「ライブハウス行ってとんでもない女に惚れた」back

「ライブハウス行ってとんでもない女に惚れた」


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1:
勃ったら書く
3:
ちょっと待ったごめん勃ってないってかどうしよう誤変換
5:
もういいや勃ってないけど書くわごめんな
6:
俺は元々そういうライブハウスとか行くのに抵抗があった
ああいうとこって不良の溜まり場っていうか、なんか恐いってイメージがあったんだよな
それでも行ったのは幼馴染がライブするから来てくれってチケットもらったからだ
因みに幼馴染は男だ畜生
中三の夏休みのことだ
元スレ
ニュース報VIP+
ライブハウス行ってとんでもない女に惚れた
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1386492873/
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8:
自転車で二十分の場所にあった
どっちかっていうと田舎寄りな地元だからライブハウスなんて滅多にない
その一件のライブハウスだけがその辺りのバンドマンの聖地だったみたいで、だから逆に集まりはよかったんだろう
こじんまりとした規模だったけど人は入ってた
幾つかのバンドが集まってライブをするのを対バン形式って言うんだけど
よっぽど有名でない限りそういう形式が一般的で
友達の出番は二番目だった
俺は一番目の途中で中に入った
9:
凄い音だけどただの雑音だった
ギターもベースもドラムも一体感がなくて、ボーカルに至っては聞くだけでメロディラインを外してることが解りやすい
後々わかったけど最初のバンドってそういうもんみたいだな
そのバンドが終わって、二番目のバンド
幼馴染がギターのバンドがライブを始めた
これまたへっぽこバンドだった
10:
だけど一組目よりはマシで、それに乗じて客のノリも良くなっていた気がする
友達のライブが終わって三組目
聞いてて違和感がないくらいになったちゃんとした音楽だった
ジャンルはその日のイベントの傾向がそうなのか、激しいサウンドだ
三組目のバンドを聞いている途中に幼地味が客席に来て、俺を呼んだ
「ノリ悪いぞおい!」
ライブ終わったばかりでハイテンションのそいつは言うやいなや最前列に頭から突っ込んでいった
俺とは無関係な世界だと思った
12:
三組目が終わって友達も戻ってきた
「次のバンドがやばいんだよ」
あーやばいんだやばいやばいって返したくなるのをぐっと堪えて
四組目のバンドが登場した
「やばい」
って思わず零した
14:
そのバンドのボーカルは女だった
髪は女にしては短めで金髪でピアスをしていて
ごついドクロの指輪をしてジーンズにだらっとしたロンT
マイクを手にして重低音を背景に歌いあげる
雰囲気ががっちりと決まった存在感に目も心も奪われたんさ
16:
この時点で惚れてたかって言われたら流石に違うと言い切れる
ただ憧れたんだろう
アーティストってかっこよく見えたりしないか?それと同じで
こうなりたい、とは思わなかったけど
ただただ感動していた
ライブが終わって大トリのバンドが客を盛り上げる
トリなだけあって凄まじい人気があるしボーカルもかっこいいし曲も上手い
でも、俺は四組目のボーカルが忘れられないでいた
ライブが終わった頃合で幼馴染が言った
「打ち上げあんだけどお前も残るか?」
放心状態で俺は頷いた
17:
ライブが終わって客が帰ったり帰らんかったり
時間は七時頃だったかな
ライブハウス的にはこれも商売みたいで、自由参加型の2000円徴収ジュース飲み放題とやらだ
打ち上げっても酒は出ないし(学生が多いイベントだったんだろう)お菓子がちらほらあるだけ
でも客からすれば大好きなバンドマンと喋れるかもしれないしってんで人はまだそれなりにいた
俺は四組目のボーカルを思わず目で探した
18:
バンドマン達は壁際のソファーに座って煙草吸ったりして盛り上がっていた
やっぱそこには見えないラインがあるんだよな
客も気軽には近づけないみたいだ
金髪のボーカルはそこにはいなかった
帰ったのかなって思うと一気に熱が冷めてきて、俺も帰ろうかとしたら
幼馴染が「こっちこいよー!」って俺を呼んだ
呼ばれて「こいつ幼馴染なんだぜwww」って周りに紹介される
「幼馴染!すげえ!」なにが凄いんだか
「鉄板だなwww」そんな鉄板は嫌だ
まあ幼馴染っていたりいなかったりするよな
そのくせドラマでもなんでも鉄板な間柄だよな
ネタ要員として呼ばれただけだった
19:
俺と幼馴染がどれぐらい仲がいいかっていうと、幼地味じゃなけりゃ付き合いがなかっただろうってぐらいなもんだ
決定的に性格が違うからそれは仕方ない
俺はノリが悪い系統だけど、幼馴染はクラスでも目立つタイプだ
そんな幼馴染が羨ましいと思ったり「やべえだろwwwまじやべえwww」こんなん見てると思わなかったり
どこまでいっても俺はバンドマンじゃないし、曲の趣味も多分合わないし
誘われなきゃ来ないだろうイベントだ
俺は音楽あまり聞かないし、聞いても静かな音楽が多い
だから暇で、適当な頃合見計らってその場を離れた
帰ろうかどうか考えたけど、ふとステージに目が行った
あそこであの人は歌ってたんだよなーって
20:
ほうほう
22:
明るかったステージは暗くなっていた
その代わりにライブハウス全体がオレンジの柔らかい光で照らされていた
ライブをしていた時と真逆な印象に寂しくなったけど
ぼうっと眺めていたら金髪のボーカルが浮かぶようだった
それだけ強烈で、印象的で、脳裏に強く刻まれていた
どれぐらいそうしていたのか
「なにしてんの?」と声をかけられた
聞かれて、なにしてんだろうなーと解らなかったから
「なにしてんだろ」って鼻で笑った
振り返ると、金髪のボーカルがいた
25:
まさかここにいるとは思ってなかったし、ましてや俺に声をかけてくる理由が解らなかった
だから動揺した、ってこれはもう言い訳だな
女子に声をいきなりかけられて動揺した
ましてやそれが心を奪われていた相手なんだから尚更だ
「あ、えと、あの」
多分こんな反応しかできなかった
ただこれは記憶が美化されていてもっと酷かったかもしれない
おふwwwおっふwwwとは言ってなかったけど
「暇じゃね」
見た目通りの言葉遣いだった
ちょっと粗暴で直接
女の子らしくなくて、かといって男臭くもない
さっきまで暇だったけど今はもう暇じゃないんだけど
暇じゃね?って聞かれてるってことは同意を求められてんだからと頭が働いた気がする
俺はこくりと顎を振った
28:
「だよな」
会話は続かない
俺はあれだ、コミュ力が低い
少なくとも会話が上手な方じゃない
向こうは多分、会話をしないタイプだ
するときだけする、みたいな
それは印象に過ぎなくて、仲良くなれば普通に会話もするんだろうけど
「じゃあ行くか」
とこれが物語ならそう続くんだろうけど、いかんせんただのリアルなので
金髪の彼女が俺の手を引いてライブハウスを出てデートになり・・・的なことはなかったです
どれぐらいの間か彼女は隣にいたままで、暫くしてどこかに行った
俺はそれが堪らなく悲しかった、かな?わからん
30:
打ち上げは途中で抜けて家に帰った
自室のベッドに倒れこむように沈んでも彼女を鮮明に覚えていた
綺麗な金髪はさらさらと流れていた
目は大きめで、はっきりとしていた
だけどどこか虚ろな、なんだろう、淋しげな感じを思わせた
顔は全体的に小さくて、口もちょこんとしていた
そんな全てが忘れられないまま、翌日
学校に行った俺は別のクラスにいる幼馴染のところへ直行した
32:
「おー、昨日は途中で帰ったんだな」
言われて、まあねと答えたら「お前はああいうとこ苦手だもんなー」と豪快に笑った
こういうところが楽だ、幼馴染ってのは
自分のことを解ってくれているから押しつけすぎもしないし、気楽でいい
「楽しめたか?」
「うん、ありがとう」
「俺らのバンドは?」
「微妙すぎ」
「やっぱりwww」
ほんと、気楽でいい
33:
「で、どしたん?」
用事があったから訪ねた
それはもちろん金髪の彼女のことだった
しかし俺は聞くのが億劫だった
幼馴染は気の置けない仲ってやつなんだけど、そんなこいつにでさえ女関係の話なんてしたことがない
それに、音楽やってんのに気になる人ができましたって、なんか幼馴染を侮辱してる気がした
「あの、さ」
言いたくて喉まで来てるのに言葉にできない
「なんだよwwwお前まさか気になる子でもいたんかよwww」
俺の中で幼馴染が神格化された時だった
こういうのって雰囲気でわかるもんなんかな?
34:
「そうじゃなくて」
俺ってバカだ
「四組目の、お前がやばいっつってたバンドあったじゃんか」
「おーおー、ネクロスティックな」
そんな奇っ怪なバンド名だったのか
「多分それ。あれの次のライブっていつだろ」
「おお!お前も気に入ったのか!」
凄く不純な動機だったから、幼馴染のきらきらした瞳が見てられなくて、視線を逸らして同意した
「あそこは頻繁にライブしてんぞ。二週間にいっぺんだったかな。行くか?」
キツツキみたいに頷いた
「じゃあチケットとっといてやるよ、俺も行くし」
これほど幼馴染に感謝したこともなかったろう
「ほんっとありがと!」
「お、おう」
あの幼馴染が引くほどに感謝した
35:
あ、いっこ言い忘れ
夏休みの登校日だったんさ
そんだけ
37:
二週間後に楽しみを控えるなんて滅多にあることじゃない
修学旅行とか学校行事がそれにあたるけど、この時に比べたらテンションは雲泥の差だ
まだ夏休みだったけどやることはなかった、宿題終わらせてたし
ネクロスティックというバンド名を携帯で検索してみたりもしたけど出てこない
あれに近しいジャンルの曲を幼馴染に教えてもらって、TSUTAYAで借りたりしたけどピンとこなかった
俺はとことん不純な動機であのバンドが好きになったんだ
バンドがっていうか
ただ、金髪のボーカルをもう一目見たかっただけ
特にこの間はなにもなかったし一気に飛ばそう、二週間後
40:
えっさらほいさと自転車で二十分
住宅街、大通り、田んぼ道、学校の横、公園の横なんかを通って辿り着くライブハウス
幼馴染とは現地集合だったのでメールを送ると
『もう少しでつくわー』とのこと
ふと気になって店外の小さな黒板に目をやった
本日のセットリストにイベント名が書かれていた
[発狂寸前サタデーナイツ!]
・・・どうなんだそれは
イベント名で解る通り、この日のイベントは夜だった
夕方の七時から始まるライブ
両親には幼馴染の家に泊まると言ってある
42:
到着した幼馴染を見てちょっとだけ驚いた
茶髪になっている
「染めたんだよ、似合うだろ?」
「ファービーみたい」
「まじで!? 鳥!?」
そんな軽口を叩いてライブハウスに入っていく
前は一組目の途中だったけど今回は始まる前
嵐の前の静けさに似た、独特な高揚感と静寂が空気を埋めていた、気がする
なんかそれっぽいの想像してくれたらいいや
「ネクロスティックは今回も四番目だな」
約二時間後だ
先は長い
43:
今回は一組目から三組目までを省略
特に目を見張るものはなかった
強いて言うなら幼馴染が三組目で最前列へ特攻してもみくちゃになり、帰ってきたら額から血を流していたことぐらいか
「最前は楽しいぜぇ〜!」
マゾだ
休憩時間を終えて四組目が登場する
女の黄色い声援が響いた
金髪のボーカルもまた、あの雰囲気を纏って現れた
マイクスタンドを調節して、持ってきたペットボトルを傾けて飲む
胸が高鳴っていた
44:
ドラムが位置を調整する
ギターとベースがチューニングを始める
金髪の彼女がマイクの通りをチェックする
高揚感が手足を痺れさせて、意識を朦朧とさせた
二週間待ち望んでいたからだろうか、浮き足立ってしまっていた
タタンッと叩かれ、ジャーンと弾かれ、ベースがリフを奏で始める
前もそうだったがMCはない
曲が始まる
金髪が口を開く
遅れて、歌声が全身を震わせた
45:
ノっているっていうのとは違う気がした
最前で騒ぐわけでもなく、壁際にいる足でリズムを取るでもなく、ただただ茫然と立ち尽くしていた
その世界観にひたすら酔っていたのかもしれない
なんにせよ、ずっと楽しみにしていたものだった
「前行かねえのかよ!」
耳元で幼馴染が叫んだ
前に行く必要はなかった
このままでも充分に楽しめるから、心地いいから
それに俺はマゾじゃない
頭から血をだしてにやにやしていられるとは思えない
それでも前に行きたくて、足が一歩進みだす
「行くぞ!」
幼馴染がいつものように特攻する
どうするべきかわからず、続いて俺も特攻した
46:
前は後ろと違って無法地帯と言って差し支えなかった
全員が激しく揺れ動いているからか全体のうねりが激しい
足を踏ん張ってないと横から押し寄せる力に弾かれてしまう
それでも必死に留まり続けて、前へ前へと進んでいけば
少しだけボーカルとの距離が近くなる
もっと間近で見たいと願うようになる
曲が最も盛り上がるところで全員が拳を突き上げる
何度も何度も天を突く様子はさながら宗教じみている
だけどその一体感がはたまた気持いいもので
俺も同じように突き上げた
48:
まあ、ここまでは普通にライブのお話、なんだけど
イベント名を思い出してほしい、発狂寸前である
そしてバンド名はネクロスティックで、前のライブ同様重低音の激しいサウンドだ
これは後に知ったジャンル名だが、ハードコアだった
ハードコアのライブに行ったことが無い人は多いと思う
はっきり言うと、危ない
本当に危ない
無法地帯なんてもんじゃない
その曲は前にやらなかった曲だろう
前は学生が多かったから
でも今日は違う
曲が始まるやいなや、暴動が起こった
暴動、ってとはちょっと違うか
要は、客同士での殴り合いが始まった
50:
喧嘩じゃない
殴り合いだ
違いがよくわからんが、殴り合いですらノっていると認識される
どうりで前に女性がいないと思ったとか、考えた
考える間もなくぶっ飛ばされた
初めて人に殴られた、それも多分、本気で
もみくちゃになっての殴り合いだ
激しいサウンドでテンションが振り切れての殴り合いだ
加減なんてない
頭の隅っこで、ドラッグパーティーってこんなふうかなって思った
そのイメージは漫画とかによるものなんだろうけど
俺は、恐い、って思わなかった
なにくそ、って思わなかった
殴られて、痛い!って思わなかった
全部が全部曲の効果だったんだろう
ただ野性的で粗暴で狂ったノリ方に、後に幼馴染に言われて知ったことだけど
俺は、笑っていた
51:
さてさて
笑おうがなんだろうが俺の人格を思い出してほしい
幼馴染のようなテンション高い目立つ系ではないということ
それってつまり、文化系だ
筋肉もなければ喧嘩の経験もない
そんな俺がそんな場所で笑いながら人に殴りかかろうとしたらどうなる?
