剣士「依頼があれば……この剣でなんでも斬る!」back

剣士「依頼があれば……この剣でなんでも斬る!」


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1:
第一話『若奥様を斬る』
< 剣士の家 >
剣士(──とかっこつけたところで)
剣士(こんな平和な田舎町で、物騒な依頼なんかあるわけもなく)
剣士(世間は、ついに王国軍と大盗賊団の抗争が本格化したとかで大騒ぎだが)
剣士(この町にはなんも関係ないしな……)
妻「すみませぇ?ん、剣士さん」
剣士「なんですか、奥さん」
妻「あの?、スイカを切って欲しいんですけど」
剣士「はいはい」
剣士(こんな仕事ばっか……)
3:
スパンッ! スパンッ!
剣士「はい、斬れましたよ」
妻「ありがとう! 助かったわぁ?」
剣士「スイカぐらい自分でも切れるでしょうに」
剣士「こないだはキャベツの千切り、その前はリンゴをウサギさんにする、でしたっけ」
妻「でも、あたしって料理が下手なのよ?」
剣士(ウソつけ……少しでも手を抜きたいだけだろう)
剣士「だったら……さっきのお代はいりませんから、俺に料理を作ってくれませんか?」
剣士「味を見てあげますよ」
妻「そんなことならお安い御用よ。台所と材料を借りるわね」
剣士「どうぞどうぞ」
剣士(ラッキー、昼飯まだだったんだよな)
4:
しばらくして、料理が出来上がった。
妻「さ、召し上がれ」
剣士(お、うまそうじゃん)
剣士「じゃ、いただきま──」パクッ
剣士「す!?」
剣士「お、おお……! なんだこれ……!? うげえええっ!」
妻「やっぱりダメ?」
剣士(ダメってレベルじゃない! どうなってんだ、これ!?)
剣士「これ……ちゃんと味見してるんですか?」
妻「もちろん。で、おかしいとこを直そうとすると、ますますおかしくなって……」
妻「でも、主人は美味しいって食べてくれるから……」
剣士(結果として、この劇薬が生まれたってわけか……)
剣士「……奥さん」
剣士「今日は帰しませんよ! 俺が徹底的に特訓します! この剣に賭けて!」
妻「ええっ、そんなぁ!」
7:
気づいた時には、もう夜になっていた。
剣士「ハァ、ハァ、ハァ……」
妻「ハァ、ハァ、ハァ……」
剣士「まあ、少しはマシになりましたね」
剣士「とりあえず、調味料をドバッと入れるクセと」
剣士「ミスった時に砂糖の甘さを塩で相殺させる、みたいなバカなマネをやめれば」
剣士「だいぶ、よくなると思いますよ」
妻「ええ、ありがとう!」
剣士(ふう……もう剣士の仕事じゃねえよな、これ)
8:
数日後、町でおかしなウワサが広がっていた。
ザワザワ……
「あそこの若奥さんが剣士さんの家にずっといたとか……」
「今日は帰さない、とか声が聞こえたって……」
「二人して、息が荒くなってたとか……」
ザワザワ……
剣士(な、なんか……俺とあの奥さんが不倫したみたいになってやがる!)
剣士(しかも、小さな町だから、広がるのが早い!)
剣士(ま、まずいぞ……旦那の耳に入る前になんとかしねえと!)
夫「剣士君!」
剣士「ゲッ!?」
夫「君にいいたいことがある」
剣士「いや、その、あの……」オドオド…
12:
夫「あ、ありがとう……!」グスッ…
剣士「へ!?」
夫「やっと……やっとあの地獄の日々から解放された……!」
夫「君のおかげで、妻がようやく“料理”と呼べるものを作るようになってくれた!」
夫「惚れた弱みでマズくてもいえなかったんだ……なかなか」
夫「しかも、ボクは出されたものは全部食べないと落ちつかないタイプだから」
夫「本当に大変だった……!」
夫「これも、君が妻の料理下手をばっさり切ってくれたおかげだ! ありがとう!」
剣士「いやぁ?、いいんですよ」
剣士(斬るのは……なにも剣だけでなく、口でもできるってことか)
ちなみにウワサは七十五日どころか、七日で消えたという。
?おわり?
15:
第二話『カップルを斬る』
< 剣士の家 >
剣士「オイオイ、俺はあくまで剣を使うのが仕事なんだぞ?」
町娘「えぇ?!? でも、外の看板に『なんでも斬ります』って書いてあるじゃない!」
剣士「そりゃ書いたけどさ……」
剣士「なんで君と、今付き合ってる彼氏の縁を切らなきゃならないんだよ」
町娘「だって……イマイチ頼りないんだもん」
剣士「別れたいんなら、自分で振ればいいだろうが」
町娘「でも、彼のどこが悪いか、具体的によく分からないし……」
町娘「なんかいいだしにくくって……ね、お願い! なんとかして!」
剣士「しょうがないなぁ……」
17:
しばらく考えた後──
剣士「じゃあ、こうしよう」
剣士「明日の夜、この町をちょっと出たとこにある森で」
剣士「君と彼氏とでデートするんだ」
町娘「うんうん」
剣士「で、俺が変質者のフリして襲いかかるから……」
剣士「そんなに頼りない彼氏なら、多分ビビりあがって、逃げちまうだろう」
剣士「そしたら、それを理由にして別れ話を切り出せばいい」
剣士「どうだ?」
町娘「悪くないわね! いいわ、それ採用!」
剣士(まったくひどい話だ……ま、別れた方が相手の男にとってもいいかもな)
18:
翌日の夜──
< 森 >
青年「ホ、ホントにこんなところでデートするの……? やめようよ……」
町娘「だらしないわねぇ?、こういうとこでデートするのがスリルあるんじゃない」
剣士(来たな……覆面をかぶって、と)ガバッ…
覆面「ヒヒヒ……」ヌゥッ…
青年「うわっ!?」
町娘(来たわ!)
