すっかり元通りだ!豚ってすごいや!」
ロン「あぁ、なんてったってハニーっていうだけで生まれ変わる気分になれるからな」
スネイプ「ロングボトム、罰則」
ネビル「わぁ!やっぱり!!」
ハーマイオニー「……ちょっと離れた所から見ていると、本当、改めて頭抱えたくなることばかり話してるわね、あの周り」
572:
ハニー「ハァイ、ハーマイオニー。朝食ぶり」
ハーマイオニー「えぇ、ハニー。朝刊でマンダンガスが捕まった記事を読んで、喜んでいいのか悪いのか判断に困っていたようだけど、絶好調のようね」
ロン「『亡者』のふりして押し込み強盗しようとした、なんてさぁ。あいつも随分つまらなくなったよなぁ」
ハニー「……シリウスのお家の、つまりはわ、私の家から盗みをしたことは許せないけれど。あれも一応、元私の豚だもの」
ロン「今度会った時は全身全霊土下座のレクチャーしとこう」
ハーマイオニー「アズカバンをふらっと立ち寄れるパブみたいに言わないで」
ハニー「馴染みの人なら二人ほどいるけれどね、元気な豚と私のファンが」
ハーマイオニー「それも頭が痛くなるからやめて」
スネイプ「私語は慎みたまえ。今日の授業だが……なんだね、フィネガン」
シェーマス「はい、先生。今朝の新聞で読んだんですが……『亡者』と『ゴースト』はどう違うのですか?」
スネイプ「グリフィンドールは、なるほど?簡単な文字さえ拾うことが出来ないと見える。『予言者』の記事にあったのは『亡者』でなく薄汚いこそ泥でどこぞの小汚い犬畜生の同類だ」
ハニー「……あなたに比べればいくらか綺麗よ」
ロン「あの面と髪でよく人の外見のこととやかく言えるよな、マーリンの髭」
573:
スネイプ「なるほど? お偉い諸君らの飼い主であるポッターは何かこの件に関してご存知のようだ。ポッター、立ちたまえ」
ハニー「……そうしてあげるわ」
スネイプ「こっちを見るな反吐が出る」
ロン「こいつなんで教師やってんだろ」
スネイプ「さて? フィネガンの問いに答えてさしあげたまえ」
ハニー「……」
スネイプ「『亡者』と『ゴースト』、この両者の違いは何か?」
ハニー「『ゴースト』はその魂の痕跡、そう去年ニコラスに聞いたわ。『亡者』は死者の肉体を魔法で操ったもの、これはダンブルドアから聞いたわね」
スネイプ「……」
ハニー「どちらも私のかわいい豚からの受け売りだけれど、シェーマス?これで満足かしら?」
シェーマス「ヒンヒン!すっげぇやさすがハニー!」
ロン「あぁ!生徒の質問一つまともに答えられないどこぞのベタベタ髪とは違うよな!」
スネイプ「ウィーズリー、今度は聞こえたぞ。罰則」
ロン「」
ネビル「ウエルカム、とばっちりワールド」
ハーマイオニー「いいえ今のは当然の流れよ、ネビル。罰則って単語に麻痺しないで」
574:
放課後
ロン「あーあ、まさかネビルと一緒にアンブリ、もとい、蛙の臓物を繰り抜く作業をさせられるなんてね。マーリンの髭」
ハニー「私の命令以外で働かされるなんて無駄もいいところ、そうでしょう?」
ロン「まったくだよハニー!ヒンヒン! 何も罰則が終わるまで待っててくれなくてもよかったのに、やっぱり君って女神だなぁ」
ハニー「ハーマイオニーは別の授業だし、『必要の部屋』は今度はマルフォイがあそこにいる時に試すことにしたもの。あの童貞教師がこれ以上私の豚をいびることがないよう見張るのは当然だわ」
ロン「君が退屈でうっつらうっつら船こぎだしたら何故だか奴さんやけにテンションあがって蛙の臓物つめた樽に『あれはなんとかかんとかじゃない!!!』って頭突っ込んでたけどね」
ハニー「全く、挙動不審な人ねいつまでたっても」
ロン「もちのロンさ……うえ、そのときとびちったアンブリ、もとい蛙の臓物がローブの端っこについちまってら!マーリンの髭!ハニーを背負ってるってのに!髭!髭!」
ハニー「触れてはいないけれど、この私の乗る物が綺麗じゃないのは我慢ならないわね?」
ロン「今度から朝三回シャワー浴びよう……ちょっと待ってくれよ、ハニー!えぇっと、どこかに水道……あー」
ハニー「そこの男子トイレでいいじゃない?」
ロン「……あー、君は全く気にしないだろうけどさ。君をそんなとこに連れ込んでるところ見られたら僕今度こそ屠殺判決決定だなぁ」
ハニー「?」
ロン「えぇいままよ!一番豚の特権だこんちくしょう!」
ガチャッ!!!
マートル「 ハ ニ ー を男子トイレに入れるなんて何事よ!!トイレの水くらえ!!!!」
ロン「いや分類上は一応女子な君がいきなりここにいるのもどういうことなんだよってやめろよハニーにかかrさせるかああああうああばばばばばばばばば!!」
バシャアアアアア!
577:
ハニー「ハァイ、マートル……あなた、男子トイレまで覗く趣味があったのかしら?」
ロン「スルーされてると思うだろ?僕、今ハニーに髪拭いてもらってるんだぜ。やったね。水おかわり!」
マートル「たまーにね。でも、今日はそんな不埒な目的じゃないわ……ここのところ、って言ったほうがいいけど」
ハニー「? 最近ここを訪れる用事が出来た、ってことかしら」
マートル「えぇ……彼に、会いにくるの。それに、彼も私に会いにきてくれるわ」
ロン「うへぇ……なんだよ、どこもかしこもラブコメかよ。気楽だよなぁまったく!」
ハニー「ロン、鏡ならそこよ」
マートル「また来てくれる、って言ったもの……もっとも、あなたも私にそう言ったけど」
ハニー「……それは、悪かったわ」
マートル「いいのよ、気づいたわ。私には今彼がいるもの……彼と私、とっても共通点があるの。あぁ、そういう意味じゃあなたとも少し似てるかも?」
ハニー「私っていう存在は唯一無双よ」
ロン「そうだぞ失敬な! マートルと似てる?そんじゃ、そいつもS字パイプのあたりに住んでるのかい?」
マートル「違うわ!つまり、その人は繊細で、みんなにいじめられて……」
ハニー「……」
ロン「それこそなんの冗談だよ。ハニーは皆に愛されてるぜまったく。昔の事なんて知らないね、そんなの僕の同胞が日夜贖罪してるんだから、つっつくのも野暮ってもんさ」
ハニー「…………あなたってどこまで」
ロン「ヒンヒン!僕ぁどこまでも君の一番の豚さ!」
マートル「……彼は孤独だわ!えぇ、支えてくれる人もいないし、誰も話す相手がいないの!人語を!いつも頭をかかえて、ここで泣くのよ!」
ロン「ヒン語なら教えるぜ?人前でピーピー泣くって、そいつ、まだ小さい奴なのか?ヒンヒン鳴く方に変えてやるよ」
マートル「気にしないで!私、彼の秘密は誰にも話さないって約束したのよ!この秘密は――」
ロン「墓場までもっていく、じゃないよな?えーっと……下水まで、とか?ハハハ!」
マートル「お望み通りおかわりくらいなさいよ!!!!!」バシャァアアアアアアア!!!
ロン「まーひgああああああやめろよハニー以外が僕に折檻するなよマー髭!髭!!!!!!」
578:
ロン「マートルのボーイフレンドなんて、どんな奴だろうなぁ」
ハニー「少し気弱な子のようだけれど、悪い人じゃなさそうだわ」
ロン「まぁ君に似てるとなりゃそうかもね、無条件で」
ハニー「彼女にとっても死後の楽しみが増えるのはいいことだわ。覗きより、よっぽどね」
ロン「ハニー見てればいつだって楽しすぎて昇天するレベルだってのに面倒な奴だなぁ……さってと、そろそろ行こうかハニー!ハーマイオニーも待ってるだろうしね」
ハニー「えぇ、そうしましょうか。ふふっ、ロン。それは私に気を使ったのかしら?それとも自分自身が気になるのかしら、ハーマイオニーのこと」
ロン「前者以外ちょっとマーリンの髭が耳につまっててあれしてこれして髭……あー、それにしてもさほら。マートルも、うん。やるよなあ」
ガチャッ
ロン「気のある相手をトイレに連れ込んで、泣かせるなんてさぁ」
ハーマイオニー「へぇ?」
ロン「ワーオ、ハーマイはどこだろう。魂の痕跡すらないや!」
587:
四月終わり
ハニー「……うまくいかないわ」
ロン「あー、そうだねハニー!僕の今日の『姿くらまし』試験はてんでうまくいきそうにないや!うーん、どこへ、どうしても、どういう意図で……」
ハーマイオニー「初回の授業で成功させたのはなんだったのかしらね、あなた……ハニー?あなたは七月生まれだから、試験は来年以降のはずだけど……?」
ロン「ハニー相手に年齢制限なんて間違ってるよな、魔法界の法律」
ハニー「えぇ、それはもう不満だらけだけれど。この私が、試験程度で頭を悩ませるわけがないじゃない」
ロン「そんじゃ、世の中の年の差が多すぎるカップルへの偏見とかかなハニーでもさ君がやることならみんななにも痛い!ありがとう!」
ハニー「……あの部屋のことよ。必要の部屋」
ハーマイオニー「……これっきり言わないわ、ハニー。マルフォイのことは忘れなさい」
ロン「そうだよハニー。あんなやつのこと、僕ぁきれいさっぱりあたマから消えてルフォイさ」
ハーマイオニー「潜在意識からも」
ハニー「どうしてあなたたちはそう、強情なのかしらね」
ハーマイオニー「あなたには負けるわ」
ロン「ハーマイオニー、さすがにそれは鏡って知ってる?」
588:
ロン「ほらきっとあれだよ、あいつがやってるのはさ。腰ぎんちゃくゴリラどもへの言語教室とか」
ハニー「クラッブやゴイルを見張りにしている、と言ったでしょう?本末転倒だわ」
ハーマイオニー「それもあなたの推測よ」
