ほむら「帰国子女☆まどかの英語が流暢すぎて生きるのが辛い」back

ほむら「帰国子女☆まどかの英語が流暢すぎて生きるのが辛い」


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1:
教師「じゃあこの英文を音読してみろ。…鹿目」
まどか「Which do you like between a boiled egg and a half-done boiled egg? 」
教室にまどかの流暢な英語が響く。
それは私にはまるで素敵な音楽のように聴こえる。
教師「では今の英文を訳してみろ。…あけm」
ほむら(めんどくさいわ)
教師「…中沢」
中沢「え?えーっと…ど、どっちでもいいんじゃないかと」
教師「お前の好みはきいてない。和訳するんだ」
一斉に笑いが起こる。まどかも楽しそうに笑っている。
休み時間には早くも沢山できた友達に囲まれ、明るい笑顔を見せている。
これが望んでいた私の世界。
この世界は彼女を守るようにできている。
大きな災いは彼女の身には降りかからない。きっとこれからもたくさんの優しい人々に囲まれて、大過なく幸せな人生を歩んでいく。
これが私の望んでいた世界。
5:
キーンコーンカーンコーン
予鈴が鳴り、今日の授業が終わった。
まどかは友達と一緒に寄り道の相談をしているようだ。
転校してきた初日に神性を取り戻しかけた時以来、そんな予兆はなく安定している。
それでもいつ覚醒が始まるか分からないから学校には来ていたけど、そろそろ来なくてもいいのかもしれない。
まどか「…」チラッ
覚醒が私との接触にあった可能性を考えて、その日以来私は彼女と距離を置くようにしている。
転校初日に変なことを訊いてしまったせいか、まどかはたまに私をチラ見してくる。
でもあれは絶対に訊いておきたいことだったのだ。
7:
変な人と思われているのかもしれない。しかしあの時返したリボンを着けてくれているあたり、よく分からない。
話しかけられたら面倒なので、私は気づかないふりをして帰り支度をし、教室を出た。
教室のドアを抜ける時に横目でまどかを盗み見たとき、彼女と目が合ったような気がした。
* * *
教師「今日の家庭科は調理実習です。2人1組で目玉焼きを作ってもらいます」
二人組。
基本的にこういう時は私はあぶれる。きっと怖がられているから。
孤独には慣れているから、別にどうということはない。どうということはない。
相手を探すでもなく窓の外を見ていると、誰かが近づいてくる気配がした。
外では半透明の使い魔や烏がふらふらとだるそうに歩いていたり飛んでいたりしている。
校庭の隅では使い魔たちが魔獣を袋叩きにしていた。その残骸をインキュベーターが回収する。
くだらないことの繰り返し。
まどか「あの…」
ほむら「…何かしら」
目を合わせずに返す。
使い魔たちの歩みが早くなり、踊り始める者もいた。魔獣を引き起こして一緒に踊らせる者もいる。
いったい何をやっているのか。
8:
まどか「二人組、作らないといけないよね。だから、一緒にどうかなって」
視界の端で、まどかが手を差し伸べてきたのが見えた。
ほむら「…新しいお友達が沢山いるじゃない。その子達とやればいいと思うけど」
まどか「うん。この学校、みんなすっごいいい人で楽しいよ。…でも」
ほむら「ならいいじゃない。私のことは気にしないで」
まどか「ほむら、ちゃん…は、わたしとはお友達になってくれないの?」
ほむら「…!?」
まどかの声に翳りが差したので彼女を見ると、涙を浮かべていた。
どうして泣くの。泣かないで。
あなたが泣くところや死ぬところを見たくないから、私はこうして不安定ながらもこの世界を作ったのに。
まどか「何か悪いこと、しちゃったかな…?」
だめだ。まどかを泣かせるなんて許されない。覚醒の危険はあるけど、泣きそうになりがらも一向に