覆面「俺は人を斬るのが大好きなんだぁ?……斬らせてくれよぉ?……」チャキッ
町娘(なかなかの名演じゃないのよ!)
青年「う、う……う……」
20:
青年「うおおおおおっ!!!」ガシッ…
覆面「!?」
青年「町娘ちゃん! 逃げてぇっ! 早く逃げてぇっ!」
町娘「えっ……」
青年「うわぁぁぁっ!!!」
覆面(コ、コイツ……力はないが、なんて気迫だ! こっちがビビっちまってる!)
青年「ボクは死んでもいい……彼女だけは絶対守るっ!」
覆面(だけど、なんとかしてビビらせないと……!)
覆面(仕方ない……やるしかない!)ビュアッ
ビシュッ!
次の瞬間、青年の服にべっとりと血がついていた。
覆面(どうだ……!?)
町娘「!?」
22:
町娘「な、なにやってんのよ……」プルプル…
町娘「やりすぎなのよ、アンタはァッ!」バッ
覆面「へ?」
ゴシャッ!!!
町娘のドロップキックが、覆面に炸裂した。
覆面「あがっ……!」ヨロッ…
覆面「ち、ちくしょう、覚えてやがれ!」ダダダッ
町娘(もう……ビビらせるだけっていったのに、まさか斬るなんて……!)ハァハァ…
町娘「大丈夫!? 血がついて……! どこを斬られたの……?」
青年「いや……ボクはどこも斬られてないよ」
町娘「そうなの!? でも、よかった……あなたが無事で……!」
町娘「ごめんなさい、ごめんなさい……全部あたしが悪いの……」グスッ…
青年「(なにがなんだかサッパリだけど──)いいんだよ」
23:
剣士「いってぇ?……」ズキズキ…
剣士(相手を斬るフリして自分の腕を斬るわ、ドロップキックされるわ……散々だな)
剣士(だけど──)
町娘「行こっ!」
青年「う、うん……!」
剣士(俺の血が二人の赤い糸になったみたいだし、よしとするか)
剣士(あれはもう、俺の剣でも斬れないだろう)
?おわり?
24:
剣士イケメン
27:
第三話『斬られる剣士』
ギィンッ!
ワァァァ……! ワァァァ……!
友人「ハァ、ハァ……やったぞぉっ! 俺の勝ちだぁっ!」
剣士「ぐっ……!」
剣士(正面からまっすぐ攻めたけど、まっすぐ押し切られたか……!)
剣士(これで俺が王国軍の精鋭として、剣を振るう道は絶たれた……!)
……………
………

剣士「…………!」ガバッ
剣士(また……あの時の夢か……)ハァハァ…
剣士(もし、あの試合で勝てていたなら、今頃俺はどうなってたんだろうか……)
30:
< 剣士の家 >
週一回、剣士の家では剣術の稽古が行われている。
剣士「みんな、木剣はちゃんと持ってきてるな?」
「はいっ!」 「はーいっ!」 「はいっ!」
剣士「じゃあ、今日は素振りからだ!」
ただし、生徒はみんな子供である。
剣士(くっ……今朝、あんな夢見ちまったから)
剣士(なんで俺が子供たちの相手しなきゃならない、とか思っちまってる)
剣士(くそっ……そんな自分にもイラついてきやがる……)
剣士(平常心、平常心……)
剣士「──ん?」
31:
生徒の中で一人だけ、メチャクチャな素振りをしている少年がいた。
少年「えいっ、やぁっ、とおっ!」ブオンブオンッ
剣士(この子は……子供たちの中で一番才能を感じる生徒だ)
剣士(将来的には、多分だけど、俺より強くなるだろう)
剣士(だけど、こういう時は叱らないとな)
剣士「コラ、ちゃんと素振りしなきゃダメじゃないか! ふざけちゃダメだ!」
少年「ちゃんと……?」ピクッ
少年「だったら先生も、ちゃんと教えてよ。さっきからずっとイライラしてるじゃん」
剣士「なっ……!(見透かされてた……!?)」
少年「そういえば先生ってさ、むかし王国軍のエリート剣士を目指してて」
少年「いいところまで行ったけど、結局ダメだったんでしょ?」
少年「その時のことを思い出して、イラついてんじゃないのぉ??」
剣士「…………」プルプル…
33:
剣士「うるさいッ!!!」
剣士「お前みたいな子供になにが分かる!」
剣士「いくら才能があったって、まだまだお前は親のスネかじりなんだ!」
剣士「親の金で剣術習ってるんだから、大人しく俺のいうとおりに練習しろ!」
剣士「────!」ハッ
シ?ン……
少年「…………」
剣士(しまった……俺はなんてことをっ! なにやってんだ!)
剣士(自分の心をコントロールできないようじゃ、剣士失格だ、俺は……!)
少年「…………」ウルッ…
剣士「(涙!?)ご、ごめっ──」
少年「ありがとう、先生!」
剣士「へ!?」
少年「おかげで新技のヒントが掴めたよ! ちょっとやってみていい!?」
剣士「いいけど……」
35:
木剣を構える剣士と少年。
少年「今からボクが殴りかかるから、反撃してみて!」ザッ…
剣士「わ、分かった……」
少年「えいっ!」ヒュッ
剣士「とうっ」ブンッ
少年は体の小ささを利用して剣をかわすと──
少年「ここっ!」シュッ
ボゴォッ!