ハニー「この私の推測なのに?」
ロン「真実かぁ」
ハーマイオニー「堂々巡りだわね、もう。ついでで言うわ、ハニー。スラグホーンの……」
ハニー「わかってる。記憶を手に入れなきゃ、そうでしょ?わかってるの……問題は、スラグホーンは私に話しをする暇もくれない、っていうこと」
ロン「あのじいさんめ、他寮豚が嬉し泣きして有り金全部差し出してでも手に入れたいハニーとの会話の機会を自ら屠るなんて、屠られても文句言えないぜ」
ハーマイオニー「あなたなんでこれまで闇討ちされてないのかしらね……今度の魔法薬の授業は、『姿くらまし』の試験と被ってほとんどの生徒が欠席のはずよ?」
ハニー「すわり心地が悪そうね」
ロン「待っててくれよハニー!今僕が不在でも君に固い椅子なんかに座らせることがないよう、こう、限りなく人体に違いクッション状の何かを『出現』呪文させっちまうから!」
ハーマイオニー「魔法使いとしては次のステージでしょうけど人としてやめて」
ロン「それじゃもう、僕が二人になるしかないじゃないか」
ハーマイオニー「……どうしてかしら、『姿くらまし』がものすごく簡単な呪文なんじゃないかと思えてきたわ」
589:
ロメルダ「……ハニー・ポッターさん」
ハニー「あら、ハァイ……ロメルダ」
ロン「ひっ! いきなり現れないでくれよな!君を見ると一瞬自分を殴りたくなっちまうんだから!マーリンの髭!」
ハーマイオニー「そういう部分での自制は働くのにね、あなた……今度は何を差し入れするの?」
ロメルダ「もうあんな真似は二度としません」
ハニー「えぇ、まぁ。そうしてくれると助かるわね。それで?」
ロメルダ「これ、あなたにお手紙を預かりました」
ハニー「……ありがとう。えーっと、あなた、元気?」
ロメルダ「えぇ、すこぶる。それじゃ、また」
ハニー「……行っちゃったわ」
ロン「……僕があれになった件で、マクゴナガルにものすごく怒られたんだよな、彼女」
ハーマイオニー「……何故か猫恐怖症になったのも含めて気になるけど、そっとしてあげましょう」
591:
ハーマイオニー「それよりハニー、それ……ダンブルドアからの手紙なんじゃ?」
ハニー「……私が記憶を手に入れるまでは次の授業はしない、って言ったわ」
ロン「あの豚野郎、ハニーとの約束をなんだと思ってるんだ!」
ハーマイオニー「約束を反故にしかけてるのはハニーの方でしょ……経過を確認したいんじゃないかしら」
ハニー「……これで出だしだ『わしじゃよっ』だったら、吼えメールで返信するところだわ」
ロン「ハニーの声で鼓膜がしびれるなんて至福だね、いつだって体の奥底からしびれてるけど……うーん?随分曲がりくねった文字だけどさ、ダンブルドア、もう歳なのかな?」
ハーマイオニー「実際ご高齢でしょうけど……違うわ、これ、ハグリッドの字よ!」
ハニー「……何箇所も何箇所も、インクがにじんで……」
ハーマイオニー「読みにくいわね……えーっと」
ロン「何言ってんのさ。ここの『ヒンヒン』を読めよ」
ハーマイオニー「百歩譲って口頭なら理解しないこともないわ。でも、だから、文面でまでそんな」
ハニー「……アラ、ゴグが?」
ロン「あー、そりゃ、あの森も静かになるなぁ」
ハーマイオニー「話進めないで」
592:
ロン「要約すると、『アラゴグが死んじまった。ハニー、ロン、おめぇさんたちは前にあいつに会ったよな。だからあいつがどんなに特別なやつだったかわかるだろう?ハーマイオニー、お前さんもあいつにあったらきっと気に入るに違いねぇ』」
ロン「あぁ、そりゃ特別さ奴さんは。僕らを食べっちまえ、だなんてお仲間に言ってさ!今でも夢にみるねまったく!ハニーいたおかげでいい悪夢手前の最高の夢だけど!」
ハーマイオニー「それはにじんでない部分を読み取ったのよね?そうなのね?」
ロン「『今日の夕闇が迫るころに、あいつを埋葬してやろうと思っちょる。あいつが好きな時間だったんだ』」
ハニー「優しいハグリッドらしいわね」
ロン「……次のとこまではね。『お前さんたち三人にも立ち会ってもらえりゃ、俺は、うんと嬉しい』」
ハーマイオニー「……警備が百万倍も厳しくなってて、これまで以上に生徒の夜間外出が大問題になる、それを分かってて言ってるのかしら」
ロン「『分かってるけどよぉ、ハーマイオニー。俺ぁ、ひとりじゃ耐え切れねぇ』 君の反応って分かりやすいから、そう返事よこしてるぜ」
ハーマイオニー「用意周到なのはなんなのかしら、あなたたちの必須スキルなのかしら」
ハニー「……」
ハーマイオニー「ハニー、分かってると思うけど!絶対に行ってはだめよ?」
ロン「優しい君が葛藤するのは至極当然だしそんな君が天使で女神なのは自然の摂理だけどさ、こりゃ無茶だよハニー」
ハニー「……えぇ、分かってる。ハグリッドは、一人で埋葬することになるわね」
ロン「ついでに怪物趣味も埋めっちまってくれないもんかなぁ」
ハニー「……どれも可愛いじゃない?」
ロン「ハーマイオニー、ちょっと僕生まれなおして怪物になってくる」
ハーマイオニー「結構一歩手前よ」
ロン「お互い様さ、マーリンの髭」
594:
この皮肉スキルったらないぜww
595:
地下牢教室
『魔法薬の授業』
スラグホーン「はっはっは!なんとも寂しい教室だ! 『姿くらまし』の試験のおいてけぼりをくらったのは君たちだけかね?え?」
ハニー「えぇ、先生」
アーニー「はい、先生!それに!ハニーの下にいられるなんて!光栄の極みです!」
ハニー「そうね、アーニー。あなたをこの季節以降に生んでくれたお母様に感謝しなさい?」
アーニー「ヒンヒン!母さんとハニーありがとう!!ヒンヒン!!」
マルフォイ「……フンッ」
スラグホーン「それでは、授業はどうするか!これだけしかいないのだ、何か楽しいことをしようじゃないか?」
ハニー「……先生に何でも質問、なんていうのはどうかしら」
スラグホーン「うん?ハニー?なんだね?先生きこえなかったよごめんねとしだからね。それじゃぁ、今日は大なべを好きに使いなさい!面白いものを見せてくれ!」
ハニー「……やっぱり、聞いてくれそうもないわ」
マルフォイ「……チッ」
アーニー「ハニーの下ならなんでも作れそうな気がする!ハッ!ロン悲願の性転換の薬まで!!!」
スラグホーン「あー、そうだ。そうだった。好きに使っても良い、とは言ったがね。諸君?お願いだから、チョコレートフォンデュを始めるのはやめてくれよ?あぁ、彼は魔法薬が不得意というか、不真面目だったなぁ……大真面目に」
ハニー「……どこのリーマスのことかは聞かないわ、先生」
596:
リーマスwwww
597:
流石はミスターチョコレートwwww
598:
どんだけチョコ持ち込んだんだよ!
599:
原材料からこだわって作ってそうww
603:
グツグツグツグツ
スラグホーン「いやぁ彼ときたらどこから仕入れたのか砂糖を毎回一袋持ち込むわ、バニラ・エッセンスの香りを部屋中に立ちこめさせるわ、かと思えば薬草的に甘い薬のときは完璧完全に仕上げるわでもう……」
ハニー「リーマスはまともな人、っていうハーマイオニーの最後の砦が崩壊してしまうからあまり話さないであげてほしいわ」
スラグホーン「眼鏡と付き合っていたんだ、彼もまとも違うよ、うん」
ハニー「いくら先生と言えども大なべにつっこませるわよ」
スラグホーン「その眼はやめてくれ思い出して夢に出る。さぁ、さぁ!みんな完成したかな?あー、君はどうだね?」
マルフォイ「……まぁ」
スラグホーン「『しゃっくり咳薬』かね?ふーむ」
マルフォイ「……」
スラグホーン「まぁまぁ、と言ったところか。しかし、ふーむ?ミスター・マルフォイ?これを使って何をしたいのかね?」
マルフォイ「……とくになにも」
スラグホーン「いかんねぇ、いかん。魔法薬は繊細な作業を伴う。そこに画くとした目的意識が欠けていては、集中しきれないのも当然。この状態では、そうだな。『しゃっくり咳』どころか『ものすごく悠長に喋るようになってくれる』効果くらいだろう」
マルフォイ「今芽生えました目的意識」
スラグホーン「そ、そうかね? あー、君はどうだね?」
アーニー「はい!僕は六代までさかのぼれる魔法族家系でハニーの豚です!」
スラグホーン「そうか、うん。薬の方は豚のえさよりひどい出来のようだが……いや、これは煽りでなく、本当にひどいにおいだよ、うん」
アーニー「ろ、ロンなら食べられますよ、たぶん」
ハニー「私以外がロンに無茶なフリをしないで頂戴」
スラグホーン「それで、ハニー!君はどうだね……おっほー!」
ハニー「えぇ、先生。完璧な『陶酔薬』、そうでしょ?」
スラグホーン「いやいや、いや!すばらしい!それに、正統派な工程にハッカの葉を入れたのか!うん!この発想はまさしく!リリーのものだなぁ!泣けてきた!煙でね!いかんねぇ!」
ハニー「えぇ、それに……先生がこれでいい気分になれば、って目的意識も、ばっちりだもの。当然ね」
605:
ジリリリリリリリッ!
スラグホーン「おや、授業は終わりか。諸君、今度はもっと大勢と楽しもう。それじゃ!」
ハニー「っ、先生、ちょっと!私の薬、試してみる気は……」
スラグホーン「すまないねハニー私はほらちょっとアルバスの奴に呼び出されていてハッハッハあいつが私にいつでも勝手なのは君もご存知だろうそれではまたリリーの片鱗を見せてくれたまえよ!」
バタンッ!