殴れない、そして殴られる
それでも俺は向かっていった
せめて噛みついてやろうと思った
ということは顔面から身を乗り出して行った
バチって頭ん中で電気が弾けた
同時に視界が真っ暗になって、俺の意識はそこで途切れた
52:
目を覚ますとライブハウスじゃなかった
病院だった、ってわけでもない
白い蛍光灯がテラス、ソファーとテーブルが置かれた場所
整ってるわけでもなくて、かといって乱雑でもない、適当な場所
楽器が沢山置いてあった
机の上には煙草と酒とジュースとお菓子
頭がぼうっとしていた
起き上がろうとしたらハンマーで殴られたみたいに頭痛がした
うめき声でも出てたんだろう
「大丈夫?」
全く心配してないと声の調子にも態度にも現れて聞いてくれたのは、俺が寝転がった頭の先に座っていた人
金髪のボーカルだった
53:
後退るってのはこの場合間違いだけど、逃げようとしたら身体が動かなくてまた呻いた
「動くな動くな。ほら、酒でも飲むか?」
・・・なんで、酒?と思わずにはいられない
「酒飲んだら痛みは引くんじゃない?」
ものっすごい適当な声色だった
私も知らないけど、と続きそうな感じ
小さく首を横に振った
前と違って動揺はしていない
意識がまだ安定してないから
「無理しないほうがいいよ」
心配してくれてるのかと思ったけど
「弱いのに前でたら、危ないから」
寧ろ鬱陶しそうな風だったので、俺は歯がゆかった
自分の弱さを情けないと感じたのは、これが初めてのことだった
59:
ハピコアとハードコアは違うんかね?
とHappy Hardcore To YouのNever Regretが好きな俺の戯言
60:
>>59
んーごめん
そこまで明確な違いは俺知らないんだ
幼地味にハードコアだって聞いたからっていうのと
思いっきり細分化しても説明大変っていうのとで
指摘あったら言ってくださって構わないです
63:
>>60
俺はノリがよけりゃ何でもいいんだけどさw
61:
まあ、こまかいこたぁいいよおれは。楽しもうぜ、彼の話を。
64:
「ごめんなさい」
唯一言えたのがこれだけだった
もっと途切れ途切れで、小さい声だった気がするけど
すると金髪ボーカルは「あー、んー」と悩んだようにして
「ごめん、私は口が悪いんだわ」と言った
そんなつもりじゃなかったってことなんだろうか
それでも俺は自分の不甲斐なさを痛感していたから
不意に泣きそうになった
けど、それを悟られたくなくて腕で目を隠した
断言するけど俺は方も揺らしてなかったし鼻水も垂らしてなかった
でも、金髪ボーカルは俺の頭に手を置いた
撫でるわけではなく、ぽんぽんと
なにを言うわけでもなく、ぽんぽんと
ただそれだけのことが胸に沁みて、やっぱり泣きそうになったんだ
65:
少し時間が経って、俺が落ち着いて、なんとか座れるようになった
すると金髪ボーカルが何も言わずにオレンジジュースのペットボトルを俺の前に置いた
飲んでいいんだろうなと思って口をつけると、口の中が切れていて痛かった
「あんたさ、こういうとこ来るような子じゃないだろ?」
やっぱりそう見えるよな、と思った
外見も性格も大人しい
「別に誰が来たっていいんだけどね」
それきり向こうは黙ってしまった
俺が答えなかったからだろう
なにか言わなきゃ、と思って
必死に振り絞った言葉がこう
「貴方が、かっこよかったから」
それぐらいしか出てこなかった
まだ好きって感情はなかったし、本当のことだったから
意外にも彼女の反応は
「そ、そう? かっこいい?」
と嬉しそうなものだった
68:
俺からした彼女っていうのは
歌っている時のかっこいい様相と
前に話しかけられた時のつまらなさそうな雰囲気だけ
だから今回の、嬉しそうにはにかむ表情は意外で
見惚れた
「そっか、かっこいいか。ははっ」
変な人
でもこういう格好をしてああいう歌を歌ってれば、かっこいいと言われることが嬉しいんだろうか
「はい、かっこいいです」
もっと喜ばせたくて、もう一度言った
「もういいって、照れるって」
と顔を逸したこの人を、ある意味で初めて女性だと認識した
たぶん、可愛いって思ったから
70:
「大丈夫か!」
いきなり中に入ってきたのは幼馴染だった
その頃にはもう楽屋だって知っていた
もちろんその楽屋には俺と金髪ボーカル意外にも、疎らに人はいたよ
あまり多くもなかったけど
手を挙げて大丈夫だと合図すると、幼馴染はすっ飛んできた
「お、お前!」の続きは耳元で囁くように「どうやって秋さんと仲良くなったんだよ!」と続いた
秋さんと言われてボケーっとしてたけど、金髪ボーカルさんの名前なんだろうと気づく
「仲良くなってないよ」
普通に答えた
「でも隣にいんだろ!」
その囁きは金髪ボーカル、秋さんにも聞こえたようで訝しむように幼馴染を睨んだ
「なに?」
71:
「前のイベントで対バンやらしてもらいました、幼馴染です!」
「・・・いたっけ。悪い、覚えて・・・」
本当に覚えてないようで、幼馴染はしゅんとしたけど
「あっ」
と秋さんが言ったから笑顔になって
「そういえば居たね、あんた」
と指さされた先は俺の方だったから幼馴染は崖から落とされたようだった
「あ、俺、ですか」
「そーそー。いたじゃん、覚えてるわ。なにこいつ打ち上げでステージ眺めてんだろって」
「そういえば、眺めてましたね」
そういえば、なんてもんじゃない
初めて彼女と喋った事柄なんだから、忘れるわけがない
「なに?あんたもバンドやってんの?」
俺に対する態度と幼馴染に対する態度が確かに違う
ちょっとだけ俺は優越感を持った
72:
「いや、俺は・・・」
「やったらいいのに、もったいない」
「もったいない、ですか?」
「そーそー。弱いくせに前出て暴れられんなら客やってるよりバンドやってたほうが楽しいし危なくないじゃん?」
凄い合理的だと思った
「私もなんだかんだで女だからね、最前で暴れられるほど強くもないし」
「暴れてそうですけどね」
「そりゃあんたよかマシだろうけどさ」
女性に負ける俺
まあ負けるだろうけどね
74:
「でもやっぱ、ああいう場に女ってのは浮くんだよ。なんで女がいんの?ってなるわけ。邪魔だなーってなんだろうね」
ちょっとだけわかる
あんな激しいノリの場所に女がいたら、手加減せざるを得ない
その時点で熱は冷めてしまうだろうし、仮に手加減せずにやっちゃったら(いそうだけど)本当に危ないだろう
腕力には決定的に差がある
「だから私はボーカルになった。あんたもボーカルになれば?」
「向いてないです」
そもそも、ああいう激しいジャンルの曲が好きかどうかすら微妙だ
ただ秋さんが歌っていたから、叫んでいたから、心に熱が持っただけで
「そうなんすよ、こいつ昔っから根暗なんすよ」
「っぽいね」
と二人が笑う
「でも、やるときゃやるやつっすよ」
と幼馴染が続けた
なにそのフォロー、嬉しいんだけどなにそのフォロー
幼馴染の言葉に秋さんは極々普通に
「知ってるよ」と返した
それだけで、今日の無力感なんて吹っ飛んだ
76:
「あんたこのあとどうすんの?」
秋さんが俺の目を見て聞いてきた
俺は女性と真正面から目を合わせたことが、多分母親ぐらいしかなかった
ましてや隣に座っているというこの状況で
「あ、の」
答えあぐねた
なんて質問されたのかすら忘れる勢いで、秋さんの瞳に飲まれた
「暇っすよ、なあ?」
幼馴染に肩を叩かれて我に返る
「は、はい、暇です」
「んじゃー打ち上げ参加しなね。どうせつまんねえ打ち上げだから、暇つぶしに付き合ってよ」
そう言って、秋さんは立ち上がり、楽屋を出て行った
爆音は壁に阻まれて漏れている程度だけど、まだライブはしているんだろう
長い時間は経っていなかったらしい
とんとん、と肩を叩かれる
77:
「あのな」
「ん?」
「俺に好きな子ができたとするだろ?」
と幼馴染が聞いてきた
「うん」
「そんときゃお前、めちゃくちゃ応援しろよ」
「う、うん?」
「デートの約束とか、告白のセッティングとか、なんなら金だって貸してくれ。とにかく、応援しろよ?」
幼馴染がなにを言ってるのかよく解らなかったけど、有無を言わせない感じだったので
「まあ、金以外なら」と答えた
「よし、じゃあ俺はお前を応援してやる」
「・・・は?」
「好きなんだろ?秋さん。手ごわいぞ、秋さんは。多分、どう足掻いても無理だろうけど、応援してやる」
なんかよくわからないけど、幼馴染がかっこいいことを意識してかっこいいことを言い始めたのだけはよくわかったので
「それなんの台詞?」って聞くと「ふざけんなオリジナルだ」って返ってきた
78:
読みやすい
秋さんはいくつ?
80:
>>78
そりゃよかった
2個上
79:
「好きかは・・・わからないよ」
「考えてみりゃお前がハードコアに嵌るってのもおかしいしな。松任谷由実とかあのよくわからん、欝な曲しか聞かんお前が」
「松任谷由実は凄い歌うまいし、欝だけど倉橋ヨエコはいい曲ばっかだよ」
「まあそのへんは本気で趣味が合わねえからいい。いやだからおかしいんだろ」
「気になってんだろ?」と幼馴染
答えられなかった
図星だったから
「よし、じゃあ決まりな。頑張れよ」
「・・・なにを?」
「・・・普通に会話を?」
幼馴染のアドバイスは実に適確だと思ったよ
82:
ライブが終わって、前と同じ打ち上げ
いや前とは色々と違う
例えば酒は解禁されてるし、客全員がと言っても過言ではないくらい煙草を吸っていて煙たい
そして、隣に秋さんが座っている
秋さんが座っている!