剣士のスネに木剣をブチ当てた。
剣士「うっ……うごぉぉぉっ!」ゴロゴロ…
少年「やったぁ!」
37:
少年「このところ、なにか新しい必殺技が思いつきそうで思いつかなかったんだけど」
少年「先生のおかげで思いつけたよ! ありがとう!」
剣士「いだだ……いやぁ?」ズキズキ…
剣士(みごとな一撃だった……本物の剣だったらスネを斬られてたところだ)
剣士(さっきの変な素振りは、それを模索してたってところか)
剣士(それに全く気づけなかったことといい、怒鳴っちまったことといい……)
剣士(俺もまだまだだな)
剣士(まだまだってことはつまり、この町でも俺は進歩できるってことだ!)
剣士「みんな、稽古を再開するぞっ! 君も今度はちゃんと素振りしろよ!」
少年「はいっ!」
「えいっ!」 「はあっ!」 「でやっ!」
剣士(エリートになれなくても……剣の道を歩むことはできる……)
?おわり?
38:
第四話『エリートを斬る』
< 町 >
ザワザワ…… ガヤガヤ……
剣士「あの、なにかあったんですか?」
夫「今日から国から派遣された騎士が、町に駐在することになったんだ」
妻「で、みんなでどんな騎士なのか見にきてるのよ?」
剣士「へぇ?」
剣士(騎士といえば、生まれからしてちがう、エリート中のエリート……)
剣士(それが町に駐在するってことは、この町は国の保護下に入ったも同然ってことだ)
剣士(そりゃあ、盛り上がるよな……。さて、どんな奴なんだろ?)
女騎士「今日からこの町に駐在することになった。みんな、よろしく頼む」
剣士(お、女ァ!?)
39:
女騎士「さて……私が女ということで、不安に思っている人間も多いことだろう」
女騎士「そういえば、この町には半ば便利屋のような腕利きの剣士がいるときく」
剣士「!」ピクッ
剣士「あ……多分それは俺のことかと……(他に剣士なんていないしな)」
女騎士「フフフ……君か」
女騎士「なぁ、勝負をしないか? どちらが町一番の戦士か、この場で決めるんだ」
剣士「いや……俺は勝負なんて……」
女騎士「逃げるのか……まあいい」
女騎士「剣で戦う私と、剣で遊んでいる君では、勝負になるはずがないものな」
剣士「!」カチン
剣士「聞き捨てならないな……今の言葉」
剣士「いいだろう、受けて立ってやる!」
43:
数十人の町民が見守る中、試合をすることになった剣士と女騎士。
剣士(こんな風に試合をするなんて、何年ぶりかな……)
女騎士「いくぞっ!」ダッ
キィンッ! ギンッ! キンッ!
剣士(いっ! 口だけじゃないな、この女! さすがだ!)
女騎士「どうした、どうした!?」
ガッ! ギィンッ! キンッ!
剣士(あ、ヤバイ。これ以上下がったら、野次馬が危ない──)
女騎士「そこだっ!」シュッ
ピタッ……
一瞬のスキを突かれ、剣士の首筋に刃が突きつけられた。
剣士「ぐ……! ま、参った……!」
女騎士「フッ、私の勝ちだな」
46:
< 剣士の家 >
剣士(完敗だな……)
剣士(試合は久しぶり、とか野次馬に気を取られた、なんて言い訳にもならない)
剣士(ま、元々強さをウリにしてたわけじゃないから、商売に差し支えないけど……)
剣士(やっぱへこむよなぁ……)フゥ…
剣士(それにしてもあの女騎士……)
剣士(あんなに強いのに、なんでこんな田舎町に来ることになったんだ?)
剣士(今、王国軍は大盗賊団と戦ってるハズだってのに……)
ワァァ…… キャァァ……
剣士「?」
「コソドロだァ!」 「またあいつ盗みやがった!」 「捕まえろおっ!」
剣士(またコソドロか……アイツも懲りないな)
剣士(どれどれ、俺が退治してやるか)
48:
< 町 >
剣士(お、いたいた)スッ…
剣士(また叩きのめしてやる)
コソドロ「へっへっへ?、オイラが捕まるもんかよォ!」スタタッ
コソドロ「──ん?」
女騎士「…………」チャキッ
剣士(なんだ女騎士がいたのか。なら任せるか……)
コソドロ「どけ、どけ、女ァ?!」タタタッ
女騎士「う、ううっ……」ガチガチ…
剣士(ど、どうしたんだ!?)
50:
女騎士(やはり……体が動かない! 試合であれば平気なのに──)ガタガタ…
女騎士(“本番”だと……緊張してしまって……)ガタガタ…
コソドロ「どけどけぇ?っ!」タタタッ
女騎士「ひっ……!」
ガンッ!