ハニー「……はぁ、まただめね」
アーニー「何をおっしゃる僕たちのハニー!君はまたまた優等だったじゃないか!君だから当然だけど!」
ハニー「それは、私だものね」
マルフォイ「……フンッ」
ハニー「あら、なぁにマルフォイ。言いたいことがあるならはっきりすればどうかしら」
マルフォイ「別に」
ハニー「自分はもっと、授業なんかより大きなことをやってる、そう言いたいわけ?」
マルフォイ「うるさいっっっ!!!!!」
ハニー「っ」ビクッ
アーニー「うわ!なんだろ!地震!?なんでハニーを乗せてる僕の体がすごく揺れたんだろう!?」
マルフォイ「うるさいぞ、ポッター……お望みなら、そこの負け犬寮の奴がつけているのと同じようにその文面でバッジを作ってやる」
アーニー「失礼だぞ!僕のこのバッジは『ホグワーツのチャンピオン、セドリックを応援しよう!』の方だけだ!今は!!」
マルフォイ「黙るフォイ」
ハニー「……締まらないわね最後まで」
マルフォイ「うるさいって言っている……今に、くそ……今に」
バタンッ
ハニー「……」
アーニー「なんだあいつ、あの態度!一番豚に言いつけてやる!」
ハニー「……マルフォイ、今気づいたけれど……やつれてたわね」
アーニー「…………あっ!!!それにあいつ、負け犬寮って!!!失礼な!!!犬じゃないぞ、僕らは!!!!穴熊、もしくは豚だ!!!」
ハニー「……怒る場所が違うわ、アーニー」
608:
放課後
談話室
ロン「――ってな具合で、僕の方はあと眉毛半分だったってのに不合格だったんだ!なんだってんだよ、眉毛がないくらい!パパの頭を見ろよ!」
ハーマイオニー「失礼にもほどがあるでしょ……でも、本当に厳しいと思うわ。次は合格よ、絶対ね」
ロン「あぁ、一発合格な君と同じくね。全く、予想を裏切ってくれないよなぁ君は。ハニーの絶対的な美しさくらいに」
ハニー「私のハーマイオニーだもの、当然だわ。ロン?あなたも私の豚なのだから、今度はしっかりなさい。いい?」
ロン「ヒンヒン!もちのロンさハニー!」
ロン「今度の試験じゃ『どうにも男子生徒の合格者が少ない。お手本を見せましょう、こうです!』つってマダム・ロスメルタのロスメルタに特攻しやがったあのトワイクロスの野郎の真上に現れてやる、って皆で誓ったからね!」
ハニー「……懲りない人なのね」
ハーマイオニー「本当に」
610:
ロン「君の方はどうだったんだい、ハニー。アーニーの奴に委任状渡して仕方なく授業中のマットの役目を譲ってやったけど」
ハーマイオニー「変なところしっかりしてるのね……」
ハニー「快適だったわ。あなたほどじゃないけれど」
ロン「ヒンヒン!この六年で僕の背中はハニーにジャストフィットする形に進化してるのさ!当たり前だろ?僕ぁ豚だぜ?」
ハーマイオニー「何をバカな、って言いたいけど……六年間ハニーが腰掛ける度に毎回だと、本当にそうなっていそうだわ……それよりも、収穫の方を聞きたいところよ、ハニー?」
ハニー「……あなたが聞いたらがっかりするリーマスの話なら」
ハーマイオニー「……色んな意味で聞きたくないわね」
ロン「でもどうせチョコレートのことなんだろうなぁ、ってのは想像できるよな、うん。ハニーの頭の中に黒くて大きい犬が駆け回ってるんだろうってことが想像できるくらいたやす痛い!ありがとう!」
ハニー「スラグホーンの、記憶の方は。てんで駄目よ、相変わらず……あぁ、最後の手段に出るしかないのかしら」
ロン「特製首輪は完成してるぜ、ハニー!」
ハニー「不本意だけれどね……でも、あと少し……最初に問い詰めた時から、そう思っているのだけれど……あと少し何か、幸運が……」
ハーマイオニー「……!それよ、ハニー!!」
ハニー「? なぁに?」
ロン「『幸運』が『ハニー』に聞こえたのかい?分かる分かる、似てるもんな。ねぇ、幸運・ポッターさん」
ハニー「ハァイ?」
ロン「ヒンヒン!」
ハーマイオニー「そうじゃなくて!ハニー、フェリックスよ!フェリックス・フェリシス!幸運の液体!」
ハニー「……それは、あの液体……まだ、残してはいる、けれど」
ハーマイオニー「そうでしょう?あの時使ってなかったのなら、ほら!今が正しく使う、その時だわ!」
ハニー「……そう、ね。それが……でも」
ロン「あんまり急かしてやるなよ、ハーマイオニー」
ハーマイオニー「どうして!?」
ロン「きっとハニーは最近気づいたのさ。この液体、あの眠ってるミスター肉球の口に流しこんだらどうなるのか、って……」
ハニー「ロン」
ロン「ヒンヒン!なんだいハニー!」
ハニー「ここに、今日アーニーが煎じた魔法薬があるわ」
614:
ロン「あぁひどい、ママを怒らせた時の晩御飯よりひどかった、マーリンの髭」
ハーマイオニー「えーっと、ハニー?気持ちはよくわかるけど、眠ってる人に起きる幸運は、それこそ夢の中くらいなんじゃないかしら……」
ハニー「そんなこと考えていない、ったら。それに、シリウスならもっと大事なことに使え、そう言うはずだわ」
ロン「そう言うだろう、ってとこまで考えたわけだよnあ、はい。大鍋の隅にまだ残り、うん。ハニーからもらったものだもの、完食するのが僕の義務さ」
ハニー「それでいいの。フェリックスを、寝室から……ハーマイオニー?お願いできるかしら」
ハーマイオニー「? あなたの頼みなら聞くわ。でも、どうして私?監視しなくっても、ロンならその悪夢みたいな薬飲み干すと思うわよ」
ハニー「? だってあなた、『姿くらまし』に合格したのでしょう?」
ハーマイオニー「忘れておいでみたいね、ハニー。この城の中じゃ誰も、あの魔法は使えないってこと」
ハニー「あぁ、そうだったわね……じゃぁ、こんな風にしてもすぐさま寝室に飛ぶ、ってことも出来ない、そういう話だったかしら?」
ハーマイオニー「きゃぁ!?ちょっと、ハニ、だめ、っちょ、あなたそんなこと言って場所なんて考えたことこれまで、あぁ、そんな、ハニー、どこにでも、なんて、バンディマンの生息地じゃ、あぁ……」
ロン「つづけて!やったね!アーニーのやつ、さてはこれフェリックスだなブクブクブクブク」
ネビル「どうzうわあぁあああああああぁあああロン!?ロン!?顔色が君の髪色と真逆でそれ、ろ、ローーーーーーーン!?!?!?」
615:
ハニー「久々に見たわ、フェリックスの小瓶」
ハーマイオニー「あんまりいい思い出はないわね」
ロン「すっごい効き目だぜ、それ。ハニーの存在を目にしたくらい、やっぱりハニーって幸運だよなぁ」
ハニー「えぇ、そうね。権化とも集合体とも呼べるわ」
ハーマイオニー「というか、あなたは本当のこの薬飲んでないじゃない。何を言ってるの」
ロン「飲んだと思っただけであの効果なんだ、同じようなもんさ」
ハニー「一瓶で半日……でも、そんなに長い時間はいらないわ。そうね、一、二時間……ハーマイオニーの口で二口くらい、かしら?」
ハーマイオニー「な、なんで私の口換算なの?ね、ねぇ?どうして口移し前提で話しているの?」
ロン「どうぞどうぞ」
ハーマイオニー「うるさいわ。ハニー、真面目に。スラグホーンの記憶、手に入れるって約束したんでしょう?ダンブルドアと」
ハニー「……いつだって、大真面目だわ。それじゃ……」
キュッ、キュッ、キュポンッ
ハニー「……いただきます」
スッ
ハーマイオニー「……」
ロン「僕ってなんでビンじゃないのかな」
616:
ハニー「――プハッ……ふーっ」
ハーマイオニー「あー、ハニー?気分はどう……あー」
ロン「ヒンヒン!みるみる満面の笑みに変わっていく君もステキだねハニー!」
ハニー「――えぇ!わたしはいつだって最高、当然じゃない!ロン!」
ロン「うわびっくりした!?え、えっと、ハニー?上ずった声で、うん、その感じももちのロンステキだけどさ」
ハーマイオニー「だ、大丈夫なの、ハニー?」
ハニー「当然よ!何もかも、簡単にうまくいくわ!スラグホーンの記憶?このわたしにかかればそんなもの朝飯前、そうでしょう?」
ハーマイオニー「あー、えぇ。えぇっと……いつも通りなのかそうじゃないのか、判断に困るわ、うん」
ハニー「さっきも言ったわ!私はいつだって最高、って!それじゃぁ、行かなきゃ!」
ロン「うんハニー!乗せていくよ!」
ハーマイオニー「えぇ、私達も一緒にいくわ。なんだか、あなたテンションが……」
ハニー「いいえ、一人でいいわよ!早く行かなきゃ! ハグリッドのところへ!」
ロン「うんうん……うん?」
ハーマイオニー「ハニー!?」
ハニー「今晩はあそこで決まりよ!分かる?何かいいことが、起こるような気がするわ、わたし!」
ロン「……これ、酒じゃないよな」
ハーマイオニー「……『的外れ薬』、とか?」
ハニー「アハハハハハハハッ!」
ロン「」ビクッ
ハーマイオニー「」ビクッ
ハニー「大丈夫よ、心配しないで! 自分がなにをしようとしてるかは、分かってるわ!少なくとも、フェリックスには分かってる!それだけよ!」
ハーマイオニー「……」
ロン「……なるほど!フェリックスもハニーの豚ってわけだな!うん!」
ハーマイオニー「諦めないで」
621:
ハニー「それじゃ、行ってくるわね!透明マントもあるもの、もっとも、かぶる必要なんてないんだけれど!」
ハーマイオニー「ちょ、ちょっと、ハニー?そんな無謀なこと……」
ハニー「無謀なもんですか!ほら、今のわたし!とーっても幸運なの!信じて?ね!」
ハーマイオニー「……小首かしげる仕草が男の子だったら鼻から鮮血噴出すレベルだわ」
ロン「代わりなよばーまいおにー」
ハーマイオニー「鼻に羊皮紙詰め込んでご苦労さま」
ロン「あのさハニー。君をおいてこんな夜中になんて、僕ぁ君の一番の豚だけどそんなお願いは……」
ハニー「ロぉン?」
ロン「はい!」
ハニー「待て♪」
ロン「喜んで!!!!ヒンヒン!ヒン!!!」
ハーマイオニー「期待してなかったわ……」
ハニー「じゃあね!いい報告を期待してて……あ!それから!ロン、それにハーマイオニー!」
ハニー「わたし、二人がとってもお似合いだと思うわ!ごゆっくり!」
ハーマイオニー「」
ロン「」
バタンッ!
ハーマイオニー「……」
ロン「……」
ハーマイオニー「……え、っと。あー、な、なんだったのかしら!ハニーの、あのテンション!って、行かせてしまってから言っても、しょうがないけど、あー」
ロン「そ、そうだよな!きっとスラッギーじいさんめ、薬を間違えて、あー、そ、そうなるとハニーをやっぱりとめ、でも待てって言われ、えーっと」
ハーマイオニー「あー……」
ロン「……は、ハハハハハハ!!」
ハーマイオニー「……ふ、フフフ!」
ロン「HAHAHAHAHAHAHA!なんだこれ!!!マーリンの髭!!!髭!!!!!」
624:
廊下
ハニー「ふんふふっふ〜ん♪」
フィルチ「む!どこの生徒だこんな夜中に抜け出して鼻歌を歌ってるのは!そっちか!!」
ハニー「あら、この間マクゴナガル先生からいただいた生姜ビスケットの残りがポケットに!はしたないけれど、あっちにポイしちゃいましょう!それ!」
ミセス・ノリス「にゃーん!」
フィルチ「あぁあミセス・ノリス!ノリスちゃーーーーん!!どこにいくんだーーい!」
ハニー「フフッ、あのビスケットマタタビか何かでも入ってたのかしら!ふんふふふーん♪」
ピーブズ「ウッヒャァアアッハハハハーーーーァアアア!ごぉきげんなようだなぁー、ポッティーちゃ――」
ハニー「あら、ハァイ!そこにいるのはスリザリンの寮憑きゴーストの血みどろ男爵!元気!?あぁ、お亡くなりなんだもの!今のは失礼ねぇ! 今日も透けてるかしら!」
ピーブズ「ヒェッ!? あ、あいつにゃかなわねぇ!おさらばララバイだ!!」スーーーッ!
ハニー「あら!ただの甲冑の影だったわ!私ったら!フフッ! ふんふふ〜〜〜ん♪」
スネイプ「……廊下の角の向こうから、どこかの生徒がのん気に歩いて来るようですな」
スネイプ「スリザリン生ならば少し注意し、寮まで送ろう。他寮ならば五十点は減点しましょうかな。グリフィンドールならば停学」
ハニー「ふんっふふ〜ん♪」
バッ!
スネイプ「こんな時間になにをs」
ハニー「ハァイ、セブ♪」ニコッ
スネイプ「」
バタンッ
ハニー「あら?気絶しちゃったわ?もしもーし! ふふふっ、おねむだったのかしらね!」
631:
玄関ホール
ギィィッ
ハニー「フィルチが鍵を掛け忘れていたみたい!あぁ、なんてついてるのかしら!当然ね、今夜のわたしは最高なんだから!今夜も、かしら!」
ハニー「さぁて、ハグリッドの小屋!ハグリッドの小屋よ!」
ザクッザクッザクッ
ハニー「ハグリッドの小屋……けれど!」
クルッ! ザクッザクッザクッ
ハニー「こんなに新鮮な空気を吸えるんだもの!ちょっと寄り道しましょう!競技場の方……いいえ!」
クルッ! ザクッザクッザクッ!