引っ込めようとしない彼女の手を…取らないわけにはいかなかった。
10:
ほむら「そんなことはないわ。私なんかでよければ、喜んで」
私がまどかの差し伸べた手を握ると、彼女の表情は闇夜から朝日が昇るように明るくなった。
愛しい温もりが指先から伝わってくる。
怖がらせないように精一杯の笑顔を作ってみる。長らく笑った記憶などないから、うまく作れているか自信がない。
外では使い魔が魔獣と宴会を始めていた。うるさい。鏡の一つでも持ってきなさい。全く使えないやつら。
まどか「…!?」
そんな表情から一転、まどかは驚いたような顔を見せた。瞳が一瞬金の光を帯びたように感じたが、すぐに収まる。
しまった。覚醒が始まろうとしている?やはり、私が接触するのは危険だったのか。
まどか「ほむらちゃんの手…すごく冷たい」
気のせいだったのだろうか…。
まどかは特に何も感じていないようだ。
ほむら「そんなことはないわ。あなたの手が温かいのよ」
まどか「なにそれ。わたしがお子様体温だって言いたいの?」
まどかはむくれた。
本当に豊かな表情を見せてくれる。泣き顔以外ならずっと眺めていても飽きないだろう。
ほむら「怒らないで。さあ、調理器具を借りににいきましょう」
しばし、まどかと調理実習に励んだ。いつ振りかの、まどかとの共同作業。
夕方でもないのに、烏が大合唱を始めていた。
13:
* * *
結局また、しばらくまどかとの学校生活を楽しんでしまった。
いや、戦いから切り離された純粋な日常を送るのは、初めてかもしれない。
しかし。
私との接触がまどかの覚醒を促す危険性はやはり拭い去れない。そもそもこの世界自体が不安定だ。
まどかの作った世界は哀しいながらも安定していたが、私の力と奪ったまどかの力の一部ではこれが限界なのだろう。
実際に、この数週間の間で何度も覚醒の予兆はあった。そのたびに冷や汗をかいた。
だから、まどかを悲しませない範囲で、さりげなく、距離を置くようにした。
学校に行かないという選択肢もあったが、私との接触だけがトリガーだとは言い切れないうちは
監視のために行く他ないという結論に達した。
16:
このところ眠れない。
特に眠る必要のない身体ではあるけど、冬の長い夜は眠った方が早く終わる。
しかし眠ると決まってまどかの夢を見てしまう。
この世界を作る前からもしばしば夢にはまどかが出てきていたが、この世界になってからはほぼ必ずまどかが出てくる。
それはそれで構わないけど、夢に出てくるまどかは何だか随分と小さくて、そして笑顔を見せてくれない。
なんだか不安になってしまう夢。だから、あまり見たくない。
仕方ないので、散歩をすることにした。
寒いが、それだけ。特に厚着をする必要もない。
ドアを開けると、視界の片隅に人影があった。
ほむら「…まど、か?」
まどかだ。目を閉じたままふらふらと歩いている。
夢遊病?そんな病癖、彼女にあっただろうか。記憶にはない。
危なっかしい歩き方だ。それにこんなに寒いのにパジャマで裸足。風邪をひいてしまう。
内股ぎみの爪先が絡み合い、まどかは転倒しそうになった。慌てて抱き留める。懐かしくて優しい匂いがした。
18:
まどか「…はれ?」
ほむら「まどか…?こんなところで何をしているの?」
まどか「うぇひひ…ほむらひゃん…はっ?」
まどかが瞬きをすると、覚束ない足元に力が戻った。完全に起きたらしい。
ほむら「まどか。…どうしたのこんなところで」
まどか「えっ…ここ…どこ?」
ほむら「地名を言えばいいの?」
まどか「いや、そうじゃなくて…って、なんでほむらちゃんがここにいるの?」
ほむら「何でと言われても…」
まどかは急に寒さを思い出したのか、両腕で自分の身体を抱きしめた。背中に回した私の腕に震えが伝わる。
ほむら「とにかく…風邪をひいてしまうわ。ここ、私の家だから入りなさい」
19:
* * *
まどか「ほゎぁ…」
私の淹れたぬるめのココアを飲んでまどかは生き返ったように一息ついた。