コソドロ「あぐっ……」ドサッ…
剣士が投げた剣の柄が当たり、コソドロは失神した。
女騎士「あ……」
ザワザワ……
「ありがとう、剣士さん!」 「コソドロめ!」 「とっつかまえろ!」
「今女騎士さん、ビビってなかった?」 「マジ?」 「エリートなのに……」
町民から、剣士への称賛と、女騎士への懐疑の声が入り混じる。
女騎士(うっ……)
剣士「…………」
52:
剣士「女騎士さん、俺に名誉挽回のチャンスを与えるため」
剣士「わざとコソドロに手を出さないでくれて、ありがとよ!」
剣士「だがな……さっきアンタに負けた恨みはまだ残ってるんだからな!」
女騎士「!」
ワイワイ……
「なんだそういうことか」 「騎士がコソドロにビビるわけないしな」 「だよなぁ」
散っていく町民たち。
剣士「さて、帰るか」
女騎士「ま、待て!」
剣士「ん?」
女騎士「キサマ……なぜ私をかばうようなマネをした!」
女騎士「私が実戦で役に立たず、こんな平和な町に派遣されるハメになったこと──」
女騎士「キサマほどの腕なら、察することができたはずだ!」
53:
剣士「だって……アンタはエリートだろ?」
剣士「エリートは俺の……いやみんなの憧れだ」
剣士「そのアンタがコソドロにビビったなんて知れたら、みんなガッカリするだろ?」
剣士「別にアンタのためにやったわけじゃないから、気にすんな」
女騎士「…………」
剣士「ま、これで一勝一敗ってことで……仲良く町を守っていこう」
女騎士「……考えておく」
?おわり?
54:
イケメンめ…
56:
第五話『老人を研ぐ』
< 町長の家 >
町長「ふう……」
町娘「どうしたの、おじいちゃん?」
町長「年を取るというのは、イヤなもんじゃのう……」
町長「頭のキレも、体のキレも、すっかりなくなってしもうた……」
町長「そろそろワシも引退かのう……」
町娘「そんなことないわよ! 元気出してよ、おじいちゃん!」
町長「…………」フゥ…
町娘「んもう、急にどうしちゃったんだろ)
町娘(頭のキレ、体のキレ……。そうだわ、こういう時は!)
58:
< 剣士の家 >
剣士「──で、俺に町長さんを元気づけろ、と」
剣士「……なんで俺なんだよ!?」
町娘「だって?、頭のキレや体のキレをよくするんなら」
町娘「やっぱりよく斬れる剣を持つ、剣士さんの仕事でしょ?」
剣士「絶対ちがう……」
すると──
女騎士「受けてやれ、剣士」ガチャッ…
剣士「女騎士さん! なんでアンタがここに!?」
女騎士「なに、キサマと剣について語り合おうと思ってな」
女騎士(この間の礼をいいにきた、などとはとてもいえん……)
女騎士「だが、町長殿の悩みを解決する方が優先だろう」
町娘「さっすが、女騎士さん!」
剣士(はぁ……こんなの絶対剣士の仕事じゃないって)
60:
< 町長の家 >
町長「ふう……」ショボン…
町娘「おじいちゃん、剣士さんと女騎士さんが来てくれたわよ!」
町長「そうかい……すまんのう」
剣士(おおっ、ホントに元気ないな)
女騎士「町長殿、元気を出してくれ」
女騎士「この町は人口が少なく、リーダーの気落ちは皆の士気に関わる」
町長「うむ……それは分かっておるんじゃが……」
剣士(どういう励まし方だよ……軍隊じゃあるまいし)
剣士「まぁ……元気出してくれよ、町長さん」
剣士「俺たちだけじゃない。みんな心配してるんだから、さ」
町長「そうじゃな……ありがとう」
剣士(う?ん、なんかイマイチ効果ないな……)
61:
剣士「まぁ……顔でも洗って、サッパリした方がいいですよ」
町長「どういう意味じゃね……?」
剣士「年寄りの冷や水っていうじゃないですか」
町娘「え?」
女騎士「お、おい!」
剣士「あれ……? これって褒め言葉じゃなかったでしたっけ……ハハ」
町長「ぐ、ぐぬ……」
剣士「まぁ、残り少ない人生ですし、落ち込んで過ごすよりは笑った方がいいですよ」
剣士「あと……頭のキレや体のキレが悪くなってるんですって?」
剣士「なら、小便のキレも悪くなってるでしょ」
剣士「きちんと最後まで出さないと、ズボンとパンツがぬれて──」
町長「いい加減にせいッ!!!」
バチィンッ!
町長のビンタが炸裂した。
剣士「ぎゃんっ!」
63:
町長「ワシは生涯現役じゃ! 分かったか、この若造め!」
町長「ちょっくら走ってくる! えっほ、えっほ……」タタタッ
町娘「剣士さん、大丈夫!?」
女騎士「なぜ、あんな失礼なことをいったのだ! 怒られるのは当然だ!」
剣士「でも……元気は出ただろ?」
町娘「あっ、たしかに……!」
剣士「町娘ちゃんが、俺の剣はよく斬れるっていってたけど」
剣士「ならキレさせれば、町長さんの切れ味もよくなるかなって思ったんだ」
女騎士「なるほど……よく考えたものだ」
女騎士「ただし、あとできちんと謝罪するのだぞ」
剣士(許してもらえなかったら、どうしよ……)
?おわり?