ハニー「野菜畑の方に回れば、きっと楽しいわ!フフフッ!走りましょう、わたし!」
マクゴナガル「さて、今夜も異常は……校庭のあの、影はなんでしょう」
マクゴナガル「はて……今宵は月が隠れていて、どうにも……」
マクゴナガル「……ですが、あの気まぐれで不規則な動きは、おそらく動物の類でしょう」
マクゴナガル「遠目に見えた毛色からするに、ミスター・クルックシャンクス?」
マクゴナガル「彼女には今度言っておかなくてはいけませんね、ホグワーツに住まう猫として、もう少し……」ブツブツブツ
ハニー「アハハ!ハァ、ふー。疲れちゃったわ。すこーし休憩!」
ハニー「スプラウト先生の、温室のところね!あら?」
スラグホーン「そろーり、そろーり、と……いやいや、これは盗みとかではなく、学術的研究のための採取なのだが、うん、そうさ。でもポモーナはきっと怒るだろうから、こーっそり、すこーし……」
ハニー「こ ん ば ん わ 、 ス ラ グ ホ ー ン 先 生 !!!」
スラグホーン「うひゃぁ!?!?は、はははははハニー!?」
ハニー「アハハハハハハッ!」
スラグホーン「な、何笑っとるんだね!?え!?し、心臓止まるかと思った!声でかっ!?」
ハニー「先生!これからわたし、ハグリッドのところに、50年以上生きたアクロマンチュラの埋葬に行くのだけれど!ご一緒に、どうかしら!」
スラグホーン「あ、あぁ、その、私はすこしいそが…………アクロマンチュラ!?!?や、野生種がここに!?え!?ぜ、是非とも是非とも!あれの毒、それに体液は……ハッハッハ!ハニー、今日の君はやけににこやかだねぇ!え!」
ハニー「ええ、ふふっ!今日のわたしは、最高よ!」
643:
ハグリッドの小屋
コンッココン♪
ハニー「こーんばんは、ハーグリッド♪」
ガチャッ
ハグリッド「グスッ、ぅおぉ、ハニー!来てくれたんか!え!?そんで、そんで、なんだこの可愛い生き物天使か」
ハニー「知ってるわ! ハグリッド、辛かったわね! でも、わたしが一緒にいてあげるわ!ね……?」
ハグリッド「うぅ、おぉおおお、ハニー!お前さんは、お前さんはなんて優しくて、そんで、なんちゅー女神なんだ!ヒン、ヒンヒン!」
ハニー「知ってるったら! ロンとハーマイオニーは来られなかったけれど、怒らないであげてね?けれど、途中で出会った素敵なお客様もつれてきたわ!」
ハグリッド「えぇんだ、えぇさ、わかっとる、無理なお願いをしとったんだ。そんで……オー!ホラス!?」
スラグホーン「この度は、まことにご愁傷様で……ハグリッド、あぁ、友よ。なんと言ってやればいいか」
ハグリッド「ぐすっ、ぐすっ、えぇ、えぇんだホラス!来てくれただけで、アラゴグも喜ぶにちげぇねぇ!俺とあんたは確か殆ど付き合いなかったけど、なんて親切なんだ!」
スラグホーン「何を言うねハハハわたしは君が学生の頃からほらよくやる子だなあと目をかけていたさ、ははは」
ハグリッド「それに、ぐすっ、ハニーを罰則しなかったことも、感謝します。ありがとう、ありがてぇ。あんたはいい人だ、何か今度お礼をやらねぇと」
スラグホーン「そんなそんな、ハハハ!HAHAHAHAHA!」
ハニー「今日は先生も陽気ねぇ!」
646:
スラグホーン「悲しい夜だ、まっこと。ハグリッド?哀れな仏さんはどこにいるね?」
ハグリッド「あそこだ、カボチャ畑の方。息を引き取った後、俺がここまで運んできた……眷属どもめ、アラゴグを食おうとしよったんだ」
ハニー「まあ……!」
ハグリッド「あぁ、そうなんだ。そんで、ハニー、両手で口元押さえるその仕草なんだろうルビウスアラゴグの後追って昇天しそう」
スラグホーン「眷属……つ、つまりハグリッド?この森では、アクロマンチュラが繁殖している、そう言ってるのかね?え?」
ハグリッド「あぁ、そうだ。アラゴグと、モクザっちゅう夫婦が最初でなぁ」
スラグホーン「……ニュートンが発見できなかった群生地が、まさか彼の過ごしたすぐ傍の森にあったなんてなぁ」
ハニー「あぁ、えぇ!『幻の動物とその生息地』でのアクロマンチュラの項目のことね! 未確認ってところ、このわたしとロンが確認済み!って書きなおしてあげなきゃ!」
ハグリッド「あぁ、でっけぇ群れになってくれた。そんで……そんで、あいつらはアラゴグが死んで混乱しちょる」
ハニー「わたしがいなくなった後の可愛い豚たちのようなものね!」
ハグリッド「そりゃみんなやっぱり後追いするけどよぉ……あいつらは、俺のことも食おうとしよったんだ!信じられるか、ハニー!今まではアラゴグが命令したから俺を食わなかっただけだ、とぬかしよった!」
ハニー「まあ……」
ハグリッド「幸いグロウプが間に入って『それが君達の尊敬していた長であるアラゴグの意志を報いる行いだというのか!恥を知れ!!!』っちゅってくれたおかげで隙をみてアラゴグを運んだけどよぉ」
ハニー「頼れる弟ね、ハグリッド!」
スラグホーン「弟?」
ハニー「なんでもないわ、せんせ!ねっ!」
スラグホーン「え?あ、あぁ、うん、ハハハ!」
648:
カボチャ畑
スラグホーン「……すごい。なんと、壮大なものだ。あぁ、こんなサイズを生で、野生種をお目にかかれるなんて……」
ハグリッド「そうだろう、ホラス。美しかろう?え?」
スラグホーン「あぁ、なんとなんと……金色の、ガリオン金貨のように輝いて見えるじゃないか」
ハニー「ハグリッド、きちんとした埋葬をするんだから、わたしたちだけじゃなくアラゴグも正装させてあげなきゃいけないわ!死化粧とかね!」
ハグリッド「あぁ、そうだなぁ。でもよぉ、俺はそういうのをてんでしらねぇ……」
ハニー「スラグホーン先生が詳しいそうよ! ね、先生!」
スラグホーン「お任せあれ! ハグリッド、すこーし仏さんに触ることになるがいいかね?」
ハグリッド「ぐすっ、あぁ、好きにしてやってくれ。アラゴグも喜ぶ、うん。ぐすっ」
スラグホーン「ふーむ、まずは、そう!体液等を丁寧に抜いてやらねばいかんね、うむ。埋葬した後に腐臭が広がる原因となり、獣に掘り起こされたりなんだったりあれだったり……おぉ、何故かこんなところに大き目の丸瓶が!不思議だなぁ!」
ハグリッド「ぐすっ、あんたがいてくれて良かった、ホラス」
スラグホーン「いやいや、ハハハ!一瓶数百ガリオン!ハハハハハ!」
649:
スラグホーン「さて、採取、ごほん、最後の仕上げも終わった。ハグリッド、埋葬を始めようか?」
ハグリッド「ぐすっ、あぁ、そう、そうしよう」
スラグホーン「この穴に埋めるのだろう? わたしが杖で……?」
ハグリッド「いんや、えぇ。俺が抱き上げて、入れてやりてぇ。まだちーっちゃな赤ん坊の頃、卵から孵った時も、俺がこの手で抱きとめてやったんだ……」
ハニー「アラゴグの、ママだったのね!ハグリッド!」
ハグリッド「ぐすっ、ひぐっ、そう、可愛いちっちゃな鋏のアラゴグ……うぅ」
ガシッ ググググッ ドサッ
ハグリッド「ぐすっ、ぐずっ、おぉ、おぉぉお……おーーーいおいおいおいおい、アラゴグ、アラゴグぅー!」
スラグホーン「……君はよくやった。彼も君に入れられて本望だろう。別れの言葉は、私が代わろうか?」
ハグリッド「おぉ、おお、たのむ、あぁ、ああああ、アラゴグ、アラゴグーぅ!」
スラグホーン「それでは。ゴホン……」
スラグホーン「さらば、アラゴグよ! 蜘蛛の王者よ! 汝との長く固き友情を、なれを知る者全て忘れまじ! なれば亡骸は朽ち果てんとも、汝が魂は懐かしき森の住処にとどまらん! 汝が子孫の、多目の眷属が永久に栄え――」
ハニー「せんせ、長い♪」
スラグホーン「ありがとう!!!ありがとう友よ!!!!さあハグリッド、しみったれた空気はおしまいだ!この最高級オーク樽ハチミツ酒をどーんと開けようじゃないかね!あぁ、友よ!アラゴグよ!ありがとう!ありがとーーーう!!」
ハグリッド「おぉおお、おーーーぉおおお、アラゴグ、アラゴグぅーーーーー!!元気でな、元気でなーーーーぁ!!アラゴグーーーーーーーー!!」
ハニー「あらごぐー!」
650:
数時間後
ハグリッド「そんでよぉ、そんでよぉホラス!あいつぁ卵から孵った時、ほーんとにちっせぇペキニーズ犬くれぇのよお!」
ハニー「ふふふっ!ハグリッドったら、その話三回目よ!」
スラグホーン「ハッハッハ!いいじゃぁないか!さぁさぁハグリッド、飲みたまえ飲みたまえ!」
ハニー「(お酒が、かなり減ってきてるわね……もっと飲んでもらわなきゃ。フェリックスがそう言ってるわ)」
ハニー「(二人に、気づかれないように……無言で、補充呪文)」
ハニー「(出来るかしら)」
ハニー「(なんて!考えるだけ無駄よね!)」
ハニー「(えいっ♪)」
コポコポコポコポ……
スラグホーン「そういえばハグリッド?あそこにぶら下がってるのはなんだね?え?糸のようなものの、束……まさかとは思うが、ユニコーンの毛じゃなかろうね?」
ハグリッド「おぉ?おー、そうだ!森を歩ってるとよぉ、木の枝なんかにひっかかっちょるんだ!頑丈だから、怪我した動物の包帯を巻いたりすんのに使っちょる!」
スラグホーン「そんな、君ね、あれがどんなに……」
ハグリッド「なんならあんたにやろう、ホラス!こんなもんでお返しになるかわからねえが!ほれ!」
スラグホーン「ほんとーかいいやあ悪いね……ひ、一束!?い、いやいやいやいやいやいや!!!!流石にいやいや!!一本十ガリオンがこんな、いやいやいや!!!痛む!!!私の良心がディフィンドしちゃう!!」
ハグリッド「ハッハッハッハッハ!!ホラスはおもしれーなぁ!!ほーれ、かんぱーーーーい!!」
スラグホーン「あ、ああ!友情と気前のよさに、かんぱぁーーーーいい!!!」
ハニー「かんぱーい!」
652:
ハグリッド「そんでよぉ、ドラゴンの卵はもう絶対手はださねぇってきめたんだけどよぉ、チャーリーならもしかして、ってよぉ」
スラグホーン「なんと、ウィーズリーのお兄さんはあのレジェンドシーカーのチャーリーか。しまった私としたことが……な、なんだね?彼に頼めば?ど、ドラゴンの……?」
ハニー「ふふふふっ」



ハグリッド「アラゴグの家族たちもよお、しっかり話すりゃ分かってくれると俺ぁ思うんだ!だって俺ぁ奴さんの親友だったし、あいつらの兄弟も同じだ!そうだろうが?」
スラグホーン「あぁ、是非とも連中のコロニーに無事足を運べる折には案内してもらいたいものだ。美しいのだろうね、うん。アクロマンチュラの繭……あぁ、酒が美味い!美味しい!」
ハニー「ふふっ」



ハグリッド「かんぱーーーーぁい!かんぱーーーーぁい!!ホグワーツにかんぱーーーーぁい!!」
スラグホーン「かんぱーーーーい!たっくさんのお酒に、かんぱーーーーい!!」