会話はない
幼馴染のアドバイス通り、普通に会話を試みたかった
でも内容が浮かばない
秋さんが机の上の煙草に手を伸ばす
「煙草、吸うんですね」
「うん。あんたは吸わないの?」
「十五才ですから」
「うん、それで?」
つくづく別世界な人だ
83:
「あ、なるほど。そうか、真面目君か」
「・・・普通です」
「ごめんごめん、こんな場で慣れるとね。そういう感覚どっか行っちゃうんだよ」
殴り合いが普通の場所にいたらそうだろうなーと納得
「じゃあ煙草も酒もやらないんだ」
「そうですね」
「興味もないんだ」
「煙草は全く」
「ほう、酒には興味あるんだね。おーい」
秋さんが手を挙げて大胆なことを言う
「置いてある酒の種類全部持ってきてー」
「全部!?」
あれだ、鳩が豆鉄砲食らったような、ってやつ
俺は鳩になって豆鉄砲食らったんだよ
85:
机の上に揃えられた十種類の酒
「全部すか?」とこれは多分、スタッフかな?バンドメンバーだったかもしれない
「いやこんだけあればいいかな」と秋さん
「じゃあまずは缶ビールから行こうか」
「ビールですか。苦そうです」
「物は試しだよ」
プシュっと小気味いい音にコーラを思い浮かべるけど目の前にあるのはアルコール飲料だ
おずおずと手を伸ばして、一口
苦くて飲めたもんじゃなかった
次に缶チューハイ
ジュースみたいだって思ったのも束の間、後味が最悪だった
そして焼酎、日本酒、ウォッカ、ワイン、ブランデーと色々、全部舐めてるだけだけど
「酒は向いてないんじゃない? はい最後」
と秋さんが差し出したのは梅酒だった
因みにこの人、俺が酒を舐めて眉間にしわを寄せる度にくっくっくと笑っている
遊ばれてるってわかってても、秋さんが笑っているのは嬉しい
86:
ほんとに向いてないんだろうなーって、梅酒を舐めた
今までと違って凄く甘くて舌触りも悪くない
気になったので一口含んで飲んでみた
甘い爽やかさが喉を通って、ちょっとだけカッと焼けたけど、でも、それも気持ちがいいものだった
「梅酒が飲めるのか。女の子みたいだね」
「女の子じゃないです」
そんなに飲んでないからまだ酔ってなかった
「じゃあ梅酒で」
秋さんは一升瓶をもう一つグラスに注いで、持ち上げる
「初酒記念だ、乾杯」
「初酒って、秋さんも?」
「私は飲んだことあるよ、こんな場だから」
周りを見渡してみれば酒を飲んでない人がいないのでこれも納得
乾杯、と言い慣れない言葉を口にして、少しだけむず痒かった
87:
酒が入ると少しだけ饒舌になれた気がした
言葉が頭の中に溜まる前に口から出る
「どうしてあんな曲が好きになったんですか?」
多少失礼な言葉もでる
「あんなって酷いな」
「すいません、その、激しい曲だから」
「だね・・・だからじゃない?」
「激しいから?」
「そう、激しいから。色々家が大変でさ、一年中イライラしてて、だから余計にかな?」
家が大変、のところには流石に酒が入ってても聞けなかった
普通の家庭で育った俺が突っ込んでいいことじゃないように思えたし、それはちょっと、土足で踏み込むようなもんだから
「ストレス発散なんですね」
「あんたは? なんで好きになったの?」
言われても俺は特にハードコアが好きになっていたわけじゃなかったから
「・・・激しいからですかね」と合わせておいた
「パクんなよ」
と肩を叩かれる
秋さんも少し、酒で楽しくなっているようだった
88:
会話の内容を全て覚えてるわけじゃないけど、俺にしてはに話せた気がする
俺の隣には幼馴染もいて、ちょくちょく混ざってくれたりもした
基本的に反対側の人と話していたけど、気にかけてくれていたみたいだ
多分、それも心強かった
たくさん話して、梅酒もそれなりに飲んで、時間も経って
トイレに行こうとして立ち上がった時だ
立ち上がった瞬間に膝から崩れた
「あれ?」
足に力が入らない
それでも無理矢理立とうとすると産まれたての子ヤギ状態で、震えていた
「酔ったの?」
秋さんが聞いてくる
意識ははっきりしていた
90:
意識がはっきりしているのに足腰が抜けている
その時は初めての体験だったからとても恐かったけど、こういう酔い方もあるらしい
「大丈夫か?」
幼馴染が肩を貸してくれて、なんとかトイレに行けた
小便の最中も壁にもたれかかりながら、なんとか狙い通りに飛ばした
戻っても足は治らなかった
水をもらったけど治る気配はない
「そのへんの満喫で寝るか」
幼馴染の提案にごめん、と返してそうしようかなと言おうとしたら
「うち来りゃいいじゃん」
あっけらかんと秋さんが言った
その言葉に秋さんの隣にいた、俺の反対側のネクロスティックのギタリストが慌てたように反応した
「やめとけって」
対して秋さんは鬱陶しそうに、見るからに機嫌を悪くして
「大丈夫だって」と突き放す
「でも」とギタリストが食い下がると、秋さんが睨む
ギタリストは溜息をついて「どうなっても知らねえぞ」と零した
ぼうっとしながら、どういう意味なのか考えていた
92:
「あの」
聞くと秋さんはまだ不機嫌なようで、煙草に火をつけた
「無理なようなら」俺の言葉に重ねて「大丈夫だって」と、もう決定事項のようだった
「・・・彼氏さんとか、ですか?」
「あいつはそんなんじゃない」
とはっきり言い放った
俺が賢いかバカなのかはさておいて、考えたのはこう
秋さんと仲のいい男性がいて、だけど秋さんはその人を彼氏だと思ってない
だけどギタリストさんからすればなにかしらの関係があるから、問題になるぞってこと
それが俺は悲しかったけど、秋さんに恋人がいないことを知って嬉しくなった
でも、素直に喜べなくて、もどかしくて、俯いた
93:
「じゃあこいつ頼んますわ!」
後ろから幼馴染が言った
俺は慌てて振り向いたけど、幼馴染は耳元で囁いた
「頑張れって言ったろ」
幼馴染に後押しされて、俺は小さく頷いた
「じゃあ、お願いします」
言うと、秋さんは軽く「おけー、じゃあ行こう」と行動は早かった
その日も俺は打ち上げの途中にライブハウスを出て行った
「打ち上げ、よかったんですか?」申し訳なくなって聞くと
「あんたとしか話してなかったじゃん」と言われ、なんだか納得してしまって
嬉しかった
ここまでくると、もう、気になっているとか、そんな程度の気持ちじゃない
ちょっとずつ、自分でも知らない内にそういった想いは膨らんでいた
94:
秋さんの家にはタクシーに乗った
お金を払おうとしたら「元々乗って帰るつもりだったから」と拒否された
こんな短い間なのにわかるのは、秋さんはこうと決めたら譲らない人だってこと
俺は渋々財布を締まった
秋さんの家はマンションの一室だった
狭いけど、と言っていたけど寧ろ広く感じられた
部屋は1ルームで14畳
一般的な部屋って六畳とか八畳だから二部屋を一部屋にぶち抜いたような造りだ
ベッドがあって、ギターがあって、テレビがあって、パソコンがあって、本棚がある、シンプルな家
あと、パソコンの近くに置かれた大きなスピーカーが印象的
96:
「シャワー浴びてくるから適当にしてて。パソコン触れるならネットぐらいしててもいいし、本はなに読んでもいいから・・・物色するなよ?」
「しません、絶対に」
最後だけやけに力強かったので息を呑んだ
シャワーの音が扉一枚向こうから聞こえてくる
ざーと流れる音の中で、俺は秋さんの裸を想像してしまった
普通するよな?
それに、なにより、なにより・・・一つのことに気がついてしまって、物色するなと言われていたけど、俺は目に付いたクローゼットをあけた
そこには服しかなかった
・・・ベッドがひとつしかない
布団もない
どうやって寝るつもりなんだろう
97:
想像がわんさか湧いて、振り払うように首を振った
なにもする気が起きなくて、でもなにかしてないとおかしいと考えたから、本棚で漫画を適当に選んで、読むフリをした
秋さんがシャワーから戻ってきて、上下黒のスウェットに身を包んで戻ってくる
赤く染まった頬と湯気立つ身体
髪はまだ濡れていて、つい見詰めた
「・・・なに?」
そこは秋さん、照れるわけでもなく普通の対応
恥ずかしくなったのは俺の方だ
「はは、子供だ」
なにも言い返せないくらい子供だった
「シャワー浴びてきなよ。パジャマ・・・ってもスウェットだけど、出してあるから。下着は流石にないわ」
「は、はい」
そそくさとワンルームを出て風呂に向かう
そこで俺が見た衝撃の光景
浴室にトイレがある
この時の俺はまだ、ユニットバスという存在を知らなかった
99:
シャワーを浴びると幾分体の酔いも冷めてきた
それと比例して緊張が高まっていく
さっきまでここに裸の秋さんがいたのかと思うと、思うと、思うと・・・まあ割愛
してないけど、治めたけど、割愛
風呂を出るとタオルとスウェットが置かれてあったので、身体を吹いて着替える
とてもいい匂いがした
もっとタバコ臭いと思ってたんだけど、洗ったばかりなのかいい匂いがした
戻ると、秋さんは漫画を読んでいた
「お、着れたね。よかったよかった」
「一人で着れますよ」ちょっとムっとなって言うと
「サイズのことだよ」と笑われた
そりゃそうだ
「なにか飲む? 酒でもいいけど」
「遠慮します」
意識がはっきりしてるのに足腰に力が入らないっていうのは結構トラウマだ
今度飲む時はもっとスローペースにしようと決めた
「じゃあ水かコーヒー」
「コーヒーで」
「砂糖とミルクは?」
「ちょいちょいと」
「お子様〜」
「ブラック飲めるんですか?」
「いや無理」
二人して笑った
100:
出されたコーヒーは螺旋がミルクで描かれていた
「おお、おしゃれですね」
「だろ?得意技の一つなんだ」
と無邪気に言う秋さんが可愛らしいものだから拍手をした
「馬鹿にしてんな?」
すいません、と謝った
コーヒーは飲みやすくて、酒の溜まった身体に心地よかった
秋さんは漫画を読んでいた
俺は緊張していて、手が震えていたかもしれない
どうにも座りづらくって、何度も尻を動かした
「なにやってんの?」と冷めた視線を投げられて
いや、なんでも、と返すばかり
暫くして、秋さんが「寝るか」と言った
無言で頷いて、俺は事の成り行きを見守るだけだった
101:
「悪いけど寝床は一つしかないんだわ」
秋さんはベッドに向かい、布団を綺麗にする
意外に几帳面なのかもしれない、部屋も小奇麗だし
俺はぼうっとそれを眺めていて、布団を足にかけた秋さんに、隣をぽんぽんと叩かれて
「おいでよ」と言われるまで動けなかった
逆に言うと、操り人形のように立ち上がって、俺は秋さんの隣に潜り込んだ
「失礼します」
そんな言葉を挟んで
「堅苦しいね」ころころと笑う
遊ばれてるのかな、とまた思った
秋さんがリモコンで部屋の電気を落として、一つのベッドに二人で並ぶ
息がろくにできていない
そんな気がした
103:
これは、どうなんだろう
俗に言う誘ってるってやつなんだろうか、と都合のいいことを考えた
仮にこれで手を出したら俺は嫌われてしまうんじゃないだろうか
はたまた軽蔑されてしまうんじゃないだろうか
そんな考えが童貞故に勝って、自分から手を出すことはできないでいた
手を強く握り締めて、汗をかいていた
扇風機が回る音がやけに響いて、何度も耳の中で反響する
秋さんの息遣いも聞こえる
寝たのだろうか
俺は眠れるのかな
眠れそうもない
朝までこのまま、棒立ちでいるのかな
「ねえ」
心臓が口から飛び出るかと思った
104:
「は、い」
なんとか二文字が口から出た
「二週間後に、またライブがあるんだよ」
「はい」
「おいでよ」
答えはもう決まっている
行くに決まっている
喜び勇んで飛んでいく
仮に俺が秋さんに弄ばれているだけだとしても
それでもピエロになって参戦する
男なら、きっと誰だってそうだ
二回しか会ってない男を家に連れ込んで、ベッドまで一緒なのはなんでですか?
俺がこの時一番聞きたかったのはそれだけだった
107:
もしかしたらビッチって言われる類なのかも、と考えた
だけど今までの雰囲気や、周りの反応を見て違うかな、とも考えた
幼馴染は「どうやって仲良くなったんだ」と言っていたから
それって、中々仲良くなりづらい人ってことだろう?