65:
最終話『守るために斬る』
< 剣士の家 >
少年「先生、さようなら!」
「さよなら?!」 「またよろしくお願いします!」 「さようなら!」
剣士「おう、また来週な!」
剣士(ふう、今日も町は平和だな)
剣士(事件といえる事件は、せいぜいコソドロが悪さをやらかすくらい……)
剣士(そういや、例の大盗賊団もついに壊滅したって新聞に載ってたな)
剣士(こう平和だと、ついついなにか事件が起きないか、なんて期待しちゃうよ)
ザッ……
女騎士「……突然、すまない」
剣士「おお、女騎士さん。顔が青ざめてるが、どうしたんだ?」
女騎士「とんでもないことになってしまった……」
剣士「へ……?」
66:
剣士「盗賊団が……この町に来る!?」
女騎士「ああ、王国軍は大盗賊団を壊滅させた……はずだった」
女騎士「しかし、奴らには分派ともいえる集団がいくつも存在した」
女騎士「奴らは散って、各地の町や村を襲い、金品を得て再起を図ろうとしているのだ」
女騎士「この町にも、その中の一団が来るという情報が入っている」
剣士「人数は……?」
女騎士「集団によってちがうが、100人程度はいると思っていた方がいい」
剣士「100人か……」
女騎士「しかも、この町は首都から遠く、国からの助力はとても期待できない……」
剣士(この町で盗賊とまともに戦える人間なんて……どのくらいいるのやら……)
女騎士「剣士、どうすべきだろうか?」
剣士「戦うのは……正直いって無謀だろう」
剣士「ならいっそ、町を捨てて、みんなで避難した方がいい」
女騎士「……たしかにそうだな。分かった、すぐ町長殿にも知らせよう!」
67:
< 町長の家 >
町長「なるほど……それはまずいのう」
剣士「まだ時間はありますが、町長さんから公式な声として呼びかけて」
剣士「避難準備をさせた方がいいと思います」
町長「そうじゃな……。すぐ町民に避難準備をさせよう」
剣士「俺も手伝います!」
女騎士「私も協力させてくれ」
町娘「おじいちゃん、あたしも!」
町長「では……ひとまず町民を広場に集めて、状況を伝えるかのう」
剣士「分かりました!」
69:
< 広場 >
ザワザワ…… ガヤガヤ……
町長「どうしても必要なものだけ、荷台に乗せて避難するのじゃ!」
女騎士「現在、避難場所は鋭意検討中だ。それが済み次第、全員で避難する!」
「盗賊め……!」 「ま、命がありゃやり直せるさ」 「怖いねえ……」
剣士(ふう……どうにかなりそうだな)
コソドロ「おい!」タタタッ
剣士「おう、コソドロじゃねえか。今はとてもお前にかまってるヒマはねえよ」
コソドロ「お前ら……なにのんきなことやってんだ!?」
剣士「のんきって……どこがのんきなんだよ。今、避難準備のために──」
コソドロ「オイラの情報によると、盗賊団はもう数時間もすりゃこの町に来るぞ!」
剣士「……な」
剣士「なんだとォ!?」
71:
剣士「バカいうな。ウソなんかついたってすぐバレ──」
コソドロ「ウソなわけねえだろ! オイラだってこの町の出身なんだ!」
コソドロ「盗み常習犯のオイラを、町の人はいつも国に突き出さず許してくれてる!」
コソドロ「そんなオイラが……こんなウソをつくわけねえだろう!」
剣士(たしかに……コイツはどうしようもない奴だが)
剣士(こういうウソをつくタイプ、でもない……)
剣士「でも……どこでそんな情報をつかんだんだ?」
コソドロ「オイラみたいな人間には似た者同士の間で、ネットワークがあるんだよ」
コソドロ「なんでも、ここに来る盗賊団のリーダーは元王国軍の精鋭らしい!」
コソドロ「モタモタしてたら、みんな殺されちまうぞ!」
剣士(マジかよ……だが、それなら異常な進軍スピードもうなずける)
剣士「分かった……お前を信用しよう!」
剣士「おい、みんな! 突然だが、落ちついて聞いて欲しい!」
剣士は、事態が切迫していることを町民たちに話した。
73:
ドヨドヨ…… ドヨドヨ……
「あと数時間って……」 「どうすんだよ!?」 「避難場所も決まってないのに!」
町長「みんな……落ちつくんじゃ! 混乱してしまってはなんにもならん!」
剣士(やっぱこうなるよな……今、話すべきじゃなかったか……!?)
すると──
女騎士「落ちつけッ!!!」
ピタッ……
女騎士「この町には私がいる。王国騎士である私がな」
女騎士「心配するな……。私はこの程度の修羅場、何度もくぐり抜けている」
女騎士「今は冷静になって、我々の指示に従うことだけを考えろ」
「そ、そうだっ!」 「女騎士様がいたんだ!」 「よかったぁ?……」
剣士(町長でも鎮められなかった混乱を、一瞬で……これがエリートの力か)
剣士(でも……)
女騎士「…………」ブルブル…
剣士(足が震えてる……本当は怖いだろうに、よくやってくれたよ)
76:
女騎士の指示で、避難態勢は迅に整った。
剣士「ありがとう、女騎士さん」
女騎士「なんの……民を守るのは、騎士として当然の務めだ」
剣士「でも……なにもかも置いて逃げたとしても、女性や子供を交えた逃避行だ」
剣士「もし、盗賊団が本気で追ってきたら……とても逃げ切れない」
女騎士「そうだな……。少しでも時間を稼ぎたいところだ」
剣士「だから……俺が時間を稼ぐ!」
女騎士「な、なんだと!? 死ぬ気か!?」
剣士「なぁに、もちろん俺だって死ぬつもりはないよ」
剣士「奴ら、ゴーストタウンみたいになってるこの町を見たら驚くだろう」
剣士「そのスキに先制攻撃をかまして、何人か斬って、すぐ逃げるさ」
女騎士「……大丈夫なんだろうな?」
剣士「逃げ足には自信がある。任せてくれ」
女騎士「…………」
78:
そして──
< 広場 >
剣士(避難準備ができた家から、次々と町を出てるみたいだな)
剣士(町長さんや女騎士さんが、うまくやってくれたんだな)
剣士(コソドロの話じゃ、盗賊団はあと二時間もしないうちにやってくるだろう)
剣士(俺が斬り殺されるまでに、何人斬れるか……少しでも数を減らさなきゃ!)