ハグリッド「ダンブルドアかんぱーーーーい!!かんぱーーーーい!ハニー・ポッター、俺達の女神にかんぱーーーい!」
スラグホーン「そう、そうだ!『生き残った女の者』、とか、なんとか、あぁ、かんぱーーーーい!!」
ハニー「……ふふっ」



スラグホーン「『おぉ〜♪ かくしてみんなは英雄の オドを家へと運びこむ〜♪』」 
ハグリッド「あぁ、この歌は悲しいなぁ。いい奴ほど早死にする、そうだろうが?」
スラグホーン「『その家はオドがその昔 青年の日を過ごした場〜♪』」
ハグリッド「俺の親父はまだ逝く歳じゃなかったし……おまえさんの父さん母さんもだ、ハニー……誰がなんと言おうと、あの二人はあの年頃の魔女と魔法使いン中じゃ、いっちばんだった」
スラグホーン「半分はどうかと思うがね『オドの帽子は裏返り オドの杖はまっぷたつ〜♪』」
ハグリッド「ひどいもんだ、ひどい……おぉ〜♪」
ハニー「……」
ハグリッド・スラグホーン「「『悲しい汚名の英雄の オドはその家に葬らる〜〜♪』」」
ハニー「…………」
ハニー「……さっきまでの私なにあれ」
659:
ハニー「……(この私が、私が!飲んだ薬に飲まれるなんて。許されないことだわ)」
ハニー「……(まだ、幸運の作用は残っているようだけれど)」
ハニー「……」
ハニー「……」
フェリックス『(へーい嬢ちゃん!ここはノリよくいっちゃおうぜ!それが幸運の――)」
ハニー「(この私に命令するんじゃないわよこの幸運豚!!!)」
幸運豚『……ヒンヒン!』
ハニー「……(これで、いいわ。でも、そうね。自分の意識がはっきりしだしたのは、もう時間がないってこと)」
ハニー「……(丁度いいわ。ハグリッドも、酔いつぶれて眠ってしまった。スラグホーンは……ハグリッドの最後の言葉で、何か考えてるところみたい)」
ハニー「……(本当、幸運ね)」
ハニー「……スラグホーン先生」
スラグホーン「ひっく……あぁ、ハニー……や、どうしたね。いやにおとなしくなって」
ハニー「忘れて頂戴」
662:
スラグホーン「オドの歌は知っていたかね、ハニー?魔法使いは葬儀の後、みなでこれを歌うものなんだ……」
ハニー「こういう場にいるのは初めてだもの、知らなかったわ」
スラグホーン「そう、そうだろうね。君は何せ、若い……」
ハニー「……若いからって、無縁というわけでもないですけれど。モンゴメリー姉妹の弟は、狼人間に殺された、って。新聞に書いてあったわ」
スラグホーン「……あぁ、そう。そういう時代だ。かつてと同じ……リリー、そして」
ハニー「パパとママが、ヴォルデモートに殺された時と?」
スラグホーン「ひっ!! あぁ、ああ、そうだ……ひどいことだ、ひどい……君は当然、覚えていないだろうね。まだ一歳だったのだから」
ハニー「えぇ。けれど、何の因果か知ることが出来たわ。当時の、詳しい情景までね……」
スラグホーン「……ハニー、無理に」
ハニー「パパが先に死んだわ」
スラグホーン「……ジェームズ・ポッター」
ハニー「私と、ママを逃がすために。パパが真っ先に、あいつに立ちふさがったの」
スラグホーン「……あぁ、彼はそういう奴だ」
ハニー「次に、ママだった。ママは、本当は……殺されるはずじゃ、なかった」
スラグホーン「」
ハニー「あいつは、私だけを殺そうとしていたの。何度もママにそこを退けって、言ったわ。ママは……逃げることができた」
スラグホーン「リリー……リリー……やめてくれ」
ハニー「……考えてみたら ママが死んだのは私を」
スラグホーン「やめろ……やめてくれ、ハニー」
ハニー「わたしを、かばったせいで」
スラグホーン「ちがう!!!!」
バンッ!!
スラグホーン「私だ……私のせいだ!!全部……リリーと、リリーの愛する君達が不幸になったのも全部!だから……」
ハニー「……そっか。先生は、ママが好き、っだったのよね。だから……あんな記憶、忘れていたかったの」
スラグホーン「……愚かしいだろう、分かっている。彼女が好きだった?当然だ……彼女に関わって、彼女を好きでいられない子が、いるはずがないのだ」
ハニー「私のようにね」
スラグホーン「…………本当に二人の子なのだなぁと思うねまったく」
663:
ハニー「……失礼だけれど。先生は自分勝手だわ」
スラグホーン「……」
ハニー「後悔も、償いも、自分の中で終わらせて。過去を過去のものとして。思い出の中でしか、ママと会おうとしない」
スラグホーン「……やめてくれ」
ハニー「ママは、私に。わたしに命をくれたわ。けれど、先生はわたしに記憶をくれない」
スラグホーン「やめてくれ、ハニー……あれは私の恥ずべきものだ……あれを見て、君は私を軽蔑するだろう……それだけだ。何の、役にも立たない」
ハニー「ダンブルドアがそれを必要としてるわ。その記憶こそが、ヴォルデモートを倒す手がかりになる、って」
スラグホーン「何故だね。何故、アルバスがそこまでする必要がある。そしてそれを……なぜ、君が手伝うのだ?え?」
ハニー「それは……」
ハニー「……」
ハニー「……(今夜のことは、お酒のせいで明日には綺麗さっぱり忘れている、みたいね)」
幸運豚『(ヒンヒン!)」
ハニー「(返事どうも、さっさと私に消化されなさい)」
ハニー「私が、『選ばれし者』だからよ、先生。当然じゃない」
スラグホーン「!!!」
664:
スラグホーン「君は、やはり!選ばれし、それでは……」
ハニー「えぇ、そう。世の中の噂と大体一緒。あいつを倒さなきゃいけないの。それが出来るのは、わたしだけ」
スラグホーン「つまり、つまりだハニー……君は恐ろしい事を言っている。つまり、わたしに、あの人を打倒する手助けをしろ、と」
ハニー「その通りよ」
スラグホーン「!」
ハニー「先生……勇気を出して」
スラグホーン「……」
ハニー「もう逃げてはだめ。ママはきっと、いいえ、絶対あなたのことを恨んだりなんてしないけれど」
ハニー「あなたがそんな気持ちでいたら、あなたの中のママは、死んだままだわ」
ハニー「生きているママを。今、ここにいるママを」
ハニー「ママの愛に、応えて。わたしを、助けて」
ハニー「それが、あなたが出来る、唯一の――」
スラグホーン「うわああああああああああああああああん!!!」
ハニー「」ビクッ
スラグホーン「おーーーーいおいおいおいおいおい!!リリーーーーィイイイイ!!リリーーーーーーーーィ!!」
ハニー「え、っと。あの、先生」
スラグホーン「わたしは、わたしは、あああああああああ!!君を二度も死なせたようなものじゃ、ないか!!あああああああ、うわぁあああああああん!!おーーーいおいおいおいおい!!」
ハニー「あ、あの、先生。そんな、子供みたいに泣かなくても……えっと」
スラグホーン「うぇえええええええ、うぅぅぅ、ああああ」
ハニー「……」
フェリックス『ヤッタレ』
ハニー「……よしよし。怖かったわね、よしよし」
スラグホーン「ママーーーーー!!」
ハニー「……そこは『リリー』じゃないのかしら」
667:
スラグホーン「ぐすっ。すまんね……取り乱した。酒を飲みすぎたね、酒を」
ハニー「お酒のせいにすれば許される、というものではないわ」
スラグホーン「……さぁ、これを」
スッ サァァァァッ
ハニー「……先生が杖をあてたこめかみのあたりから、白い糸状のものが」
スラグホーン「……おそらくこのユニコーンの束よりも価値のない、なんのことはない……ただの老いぼれの恥ずべき行いの記憶にすぎないが。それでも?」
ハニー「えぇ。私たちにはそれが、重要だわ。先生にとっても、ね」
スラグホーン「……さぁ、とりたまえ。それで……私達のリリーの笑顔を奪ったあいつに」
ハニー「えぇ。しっかりけりを、つけてやるわ」
ハニー「……先生。さっきは自分勝手だなんて言ってごめんなさい」
スラグホーン「いやいや、いいんだ。そういわれてもしょうがない……わたしは」
ハニー「えぇ、そうね。お気に入りの生徒を集めて、自分の利益になるもの、価値のある物にしか興味がなくて。虚栄心が丸出しで。悪い人ではないけれど、少し嫌な部分が見えてしまう人だわ」
スラグホーン「……」
ハニー「けれど、先生は最後にはこれをくれたわ。この記憶を、わたしにくれた。その決断をしてくれた。先生は、愛を忘れてなんてなかった」
ハニー「……あなたは、勇敢で気高いわ。ありがとう、ホラス」
ホラス「……」
ハニー「……あら、今度は随分、静かに泣くのね」
ホラス「あぁ、ハニー……老人はね、時に涙だけが、意図せず流れてしまうのさ。さぁ、行きなさい……アルバスが待っているのだろう」
 「うぉっほん!」
ハニー「……今どこか外からの咳払いは聞こえなかったことにして。えぇ、そうね……それじゃ」
ギィィッ
バタンッ
ホラス「……あぁ。本当に……君の子供なのだなぁ、リリー」
ホラス「……」
ホラス「……首輪って、どこでもらえるのだろう」
ガチャッ
ロン「お困りのようだね」
673:
校長室
ハニー「……あれから少しハグリッドの小屋の周りを探してみたけれど、あの意地悪豚はどこにもいなかったわ」
ハニー「あのタイミング、絶対あそこにいたでしょ、あの豚……まったく、まわりくどいのだから」
ハニー「……」
コンコンッ
 ダンブルドア「ゼーッ、ゼーッ、ゼーッ、ヒューッ、フーッ。は、入って、おるよ」
ガチャッ
ハニー「嘘つきなさいよわざとらしく息切れして」
ダンブルドア「いやはや、さすがのわしもうむ体力がそろそろあれじゃて……さて、ハニー。こんな遅くにどうしたね」
ハニー「乗ってあげるわ……手に入れたの、スラグホーンの記憶! 本物の記憶を」
ダンブルドア「よし!それでは前もって用意していたこの憂いの篩を」
ハニー「早いったら。もう少し感慨もたせなさいなんなのよ怒るわよこの豚」
ダンブルドア「冗談じゃて、冗談。ちょっとしたお茶目じゃよ……ハニー、君なら必ず成し遂げると思っていた」
ハニー「えぇ、そうね。私だもの」
ダンブルドア「たとえ途中ちょっとハイテンションすぎてこれまでにないあざとさを発揮しておったとしても」
ハニー「どうやらやっぱりぶっ飛ばされたいようねこの豚」
ダンブルドア「おぉう、お叱りは後で受けようかのう。さぁ、ハニー……これで、全てが分かる」
ハニー「……えぇ」
ダンブルドア「今こそ、やつのしでかした全てを暴く時が……記憶を」
ハニー「……」
ポチャンッ
グルグルグルグルグルグル……
674:
記憶の中
リドル『ところで先生、メリーソート先生が退職なさるというのは、本当ですか?』
スラグホーン『おいおい、トム。全く本当に、どこから聞いてくるのかね!トム、トム、そればかりは本当でも教えてあげることは出来ないよ、困った子だ』
ハニー「……あの時の記憶ね。確か一度、このあたりで……」