まどか「ほむらちゃんのおうちって何か…不思議だね」
きょろきょろと周りを見回す。確かに生活感は一切ないが、殺風景と言わないのはまどかの優しさか。
ほむら「そんなことより…あなた夢遊病か何かなの?」
まどか「あ、ごめんね。そうだよね。わけわかんないよね。実はわたしもよく分からないんだ」
ほむら「は?」
話を聞くと、ここ最近夜に眠りながら出歩くようになってしまったらしい。アメリカに行く前も、
アメリカにいた時も、こんなことはなかったという。
危なかった。アメリカなんかでまどかのような女の子が夜に一人で出歩いたら誘拐されてしまう。
もっとも、まどかを誘拐なんてしようものならそいつは不思議な力で死ぬことになる。
私が手を下すまでもなく、それが世界の意思だから。
24:
まどか「でもよかった。ほむらちゃんに見つけてもらえて」
ほむら「そんな呑気な…」
まどか「ううん、よかったよ。最近、あまりお話できなかったよね」
ほむら「…そうかしら。そんなことはないと思うわ」
まどか「…ほんとに?わたし、何だか避けられてるんじゃないかって…」
まどかの表情が翳る。え?また泣くの?お願いだからやめて。
だめだ。まどかには敵わない。
ほむら「そんなことはないわ。単に、私の人づきあいが下手なだけ。傷つけてしまったのならごめんなさい」
まどか「ほんと?」
ほむら「本当よ」
まどか「…あのね、ほむらちゃん」
ほむら「何かしら」
まどか「あまり変に思わないで欲しいんだけど…わたしの話、聞いてくれるかな」
ほむら「…ええ」
25:
まどか「わたしたちって…どこかで会ったことない?」
ほむら「…え?」
危うく、マグカップを落としそうになった。
私がまどかを忘れなかったように、まどかも私を忘れ切れていないのだろうか。
円環の理からの分離が不完全だったのか。いずれにしても、いい話ではない。
まどか「なんだかさ…初めて会ったはずなのに、初めて会った気がしないの」
ほむら「…気のせいよ。幼い頃に私に似ていた友達がいたんじゃないのかしら」
まどか「うぇひひ、幼い頃って言ったって10年も経ってないよ。それくらいのことなら覚えてるよ」
そうだった。私にとっては幼い頃など、ずっとずっと遠い過去だけど。普通はそうじゃない。
ほむら「私は前は東京にいたの。だから会ったことはないわ」
まどか「そう…なんだ。あれ、じゃあほむらちゃんも転校生なの?」
ほむら「前はミッションスクールに通っていたわね…そんなことより」
まどか「えっ?」
ほむら「それはそれとして…こんな時間だし、明日も学校なんだから帰らないとだめよ」
まどか「えぇー…もっとお話ししたいのに」
27:
ほむら「学校で会えるでしょう。さあ、途中まで送っていくから…寒いからこれを羽織って」
まどか「あの…」
ほむら「わがまま言わないの」
まどか「じゃなくて…その…靴が」
ほむら「ええ、貸すから。明日返してくれればいいから」
私たちは並んで夜の街を歩いた。まどかの吐息が白くなって流れていく。
人もまばらな暗い街を、使い魔が列をなしてパレードをしていた。うるさい。
まどかが無意識なのか、当然のように私と手をつなごうとするような動作をしたので、
私は手をポケットに引っ込めた。直接的な接触はできるだけ控えたい。
パレードの列が盛大にずっこけて将棋倒しになった。うるさい。
29:
まどか「うん、この辺ならもうわかるよ。ありがとうほむらちゃん。ごめんね迷惑かけちゃって」
ほむら「気にしないで。それじゃ」
私はそう言うとさっさと背を向けて来た道を戻ろうとした。
まどか「あれ?ねえほむらちゃん」
背後からまどかの声が聞こえる。それを無視して角を曲がり、空間を転移して自室に戻った。
失敗に気づいたからだ。
まどか「ほむらちゃ…え、もういない…?」
まどか「ほむらちゃん…どうして私の家の方向が分かったんだろ?」
31:
* * *