すると、女騎士がやってきた。
剣士「女騎士さん……?」
女騎士「剣士……時間稼ぎ、私も手伝おう。人数が多いに越したことはなかろう?」
剣士「で、でも……」
女騎士「心配するな。もう以前のように、実戦で震えたりはしない」
女騎士「それにな、居残り希望者は私一人だけではないのだ」
剣士「え……」
80:
ゾロゾロ……
妻「水臭いじゃな?い、剣士さん!」
夫「君だけに無理を押しつけるわけにはいかないよ」
青年「ボクも残らせて下さい!」
町娘「あたしも!」
少年「先生、ボクだって戦えるんだ!」
コソドロ「へへへ……一人でかっこつけんなよ」
町長「ワシも町の長として、残らせてもらうぞい」
およそ100人ほどの町民が残っていた。
剣士「み、みんな……」
女騎士「すまぬ……お前が残るというのをどこかで耳にしたらしくてな」
女騎士「ここにいる者たちが、残るといって聞かぬのだ」
剣士「……ありがとう」
剣士「実をいうと、ちょっと心細かったりしたんだ」
82:
剣士「だけど……仮にも戦士として、みんなを死なせるわけにはいかない」
剣士「気持ちだけで十分だ。早く逃げてくれ」
ザワザワ……
妻「そんなっ! あたしは剣士さんのおかげで料理がだいぶマシになったのよ!」
妻「まだ恩を返していないのに……」
剣士「…………」ピクッ
この時、剣士の中であるアイディアが閃いた。
剣士(ん……?)
剣士(今俺はもしかして、とんでもないことを思いついちまったかもしれない)
剣士(この100人で、盗賊団100人相手に時間を稼ぐ──だけでなく)
剣士(町を守り、盗賊団に勝利できるかもしれない作戦を!)
剣士(やってみる価値は……ある!)
剣士「みんな……話があるんだ。聞いてくれるか?」
84:
ザワザワ…… ドヨドヨ……
妻「分かったわ……。私は初心にかえって、めいっぱい料理を作ればいいのね?」
剣士「そうです。なるべく大量に作って下さい」
剣士「……で、コソドロ」
剣士「お前の役目が一番危険だが……やってくれるか?」
コソドロ「へっ……もちろんよ! オイラもたまにはやってやるよ!」
剣士「頼む……!」
剣士「さて……盗賊団がうまく罠にかかったら、一斉に襲いかかるんだ」
剣士「もちろん、俺と女騎士さんを先頭にな」
剣士「ただし、絶対に無理はしないこと!」
オ?ッ!!!
剣士(さあ、盗賊団……来るなら来い!)
86:
< 町の外 >
盗賊団はすぐ近くまで迫っていた。
団員A「なんだ、てめえ……」
コソドロ「へへっ……オイラはケチなコソドロっすよ」
コソドロ「アンタたち、これからあの町を襲うんでしょ?」
コソドロ「オイラが案内人になれば、より効率的に略奪できますよ?」
団員B「チンピラなんぞに用はねえ……殺されたくなきゃ失せろ」
コソドロ「ひ、ひいっ! すんません! 失せます、失せます!」ビクッ
コソドロ「ま、あいつら、今日は広場で立食パーティーなんざやってますから」
コソドロ「オイラなんぞいなくても、平気でしょうが……じゃ、さいならっ!」ダダダッ
団員A「ふん、小金目当てのチンケな小悪党が……うざってえ」
団員A「ウチのボスの剣の腕なら、あんな奴は必要ねえんだ」
団員B「だが、立食パーティーか……いい腹ごしらえができそうだな」
89:
まもなく、盗賊団が町に侵入した。
< 広場 >
団員A「テーブルに、いっぱい料理が並んでるな。パーティーの最中に逃げたらしい」
団員B「さっきのコソドロがいってたのは、事実だったみてえだな」
ボス「逃げた町民どもは、あとで追跡して始末するぞ。いい見せしめになる」
団員A「ところでボス、この料理どうします? なかなか美味そうですぜ」
ボス「ここまで長旅だったしな……せっかくだ、食っていいぞ」
団員A「そうこなくっちゃ!」パクッ…
モグッ…… ジュルッ……
盗賊たちが、次々に料理に口をつける。すると──
「うげえええっ!?」 「なんだこりゃ!?」 「まずっ……!」
団員A「ひ、ひでえ味だ……毒か!?」
団員B「いや、毒じゃねえようだが……ある意味、毒よりひでえ!」
剣士「今だぁぁぁっ!!!」
90:
剣士と女騎士を始めとした、広場の周辺に隠れていた町民が、一斉に飛び出した。
ウオォォォォォ……!
団員A「なんだあっ!?」
団員B「くそっ……この料理は罠だったのか! うげっ……後味が最悪だ!」
剣士「どりゃあ! せいっ! ──ふんっ!」
ザシュッ! ズバァッ! ザンッ!
女騎士「はああああっ!」
ビシュッ! シュバッ! ドシュッ!
さすがに剣士と女騎士の二人は強く、次々に盗賊を倒していく。
92:
団員A「ちくしょう……クソまずい料理のせいで力が……」オエッ
夫「女房の料理を吐くんじゃないッ!」ブンッ
ドゴォッ!
団員A「うげぇっ!」ドサッ…
妻「あなた、かっこいいわぁ?」
青年「町娘ちゃんは……ボクが守るッ!」ギロッ
団員B(なんだ……コイツのド迫力は……!)ビクッ
町娘「ええいっ!」バッ
ドゴンッ!!!