ホラス『全く、トム。君のような優秀な生徒は、私の教師人生でも初めてだよ。そして恐らく今後、君ほどの人間は現れないことと確信するね――』
ハニー「そう、ここから霧がかかったように……けれど」
ダンブルドア「……今回は、改竄はなされていないようじゃ。ハニー、君は見事にやりとげたのう」
ホラス『――君はこれから二十年のうちに魔法省大臣になれると、わたしは確信しているよ。引き続きパイナップルを送ってくれたら、十五年だ。わたしは省にすばらしいコネがある』
リドル『覚えておきます、先生。ですが僕に政治が向いているとは思えません――生い立ちが、ふさわしくありませんので』
クスクス
ハニー「今の……リドルが孤児だ、って笑って……違うみたいね」
ダンブルドア「この頃には奴は、自分の母親の出目がスリザリンの末裔だと知っておった。それを吹聴しておったのじゃろう、その上での仲間内だけに伝わる皮肉じゃな」
ハニー「……嫌な趣味」
ホラス『こら、こら!笑うんじゃない!トム、生まれを恥じる必要なんてない。君は素晴らしい魔法使いだし、由緒正しい魔法使いの家系であることは火をみるより明らかなのだ。そのうち、知り合いに頼んで調べさせよう――笑うなというのに!』
ハニー「……ほら。ホラスが困ってるわ」
ダンブルドア「そうじゃrえっ、ホラスがファーストネーム呼びに昇格しとるっ」
677:
ハニー「あなたは意地悪豚で十分でしょ」
ダンブルドア「ヒンヒン!」
ホラs『なんと、もう十一時か!楽しい時間はあっと言う間だね、え?』
リドル『まったくです先生』
ハニー「そろそろ、問題の箇所ね……」
ダンブルドア「……」
ホラス『――早く寮に帰りなさい、トム――』
リドル『――一つだけ、教えていただきたいことがあるんです』
ホラス『ほーう? なにかね。私が答えられるものなら、喜んで答えよう。他でもない、監督生の君なのだから!』
リドル『先生、ご存知でしょうか……先生ほどの魔法使いなら、きっとお聞きになったことがあるんじゃないかと……ホークラックス、のことですが』
ハニー「……」
ダンブルドア「……」
ホラス『……』
リドル『……』
ホラス『……闇の魔術に対する防衛術の課題かね?』
リドル『いいえ……』
ホラス『あぁ、違うだろう。この存在は未来永劫、教科書には絶対に載らない事柄の一つだ。闇も闇、真っ暗闇の術……トム?よほど難しい本を読んでいたようだね?』
リドル『えぇ……先生、先生ならきっと、詳細をご存知でしょう?だって、先生はこの城で一番の先生だ』
ホラス『ハッハッハ、褒めすぎだよ、トム。そうだな……まぁ、勿論、ざっとしたことを君に話してもかまわないだろう。疑問を持っている生徒がいれば、それに応えるのが教授の義務だ』
リドル『ありがとうございます!』
ホラス『ホークラックス、分霊箱とも呼ばれるこれは、人がその魂の一部を隠すために用いられる道具のことだ』
リドル『魂……けれど、先生。僕はそれをどうやってやるのか、よくわかりません』
ホラス『そうだろう、そうだろう。君には無縁のものなのだ……そう、魂を分断し、その一部を身体の外にある物に隠す。そうすると、肉体が破滅しても死ぬことはない。なぜなら……」
リドル『……魂の一部が、生きているから。滅びずに、地上に残っている……素晴らしい』
ハニー「不死、でも目指してるのかしら。プレティーンね、もう」
678:
ホラス「すばら……?あぁ、そう。すさまじい。しかし勿論、こういう形での魂のあり方を望む者は少ないだろう。滅多にいないはずだ……死の方が望ましい」
ハニー「……一年目、あいつは『霊魂にもみたない、ゴーストの端くれにも劣る存在になった』って」
ダンブルドア「ざまぁじゃな」
ハニー「……もうちょっと言い様」
リドル『どうやって魂を分断するのですか、先生?』
スラグホーン『それは……理解していなくてはいけない。魂は完全な一体であるということ。本来、絶対に分断などされるものではないということ。それは自然の摂理に逆らうことであり、魂への暴力行為だ』
リドル『……どう、やるのです?教えてください』
ホラス『それは……あぁ、そうだ。邪悪な行為――悪の極みの行為だよ。つまり、殺人だ。殺人は、魂を引裂く。たとえそれが自ら手を下したことでなくとも、教唆しただけでさえ……加担しただけでさえ、人の魂は傷つく。誇りある魂というものは』
リドル『……』
ホラス『分霊箱を作ろうと意図する魔法使いは、この破壊を自らのために利用する。引裂かれた魂の一部分を物に閉じ込めるのだ』
リドル『閉じ込める?一体、どうやるのですか?』
ホラス『呪文がある……ある、らしい。聞かないでくれ!わたしがやったことがあるように、見えるかね?トム!わたしが殺人者に見えるかね?』
リドル『! いいえ先生、もちろん違います。すみません……お気を悪くさせるつもりは。ただ……ほんの、好奇心が』
ホラス『そう、そうだろう。いいや、いや、気を悪くなどしていないよ。時にこの手の魔法の深淵は、優秀すぎる人材の興味を惹いてやまないものだった。君もまた、その一人ということだろう……』
リドル『好奇心ついでに、先生……もう一つ。僕がわからないのは――』
リドル『たった一つの分霊箱だけで、役に立つのですか???』
ホラス『』
ハニー「」
ダンブルドア「…………」
680:
ホラス『と、トム?今、なんと』
リドル『だって、そうでしょう?たった一つじゃ、万全とは言えない。それは、ないよりはましでしょうけれど』
リドル『魂は一度しか分断できないのですか?もっとたくさん分断すれば、より確かで強力になれるのではないでしょうか』
ホラス『と、トム……?』
リドル『つまり、たとえば』
リドル『七という数は、最も強い魔法数字ではないですか?七個の場合、もっと、特別な――』
ホラス『とんでもない!!とんでもないぞ、トム!!!』
リドル『……?』
ホラス『そもそも、忘れていないかね?え?君らしくない……魂の分断のためには一人を殺す必要がある!たった一つでも、十分に悪い事じゃないかね?それが七つ、なんて……たとえ仮定とはいえ、恐ろしい』
ハニー「……後悔してるわ、ホラスの顔。この時初めて、リドルがおかしいことに気づいたのね」
ダンブルドア「……」
ホラス『勿論、そうだろう?トム、これはあくまで仮定の……すべて、学問的な……?』
リドル『……えぇ、先生!当然ですよ、ただの好奇心です。当然ですとも』
ホラス『は、ハハ、ハ。何だ、うん。君が喜んでいるようで嬉しい。さぁ、トム。もう戻りなさい……ときに、この話を私がしたことは内密にしてくれよ?世間体が悪いし、誤解されやすい。特に……ダンブルドアはこのことについて厳しいんだ』
リドル『えぇ、絶対に……嬉しそう?えぇ、そうでしょうね……先生』
ホラス『う、うん?』
リドル『本当に、ありがとうございました――先生の、おかげですよ?』
ホラス『――』
ダンブルドア「……ハニー、ありがとう。もうよいじゃろう」
ハニー「……えぇ」
681:
ダンブルドア「……この証拠を、長年捜し求めておった。わしが考えていた理論が正しいことを証明する、証拠が」
ハニー「……」
ダンブルドア「そしてつまり、この理論が正しいと同時に……また、道のりは長いものであるということを証明しておる」
ハニー「あいつは、今の私とそう変わらない年齢の時にはもう……殺人を犯して、不死なんて事を考えていたの?」
ダンブルドア「そうじゃ。ことの重大さが伺えるじゃろう……十六歳じゃ」
ハニー「……」
ダンブルドア「わしでさえ、精々が『学生の身にして名だたる伝説の魔法使いたちと交友をもつ希代の天才アルバス君』と言われていた程度じゃ」
ハニー「うるさいわ……本当に、作り上げたっていうの?分霊箱を……それも、複数……」
ダンブルドア「いまだかつて、二つに魂を引裂く以上の恐ろしい行いをしたものはおらんじゃろう。じゃが……奴はおそらく、その先に足を踏み入れておる」
ハニー「……」
ゴトッ
ダンブルドア「ハニー。これを覚えておるかね」
ハニー「……サラザールが噛んだ、リドルの……日記帳!!」
ダンブルドア「そう、ただの記憶が思考し、取り憑き、少女の魂を搾り取り、秘密の部屋を開こうと画策した……本当に、『ただの記憶』じゃろうか。有り得ぬ。この中にはもっと邪悪なるものが棲みついておったのじゃ」
ハニー「……日記は、分霊箱だった」
ダンブルドア「左様……そして、不気味なことに。この日記の扱いは、とても『たった一つの分霊箱』に対するものとは思えんほどに、投げやりなものじゃった」
ハニー「……あ」
ダンブルドア「ヴォルデモートはルシウスにこの日記を隠すようには言うても、それほど重要なものであるとは伝えなかったのじゃろう。つまり、それは、日記よりももっと価値があり、そして複数の……分霊箱が存在していると、考えられんじゃろうか」
ハニー「……もっと、価値のあるもの」
ダンブルドア「そうじゃ」
ハニー「あいつが、自分の器に選びそうなもの」
ダンブルドア「……そうじゃ」
ハニー「……創設者、たちの。遺品」
ダンブルドア「……君がわしの授業を真剣に聞いてくれて嬉しいよ、ハニー」
ハニー「……あなたがそういう時だけは、真面目に話してくれるものね」
ダンブルドア「ヒンヒン!」
683:
ダンブルドア「奴は勝利のトロフィーを欲しがった。自分を強大にみせるシンボルを、魔法史に名を刻む者としての足跡を」
ハニー「……悪趣味ね」
ダンブルドア「まっことのう。あの可愛そうなヘプシバ・スミスから盗まれた創始者の遺物、ロケットとカップは、分霊箱になっていると考えていいじゃろう」
ハニー「……」
ダンブルドア「さて……分かっておるものから説明し終えてしまおうかのう。日記帳……これは、自身がスリザリンの継承者であることを記した証だったのじゃろう」
ハニー「あの時代では継承者として認められなかったから、その日記の中に……」
ダンブルドア「そういうことじゃろうな。そして……この指輪じゃ」
ハニー「……あなたが今年度からはめていた、ゴーント家の指輪ね。ようやく、聞かせてもらえるというわけ?」
ダンブルドア「そう、これは奴の分霊箱じゃった。わしは、警戒しておったにも関わらず……腕の一本が、こんがりジューシーに焼けてしもうた」
ハニー「誰も味わうことはないから安心しなさい……焼けた、なんてものじゃないでしょう、それは」
ダンブルドア「そうじゃな、うむ。城に戻ってからのスネイプ先生の適切な処置がなければ、わしは今生きてこの話をすることもできんかったじゃろう」
ハニー「……」
ダンブルドア「ところで先刻恍惚の表情で廊下でのびとるセブルス足蹴にしてもうたんじゃがなにあれ、ハニー、君は何か知っておるかのう」
ハニー「……さぁー」