だけど、聞けなかった
聞いてしまえばどんな答えが返ってくるかわからない
仮にいい返事を聞けたとしても、なにか違う気がしたし
なにより俺は
自惚れたガキだな、と思われることがとても嫌だった
勘違いしちゃったのかな、と思われることが嫌だった
秋さんはきっと俺よりもそういった経験値が高い
処女とか非処女とかそういう話しじゃなくて、慣れてるんだと思った
弄ばれるのはいい
遊ばれるのもいい
ただのガキでしかない俺が、秋さんみたいな特別な雰囲気をまとった人に近づくっていうのは、それだけでもう凄いことだ
別世界の人だし、別次元の人だから
だけど、見下されるのだけは嫌だった
それが自分のプライドなのか、秋さんのことが好きだからなのか、なにも解らなかったけど
だから聞けない
恐くて聞けない
なにも聞けない
聞けないまま、やっぱり俺も酒が残っていたんだろう
いつの間にか、意識は落ちていた
耳元で秋さんの寝息を感じながら
108:
目が覚めると昼だった
隣で秋さんが眠っていた
ぼうっと頭が静かに冴えていき、はっとなった
秋さんが俺の腕を、スウェットの袖の端を、きっちり握り締めていたから
その寝姿が堪らなく可愛くて、保護欲が湧いてでた
いっそ頭を撫でてやろうかと考えたが、チキンな俺はどうしようもなく、秋さんを起こさないように動かないことしかできない
これは真夏の白昼夢だ
きっと妄想が具現化されたんだ
もしかしたら、夢かもしれない
そう思い込みもできない
圧倒的に足りてない色んなものに小さく溜息をついた
それが原因とは思えないけど、秋さんが「ん、ん・・・」と瞼を開ける
半開きの目でぼうっとした秋さんはどこかで我に返ったのか、握っていた袖を離して
「ごめん」と謝った
「別にいいですよ」
先に目覚めていたからか少しだけ優位な気持ちであれた
なんなら「もっと積極的に抱きついちゃってもいいんですよ!」と言いたかったけど、俺は幼馴染にはなれない
そういえば、幼馴染にメールしなきゃな
あいつのお陰でこんなことになってるんだから
109:
もぞもぞと起きた秋さんは布団から出て、多分トイレに行った
その時の香りがいいようのない甘さで、寝起きだというのにもう一度眠ってしまいそうだった
秋さんは戻ってきて、そのままキッチンに向かって、戻ってくるとコップを二つ持っていた
「飲むでしょ?」
「はい」
俺もベッドから出てテーブルに向かう
昨日と同じ、秋さん得意の螺旋があって
「綺麗です」と言った
「いきなりなに言いだしてんの?まだ酔ってんの?」
慌てふためく、こともなく
寧ろ呆れたように秋さんが言った
「あ、いや、このミルクです!秋さんじゃないです!」
「・・・それはそれで酷いな」
「ちがっ」
会話って難しいものだと思う
114:
「私は夕方からバイトだけど、あんたはどうする?」
「え、帰りますよ?」
「あっそう」
帰る以外の選択肢ってなにがあったのだろう
また泊まるとか? ないない
緊張で死ぬ
「バイトしてるんですか?」
「生活しなきゃいけないからね」
「生活って、秋さんっていくつなんです?」
「十七」
「学校は?」
「夜間行ってるよ」
なんで、って言いかけたけど、ふと思い出す
そういえば家がごたごたしていると言っていた
なにかしらの事情があるんだろう
踏み込んではいけない話だと俺は気づく
「凄いですね」
「そうかな」
「学校行きながら仕事もして、一人で暮らしてるんですから、凄いです」
「いるとこにはいると思うけど」
「俺には考えられません」
「ふーん。じゃあ私は凄いんだね」
「はい」
ありがと、と秋さんは続けて、コーヒーに口をつけた
照れているというよりは、流したって感じだった
俺はこれ以上秋さんのことを知るのが恐くなっていた
122:
秋さんを知れば知るほど遠く感じる
一生かかっても追いつけない気がしてしまう
普通に暮らした俺とは別の意識で生きてるんだと思ってしまう
それが苦しい
俺は一瞬でも夢を見た
秋さんと同じベッドで眠ってしまっていたから
こんな夜が日常になればいいって、願っていた
でも秋さんからすればなんてことないことなんだろう
俺とは違う意識を持っているから
そう考えて、俺ははっきりと気づいた
近づけなくて辛いこと
秋さんのことが、好きだということ
「コーヒー、美味しいです」
「そりゃよかった」
無理矢理振り絞った声は、きっと震えていなかった
161:
秋さんはバイトに行く服装へ着替えた
ライブの時とは違って若干おとなしめな、だけど秋さんらしい格好だった
「なんの仕事ですか?」
「・・・じょう」
「え?」
「工場!」
「あ、はい」
なぜか秋さんは恥ずかしがっていた
今になればわかるけど、秋さんのイメージのなかで工場で働いてるってのが許せなかったんだろうな
因みに平日は日勤だそうだ
土日は休みだったり夕方だけだったりするらしい
「じゃ、また二週間後ね」
「絶対行きます」
「ん」
そして二週間後、とはいかなかった
この辺りからスレタイの、とんでもない女に惚れた、の理由が浮き彫りになる
170:
夏休みが終わって始業式
幼馴染は別のクラスなんだけど、朝っぱらからうちのクラスにきて話しかけに来た
夏休みの間に電話やらをして、その後も一回遊んでるし近況は知ってた
ライブチケットを届けに来てくれたんだ
「俺も行くからいいけどよ、直接もらえばよかったんじゃね?」
「・・・思いつかなかった。秋さん持ってたかな」
「・・・持ってないかもな」
秋さんがどういう人なのか幼馴染に聞いてみたけど
多分お前より知らねえよ、と返ってきた
打ち上げの時も基本的には喋らない人らしい
誰も寄り付かないし、寄り付いても一蹴する
だからああして俺と話してたのは異様な光景だったんだと
「気に入られてるかもな」
「だといいんだけど」
「だって普通泊めねえだろ?」
「でも秋さんだよ?」
「・・・んん」
幼馴染も唸っていた
なんとなく普通とは違う、って一点が
どうにも秋さんを一般像から離れさせていく
172:
それが訪れたのは始業式も終えて、昼前になった辺りだ
三時間目を終えて、さあ帰ろうか、幼地味を誘って遊ぼうかと考えていた頃合だ
下駄箱で靴を履き替えているとやけに騒々しかった
何事だろうと思って出入り口付近に首を伸ばすと
いかにもな不良が五人、立ち並んでいた
そいつらが
「○○ってのはどこだ!」
と、俺の名前を呼んでいたものだからどうしようもない
冗談じゃない
本気で俺は恐くて歯を打ち鳴らした
173:
冷や汗がでる
身体が強ばる
足も震えて泣きそうになる
なにをしてしまったんだろうと考えて・・・思い当たる
ライブの打ち上げの、ギタリストの言葉が蘇る
こういうことだったのか
気づいてしまってももう遅い
どうにもならないことってある
例えば
そこにいたクラスメイトが一人胸ぐらを捕まえられていて
あいつです、って怯えながら俺を指差したこと、とか
175:
仕方がないと思う
クラスメイトを責められない
あんな風にされたら俺だって同じことをする
だけど今回ばかりは被害者だ
慌てて逃げようとした
「こいつがどうなってもいいんだな!」
どうなってもって、どうなるっていうんだ
俺が逃げたらクラスメイトが殴られるって?
俺が出てったら俺が殴られるって?
「毎日くんぞ! 帰り道にゃ気をつけろよ!」
別のやつが言った
もう逃げられない
きっと、先生が警察を呼んでいると思う
だけど警察はすぐに来ない
仮に来て、誰かを殴ったとして、こいつら逮捕されるの?
されて出てきて、怨まれるのは俺じゃないの?
恐いから、それだけ考えることができた
恐くて恐くてどうしようもないから
ネガティブなことばかり予測が立った
176:
「俺に何の用だよ」
前に出て、そうやって虚勢を張って、俺がそんなことを言えると思う?
いいや言えない
肩を竦めて震えてるのが関の山だ
じゃあ前に出たのは誰かって
幼馴染だった
「ああ?」
不良は俺と幼馴染を見比べて、どっちでもいいかと吐き捨てた
「話があんだよ」
「上等だ」
幼馴染は怒っているようだった
あいつが不良かどうかは別にして、心底腹が立っているように見えた
自然と足が動いた
それを幼馴染が、目で止めた
来んな、帰れ、と言っているようだったと考えるのは、おこがましいのかな
幼馴染が不良に連れて行かれる
無力な自分だけがそこに残る
事情を知らず、ただ俺を庇ったことだけを理解している数人が俺を見る
最低だ、と侮蔑するように
そんなことはどうでもいいんだ
どうでもいいんだよ
俺はただ、恐くて堪らなかった
180:
応援してやるよ、って幼馴染が言った
その応援の範疇なんだろうか、これは
だとしたら、甘んじて受け入れるべきなんだろうか
じゃあ、逆の立場になったとして、俺は幼馴染のように格好よく前に出られるだろうか
無理だ
絶対に無理だ
精々先生を呼ぶことしかできない
だけど、それじゃあ解決にならない
これでいいわけがなかった
でも、恐い
仮にこのまま幼馴染をいかせたら、幼馴染は普通にぼこぼこにされて、またいつかぼこぼこにされる?
ずっとずっと俺の代わりに幼馴染が不良の対称になる?
そんな打算的なことを考えたのは、ずっとあとのことだ
恐くても、俺は幼馴染の元に行くしかなかった
でないと、俺は一生幼馴染の顔が見れなくなる
幼馴染の友達だって、胸を張って言えなくなる
だから走って追いかけて、幼馴染の横をすり抜けて、不良の背中に体当たりした
182:
「なんで来たんだよお前!」
幼馴染が怒鳴る
後ろから体当たりされただけあって不良は大袈裟に転んだ
「いってぇ」と怒気の含んだ声色が足を竦ませた
般若みたいな面になって振り返る不良が、それでもまだ恐ろしかった
下駄箱と校門の真ん中辺り
石が敷き詰められていて、三本の銀杏の木が立ち並ん真ん中辺り
「だって、だって」
怯えて俺の心はもう、限界だった
あの夜の殴り合いとは違う
あんな音楽性に満ちた楽しげな祭りとは違う
ただの暴力でしかない恐ろしい場所で、でも、言ってやった
「お前だったら来るだろ!」
言うと、幼馴染はにやっと笑った
「当たり前だろ」
幼馴染が膝をついた俺を起こす
耳元で静かに囁いた
「歯を思いっきり噛み締めとけよ」
言われたまま、噛み締めた
強く、強く、噛み締めた
五人の不良が瞳孔を開いて迫ってくる
184:
中でも一人の不良が、俺に体当たりされた不良が走っていた
怒りが乗った拳を思い切り振り上げて、俺を殴ろうとしていた
「ばーか!」とこれはよく覚えている
こんな時だっていうのに、幼馴染の慣れた調子にちょっとだけ安心したからだ
心強いからだ
幼馴染が横から、斜めから? 俺に向かってきた不良に蹴りを食らわせた
意識なんてしてなかったのか、それほど強かったのか、不良は前のめりに倒れ込んだ
残りの不良が角を生やして怒鳴りだす
向かって幼馴染が特攻する
幼馴染ばかりに迷惑をかけてられない
俺だって、どうしていいかもわからずに、人の殴り方も知らずに、体当たりをする
そこから先は覚えていない
警察が到着するまで、俺と幼馴染は不良に殴られ蹴られ、好き放題に打ちのめされた
185:
口の中は切れていた
身体の至るところが痛かった
立とうとしても立てなくて、ただその場に寝そべった
全校生徒の大半が見ていたかもしれない
警察に連れて行かれる不良達を見て
俺と幼馴染は喧嘩で負けたけど
なにも負けた気がしなかった
だから、笑えた
笑うと口の端が痛くって、しかめっ面になったけど
楽しくって笑った
結局、俺と幼馴染も警察に連れて行かれたんだけどね
186:
警察にどうして不良が学校に来たか解るか?と聞かれた
なにも解らないと答えた
あの人たちは捕まるんですか?と聞いた
捕まるが、長くはないと答えてくれた
暫くして、親が迎えに来た
喧嘩をして警察に捕まった、なんて理由だから母親が血相を変えていた
ボロボロになった俺を見て、母親は怒っていいのか悲しんでいいのか、どうすればいいのかわからないようだった
でも、なんだろう
悲しませたってことだけはわかったから
ごめんなさい、って母親に謝った
もうこんなことはしないで、心配でしょう、と怒られて、母親は泣き始めた
もう一度、ごめんなさい、と答えた
きっと、まだ終わっていないから
187:
翌日、俺は学校を休んだ
殴られすぎたせいで熱を出していた
幼馴染に電話をすると、幼馴染も休んでいた
「あれって秋さんの関係だよな」と幼馴染は言った
まだ終わっていないから、今後どうするかというのは大切な話だ
「多分」
「お前、秋さん関係以外でも殴られるようなことしたのか?」
「そもそも殴られるようなことしてないけど・・・してない」
「じゃあ確定だな。どうすっかな、これから」
「うん・・・幼馴染はなにかしらない?」
「だから俺は知らないって。あ、いや、聞いてみるわ。仲のいいバンドがいるから」
「ありがと、お願い」
一時間後に幼馴染からまた連絡がきた
189:
「早いね」
「十通ぐらいメール送ったからな」
「相手が可哀想だよ。それで、なにかわかったの?」
「多分だけどな。秋さんに執着してるやつが一人いるんだと」
「だれ?」
「カオスクラッシュのボーカル。覚えてないか?」
「そんな色々壊れたバンド知らないよ」
「俺がお前をライブに誘った日の、トリのボーカルだよ」
言われて、ああ、あのイケメンの、と浮かんだ
顔はよく覚えてないけど
「その人があんなことしたって?」
「わかんね。ただそういう噂はあるらしい」
「噂って・・・曖昧な」
「しゃあねえだろ」
言われてみれば仕方がない
幼馴染は探偵じゃないんだし
「どうしよう」
「なんか余裕だな」
「余裕じゃないよ。恐いよ。でも、幼馴染を道連れにするよ」
「ひでえ」
「その代わり、きっちりその時がきたら応援するよ。ありがとう」
「馬鹿、礼なんていいっての」
幼馴染がこいつでよかったなあ、って
何度思っても足りない
190:
「お前さ、秋さんのこと好きか?」
俺が唸っていると幼馴染が聞いてきた
「うん」
平然と答えた
もうあの日に答えは出たから
ただ、その距離が果てしなく遠いだけで
「じゃあ決まりだな」
「決まり?」
「今まで通り、頑張れ。俺が応援するからよ」
「うん」
こんなにも心強い言葉はない
応援すると言ってくれて、実際に応援してくれて、一緒に立ち向かってくれる
「じゃあとりあえずは・・・今週末のライブだな」
「だね」
こうして、始業式の一件は終わった
でも、これは始まっただけだ
194:
週末のライブハウスは活気がある
夏休みの時よりも熱気がある
きっとそれは、みんな鬱憤が溜まってるんだろう
まあ、サタデーナイツ(笑)だから社会人の方が多いにしても
相変わらずだった
ライブの形式も相変わらず一組目は苦笑してしまうほど下手で
順々に上手くなっていき、客が騒ぎ出し
そして、金髪ボーカルの秋さんが登場して歌いあげる
ライブハウスに来るのは秋さんに会いたいからだけど
すっかり俺は秋さんの歌が好きになっていた
世界が広がっていくような
空が罅割れてどこまでも続くような
地面が砕けて一緒くたになっていくような
開放されていくような
流石にこの日は最前列に行かなかった、なにせ身体がまだ痛い
終わり間際に秋さんが手を挙げた
誰に合図してるのかキョロキョロと探していたら、周りの人もキョロキョロと探していた
そしてトリを務めるのは礼のバンド
なんか色々壊れてる、と侮辱混じりで言いたい、カオスクラッシュだった
196:
人気は格段だった
曲も上手で耳障りなんかじゃない
言ってみればハードコアは激しすぎるから、聴く人によってはどう聴いたって耳障りなんだろうけど、上手いとそうでもない
でもまあ、それどころじゃない
そんな音楽的価値観なんてフィルターを通さない
あのイケメンのボーカルが不良を差し向けたのかもしれないなら、俺はあいつに怒りしか浮かばない
そうだ、怒りだ
怒るっていうのはこういうことを言うんだ
段々と苛立ちが込み上げてきた
あいつは、秋さんを苦しめているかもしれないんだ
197:
今日は幼馴染もずっと隣にいた
何度も「前行きてぇ!」とうずうずしていたけど、流石にやめときなよって俺が止めた
死ぬよ?