団員B「ぎゃふっ!」
青年の迫力に怯えた盗賊を、町娘のドロップキックで吹っ飛ばすというコンビネーション。
剣士(おお……みんな、やるじゃねえか!)
94:
少年「ボクだって戦えるんだ!」
団員C「このガキャアッ!」ブンッ
攻撃を転がりながらかわし、スネに木剣をぶつける少年。
ボゴォッ!
団員C「おごぉぉぉっ!」ドサッ…
少年「これがボクの“スネかじり剣”だ!」
剣士(アイツ……やっぱりとんでもない逸材だ。大人になる前に死ぬなよ!)
?
コソドロ「料理、うまかった?」
団員D「てめぇ……俺らをだましやがったな! ──って、あれ?」
コソドロ「へへへっ、アンタの剣はもうオイラの右手にあるよ」チャキッ
団員D「し、しまった!」ギクッ
剣士(コソドロ……今日だけはお前がやけに輝いて見えるぜ!)
95:
町長「やれやれ、ワシの町で略奪をしようとはのう……」
町長「久しぶりに……キレちまったわい……」
町長「生涯現役……町長の超パワーを堪能するがいいッ!」
町長「キエエエエッ!!!」
ドゴォッ! バキィッ! ゴッ! ガスッ! メキィッ!
「ぐええっ!」 「ひぎゃあっ!」 「ぐぶっ!」
剣士(町長さんつええ! さすが、あの町娘ちゃんのじいさんだ!)
町長「あ?……疲れた」ゼェゼェ…
剣士(さすがにスタミナには難があるけど……)
99:
女騎士「一人に対し、複数人で当たれ!」
女騎士「怪我をした者は、すぐに下がれ! 決して無理をするな!」
女騎士「この町には、この私がついているぞ!」
オオォォォォォ……! ワアァァァァァ……!
剣士(女騎士さん……やはり騎士だから、強いだけじゃなく戦術や戦略に明るいんだな)
剣士(それに、エリートとしての自分の役割をちゃんと分かってる)
剣士(いわば国の代表である彼女がいるからこそ、みんな安心して戦える!)
102:
女騎士の指揮と、意外な実力を秘めていた町民たちにより、
戦いは町民側有利に進んでいた。
剣士(このままいけば……みんなは大丈夫だな)
剣士(だが、相手は大盗賊団の一派……油断できない! すぐに決めなければ!)
剣士(あとは……俺がこの盗賊団のリーダーを倒せば……!)
ボス「…………」シュバッ
ガキンッ!
剣士「くっ!」ザザッ…
ボス「ふん、よく受けたな」
剣士「そっちこそ……盗賊のくせに鋭い太刀筋だ……!」
剣士「!?」ハッ
剣士「お、お前は……! なんでお前が……!?」
105:
剣士「友人!?」
ボス「久しぶりだな」シュバッ
キィンッ! ギンッ! ガキンッ!
剣士「ちょ、ちょっと待て!」ザッ
剣士「なんでお前が……! 俺に勝って王国軍の精鋭部隊に入ったのに……!」
剣士「なんで盗賊になってんだよッ!?」
ボス「ま……色々あってな」
剣士「色々ってなんだよ!?」
ギンッ!
ボス「エリートってのはな、剣の腕だけじゃやっていけないんだ」
ボス「駆け引きだの派閥だの、剣以外の権謀術数に優れてなきゃ話にならねえ」
ボス「……で、そういうのが苦手な俺はすぐさま冷遇され、僻地に飛ばされて」
ボス「次第にやる気も失せて……あれよあれよと、盗賊にまで落ちぶれちまった……」
剣士「…………」
107:
ボス「俺もお前みたくとっととエリート街道を捨てて」
ボス「こんな田舎町で気楽に剣を振ってりゃ、幸せな人生を送れたのかもな」
剣士「ふざけんな」
剣士「お前と首都で知り合って以来、お前は……俺の憧れだったんだぜ!」
剣士「お前を妬んだり恨んだりしたこともあるけど、お前は俺の誇りだった!」
剣士「きっと今も、王国軍の中で輝かしい剣の道を歩んでるんだってな!」
剣士「なのに、俺みたいな人生を歩めばよかった、とか簡単にいうんじゃねえ!」
剣士「それにな……お前のいう“こんな田舎町”に送られたって」
剣士「やる気も誇りも捨ててない、エリートだっているんだよ!」
剣士「ゴチャゴチャと……言い訳すんじゃねえっ!」
剣士「お前はここで──叩き斬るッ!」
ボス「俺に負けた田舎剣士が……ずいぶんと偉そうな口叩くじゃねえか」
ボス「なら……お前のその憧れの剣技とやらで、お前を町ごと斬り捨ててやるよッ!」
ギィンッ!
111:
キンッ! ギィンッ! ギャリッ! ──ザシッ!
剣士「ぐっ……!」ブシュッ…
ボス「俺はこのとおり落ちぶれたが……剣の鍛錬はやめてない」
ボス「お前はまた負けるんだよ……あの時のようになァ!」
キンッ! ギンッ! キィンッ!
剣士(強い……! 剣はあの試合と同じ──いや遥かに鋭くなってやがる!)
ボス「俺は王国軍で磨いた正統派剣術と、盗賊生活で鍛え上げた野良剣術を融合させた」
ボス「こんな町で遊んでた、お前に勝ち目はねえよ!」
ズシャッ……!
剣士「ぐは……っ!」ガクッ
剣士(そう……。俺もこんな町じゃ、剣の腕は鈍る……そう思ってた)
剣士(だがな、どんな町だろうが田舎だろうが、剣の道を歩むことはできんだよ!)
シュバァッ! ザシッ!