684:
ハニー「七つの分霊箱のうち、四つは分かったわ。でも、残り三つ……」
ダンブルドア「残りは二つじゃ、ハニー。最後の七つ目の魂は、どれだけ損傷されていようとも奴自身と共にある」
ハニー「あぁ、そういう……自分も含めて七つ……『誰よりも深く不死の道に入り込んでいた』そう、のたまっていたわ」
ダンブルドア「年月が経つに連れ、人ならざるものへと風貌が変わっていったのはそのためじゃろう。魂が傷つき、切り刻まれておったのじゃ。そうでなければ、ヒトがあのような姿になるはずがない」
ハニー「……」
ダンブルドア「……ハッ、まさかドローレスも」
ハニー「どうせ吐き気がくるのだからやめなさい。それで……残り、二つね。じゃあ、創設者の……」
ダンブルドア「その一人、我らがグリフィンドールが魔法界に残した遺物はたった一つじゃ。ハニー、君は知っておるはずじゃ」
ハニー「えぇ、そうね。彼らの全てを……グリフィンドールはその象徴を、剣しか残さなかったはずだわ」
ダンブルドア「そうじゃ。そしてその剣は、この部屋で絶対安全に守られておる」
ハニー「……そのようね。レイブンクローには、何かあるの?」
ダンブルドア「『失われた髪飾り』 文字通り、何世紀もの間失われた代物じゃがのう」
ハニー「……それを、あいつが探しあてたかもしれない?」
ダンブルドア「そうかもしれんし、そうでないかもしれぬ。我々の手元にない限り、推測にしかならんのじゃ」
ハニー「……それじゃ、残り一つも手がかりなし、なのかしら?」
ダンブルドア「あぁ、そうじゃのう。実はこちらの方が確たる証拠がある、と考えておる。ナギニじゃよ、ハニー。あの者のペットじゃ」
ハニー「……あぁ、あの僕っ娘」
ダンブルドア「なにそれ知らんかった」
686:
ハニー「動物を分霊箱に、って……危険じゃ、ないのかしら」
ダンブルドア「確かに、懸命とは言えぬのう。しかし、奴はあの復活の時点で分霊箱が目標の六つに足らないことを気にしておったことと思う」
ダンブルドア「おそらく最後の一つは、予言が示した存在である君の殺人をもって作るつもりだったのじゃろう……多分、ジェームズの眼鏡とかを戦利品にして。おっそろしい」
ハニー「うるさいわ」
ダンブルドア「おほん。もちろんそれは失敗に終わったわけじゃ。そして、あの肉体を取戻しつつある折に、老人を殺人したことにより魂が分断された……そこにおったのが、ぺティグリューや駆けつけない配下よりもよっぽど信用おける、ナギニだったのじゃろう」
ハニー「……」
ダンブルドア「いくら蛇語使いとはいえ、異常な程にナギニを操っておるようじゃ。それに、君がアーサーの襲撃事件を目撃したときも。元々、ナギニが奴の受け皿となっていたからこそ、と考えられるじゃろうて」
ハニー「あの蛇が、六番目の分霊箱」
ダンブルドア「最後の、分霊箱じゃ」
ハニー「? どちらでもいいでしょう?」
ダンブルドア「いいや、重要じゃようん、呼び名はのう」
ハニー「……日記と指輪は破壊済み、ロケットとカップは確実、それで……おそらくレイブンクローの何かと、ナギニ。それが、あいつの分霊箱なのね」
ダンブルドア「素晴らしい要約じゃ。その通り」
ハニー「あなたの言った、道のりはまだ遠いということが分かってきたわ……殆どが、どこにあるのかも分からないものじゃない」
ダンブルドア「そうじゃのう。今は、じゃが。わしは日夜それを捜し求めておる……そしてほどなく、そのうちの一つの場所を突き止められる、そう思っておる」
ハニー「!」
687:
ダンブルドア「それらしい印をようやく見つけられたのじゃ。ほどなく――」
ハニー「発見、できたら。わたし……私も、一緒に行くわ!」
ダンブルドア「いいじゃろう」
ハニー「反対しないで!これは、私と……え?」
ダンブルドア「おぉーう、ハニー。どうしたね、ミネルバがくさや目の前に突きつけられたみたいな顔をして」
ハニー「それは知らないけれど……つ、連れて行って、くれるの!?」
ダンブルドア「いかにも。ハニー、君はその権利を勝ち取ったと思う。わしが共に協力してことにあたるだけのものを」
ハニー「……っ」
 フィニアス「……フンッ」
ハニー「意味ありげな声は無視するわ。えぇ、絶対……力になってあげるんだから」
ダンブルドア「……頼もしいのう、ほっほ」
698:
ハニー「分霊箱を全て破壊すれば、あいつを……倒すことができるの?」
ダンブルドア「おそらく、そうじゃろう。分霊箱さえなくなれば、ヴォルデモートは切り刻まれ減損した魂をもつ、見下げ果てたこんちきしょうのクソッタレの滅すべき運命にある存在じゃ」
ハニー「言い方が軽いのよ、だから……けれど、分霊箱が次々壊されているのをあいつがただ待ってくれるというの?だって……」
ダンブルドア「その懸念はもっともじゃ、ハニー。じゃが、奴はどうやら自分の魂の分霊とその器が破壊されたことを、自分自身で感じ取ることは出来ないらしい」
ハニー「……自分自身なのに?」
ダンブルドア「自分自身なのに、じゃ。ヴォルデモートは今や悪にどっぷり染まっておるし、長きに渡り分霊と魂を切り離し過ぎた。我々が感じるような魂の存在を、奴は得られないのじゃ」
ハニー「……それじゃ、うまくやれば。あいつが分霊箱を全て失ったことを知るのは、あいつの最期の瞬間ということになるわけね」
ダンブルドア「そう、うまくやれば。じゃが、奴の頭脳と魔力は無傷であるということを忘れてはならぬ」
ハニー「……」
ダンブルドア「そう、ヴォルデモートのような魔法使いを殺すにはたとえ分霊箱がなくなっても非凡な技と、力を要するじゃろう」
ハニー「……それを、私にしろって」
ダンブルドア「そうじゃ」
ハニー「……知ってるくせに。私は……わたしには、そんな非凡な技も、力もないことを」
ダンブルドア「いいや、持っておる。君は、ヴォルデモートが絶対に手に入れることが出来なかったものをもっておる。君の力は――」
ハニー「っ、わかってる!わたしは、愛することができる! それがどうしたっていうの!?」
ダンブルドア「そう、愛じゃ。ハニー、愛じゃよ」
ハニー「……じゃあ、予言の。わたしが、『闇の帝王の知らぬ力』を持つって言っていたのは……本当に、ただ、単なる愛……それだけ、だっていうの」
ダンブルドア「……単なる愛。そうじゃ、ハニー。君は、その偉大さを自分自身でさえ理解していないのじゃ」
700:
ダンブルドア「これまで君の身に起こった様々な出来事。にも関わらず、君は人を愛し、世界を愛した」
ハニー「……」
ダンブルドア「ハニー、忘れるでない。予言が予言として意味を持つのは、ヴォルデモートがそのようにしたから、予言の通りに行動した時からなのじゃと言うことを」
ハニー「……意味が、よく」
ダンブルドア「ヴォルデモートは自分にとって一番危険になりうる人物に君を選んだ――正しく言えば、『そうすることで君を自分にとって最も危険な人物に“した”のじゃ』」
ハニー「……結局は、同じことでしょう?」
ダンブルドア「いいや、同じにはならぬ!ハニー、このことを理解しなくてはならん!!」
ハニー「っ」
ダンブルドア「ヴォルデモートがまったく予言を聞かなかったとしたら、予言は実現したじゃろうか?予言に意味があったじゃろうか?否じゃ!あの予言は、シビルが酒に悪酔いでもして口走った世迷いごと、それで終わったはずじゃろうて!」
ハニー「でも、けれど……わたしかあいつ、二人のうちどちらかが、もう一人を殺さなきゃ、って……」
ダンブルドア「それはヴォルデモートがシビルの予言を聞き、まんまとその通りの行動をとるという重大な間違いを犯したからじゃ!よいかね、ハニー!」
ダンブルドア「もしも奴がきみの父君を殺さなければ!君の心に燃えるような復讐の願いを掻き立てたじゃろうか!」
ダンブルドア「もしも奴がきみを守ろうとした母君を殺さなかったら!君に奴とのつながりや!あの者が侵入できぬほどの強い護りを与えることになったじゃろうか!」
ダンブルドア「否じゃ!ハニー、分からぬか?君はヴォルデモート自身が創り出した敵なのじゃ!」
ダンブルドア「それにも関わらず!!!復讐の動機も!!!奴との繋がりという死喰い人どもが喉から蛇を出してでも欲しがる才能を得ながら!」
ダンブルドア「君は一度でも!!!よいか、一度でも!!!!闇の魔術に誘惑されたことがない!!!最もその淵に近くとも!!」
ハニー「当たり前だわ!!だって、それはわたしのパパとママを――」
ダンブルドア「それじゃよ、ハニー!つまり君は愛する力によって護られておる!あらゆる苦しみ、あらゆる悲劇に!!!!君の心は何度となく闇の力から誘惑されたはずじゃ!!その力を手に入れ、その力に身を任せ!!!!そうすうことがどれだけ楽じゃろう!!!どれだけ簡単じゃろう!!!!」
ダンブルドア「しかし君はそれを選ばぬ。君の心は純粋なまま、十一歳の時に『みぞの鏡』を覗いた時のままじゃ。ハニー。君の愛する力は、間違いなく偉大なのじゃ」
ハニー「……」
701:
ダンブルドア「あの者は未だ理解しておらぬ。君が何者なのか、間違いなく自らの敵であるということは分かっていても」
ダンブルドア「どうして君は自らを損なうこと無しにヴォルデモート卿の心に入り込めるのか。どうして自分が君の心に入り込もうとすれば死ぬほどの苦しみを受けるのか。この圧倒的な差はなんなのか、君の力がなんであるのか」
ダンブルドア「あの者は分かっておらぬ。ハニー、あの者は自らの魂を分断することを急ぐあまり、穢れのない、全き魂の比類なき力を理解する間がなかったのじゃ」
ハニー「…………結局、同じことだわ。全て同じこと。そんな力があるのなら、わたしはあいつを、殺さなければならない――」
ダンブルドア「『殺さなければならない』?もちろん、君はそうしなければならない!しかし、ハニー!それは予言のせいではない!!君がそうしなければ休まることができないからじゃ!!!!」
ハニー「……予言は、あくまで」
ダンブルドア「そうじゃ!ハニー、今この瞬間だけ、予言のことを忘れるのじゃ。さぁ、ヴォルデモートについて君はどう思う!どう考える!!」
ハニー「……パパ、ママ」
ダンブルドア「奴のこれまでの行動!奴のしでかしてきた恐ろしい行い!」
ハニー「……セドリック、シリウス」
ダンブルドア「奴への恐怖!ヴォルデモート卿を目の前にした時の絶望!混乱を!!」
ハニー「……あいつが手にかけてきた人たち……たっくさんの、みんな」
ダンブルドア「君はどうしたいのじゃ、ハニー!君には予言による宿命などない!!!それでも、君はどうしたいのじゃ!!ハニー・ポッター!!」
ハニー「あいつを、倒したい。わたし自身が、分からせてやりたい。そうしなくちゃ、いけないわ」