二人分のマグカップを洗いながら、今の出来事を反芻する。
なぜまどかがここに現れたのか。偶然なはずはない。
自室に戻って、考える。何か。何か要因があるはずだ。まどかを無意識に私に引き寄せてしまう何か。
…ふと思いついて、私の新たなソウルジェム――いやグリーフシードを掌に載せる。
ほむら「魔女ですらない…私は悪魔。ダークオーブとでも呼べばいいのかしらね」
このダークオーブに微かな変化が見て取れた。心なしか、色が明るくなっている気がする。
元々は、私の黒い愛情が充満して黒いダイヤのような輝きを放っていた。
しかし、片隅に黒ではなく…淡いピンクの光が灯っている。
これは…まさか。
理解できた。
私が悪魔となってまどかを円環の理から引き裂き、彼女を一時的に取り込んだ時。
その魂の一部を私の変質した魂とともに、この禍々しい宝石の中に閉じ込めてしまったようだ。
32:
だからまどかは無意識にこれを取り戻しに動いていたのではないか。
そして私の夢に毎回出てくる小さなまどかも、これのせいに違いない。
私との接触でまどかが覚醒しそうになるのも、まだ円環の力を持っているこの魂が私の魂の一部になって
同居してしまっているせいだろう。
これで肚は決まった。
もう、明日から学校に行くのはやめよう。
さようなら、まどか。
36:
* * *
私は家を捨てて、適当なホテルの一室を占拠した。そして誰の意識からもこの部屋が認知されないように操作する。
今日からここが私の家だ。
元々の私の家の場所がまどかに知られている以上、あそこにいたら学校に行かなくてもきっとあの子の方からやってくる。
コートと靴を返しにくるという口実で。だから逃げた。
ここなら仮にまた夢遊病状態でまどかが迷い込んできても、エントランスの警備員が追い払ってくれるだろう。
窓の外は陰鬱な雨だ。使い魔たちは雨に打たれるままぼーっと突っ立っていたり、のそのそと歩いたり
うずくまって寝ている。めざわりだ。
何もする気が起きない。暇と言えば暇だけど、同じ空の下でまどかが幸せにしていると思えば苦ではない。
使い魔と一緒に魔獣でも狩ってみようかしら。
そんな感じで数日。
雨は一向にやまない。あんなにうるさかった使い魔たちも寝てばかり。
街には魔獣が増えつつあるが、どうでもいい。魔獣であっても、まどかに危害は加えられない。
この世界のルールに従い、不思議な力で消滅することになる。
37:
ピープー
変なアラームが鳴った。
いったい何だ。ルームサービスなど頼んではいない。放っておこう。
するとドアノブが回された。恐る恐るという感じでゆっくりとドアが開く。
ひょこっと隙間からピンク色の髪の毛がのぞいた。
しまった。どうせ認識されないから、鍵などかけていなかった。というかオートロックじゃないなんて。
そしてどうやらまどかにはこの手の操作は効かないようだ。分かたれた魂が影響しているのか。
まどか「あ…」
首だけ侵入してきたまどかと目が合った。
私は眉間を中指で押さえながらため息をついた。
ほむら「何の用?不法侵入よ」
まどか「…」
まどかは部屋に入り、ドアを閉めて私と正面から向き合った。
どう見ても、怒っている。そして最も見たくない…涙がその目に浮かんでいた。
最悪だ。
39:
まどか「…ほむらちゃん」
ほむら「…何かしら」
まどか「これ…返しに来たよ」
そう言って近づいてくる。見ると、右手に紙袋を持っている。どうやら靴とコートが入っているようだ。
ほむら「いいのに。よかったらあげるわ」
まどか「どうして…!」
まどかがいきなり声を荒らげ、私は次の言葉を飲み込んだ。
まどか「どうして何も言わずに…!こんなところに…一週間も…!学校にこないで…ひんひゃいは…!」
最後は涙声になって、何て言っているのか判らなかったが言いたいことは解った。
それをあなたが言うの?瞬間的に体温が上がったような気がした。