ボス「ぐおっ……!(足を狙ってきただと!?)」ブシュッ…
剣士「俺の弟子が教えてくれた……必殺剣“スネかじり剣”だ」
113:
さらに──
剣士「どりゃあっ!」バッ
ドギャッ!!!
ボス「がはぁっ!」ドザッ…
剣士のドロップキックが、友人をダウンさせた。
ボス「ぐっ……どこが“剣の道”だ!」
剣士「俺はこの町で身につけた全てを──お前にぶつけるッ! 町を守るために!」
ギィンッ! キンッ! ガッ! キィンッ! ガキンッ!
ザシュッ!
ボス「ぐはっ……!」
剣士「どうした! 俺の憧れは、この程度か!?」
剣士「王国軍はもちろん、盗賊生活だってラクなもんじゃなかったろう!」
剣士「お前も全部ぶつけてこい! 全部出しきらなきゃ、俺には勝てねえぞ!」
ボス「へっ……」ニヤ…
ガキンッ!
116:
キィンッ! ギンッ! ガッ! キンッ! ギャリィンッ!
二人の斬り合いは、全くの互角だった。
剣士「ハァ、ハァ……」
ボス「フゥ、フゥ……」
剣士(次の一撃で……)
ボス(次の一撃で……)
剣士&ボス(決めるッ!)
剣士「いくぞおっ!」ダッ
ボス「来いっ!」
剣士「うおおおおっ!」ブオンッ
ボス(うぐっ……!)ジリ…
剣士のまっすぐな剣と気迫に──友人は真正面からのぶつかり合いは避けるべきと判断し、
剣をわずかに逸らした。
ボス(この一撃をかわして、俺が勝つ……!)
117:
しかし──
ザグゥッ……!
剣士のまっすぐな一閃が、友人の肩から胸を大きく切り裂いていた。
ボス「がふっ……!」
剣士「友人……!」
ボス「俺はお前にビビって、剣を曲げちまったが……」
ボス「お前の剣はあの時と同じ……まっすぐ、だった……な……」
ドサァッ……
剣士(友人……)
118:
盗賊団ボスを倒した剣士に、女騎士が駆け寄ってきた。
女騎士「剣士、よくやってくれた! 我々の勝利だ!」
女騎士「奴が倒されたことで、盗賊団は総崩れになって、散り散りに──」
女騎士「……どうした?」
剣士「あ、いや、何でも……」
剣士「…………」
剣士「女騎士さん……」
剣士「コイツ……俺の友だちだったんだ……」
女騎士「!」
女騎士「そうか……」
女騎士「素晴らしい決闘、だった。どうか彼の分まで誇ってくれ」
剣士「ありがとう、女騎士さん」
121:
< 町 >
ワアァァァァァ……!
「無事だったか!」 「よく町を守ってくれた!」 「本当にありがとう!」
妻「あたしの料理がこんな役に立つなんてねぇ?、また初心にかえろうかしら」
夫「お願いだからやめてくれ!」
町娘「青年君もかっこよかったよ!」
青年「いやぁ?、ボクは一人も倒してないし……。君は五人くらい倒したけど……」
少年「よぉ?し、もっと稽古を頑張るぞ! いつか先生を超えるんだ!」
コソドロ「まさか、本当に町を守れるなんてな……」
町長「いやぁ?久々に暴れたわい……こりゃ明後日は筋肉痛じゃな」コキッ
女騎士「お疲れ様だ、剣士」
剣士「女騎士さんこそ、お疲れ。町民に死人が出なかったのは、あなたのおかげだよ」
剣士(これでまた平和な町に戻るんだな……。やっぱり平和が一番だ)
125:
二週間後──
< 剣士の家 >
剣士(あれから……各地に散ったという盗賊団は全て退治された)
剣士(盗賊団に襲われた町や村の対応は、戦ったり逃げたり様々だったらしいが)
剣士(盗賊団と戦うことを決意して、なおかつ死人を出さずに済んだのは)
剣士(この町だけだったらしい……)
剣士(いやぁ?、今思うと、かなり危険な賭けだったよな……あの作戦)
剣士(さぁ?て、今日はやることないし、トレーニングでも──)
ガチャッ……
剣士(──ん?)
女騎士「剣士……とんでもないことになってしまった!」
剣士「どうしたんだよ。まさか……また盗賊団が!?」
女騎士「いや……そうではない」
126:
女騎士「実は……あのおしどり夫婦に聞いたのだが……」
剣士「?」
女騎士「お前は料理も得意らしいな?」
剣士「得意ってほどじゃないけど……。まぁ、自炊くらいは……」
女騎士「頼む、料理を教えて欲しい!」
女騎士「私は普段、付き人たちに料理をやらせていたのだが」
女騎士「たまには自分でやろうと──」
女騎士「さっき自分でイモの皮をむいたら、こんなになってしまったんだ!」スッ
剣士「!?」
128:
剣士(なんだこりゃ……どう見ても“食べ物で遊んでる”レベルの、イモ……!)
剣士(イモに気の毒なんて感情を抱くのは、生まれて初めてだ!)
剣士(もしかして、女騎士さんってあの奥さんを上回る料理下手なんじゃ……)
剣士(だとしたら……被害は未然に防がなきゃ!)
剣士「分かった……じゃあここで勉強してってくれ」
女騎士「助かる……」
剣士「ところで、料理の稽古が終わったら、一緒に剣の稽古でもどう?」
剣士「そういや俺、まだ試合じゃアンタに負けっぱなしだしさ」
女騎士「うむ、望むところだ!」
         ? おわり ?
142:
面白かった
14

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