ライブが終わって間もない内に横からどんっと体当たりされた
突然だったのと、足に力を入れようとしたら痛みが走ったこともあってふらついた
「なーにこんなんでふらついてんだよ」
ライブが終わって間もないからか秋さんのテンションはちょっと高かった
そして俺の姿を見て
「どうしたの!?」って
流石に数日経ってるからマシだけど、ところどころ腫れてるし特に口元が酷い
ライブで暴れた傷じゃないとは見ればわかるんだろう
「ちょっと階段で転んじゃって」と俺は解りやすい嘘をついた
どう言ったってバレる嘘なんだから
199:
「もしかして・・・あいつが・・・?」
秋さんはそう言って、逡巡してわなわなと拳を震わせる
翻ってどこかへ、多分楽屋へ行こうとしたので、秋さんの肩を掴んだ
「階段で転んだんですよ」
もうこれは幼馴染との話で決まっていた
なにがあっても階段で転んだで通せって
どうせバレるんだったら嘘を覚悟で納得させるしかない、ということ
「階段なわけ!」
「階段です!凄い階段でしたよ、ほんと」
ここだけは引けない
それが伝わったのか、秋さんは肩を落とした
「・・・あんたも男なんだな」
と呟いて、こちらに向き直る
「その凄い階段、今度見してよ」
「はい」
どこかに転んだらこんな姿になってしまうような階段を見せたら、秋さんは腹を抱えて笑ってくれるかな?
そう思うと、無くても作ろうという気にすらなってくる
無理に決まってて、馬鹿馬鹿しいけど、それぐらい好きなんだろう
200:
「打ち上げ、参加してもいいですか?」
俺の方から聞いた
これも前から決めていたことだ
セットリストは事前に知っていた、というか幼馴染が教えてくれた
本当にあのイケメンボーカルが・・・面倒だからイボでいいや
イボが不良のボスなのかわからない
それを知らなきゃいけないし、そうでなくても、秋さんを困らせるような奴なら、なんとかしたい
秋さんは少し渋っていた
そのことが関係しているのかな、と思った
「間違えた。打ち上げ、参加します」
と言うと、
「なんか変わったね」
と言われた
そうですか?と聞くと
どうだろうね、と言われた
ほんと、どうだろうね
201:
前と同じように楽しめる打ち上げ、とはいかなかった
俺は秋さんの隣にいて、秋さんと喋っていた
仕事しんどくないですか?
とか、欲しいものとかあるんですか?とか
それには猫を飼いたいと答えていた
「俺が猫になります!」と言ったのはもちろん幼馴染ね
「あんたは猫ってより狂犬だ」と言われて「保健所行ってきます」としょんぼりしてたけど
笑い話だ、ここまでは
ちらちらと様子を窺っていた
イボは取り巻きのファンの女の子に囲まれていて、いかにもイケメンボーカル略してイボの役割を真っ当しているようだった
そいつは立ち上がって、こっちにきた
イボがこっちに来た
202:
「よお」
イボが歩いてきたら秋さんの隣に座るギタリストはすっとどいた
その行動にちょっとムッとしたことは内緒だ
悠々と当たり前のように、指定席のように座るイボは偉そうに足を組んで、手を秋さんの肩に回した
秋さんは鬱陶しいと言いながら振り払う
「冷たいな。元恋人だろ?」
「元だからだ。話かけんな」
秋さんは目に見えて怒っていた
口調ががらりと変わるほど
「あーそうそう」
意外なことにこのイボは
「お前だろ? ○○って」
俺に話しかけてきて
「俺の取り巻きが迷惑かけちまったみたいで、悪いな」
堂々と口にした
取り巻きが勝手にやったことなんです、と言っている
普通なら俺もそれを受け取っただろう
だけどイボは、明らかに楽しんだように口角を上げた
これは、挑発だ
203:
「やっぱりお前が!」
俺より先に秋さんがイボに掴みかかったもんだから、なぜだか怒りが収まっていく
「おいおい、取り巻きだっつってんだろ? あいつら困ったもんでよ、俺のためとか言ってわけのわかんねえことしてんだよ」
「ふざけるな!」これも秋さん
「落ち着いてください、秋さん」
「あんた、こんなの信じるのか!?」
「落ち着いてください」重ねて言う
秋さんが代わりに怒ってくれて多少静まったとはいえ、やっぱり俺は怒っていたらしい
耳を澄ませば隣の狂犬がぐるぐると唸っているようだったけど、さておき
秋さんは黙った
「別にいいですよ、なんてことないですから」
怒っているから挑発は買う
それに、俺は一人じゃない
「それにしても、自分の目に見えるファンも制御できないなんて、案外知れたものですね」
そして喧嘩を売る
204:
解っていることだけどあれは取り巻きの勝手な行動じゃない
だとしたらなぜそんな行動をするのかって、頼まれたからだ
頼まれたか、命令されたからか
理由はなんだろう
イボに脅迫されているか、イボの傍にいれば恩恵があるからだ
最悪の場合として、イボを神として崇め奉っている
この考え方はライブの具合で判断したんだけど、そんな、どこか宗教じみた盛り上がり方がある
そして後々知ったけど、やっぱりそういった、宗教じみたファン意識っていうのは存在する
最悪の場合以外なら、直接イボを叩いてしまえば、もう二度と襲われる心配はない
だったら、この場で喧嘩を売って喧嘩を買ってもらって、死に物狂いでそれに勝てば
全てが終わる話だ
勝てるかどうか、とかじゃない
喧嘩をしたことがない、とかじゃない
もっと言うと、ここまでに話した計算はどうでもいい
ただ、ムカつくから一発ぶん殴ってやりたいだけなんだ、俺は
206:
「でかい口叩くなよ、ガキ」
「図星なんですか?」
秋さんを挟んで、イボと睨み合う
これでいい、と思っていたら
「まあいいか、ガキの戯言だ」
とイボはソファーに深く座った
世の中上手いこといかないもんだ
それに、こいつからしたらここで俺を殴らなくても、いつだって不良が襲う手はずなんだろう
だから、こんな言葉も口にする
「また取り巻きが勝手に動いたら悪いな。そんときは言ってくれたら、キツく言うからよ」
ただの脅しだ
悪いなんて微塵も思ってない
最低なやつってのを、俺は初めて見た
「・・・それはないよ」
秋さんが言った
「次にお前がこの子に手を出したら、私がお前を許さないから」
その言葉に遠巻きに聞いていたギタリストがざわついた
止めるような姿勢だった
けど、秋さんは続けた
「もういいんだ」
意味がわからない
なにを言っているのか、一つも解らない
「勝手にしろ。一生私に近づくな」
秋さんはそうイボに吐き捨てて、立ち上がる
俺の手を引いて歩き出す
後ろで「わかったよ」というイボの声が、やけに頭に残っていた
220:
ライブハウスを出た俺と秋さんを引き止めたのは幼馴染だった
「なあ」
それは俺にかけられた言葉だと思っていたけど、違っていた
「秋さん」
「ん?」
幼馴染は笑っていなかった
いつも軽い調子で秋さんに話しかけるのに、そんな様子じゃない
「そいつは俺の大切な、あれだ。あれ」
なにを言い出すんだこいつは変態か、とか流石に思ってない
「だから、適当に遊んでんならそん時は俺があんたを許さねえ」
「幼馴染!」
言われた秋さんは怒るわけでもなく、小さく息を吐いた
「羨ましいね、あんたら」続けて、覚えとくよ、と繋いだ
俺は秋さんに手を引かれて歩き出す
考えてみれば初めて手を繋ぐわけだけど、そういった喜びは一塩も湧いてこない
タクシーを止めて中に入る
「どこに行くんですか?」聞くと、簡潔な答えが返ってきた
「家」
227:
家に着いて、前と同じ
秋さんがシャワーを浴びて、続いて俺もシャワーを浴びて
秋さんは黒のスウェット、俺は白のスウェット
秋さん得意の、螺旋を描いたミルクをかけて
「綺麗ですね」
「私じゃないんだろ?知ってるよ」
「どっちもです」
なぜそう言えたのかって、俺の気持ちを半分ぐらい知られてるからだ
それは幼馴染に感謝すべきかどうか迷うところだけど
雰囲気もあった
どことなく重苦しい空気が漂っていて、だから言えたのかもしれない
「・・・やっぱあんた、変わったね」
「いい感じですか?」
「そうそう、いい感じ。なんだよいい感じって」
くすりと秋さんが笑う
その度に、俺はちょっとだけ心が弾む
233:
「えっとさ」
「はい」
なにか話すのだろうな、という雰囲気
なんでも話せるような雰囲気
雰囲気って大事だ
「私の家は、さ」
と、静かに秋さんは語りだしてくれた
「親父がろくでもないんだ。金はあるんだけど、女遊びに忙しくて。そんな親父を見限って、母さんまで男漁りに忙しくって。私はそれが凄い嫌だった」
「二人とも仕事をしていて、二人とも家に帰ってこない。そんな毎日が、そうだな。十二歳のころから続いていた」
「育ててもらってるだけ感謝だ、とか。そこまで人間できてないからさ、苛立ちがずっと消えなくて、中学上がった頃から不良連中とつるむようになった」
「喧嘩して、馬鹿やって、一回捕まったんだ」
「そんで、両親が迎えに来てさ」
235:
「散々怒られたよ。自分達は好き勝手生きてるくせに、これじゃ世間に顔向けできないだの、なんだの」
「お前が悪い、お前が悪いって親同士で擦り付け始めて、私は一気に冷めていったんだ」
「こんなのが自分の親なのか、って」
そう考えると俺の母さんは立派だったのだろうか
俺に・・・そんな感情を抱かせなかったんだから
「それで中三になって、周りが悪いことばっかしてる場合じゃないって状況になってきた」
「進学しなきゃな。でもさ、私はそうじゃなかった。進学なんてどうでもいいから、一人暮らしがしたかったんだ」
「誰も遊んでくれなくなって、ふらふらと、多分、駅前のタワレコでも行った時だよ。今やってるような音楽を聞いた」
「どっぷりハマって、ライブに行った。もっとハマって、バンドを組んだ」
「両親は家を出てもいいが高校に行けっつってきた。世間体だよ。私は最後のケジメだと思って、高校に行くことにした」
「進学金は出してくれてるけど、一人暮らしするなら自分で稼げって。それは当たり前かなとも思ったし、寧ろ好都合だったよ」
「あんな親の世話に、少しでもなりたくなかったからね」
そこで一端区切って、秋さんはコーヒーに口をつける
「あいつはさ、私が初めて憧れたバンドのボーカルだったんだ」
236:
「私は性格こそ変わってないけど、当時はもっと、なんていうかな・・・少女だったんだよ」
と自嘲したように笑う
「きらっきらのステージに立ってさ、何十人も盛り上げるあいつに憧れを抱いた。で、あの通りあそこのライブハウスは打ち上げが自由参加だろ? 私も参加したんだ」
「今日いたあいつのファンみたいに囲むこともできなくて、遠目で見てると、向こうから声をかけてきた。やったね、ってなったね。そりゃ嬉しかった、当時は」
「あとはお決まりの流れだ。あいつと付き合って、ヤって、別れた。別れた理由は大体わかるよね?」
まあ、単純に・・・付き合ってイボの最低加減が目についたんだろう
「はい」
「それで、未だにあいつは私につきまとう。それだけのことなんだけど、それだけのことに巻き込んじゃって、ごめん」
「謝らないでください。秋さんはなにも悪くないです」
「そうかな? でもさ、解らないよ。なにせ、あいつは私のバンドメンバー以外、全部を壊してきたからな」
「友達も、寄ってくる男も」
「・・・蛇みたいなやつですね」
「・・・そうだな。あいつは蛇なんだ。最低な蛇だ」
でも、まだ俺は納得していなかった
「あの、最後の会話」
秋さんの肩がぴくりと揺れる
238:
「あれは・・・」
秋さんにとって言いづらいことでも、あれだけは聞かなくちゃいけない
だって、あの会話は酷く不安になる
重い時間が過ぎて、秋さんが口を開く
「私は当時馬鹿だったんだ。今でも馬鹿だけど、比べ物にならない。それで・・・」
秋さんは口篭る
ただ、なんとなく見えてしまったから、もうなにも聞きたくなかった
それでも秋さんは続けた
聞いたのは俺だ
最悪だ、と自分を非難する間もなく
「そういう写真撮られてて、脅されてんだ。ネットに流すぞ、って」
俯いて、噛み締めて、握り締めて、掌から血が滲み、秋さんは言った
俺は立ち上がる
243:
「どうするつもり?」
「やめさせます」
「どうやって?」
「土下座してでもです」
「私に近づくなって言ったら?」
「その時は・・・そうするしかないでしょう!?」
秋さんもゆっくりと立ち上がって俺の正面につく
「あーんして」
「は、あーん?」
「いいから」
言われた通りに口を開く
「んって口閉じて」
言われた通りに口を閉じて、頬を思い切りひっぱたかれた
「ふざけんなよ」
と、それはそれで、なんとも秋さんらしい口調だった
249:
「これは私の問題だ! あんたが気に病むことじゃない!」
「気にしますよ! 秋さんの・・・写真、ばらまかれるんでしょう!?」
「いいんだよ、もう」
「いいわけない!」
「じゃああんたは私から離れるのか?」
「はい」
言って、秋さんは俯く
一秒、二秒と流れていく
少しして上げた顔には、瞳には、涙が溜まっていた
「私の気持ちは無視かよ!」
それは、秋さんにとって精一杯かもしれない、告白だった
なにせ、それ以上なにも言わなくなってしまったから
258:
「あんたが! 離れてって・・・それであんたがよくても、私はどうなんだよ!」
「そんな・・・誰でも構わず家になんて、上げるかよ!」
ぐす、ぐす、と鼻を啜る音が聞こえた
ただ普通に、そこらの人と変わりなく、秋さんは泣いていた
手で涙を拭いて、喉をしゃがらせて、目をこすって、うめき声を漏らして
俺は・・・なにを勘違いしていたんだろう
秋さんがライブをしていたって
俺の知らない世界だったからって
俺の心を奪った人だからって
普通の、女の子じゃないか
「ご」
口まででかかった謝罪を飲み込んだ
謝ることしかできなくても、謝ったところでどうなんだろう
許して欲しいのか?と自分に聞く
違う、俺は、許してほしいんじゃなくて、そうじゃなくって
考えて、考えて、考えて、自分の気持ちに素直になることだけを考えて、
すっと近づいて、大して身長の変わらない秋さんの頭を持って、肩に引き寄せた
純粋に好きなだけだから
好きな子が泣いているから
慰めてあげたい
ただ、そう思った
263:
こんだけ上手いと、フィクションでもノンフィクションでも関係ないや。
面白い。
純粋に続きが気になるっ!