人の気も知らないで。もしかしたら知った上で、一人で遠くに行ったのは誰だと思っているの。
私は恐らく初めて、まどかに対して怒りという感情を覚えてしまった。
いつの間にか雨足がかなり強まっていた。室内でも雨粒が窓と壁を叩く音がうるさい。
そのおかげで、聞きたくないまどかの泣き声もかき消されていた。
私はダークオーブに力を込めて、変身した。
そして驚愕するまどかの腕をつかみ、ベッドに押し倒す。
41:
まどか「ひゃっ…!」
ほむら「あなたにだけは…そんなことを言われたくない…!止めても止めても遠くに行ってしまおうとするあなたには…!」
まどか「っ…!?」
ほむら「残された私が!どんな…気持ちで…っ!あなたが死ぬところを!消えるところを見てきたと…おもっ…!えぐっ…ひぐっ…!」
だめだ。感情が昂って言葉が出ない。代わりに涙が出てきた。その一方で、急に冷めていく心もあった。
そうか。あれだけ哀しかった、大切な人との離別を、結局私はその大切な人にそのまま味わわせてしまっていたのか。
私にとっての最愛の人はまどかだけど、まどかにとっての最愛の人は私ではないと思っていた。
でも、そうではなかった。彼女は愛情を注がれただけ、それ以上の愛情を返してくれる。そういう子なんだ。
まどかを愛する人は私一人ではないけど、だからこそ私も彼女から愛情を返される対象の一人だということだ。
まどかの愛は大きな愛。私の愛は深い愛。どうしてこうなってしまったんだろう。
そして心の中で覚悟が固まってくる。それならやはり、私はまどかの傍にいるべきではない。
まどかには、何が何でも一人の人間としての幸せな生を全うしてもらわなければならない。
人としてのまどかの消滅は、この世界における愛情の絶対量が大きく失われることと同義だ。
そしこの世界は、歪んでいるにしろ愛情が作り出した世界。愛情がなければ滅んでしまう。
ここは心を鬼にして、いや悪魔にして、追い返さなければ。
43:
ほむら「まどか。あなたは本当に愚かね」
まどか「ほむら、ちゃ…?」
私のあまりの豹変ぶりに理解が追い付いていないようだ。確かに完全に私の態度の落差は狂人のそれだ。
ほむら「見ての通り私は人間ではない…悪魔よ。そんな悪魔の巣に一人で忍び込んでくるなんてね」
まどかの眼が大きく見開かれ、怯えたように瞳孔が小さくなる。
ほむら「楽しい学校生活を普通に送っていればいいのに…私なんかに構うからこんな目に遭うのよ」
そう言ってまどかの首筋に口づけし、耳たぶを噛む。まどかは変な声をあげて身体を強張らせた。
そして手を彼女の太ももに這わせ、スカートを少し引きずりおろした。
ほむら「悪い子にはおしおきが必要よね」
まどか「…っ!」
まどかの顔が青ざめる。心が痛む。しかし今優しくするわけにはいかない。
さあ逃げなさい。このままだとあなたはあんなことやこんなことをされて、とんでもない目に遭うのよ。
さあ早く。さっさと逃げて。
まどかはぎゅっと目を閉じて、あろうことか身体を弛緩させた。
何で逃げないの。抵抗しないの。このままだと、本当に私は――
まどか「…いいよ」
ほむら「は?」
45:
まどか「おしおき、するんでしょ?」
ほむら「そうだけど…」
まどか「…」
ほむら「怖くないの?あなたこれから何をされるか分かってるの?」
まどか「分からないよ。でも…怖くない。ほむらちゃん、そんなひどいことしないって…分かってるから」
ほむら「怖くないって…。私は悪魔なんだけど」
まどか「うぇひひ。ほむらちゃんは悪魔なんかじゃないよ」
まどかは目を閉じたまま私の背中に腕を回し、羽根の付け根を撫でた。
ほむら「んっ…」
まどか「きれいだと思うよ。この羽根」
ほむら「きれ、い…?」
まどか「どうして悪魔なの?悪魔って…神様への叛逆者だっけ?アメリカはキリスト教徒が多いから、私も少しは知ってるよ」
ほむら「そう。私は…神の意志に逆らって、神を引き裂いて汚したのよ」
まどか「神様って…こんな?」