ダンブルドア「もちろん、君がそうしたいのじゃ!!」
ダンブルドア「そしてこれは、予言があったとしても変わらぬ!!君自身が何を選び、何を思い、何をするのか!それは決して予言が決めることではない!!!『君が』決めることじゃ!」
ハニー「……」
702:
ダンブルドア「君は予言を無視して逃げ去ることもできる!」
ダンブルドア「君は予言を無視して自ら絶望し命を断つこともできる!!」
ダンブルドア「君は予言を無視して聖マンゴに横たわる輝かしい一等星を連れ出して世俗から切り離された白くて大きい家で彼の看病をしながら閉じこもることもできる!!!」
ダンブルドア「望むなら!!!それを君が望むならばわしは全て叶えよう!!!!!」
ハニー「……えぇ。とてもとても、それはステキね」
ダンブルドア「……しかし、ヴォルデモート卿は今でも予言を重要視しておる。君を追い続けるじゃろう。さすれば、確実に、まさに……」
ハニー「……一方が、他方の手にかかって死ぬ」
ハニー「あいつがそうする限り、わたしは、何を選ぼうともあいつと対峙、しなくちゃいけなくなる」
ハニー「……わたしが、何を選ぼうと」
ダンブルドア「そうじゃ。何を、選ぼうとも」
ハニー「……でも全然、違うわ。選択の余地がなくったって、結末がほとんど、かわらなくったって」
ハニー「戦いの場に嫌々、ひきずりこまれるか……それとも」
ハニー「足が、震えたって。怖くて、仕方なくったって」
ハニー「頭を上げて、その場に歩み入るのか」
ハニー「この二つは、天と地ほども違うわ」
ハニー「このわたしを、私を誰だと思っているの?絶対に……絶対に、逃げてなんか、やるもんですか!」
ダンブルドア「……あぁ、ハニー。ジェームズとリリーは、君を誇りに思うじゃろうて」
703:
翌朝
談話室
ロン「七つの魂、ひぇー。『例のあの人』がそこまで人間離れした豚以下だったなんて」
ハーマイオニー「……どこの本にも載っていないはずだわ。きっと、ダンブルドアが校長になった時に図書館から除外したのよ」
ハニー「えぇ、随分と難しくしてくれたわよね……けれど、これで」
ロン「あぁハニー!ヒンヒン!豚一団のワクワク分霊箱屠殺ツアー開催の日和はいつかな!」
ハーマイオニー「ワクワクとその他の乖離がひどいわ」
ハニー「……常に私と共にあるのはあなたたちの宿命だけれど。今回は、無理よ。ダンブルドアは、私だけを連れて行くつもりのようだもの」
ロン「……あの野郎、ハニーと二人きりをなんて」
ハーマイオニー「真面目に考えて、ロン。当然のことじゃない……むしろハニーでさえ道連れに選ばれたことが驚きよ」
ハニー「私が選んであげたようなものだけれどね」
ハーマイオニー「はいはい……ねぇ、ハニー?本当に怖くない?無理は、していない?」
ハニー「……」
ハーマイオニー「……聞くまでもなかったわね」
ロン「あぁ、だろうね」
ロン「何せ僕たちときたら!ハニーの話を聞いてる間中僕ぁ背中じゃなく膝に座ってもらえてハーマイオニーは目一杯抱きしめてもらってんだからねやっほう生きててよかった!!ヒンヒン!ヒーーーン!」
ハーマイオニー「あー、あの、ハニー?えぇっと、とても光栄だけど、そろそろその、ね?」
ハニー「……わたし、平気よ。分かってる。自分がとんでもなく怖がりで、臆病な子だ、ってこと」
ハニー「心細くて、歩みが、止まりそうで……けれど、あなたたちがいたから頑張れたの」
ハニー「今度は、一緒に来てもらえない。だから……ちょっと、忘れないように。確かめさせて?ね?」
ロン「誰だよ昨日のハニーが可愛いとか言ったの。ハニーはハニーで魔法界が眩しい」
ハーマイオニー「右に同じだわ魔法界赤い」
705:
「あぁ、あなたたちが仲いいのを見ると戻ってきたんだ、って気がするわ……」
ロン「うん?誰だい君、ってことはケイティか!いや分かってたよ、うん。ほんとだよ」
ケイティ「……もう少し入院してようかしら」
ハニー「ケイティ!帰ってきたのね……大丈夫?」
ケイティ「すっかり元気よ! あー、この前の試合のことは聞いたわ。マクラーゲンはどこ?ちょっと二、三個呪詛でも浴びせないと」
ハーマイオニー「散々に散々な目にあっているからもう見逃してあげて」
ロン「寮長直々にね、もちのロンで」
ハニー「えぇ。ケイティが戻ったし、ロンもここのところ絶好調だもの。最終戦でレイブンクローを負かして優勝するチャンスは十分にあるわ」
ケイティ「へぇ?ロン、どうしたの?何か心境の変化?」
ロン「べ、べべべべべべつに!?なぁ、ハーマイオニーさん?」
ハーマイオニー「そ、そうね!ローニル!」
ケイティ「誰それ」
ハニー「それより、ケイティ……聞いてもいいかしら、あのネックレスのこと。誰に渡されたのか、思い出せる?」
ケイティ「……ごめんね。みんなに聞かれたんだけど、全然覚えてないの。最後に、女子トイレに入ったところまでしか」
ハニー「……」
ハーマイオニー「間違いなく、女子トイレに入ったのね?ケイティ、トイレの前とかでなく、中に?」
ケイティ「えぇ、ドアを押し開けたところまで覚えてるの。だから、私に『服従の呪文』をかけた人はドアのすぐ後ろに立っていたんだと思う。そこからは、二週間前に目を覚ますまでまーっしろ」
ハニー「……あー、あなたが間違えて、男子トイレに入っちゃった、とかは?」
ケイティ「そうそう、存在感ないから私よく利用して、たまるか!」
ハニー「……ごめんなさい」
706:
ハーマイオニー「……つまりケイティにネックレスを渡したのは女の子、または女性になるわけね。女子トイレにいたのなら」
ハニー「……女の子に見える誰か、だわ」
ハーマイオニー「……ハニー、まだ諦めないの?」
ロン「マルフォイ黒幕説!」
ハニー「忘れないで頂戴、ホグワーツには大鍋一杯のポリジュース薬があるってこと……あぁ、もう一回フェリックスを飲もうかしら」
ロン「そりゃ、ハニー。あぁは言ったけど男子トイレがぎゅうぎゅうづめでホグホグがワツワツになること請け合いだね」
ハーマイオニー「ハニー、幸運には限界があるわ。スラグホーンの場合は、あなたにはもとから説得するだけの材料があったから状況を少し好転させるだけでよかったの」
ハニー「それなら、必要の部屋も……」
ハーマイオニー「あの部屋の強力な魔法が、幸運だけで破れるはずないでしょう?ねぇ、フェリックスの残りは……ダンブルドアとのあれのために、とっておくべきだわ」
ハニー「……そうね」
ロン「もっと煎じておきゃどうかな。ほら、ハニー。君の御言葉の次の次の次くらいにありがたいプリンスの助言を見てみようよ」
ハニー「比べるのもおこがましいわね、えぇ……あー」
ハーマイオニー「さーて、解毒の原理を理解できなかったお二人にこのページの元々の難解複雑さの時点から読み解くことが可能なのかしら?」
ロン「マーリンの髭、髭ってね。あれ?ハニー、このページ折れ目がついてるけどなんだい?」
ハニー「私にかかれば、と思うけれど……あぁ、えぇ。この呪文を覚えておこうと思っただけよ」
ロン「ふーん。敵に対して、か! スネイプの野郎に今度……」
ハーマイオニー「スネイプは味方、って、これも何度言えば分かるの、ロン!」
ロン「スネイプ黒幕説!」
ハニー「……」
707:
ハニー「(ダンブルドアは、わたしを信用してくれた。だから、分霊箱の破壊につれていってくれる約束をしたんだわ)」
ハーマイオニー「分からず屋ね!スネイプはこちらの陣営、ダンブルドアが言ってるでしょう?」
ロン「うるさいなぁ!ハニーに取るあの態度やらなんやらを見てもあいつを庇えるなんて、君、あのベタベタ髪に気でもあるんじゃないか!?マーリンの髭!」
ハニー「(けれど……自分の身に呪いがかけられた時に真っ先に頼るほど、スネイプのことも信用してる)」
ハーマイオニー「どこをどう考えたらそうなるのよ!!!だ、大体、髪、って……」
ロン「なんだよ!はっきり言えよ!はぐらかすなよな、君らしくない!」
ハニー「(どうして……?どう考えたって、あの人は怪しいわ。何度聞いても、はぐらかされて……)」
ハーマイオニー「わ、私が好きなのは、アモルテンシアの匂いにあったのは、あ、あなたの、髪の、その!」
ロン「えっ……」
ハニー「夫婦喧嘩はシリウスも食べないわよ、二人とも」
ハーマイオニー「! に、ニヤニヤしないで!」
ロン「ま、マーリンの髭!!髭!!!!」
ハニー「(どうしてダンブルドアは、スネイプなんかを……)」
ハニー「(……プリンスの方が、よっぽど、信頼できるわね)」
『敵に対して セクタムセンプラ』
つづく
708:
っちゅうわけで年内はこれで
残りレスはあるんやけどスレタイの関係で完結は新スレで!すまんの!
明けて三日には
ハニー・ポッター「アルバス・ダンブルドアと、わたし」
ってスレ建てるんでよろしゅう!
じゃあの!
 ハリー・ポッターシリーズ
 一巻〜七巻
 世界的大ヒット発売中!
 2014年後半、USJにて
 ハリポタアトラクション建設決定!!
 ハリー・ポッター指定教科書 『幻の動物とその生息地』原作スピンオフ映画
 2015年上映決定!!!!
709:
キターーー
ありがとう! そしてよいお年を!
「天と地ほどの違い」やっぱ名シーンだわ
710:
乙ヒン!!
>>1良いお年を!
711:
おつかれさま!
よいお年を!ヒンヒン!
715:
ダンブルドアとの問答熱かった
乙!
721:
今年もハニーポッターを存分に楽しませてくれてありがとう!!来年も楽しみにしてる!良いお年を!ヒンヒン!!
723:
ハニー!、一番豚ロンさん、ハーマイ鬼ー、そして>>1、2013年ありがとう!!!!!
2014もよいお年を!!!!
お前らもな!!!!
729:
お疲れ様ヒンヒン
今年もよろしくね
732:
遅くなったが、あけましておめでとう豚ども!
733:
乙!
今年もいい年になりそうだ
ヒンヒン!
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1385296662/より
301:
申し訳ない
年始は時間がとれなんだ
十二日、十三日の連休で建ててプリンスを終わらせる
侘び代わり。創設者の需要があるかわからんが
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後輩「好きです、先輩」先輩「うん」

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ハニー・ポッター「どうして、スネイプなんかを……」

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