264:
「あの」
なにも言えない
気の利いた言葉が言えない
こんな時、世のイケメン男子はどうしてんだろう
映画の台詞を思い出そうにも、混乱した頭はまともに働かない
「えっと」
手の中でぐすぐすと泣き続ける秋さん
二個年上で、金髪で、ピアスをしていて、自活していて、感情的な彼女を
「俺は、秋さんとずっと一緒にいたいです。その、好きだから」
一拍置いて、大好きです、ともう一度言った
すると、秋さんは泣き止んでくれなかったけど、少しだけ息を整えて
「ばか」と零した
269:
暫くして秋さんは泣き止んだ、と言いたいところだけど、面白かったのでこんな風だったと説明しておこう
五分ほどそのあとも泣き続けて、次第に潜んでいって、静かになった
泣き止んだかな?と考えていると
「う、う」
と肩が揺れたので、まだこのままのほうがいいかなと、頭を撫でようとしたら
「うえっくしょん!」
と豪快なくしゃみをした
「あーよく泣いた」
と目こそ真っ赤だったけどすっきりした表情で言う秋さんに思わず
「・・・おっさん」と口を出た
「・・・なに?」
「なんでもないです」
いや、おっさんだったです、完全に
コーヒーを入れ直してくれて、顔を洗いに行って、秋さんが戻ってくる
271:
トイレから戻ってきた秋さんは俺の真横に座った
えって挙動不審になっていると
「なに?」
と睨んでくる
なにこれ可愛い、とか思うよな
思ったよ
「それで、イボのことなんですけど」
「あー、だからもういいって。仕方ない」
「なんかさっきと全然違いますね」
「そりゃ吹っ切れたし、それに・・・」
秋さんは首をくて、くてと横に振った
「あんたがいてくれんでしょ?」
照れもなく言ってくる秋さんに、イケメンだと思わずにいられなかった
274:
「そりゃ私だって嫌だったけどさ、元々諦め半分だったんだよ」
「諦め?」
「そうそう。撮らせた私が悪いんだし、それに、二三年もしたら落ち着くかなって」
「はあ」
「でも、あんたがいてくれるならいいや、どうでも」
それは俺にとっての幼馴染のようなものなんだろうか
俺が秋さんの幼馴染になってあげられるんだろうか
いや、なるんだ
「頑張ります」
「なにをだよ」
そうして、秋さんは朗らかに笑った
ころころと表情の変わる、素直な秋さんに
どうしようもなく惚れている
279:
少しして、ベッドに潜り込む
「ん」
二人並んだ時に、秋さんが器用に頭だけを上げた
「どうしました?」
聞くと大きな溜息を漏らされて
「ったく。腕」
「どうぞ」
俺が出した腕を秋さんは枕にして、横になった
「物分りの悪い」
「ガ、ガキなんで」
「だったらさっさと大人になって」
「頑張ります」と言おうとしたのに被せて、秋さんは言った
「いいや、やっぱ。そのまんまで」
そのまんまがいいや、と
秋さんは眠っていった
俺も暫く秋さんの頭を撫でて、その手を置いたまま、眠った
睡眠にも質があるって思い知った
こんなにも心地のいい眠りはなかったから
284:
さて、このまま話が終わってもいい頃合だ
俺は秋さんと付き合うことになって、それを幼馴染に報告して、凄い喜ばれて
秋さんのライブ見に行ったり、万が一にも俺がバンドを組むってことはないけど
でも、そんな未来が
あったかもしれない
でもなかった
これだけ言っておくと、この話は悲しい話じゃない
一つも悲しい話じゃない
何度でもいう
ハッピーエンドだ
だからもう少しだけ続く
まだ終われなかった
終わらなかった
終わればいいのに、終わらなかった
それほど、イボの心は、歪んでいた
286:
秋さんの家に泊まってから一週間が経っていた
連絡先も交換した、けど、メールはこなかった
秋さんってそういう人だ
幼馴染には両手を挙げて喜ばれた
流石に秋さんの秘密はなにも言えなかったけど、でも、喜んでくれた
「イボの野郎、次になにかしてきたらぶっ殺してやるぜ」
と物騒なことを言っていたけど、平和なものだった
平和だと思っていた
俺はあの最低な野郎をナめていた
翌日、幼馴染は学校に登校してこなかった
どうしたんだろうと思っていると、俺の家に電話が入っていた
幼馴染の親からだった
288:
家に帰って「ただいま」と言うと母親が慌てて駆けてきた
「落ち着いて聞きなさいよ!」と言う母親
ほんとにこんなシーンってあるんだな
落ち着くのはそっちだ
でも、確かに落ち着いてられなかった
「幼馴染くんが・・・救急車で・・・!」
忘れていた恐怖が背筋を泡立たせた
そう、終わってなかったんだ
289:
ドキドキしてきた
290:
急いで病院に行こうとすると私が送っていくと母親が言ってくれた
それは仕方ないか
つい最近二人して不良に襲撃受けたばかりだ
そして幼馴染の入院
次に狙われるのは・・・
車で病院に着いて幼馴染の病室に行く
向こうの両親とは仲がいい
幼馴染の母親はうちの母親を見るなり怒る、とか見当違いなこともせず、ただ泣いた
うちの母親がそれをなだめる
俺はカーテンを開けて幼馴染の姿を、酷い姿を見た
絶句した
「よう」
というのに、幼馴染は気楽に挨拶してきた
でも、本当に酷い状態だ
右足と右手にギブスが巻かれていて、顔はぼこぼこ
なにがどうなればこうなるって、答えはもうでていた
「大袈裟なんだよ、みんな」
平然と笑っていられる幼馴染に心から尊敬を送った
294:
「大袈裟って! あんた! 死んでたかもしれないのよ!」
幼馴染の母親が怒鳴る
「それが大袈裟なんだって」
「頭、縫ってるの、わかってるでしょ!」
よく見てみれば、幼馴染の側頭部に大きなガーゼが貼られていた
ここまでするか、とぞっとする
「心配しすぎだっての」
幼馴染の軽い調子で引き戻されて、一つだけまともなことが言えた
「お母さんが心配するのは当然だよ。謝らなきゃ」
「俺が!? なんでだよ」
「心配かけたんだから」
「・・・悪かったよ」
といっても、幼馴染がこうなったのは俺の責任でもあった
だから俺の心は決まっていた
もう、絶対にあいつを許さない
298:
幼馴染の母親が出て行ってうちの母さんも付き添った
病室には俺と二人
「お前も気をつけろよ」
「うん」
「もうちゃんとくっついてんだから、そのうちなくなんだろ」
「うん」
「だから」
「うん」
「・・・なに考えてんだお前」
「大丈夫」
「大丈夫って、馬鹿なこと考えるなよ。こんなことしてくる奴だぞ。下手に喧嘩売ったらお前、徹底的にやられるぞ?」
「わかった、なにか考えるよ」
「だからそれが馬鹿なことだって言って・・・痛っ」
「ほんと、ごめん、俺のせいで」
「お前のせいじゃねえだろ」
「でも本当は幼馴染は関係なかったことだから」
「・・・起き上がれたらぶん殴ってるぞ。俺がやりたいからこうしたんだよ」
「・・・うん。ありがとう」
「礼もいいっての」
けど、なにを言われようともう変わらない
絶対に、絶対にあいつを許さない・・・そう考えていた時、携帯がマナーで鳴った
慌てて病室を出て、病院を出て、電話に出る
秋さんだった
300:
「あんたの友達入院したって!?」
なんで秋さんが知ってるんだと思わずにはいられなかった
「なんで知ってるんですか?」
「そんなのどうだっていいでしょ!」
「・・・あいつか」
すぐに行くから、と言って秋さんは本当にすぐに来た
多分、仕事を途中で抜けてきたんだろう
秋さんを病室に連れて行く途中、幼馴染の母親と目が合った
うちの母親も首を傾げていた
なんでこんなに派手な子がうちの子と知り合いなんだろう、って感じで
「幼馴染くんのお母さんですか?」
聞いて、判断したやいなや、秋さんは頭を下げた
ごめんなさい、私のせいですと、はっきり言った
どう考えても秋さんのせいじゃないのに
301:
幼馴染の母親は秋さんを問い詰めた
どうして? なんで? と
だけど俺が間に入った
秋さんのせいじゃないんです、と
実際違った
だけど秋さんは泣きながら謝り続けた
もしかしたら、今までずっとこんな気持ちだったのかもしれない
ずっと、ずっと、謝り続けてきたのかもしれない
友達も、寄ってくる男も全てを壊されて
心の中でずっと罪悪感を募らせてきたのかもしれない
吐き出すように謝り続ける秋さんと
この人が悪いんじゃないと言い続ける俺を見て
幼馴染のお母さんは、違うのね、と言って壁の椅子に座った
305:
それでも秋さんは謝り続けていて、幼馴染のお母さんがもうやめて、と言って止まった
「貴方のせいじゃないんでしょう? >>1君見てたらわかるわ。ごめんね、責めてしまって」
秋さんは戸惑っていたけど、病室に俺が半ば無理矢理案内する
そして幼馴染の姿を見て、顔面を蒼白にして謝りだしたけど、幼馴染は軽い調子で
「こんなんへっちゃらっすよ」
「ってか悪いの秋さんじゃねえし、なあ?」
「うん」
「でも・・・」
「いや、まじで気にしないでくださいよ。どうしても気にするなら、今度また対バン組んでくださいね!」
秋さんは、少しだけ救われたように見えたけど
俺の愚かな思い違いだった
309:
病院から出て秋さんをタクシーで送る時
「今週末に、ライブするんだ」
「はい、見に行きますよ」
「こんな時なのに、ごめん」
「気にしないでください」
「それでさ・・・金曜日。前日、うちに泊まりにきてよ」
「金曜日? わかりました。なんとかします」
「絶対だよ」
念を押してきた秋さんにはい、と返事をして
俺は心の中で緒を締める
イボの人生を終わらせる
そんなことを頭に描いて
イボの居場所はわからない
だから、ライブの日
殺すかどうかは知らない
殺すつもりはきっとない
でも、警察に捕まってもいい
俺の言うことを聞くようにさせる
でないと、もうこれは終わらない
それが俺の決めた、覚悟だった
311:
金曜日を無事に迎えられた
学校から家に帰る途中は充分に気をつけた
不良が張っていないような道を探して、裏門から出たりして
泊まりに行くと言うと酷く親に反対されたけど、今日だけはと食い下がった
それでもダメだと言うから、黙って家を出た
自室の勉強机の上に開いたノートには、ごめんなさい、とだけ書置きして
夏休み前を思えば随分と不良になったもんだ
喧嘩をして、酒を飲んで、親に黙って家を出て、彼女の家に泊まりに行って、そしてきっと警察に捕まる
きっと、秋さんと一緒にいられる最後の夜だった
捕まった俺を待っていなくていいし、待っていてもどんな顔をしたらいいかわからない
だから、精一杯、この目に秋さんを焼き付けよう
行きがけの百円ショップで、俺は果物ナイフを購入した
313:
「よっ」
目的のコンビニに着くと秋さんはいた
今日は学校を休むと言っていたので、違和感はなかった
「お菓子とか好きに買っていいよ」
「じゃあ遠慮なく」
「遠慮はして」
「はい」
普通通りだ
ずっとこんな日々が続けばよかったのに
ジュースとお菓子を買って、秋さんの家に行く
少しだけ見慣れた家に入って落ち着いた
「さて、と。頑張るか」
「なにをです?」
「飯、作る」
それはちょっとカタコトな、機械じみた言い方だった
「秋さんの手料理ですか! 楽しみです!」
「やめて、料理、苦手」
だからカタコトなのかと思った
317:
終わりが予想できない
319:
キッチンの方からなにかしらを炒める音が聞こえる
ぐつぐつと、味噌汁らしきいい匂いも漂ってきた
「なにか手伝うことはありますか?」
「じゃあこれで机を拭いて、コップと箸の用意お願い」
「はい」
意外としっかりした秋さんは、こういうところでもしっかりしている
完成、と並べられた料理は肉じゃがに味噌汁にサラダと、なんだろう
定番家庭料理だった
「美味そうです」
ほんとに美味そうだったよ、凄い綺麗だったし
秋さんらしい料理だった
秋さんも席について、二人でいただきます、と手を合わせる
秋さんは食べない
俺の箸を凝視している
「・・・食べにくいですよ」
「うん」
いやうんじゃなくて・・・
よっぽど気になるんだろう
下手したら産まれて初めて料理を人に食べさせるんだろう
肉じゃがに箸を伸ばして、糸こんにゃくと肉の部分を掴む
口に入れて、ありきたりだけど
「んん!」と大袈裟に反応してみた