まどかはずっと閉じていた目を開いた。瞳が金色に輝いている。
47:
スレタイからは予想できないクオリティ
48:
ほむら「な…っ!」
しまった。接触時間が長すぎた。
まどかから眩い光が放たれて、私たちを包む。まるで光の檻に閉じ込められたようだ。
まどか「ほむらちゃん。ほむらちゃん、わたしにひどいことしたよね」
ほむら「まど…か、さん?」
組み敷いているのは私の方なのに。おかしい。動けない。
まどか「裂けちゃうって…言ったのに。やめてくれないなんて」
ほむら「痛かった…?」
まどか「痛くはなかったけど…怖かったよ。どうなっちゃうか分からなかったし」
ほむら「だって…」
まどか「分かってるよ。わたしが、家族や友達とはなればなれになって、ずっとずっと一人ぼっちになるのは耐えられない…」
まどか「それを、助けようとしてくれたんだよね」
ほむら「…」
まどか「ありがとう。うれしいよ。わたしはほむらちゃんに助けられてばっかりだね」
52:
ほむら「そんなこと…私の方こそ…っ」
また涙が溢れてきた。まどかの柔らかな両手が、私の頭を優しく抱えて撫でてくれる。
まどか「そして…ごめんね。ごめん。わたしも分かったよ。大切な人がいなくなってしまう辛さ」
ほむら「まどかぁ…!」
まどか「こんなに辛いものだったんだね。自分で決意して一人になるより、ずっと辛いよ」
まどかの手に力が篭る。私はそれに任せて、彼女の胸に顔をうずめた。涙が、止まらない。
まどか「何度も、何度も、ずっとわたしは。ほむらちゃんを置き去りにしていたんだね」
まどか「でも、これからはずっと一緒だよ」
それが叶わない希望だということは分かっている。このままではまどかは再び概念として消滅してしまう。
恐らくそれはもう止められない。しかし私の心はまどかの言葉で満たされていった。
まどか「ほむらちゃん…教えてほしいことがあるの」
ほむら「なに…?」
53:
まど神様キタ
54:
まどか「ほむらちゃんは、いつも、いつまでもわたしのために頑張って、傷ついて。それでも諦めないでくれたよね」
ほむら「ええ。もちろんよ」
まどか「どうして?」
ほむら「えっ…」
まどか「どうして、わたしにそこまでしてくれるの?」
ほむら「それは…その」
まどかの目を見て、わかった。まどかは私に、ちゃんと本当の気持ちを伝えさせようとしている。
今まで私がずっと行動で示すことで逃げていた、言葉で伝えるということを。
私が心残りしないように。きっとそういうまどかの優しさなんだ。
私は深呼吸をして、ゆっくり、はっきり、言葉を紡いだ。
ほむら「あなたのことが好きだから。愛しているからよ。まどか」
言い切った。これ以上の言葉は必要ない。
57:
まどか「うぇひひ。ありがとう。わたしも同じ気持ちだよ。愛してるよ、ほむらちゃん」
心が、満たされた。そして。
全身を強い衝撃が走った。一度経験がある衝撃。
一度目は、私のソウルジェムがグリーフシードに変わる時だった。
ほむら「ぁぁっ…」
ダークオーブに変化が顕れはじめた。黒い輝きが強くなり、内側からの圧力でひびが入る。
輝きは強さを増して、その中からまどかの分かたれた魂が遊離し始めた。いつの間にかまどかの胸元に顕れていた宝石に吸い込まれる。
その宝石から白い閃光が走り、ダークオーブは砕けた。同時にまどかの宝石も分解される。再び衝撃が襲った。
ほむら「ああああああああああああっ!」
58:
* * *
ほむら「う…」
まどか「ほむらちゃん…見て」
ほむら「まどか…」
まどかがまだ消滅せずに私と一緒にいることに驚いた。なぜ。
周囲はいつしか見た光景に変わっていた。私たちは宇宙空間のようなところで二人で漂っている。
宇宙が再編されている。不安定だった私の世界が、まどかの魂を失ったことで壊れたのだろうか。
そしてまどかの手には、形はダークオーブに似ているが色は全く異なる、無色に輝く宝石が2つ握られていた。
まどか「わたしたちの魂が混じって分かれてできた、新しい宝石だよ」
ほむら「きれい…ダイヤモンドみたい」
まどか「そうだね。えっと…Dark Orb、だっけ?ほむらちゃんの、悪魔の宝石」
ほむら「な…なんでそれを」
まどか「うぇひひ、だってずっとDark Orbの中で一緒にいたんだよ。ほむらちゃんが悪魔になってからのこと、全部知ってるよ」
何てこと。それじゃ、私の独り言や奇行の数々、すべて見られていたことになる。
私の顔は瞬時に耳まで赤くなり、青くなり、そして白くなった。
そんな私の心情に気づいているのかいないのか、まどかは悪戯っぽい笑顔で宝石をかざした。
60:
まどか「そうだなぁ。じゃあこれは…」
まどか「Optimal Diamond、なんてどうかな?」
ほむら「オプ…?」
まどか「最高のダイヤモンド、って意味だよ。頭文字を逆にしてみたの」
ほむら「…素敵だと思うわ」
ほむら「でも私たちの宝石なんだから、Our Diamondでも」
まどか「それはちょっと…語呂が悪いかなって」
ほむら「…ひどい」
万華鏡のようにでらめに拡散し、撹拌されていた世界が収束していく。
ほむら「これで三度目の宇宙再編ね…」
まどか「そうだね。でもきっとこれで最後だから。そしてきっと素敵な世界だと思うよ」
ほむら「どうして?」
まどか「だって…」
63:
まどかはそう言って、宝石を両手で握りこんだ。
少しおいて手を広げた時、2つのダイヤの指輪に変化していた。
まどか「これ。わたしとほむらちゃんの魂と願いでできた、指輪。はい」
そう言って私の左手を取り、薬指にはめてくれた。そしてもう一つを私に持たせ、まどかは左手を私に向ける。
まどか「はめて、くれるよね」
ほむら「…うん」
私はまどかの温かい手を取り、薬指にゆっくりと指輪をはめた。
まどか「うぇひひ、お揃いだね」
ほむら「…ええ」
まどか「ほら見て。お揃いのようで、ちょっと形が違うでしょ?」
確かによく見ると、私のダイヤはなだらかな円錐状に突き出ており、まどかのダイヤは円錐状にへこんでいる。
二つを合わせると、ぴったり一つになりそうな形状だった。
ほむら「…これは?」
67:
まどか「わたしたちの願いは、二人で一つだってこと。どっちが欠けてもだめなの。だから1回目の改変も2回目の改変も、
どこかが歪で不完全な世界になっちゃった」
ほむら「でも…あなたはもうすぐ、また…!」
まどか「大丈夫だよ。ずっと一緒だよって、言ったよね?」
ほむら「…?」
まどか「ほむらちゃんも左手、出して?」
まどかは微笑みながら左手を差し伸べた。私はその手を左手で握る。
カチリと音がして、私とまどかのダイヤが組み合わさった。
再び私たちは光に包まれた。そしてその光が世界の再編を終局に向かわせていく。
私たちはどこかで見た一面の花畑に降り立った。
まどか「新しい世界はね。ほむらちゃんだけでもなくて、わたしだけでもなくて、二人の想いが作るんだよ」
まどか「この宝石みたいに。二つで一つなの。そしてそれが完全な形」
70:
そうか。
まどかの大きな愛と、私の深い愛。両方が一つになって、新しい世界ができた。
まどか「わたしたちの絆が壊れない限りは、この新しい世界も壊れないよ」
ほむら「まどか…」
まどか「だからね、改変はもうこれで最後なの。そうでしょ?」
ほむら「まどか…」
言葉が出てこなかった。彼女の名前を呼ぶ。それだけで幸せだった。
まどか「さ、行こ?」
まどかが私の手を握る。お互いにはめた指輪がカチンと鳴った。
ほむら「ええ、行きましょう」
まどか「新しい世界へ…!」
ほむら「最後の世界へ…!」
おわり
71:
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7

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