青褪めた秋さんの顔色が
「美味いです、とても」
ほっと胸をなでおろして、思い出したように
「そんなことしてると料理下げるよ」
睨みつけてくる
すいません、と笑いながら言う
322:
テレビがあるけど、テレビは点けていない
点けないんですか?と聞くと、見たいのあったら見ていいよ、とのこと
見ない人なんだろう
パソコンから曲を流しているんだろう、穏やかな音はスピーカーに乗って耳に届く
「こういう曲も聞くんですね」
「年中ハードコア聞いてたら気が狂うって」
「確かに」
「これ、なんて曲ですか?」
「・・・さあ?」
とても秋さんらしい反応だった
ご飯を食べ終えて、食器を片付けるのを手伝った
「客だからいいよ」と言ってきたけど
「将来手伝うから練習です」とちゃけてみたら
「どうだろね」と返ってきた
シビアな目線をもってらっしゃる
326:
シャワーを浴びて、スウェットに着替えて、俺がシャワーから戻ると秋さんは煙草を吸っていた
「一本ください」
「興味なかったんじゃないの?」
「人生経験です」
「いらない経験もあるけどね。はい」
受け取った黒い煙草
「なんて名前なんですか?」
「ブラックデビル。通称、中二病の煙草」
「なんかわかるかも」
「解らないでよ、今つけたんだから」
煙草に火をつけようとしても中々つかないでいると
「貸してみ」と煙草を取られた
「煙草ってのはこうやって」取った煙草を口につけて
「ふう。吸いながら火をつけないとダメなんだよ」それを渡してきた
「・・・」
「なにしてんの?」
「いや、別に」
間接キスとか、なにも思わないんだろうな、秋さん
気にしてるのは俺だけ
ならば精一杯、喜び勇んで口をつけてやろうとしたら
「ああ、間接キスか。ガキだね」
「ガ、ガキでいいです」
「強情だな」
真横にいた秋さんが俺の首を掴んで、引き寄せた
そのまま口にちゅっと、キスをして、離れた
「まだ間接キスしたいの?」
ほんと、この人はイケメンすぎる
327:
関節キスなんてどうでもよくなった俺は火のついた煙草を咥えてすっと吸い込み、
盛大に咽せた
もう煙草なんて二度と吸わない
「はっはっは」
予想通り、と言わんばかりに笑っている秋さん
「笑わないでくださいよ」
と言いつつも
「笑うって」
まあ、笑ってるならいいかと思うのは惚れた弱みだろうか
いつもの、螺旋のコーヒーを飲んで、暫くして、ベッドに寝転ぶ
電気を消して、その横で、秋さんが微笑む
薄暗い部屋で秋さんと二人、ベッドに並んで抱き合った
なにがその切欠なのかと言われてもわからない
ただ、流れのままにそうなった
329:
ぎゅう、と強く抱きしめた
できたらこのままずっと、離していたくないから
ありったけの想いを込めて、キスをした
万分の一でも俺の気持ちが伝わってほしいから
行動は、止まらなかった
きっと秋さんも受け入れてくれた
ベッドの中でまさぐりあって、初めてだから、上手くいかなかったけど
なるべく秋さんを傷つけないように
なるべく秋さんに伝わるように
その、愛情ってものがさ、目に見えない代物じゃんか
それが伝わるのって、一瞬のことだと思うんだ
その一瞬が、長く長く、続くように
好きなんですと口にしなくても伝わるように
それでも、口を出てしまう言葉がある
好きです、って
そしたら、返してもらえたらこの上ない喜びだ
好きだよ、って
返してくれたから
俺はこの人に惚れてよかったと、心から思わされた
初めての人がこの人でよかったと
永遠に忘れられない人がこの人でよかったと
最後の夜を脳裏に刻むことができてよかったと
思えたんだ
331:
可愛く跳ねる秋さんも
恥じらうように顔を背ける秋さんも
大胆になる秋さんも
全部この時ばかりのものだろう
できればもっと長く、一生一緒にいたかったけど
そうはならない
嬉しくて、悲しくて、泣きそうになるけど、涙が似合う場所じゃないから、ぐっと飲み込んで
頑張って、かっこつけて、情けない自分を捨てて、好きな人のために一生懸命であれた
と思いたい
そして俺と秋さんは、雛のようにくっつきあって、体温を身に感じながら眠りについた
深い深い眠りについた
最後の夜は、こうして終えた
336:
翌日、目を覚ますと秋さんはとなりにいた
いつも俺より遅く目覚める人だ
そのお陰でこうして寝顔を眺められるんだけど
寝顔を見られていて恥じるような人じゃない
「おはよ」と普通に挨拶をするだけだ
「なんか、いっつも私より先に起きてんね」
「運がいいんです」
「いいの?それ」
なんでいいかは言わなかった
「変なの」
と秋さんは言って、起き上がる
コーヒーを飲んで、秋さんはパソコンでなにか作業をしていた
なにをしているんですか?と聞くと、ちょっとね、と濁された
ライブに行く準備をして、家を出る
もう二度と訪れることのない家を
そう思って家を出ると、感慨深いものが込み上げてきて、ぐっと堪える
泣くのはまだ早い
泣く時は、一人でいい
337:
ライブハウスに着く
時間は物凄く早かった
リハーサルだ
そして、楽屋には奴もいた
蛇のような糞野郎は、ようと笑顔で俺に挨拶してきた
「元気だったか」
心の底からファッキューと送りたい
俺と秋さんは同時に睨みつけた
するとイボは、恐い恐いと言って去っていく
絶対に、屈服させる
痛めつけて痛めつけて、許してくれと泣き喚いても許さない
でもそれは、今じゃない
取り巻きが数人いる
邪魔だ
一番好都合なのは、ライブ終了直後
ライブが終わって高揚感が一気に冷めて、疲れが出る頃
それは取り巻きもイボも同じはずだ
だったら、どうとでもなる
リハーサルは秋さんのお陰で俺も見れた
というか一緒に楽屋に入っているから、バンドスタッフとして中に入った
特になにもできなかったけど
リハーサルの秋さんは本番とは全く違う
歌も、叫びも、本気じゃない
丁寧に色々なものをチェックしていた
念入りに念入りに、仕上げていた
339:
リハーサルも終えて、秋さんが飯を食べに行こうと言い出した
近くの喫茶店に足を運び、向かい合わせで席に座る
「これ」
じゃらりと取り出したのは黒猫のキーホルドーが付いた鍵だった
「うちの鍵。あげるよ」
「い」口篭った。使うことがないか。でも、続けた「いいんですか?」
「いつ来てもいいから」
「はい」
「あんただったら、まあ、なに探ってもいいよ」
「・・・なにかあるんですかね」
「宝探ししたら?」
こういうことは是非昨日に言って欲しかったな、とは口が裂けても言えない
「楽しみにしてます。なんだろ、宝」
「それは多分」
「心の中にある、とかなしですよ」
「・・・うん、もちろん」
絶対言いかけたと思うんだけど、どうよ
食事を終えて、喋って、いい時間になったのでライブハウスに戻る
客が疎らに入っている
開場時間は過ぎて、開演時間を待っている客
あと、三時間もないのか
340:
開演
一組目、バンド初心者組
二組目、初心者を抜け出せない組
三組目、中級者になった組
この頃からライブハウスは雰囲気を変えて、そして四組目
ネクロスティックの順番だ
バンドメンバーが出てきて、秋さんが出てくる
轟音が唸る
重低音が響く
会場が一気にお祭り騒ぎだ
341:
秋さんは綺麗だ
特に、歌っている時は格別だ
ステージライトに照らされて、男顔負けのシャウトと透明感のある歌声が、俺を別世界に連れて行く
多分、それは秋さんの持つ世界の片鱗だ
少しだけ、直接心に触れることを許してもらえている
その世界は、綺麗だ
空が歪んでいようと、大地が割れていようと、そこらかしらに死体が転がっていようと、誰もが笑っていられる
そんな、ちょっとだけ狂っている、だけど綺麗な世界だ
勘違いでなければ、それが秋さんという人だった
かっこよくて、かわいくて、綺麗で、直情的で
わかりやすいのに、隠してしまう
だけど、あっけらかんとした人
俺が初めて愛した人
自然と涙は頬を伝っていた
その覚悟が、本物なだけに
曲が終わり、次の曲に繋ぐはずだった
珍しく、曲はノンストップで送られなかった
小休憩を挟むタイミングにしてはいつもと違った
客がざわついたのは、このあとだ
342:
「あーっと」
前にも言ったけど秋さんはMCをしない
そんな人が声を出した
珍しいこともあるもんだとどこかで誰かが言った
だけど、秋さんのMCは簡潔だった
髪を手で掻き毟り、一言
「聞け」
それだけだった
ファンは笑った
そりゃ笑う
なにを言い出すかと思えば聞けだ
いつも聞いている
この上なく聞いている
始まった曲は、ハードコアじゃない
バラードだ
秋さんが歌いあげる
日本語じゃない
英語でもない
どこの国の言語でもないのかもしれない
でも多分、これは・・・
343:
バラードを終えて、暴れることが生きがいですらある客は黙っていた
でも、なんだろう
ギャップというか、それだけ力があったというか
一種、神がかっていたというのか
雄叫びのような声援が沸き起こる
やっぱり、秋さんは凄い人だった
ライブを終えた秋さんはペットボトルを持って、楽屋に戻らなかった
そのまま最前列の鉄柵を乗り越えて、こちらへ来た
というか、俺の前に来た
「つっかれたー」
そのまま頭をことんと俺の胸に落としてきた
秋さんである
秋さんは可愛くて、綺麗で、憧れる
女子からの人気も高く、つまり
ファンの大半は俺を睨みつけた
でも、残りは多分、頷いていた
お疲れ様、と声をかけて
頭を一撫でするのが精一杯
ちょっと前の自分を思えば、ちょっとは成長したかな?
344:
「どうだった」
「よかったです」
「でしょ」
ふう、と秋さんは大きく息を吐く
本当に疲れていたのだろう
いつもと・・・といってもいつもを詳しく知らないけど、こんなに焦燥しきった秋さんは初めて見た
暫くそうしていたけど、秋さんがよし、と言って横にずれた
「元気でました?」
「ちょっとはね」
「よかった」
「いやいや、もっと頑張ってよ」
「頑張・・・キスとか、したらいいですか?」
「いやそこまではしなくていい」
「はい」
次のバンドが始まる
あいつのバンドが始まる
始まる前に、秋さんは「んじゃ」と言い楽屋に戻っていった
そして、幕が開く
終わりが始まる
346:
カオスクラッシュ
そのボーカル、イボ
盛り上がり方は今までの非じゃない
乱雑で、暴力的な様相だ
秋さんの時は秋さんがまだ女性だからか、少しだけ間延びした空気がある
それもない
俺は静かに、壁際に寄り添って前に行く
こういったライブで危険なのは最前列と中央だけだ
端に危害が来ないようにするっていうのは暗黙のルールみたいなものだから
それでも、たまには飛んでいったりするかもしれないけど
そのへんはご愛嬌だろう
前に、前に
危険ではない位置まで
ここで疲れてはいられないから
次の曲が始まる
終わって、次の曲が始まる
それはカウントダウンのように聞こえた
348:
じっくりと待った
腹に忍ばせた果物ナイフに念を送るように手をあてた
絶対に上手くいく
そう、強く念じて
引き返すつもりは毛頭ない
覚悟も決めたし、決めるだけの材料もできた
全部、秋さんのお陰だ
そして、最後の曲が始まる
ファンが一際暴れだす
力の全てを振り絞るように
サビを越えて、終奏に入り
客の力が萎んでいく
見えないところで、着実に萎んでいく
ギターが、最後のコードを弾き鳴らし
ドラムが締めに乱れ叩き
合わせてベースが狂い弾き
ボーカルが、糞野郎が、能力だけは高いシャウトを撒き散らして
一斉に音は鳴りやんで、証明が落ちた
俺は、一気に前へ押し出て、柵を乗り越えようと手をかけて・・・
止まった
秋さんが舞台袖から、ボーカルに向かって歩いていた
その手に持っているのは、拳銃だ
350:
人はあまりにも衝撃的な光景を目にすると止まってしまうらしいけど、ライブハウスの客、全員がそうだっただろう
一人残らず止まった
ボーカルに近づく秋さんを除いて
そして、ボーカルを除いて
「は?」
挑発丸見えの笑いに秋さんは動じない
それはそれで、イボも肝が座っている
あんなもの突きつけられて平然としていられるのだから
「そんなちゃっちい偽物持ってきて、どうしようってんだ?」
偽物?
考えてみればそうだ
本物であるはずがない
簡単に手に入るわけがないだろう
「こうする」
秋さんは容易に引き金を引いた
飛び出したのは水だった
ホッとする間もなくイボに水がかかる
イボは、笑おうとしたと思う
でも、悲鳴をあげた
笑い声と悲鳴が最初混ざり合っていて、それはとても不気味な断末魔
354:
秋さんが水鉄砲を連射する
何度も何度もイボに撃ち続ける
でもイボの様子は尋常じゃない
あれは絶対に、水じゃない
顔を抑えるイボが悲鳴をあげる
それでも秋さんが撃ち続けて水鉄砲を投げ捨てた
「大袈裟な奴」
そんな声が耳に聞こえた
静寂の中、秋さんの酷く冷めた声はライブハウスによく響いた
そして、服の内側からナイフを取り出した
生唾を飲み込むような、極太のナイフだ
「秋さん!」
俺は叫んだ
叫ぶしかなかった
だってそうだ、それは俺がすることだった
まさか、秋さんがするなんて微塵も考えてなかった
でも、一瞬の間に、走馬灯のように流れた記憶が止まらない
どうしてライブ前日に俺を泊めた?とか
どうして料理を振舞ってくれた?とか
どうして合鍵を渡してくれた?とか
どうしてライブで、MCを挟んでまで、バラードを歌った?とか
考え出せば全部、そういうことだった
どうして俺は気づけないんだと、自己嫌悪に陥る暇もない
355:
「秋さん!」
叫んで、鉄柵を乗り越えようとする
秋さんが、俺を見る
ゾッとするような無表情
能面みたいな、人形の顔
だけど、仮面が外れて、口元が緩んだ
そして、仮面をつけて、イボに向く
振り上げられたナイフは容赦なくイボの・・・足に
足に、足に、足に、足に、何度も、何度も、刺して、刺すたび、イボが叫ぶ、悲鳴をあげる
壊れたように
刺し続ける
狂ったように
刺し続ける
「これもいらないな」
そして、秋さんはイボの股間をメッタ刺しにした
359:
俺は茫然とその光景を眺めていた
けど、イボの悲鳴が一層際立ったものだから我に返る
慌てて鉄柵を乗り越えて秋さんを止めようとする
止めなきゃ
止めなきゃ
「仕上げだ」
そして、秋さんはイボの口にナイフをいれて、躊躇せずに横に裂いた
パックリと割れた口から放たれる人間とは思えない声に
誰もが息を呑んで動けないでいた
俺は秋さんを後ろから抱き上げて、引きずるようにその場を離れる
どうしたらいいかわからないけど、一つだけわかるのは、逃げなくちゃならない
でないと、秋さんが捕まってしまう
360:
楽屋に連れて行った秋さんはぼうっとしていた
生気の抜けたような面持ちで俯いていた
「どうしてあんなこと!」
間髪いれずに秋さんは「ごめん」と謝った
謝ってほしいわけじゃないと言おうとした息を遮ったのは、予想外の言葉
「殺せなかった」
一瞬、思考が完全に止まった
言っている意味がよくわからなかった
361:
「あいつは、殺さなくちゃ、いけないのに、ごめん」
「・・・どうして」
「殺さないと。今までのケジメ。あいつは、殺されるだけの理由があるよ」
「そうじゃなくって!」
「どうして、秋さんがそれをするんですか・・・」
「あんたの友達・・・あれが切欠ではあると思う。でも、原因はもっと別。あいつは、やりすぎた」
「俺が!」
「あんたにしてほしいわけないだろ!これは、私の問題だ!あんたがしたら、尻拭いになる」
俺は一つの可能性を浮かべた
こんな時ばっかり頭は働く
特に、悪いほうに
「もしかして、知ってたんですか?」
秋さんは答えない
「俺があいつになにかしようっていうの、知ってたんですか?」
秋さんは答えない
「気づいて、たから・・・?」
秋さんは答えてくれない
変わりに、頬を思い切りひっぱたかれた
あの時みたいに
363:
「自惚れんな」
それは、いつか俺が言われたくなかった言葉だった
「私は私のためにしたんだよ。あんたのためじゃない」
「そりゃまあ、絶対にないとは言い切れないけど。でも、あんたがすることじゃない」
「自分の馬鹿な行動が裏目にでた。そんだけだよ」
「だから・・・気にしないで」
何も言えなかった
もう、どうしようもないからだ
どう足掻いたって過去は変えられない
もっといい方法はなかったのかなんて、無意味だ
「まあ、これであんたらは大丈夫だと思うよ。あいつが不良を動かしてたのは、女と金のちからだし。あれじゃあもうステージには立てないし、女は寄ってこない」
俯いていたから、暗い気持ちがわかることがある
その典型だろうか
秋さんの手が見えた
未だに両手でナイフを持って離さないでいる、手が見えた
小刻みに震えて離せないでいる、手が見えた
俺は、大きく深呼吸をして、できるだけ大きい力で
頬を両手で叩いた
びくっと秋さんが震える
366:
「・・・叩かれ足りなかったってこと?」
「よく冗談言う気になりますね」
「まあ、こんな女だからね」
「そうですね」
「人刺しちゃったり、家飛び出したり、馬鹿な女だからさ。さっさと忘れたら?」
「そうですね、馬鹿ですね。ナイフの離し方、忘れました?」
秋さんは言われて気づいたようだった
離そうと何度も手を振るけど、ナイフは離れない
俺は秋さんの横に座って、そっとナイフを持つ手に添えた
一つずつ指を摘んで離して、両手が開く頃には
警察が楽屋に来ていた
368:
警察の前だけど、構う必要はない
といっても、時間はない
「秋さん、大好きですよ」
「お願いだから、待たないで」
「俺の我侭ですから」
「お願いだから・・・」
「期待して待っててください。貴方の帰りを、待っています」
そう言って、俺は秋さんにキスをした
その時間は数秒にも満たなかっただろう
すぐに警察に取り押さえられてしまったから
秋さんは、刑事ドラマでよく見るような、手荒な風にはされなかった
現行犯云々で〜と警察が言ったら、両手を前に差し出したからだ
刑事ドラマとかで見るような取り押さえられ方をされたのは俺だ
「秋さん!」
後ろから押えつけられてビクともしない
それでも声だけは出る
いつだって叫ぶことはできる
「絶対に!」
姿が見えなくなる
連れて行かれてしまう
でも、声だけは届く
「待ってますから!」
まあ、結局俺も警察に連れて行かれたんだけどね、重要参考人として
369:
>>1も果物ナイフ持ってたならやばいんじゃないのか?
371:
>>369
落としたよ
多分、ライブハウスか楽屋に転がってたはず
370:
警察の問いは前よりも激しかった
なにせ今回は加害者の共謀者として見られている可能性があって
それがなくても事情を知っているはずだと踏まれた
だから、問い詰め方も怒号のようなものだった
「なにか知ってるんだろう!」
それに対して、俺は秋さんのなにかを知れていたかな、と考える
知れていたならいいな、と考える
「さあ?」
机を強く叩かれて、びくっとした
秋さんがなんて答えるか解らない以上、俺の口から言えるのは
「あのバンドのボーカル、相当あくどいことやってたみたいですよ」
そういう、秋さんにとって有利な言葉だけだ
375:
流石に一日では帰してくれなかったけど、三日ぐらいで釈放された
釈放とはちょっと違うかな
母親は大泣きだった
父親も凄い怒ってた
警察が、どうやら巻き込まれたようなだけなので、というと
俺はあのライブハウスに出入り禁止、ということになった
結局、営業停止食らってたけどね
話はここでおしまい
こっからは蛇足だけど、あとちょっと
聞いてくれる?
384:
合鍵を貰っていたから俺は家に行った
そこはまだ空ではなかったけど、立ち入り禁止のマークがあった
気にせずに中に入ると部屋は荒れていた
まあ、荒れるような物数の多さじゃないんだけどさ
パソコンがあったけど、電源が落とされていた
電源を入れて起動させると、デスクトップのフォルダに一つ、気になるフォルダがあった
まあ、これを探しに来たんだけど
宝物、と書かれたフォルダを開けると五曲入っていた
それをUSBメモリに移して、削除する
PCの電源を切って、家を出た
秋さんが歌う曲だった
しっとりとした、まったりとした、曲だった
一曲だけ、ラブソングもあった
それはあの日ライブハウスで歌ったバラードだった
387:
ここから一気に飛ばすけど、二年が経った
因みに幼馴染は無事回復したよ
後遺症もない
頭にちょっとだけハゲはできてたけどね
髪で隠れる範囲
「俺には魔法がある。これを見せるとこいつがなんでも言うことを聞いてくれるんだ」
って軽口を叩くぐらいだし
「もうジュース奢らないよ」
「ちぇ」
こんな調子だ
それで、二年が経つ
俺は高校に進学して、ずっとバイトをした
せっせと働いて貯金をした
使いたいお金の使い道があった
秋さんのバンドメンバーに聞いてもわからなかったので、俺は探偵に依頼した
人探しなら凄いよ、探偵は
仕事にしてるだけはある
特に秋さんは警察に捕まってるもんだから、割り出すのは簡単だったらしい
本名も知ってたしね
俺は秋さんの両親が住む家を訪ねた
392:
秋さんは二年程度で出てくるはずだった
まだ未成年だから
その時に調べたけど、特別少年院に入っても一年半から三年程度らしいね
なかには成人して再逮捕、って人もいるらしいけど
俺は秋さんの居場所を知りたかった
だけどご両親はいつまで経っても帰ってこなくて、結局帰ってきたのは十時過ぎだったか
「初めまして」
事情を話す前から敵意剥き出しの父親は俺を睨んできた
秋さんを苦しめた張本人だってのに
「秋さんの居場所を教えてください」
その途端に父親は激怒して、家の中に入っていった
でも、俺は翌日も、翌日も、都合一週間諦めなかった
394:
父親と母親が揃った時があった
俺が食い下がっているとそこに母親が帰ってきたんだ
母親と会うのも三度目ぐらいだった
二人目は心底迷惑だ、と俺に言った
だから俺は言ってしまった
「貴方達の変わりに俺が責任持って秋さんと一緒になるって言ってるのが、そんなに気に障りますか?」
気に障るとかそんな話じゃない
これじゃあ喧嘩を売ってるようなものだ
「ガキの分際で」
と言いかけた父親を制したのは母親だった
続けて恐ろしいことを母親は言った
「いいんじゃない? あれが次になにしでかすかわからないんだし、この子も迷惑だし」
俺さ、初めて親が子供のことを"あれ"って言ったの聞いてさ
怒るより、なにより、悲しくなったよ
こんな親の元で育てられた秋さんが心底可哀想だった
同情すんな、って秋さんは言いそうだけど、そんな問題じゃないだろ?
拳を強く握った
殴りかかってしまわないように
それもそうだな、と父親が言った
ようやく、俺は秋さんの居場所を知った
結構離れた場所にいるようだった
396:
高校二年の夏休みに、バイトで貯めた金はかなり減っていたけど、行けるだけのお金があった
飛行機に乗って会いに行った
どれだけ遠いかは、そうだな
500キロぐらいかな、多分
もうちょいあるのかも
秋さんの住所しか知らなかったから、そこを訪ねた
なんとも歴史のある、と言えば聞こえのいい、カビでも生えてそうな古臭いアパートだった
秋さんは家にいなかった
階段で待つと他の人にも迷惑だから、迷惑にならないように待った
着いたのは昼過ぎだったけど、目的の人が帰ってきたのは夜の七時
一瞬見違えた
だってもう金髪じゃなかったし、ピアスもしてなかったし、派手な格好もしてなかった
でも、わかる
秋さんだ
「こんばんわ」
声をかけると、驚いたように秋さんが振り返る
手を挙げると、秋さんは呆れたように肩を落とした
そうして、なにを言うわけでもなく、俺の方へ近づいてきて
「よっ」
と言った
400:
「少し痩せました?」
「馬鹿、太ったよ。健康的な生活送ってたからね」
「ピアス、やめちゃったんですね」
「暫くは通いの保護観がつくんだよ。素行がいいからって期間は短いけど」
「大変ですね」
「ケジメだから、別に・・・で、家上がる?」
「その前に一つだけ聞いておきたいんですけど」
「なに」
「彼氏できました?」
言うやいなや秋さんは俺の胸ぐらを掴んできて引き寄せる
とても、とても怒ったように
「いると思ってんの?」

こんなことでなんだけど、俺は、あー、秋さんだって
秋さん、昔のままだって
凄い嬉しくなってしまった
401:
家は外からの予想通り、前よりも小さかった
前よりずっとなにもなくて、生活の色もない
「飽きません?この家」
「早く引っ越したい」
「いつ保護観終わるんですか?」
「半年かな」
「じゃあ一緒に住みましょうよ」
「高校卒業してから言え、ガキ。行ってんでしょ?」
「じゃあ卒業してから」
「・・・わかったよ。ったく、ちょっと見ない間に偉そうになったね」
「そんなことないですよ」
小さな机の上にコンビニの袋を落とす
「健康に悪いですよ」
「食わないよりマシだよ。悪いけど、あんたの分ないよ?」
「構いません。食べに行きましょう。奢りますよ」
「ガキが贅沢な・・・よし、財布の中身無くしてやる」
「帰れなくなったら面倒見てくれます?」
「やっぱちょっと見ない間に偉そうになったよ、あんた」
二年っていうのはそれだけの期間があった
少しだけ、俺は秋さんより背が高くなっていたから
402:
「ねえ」
「はい」
そのまま秋さんは俺を壁に押しやって、ちょっとだけ背伸びして、キスをする
それを上から受け止めるだけの余裕は、まだ俺には備わってなくて
秋さんが離れても意識が定まっていない
「っぷ、やっぱまだガキだ」
それは、寄り添ったままの言葉
「ガ・・・ガキで、いいです」
まだもう少しだけ背を伸ばす必要がありそうだ
「あのさ」
「はい」
一瞬の間が空く
「来てくれて、ありがとう」
「はい」
「待っててくれて、ありがとう」
「はい」
「あんたのことが、大好きだよ」
「はい。俺も、秋さんが大好きです」
「うん」
こつん、と胸元に秋さんが頭を下ろす
406:
強がってばかりの、小さな頭
どこか優しい、小さな手
凛々しさのある、大きな瞳
誰よりもかっこいい、特別な心
それらが秋さんで、俺の知らない秋さんがまだどこかにある
でも、もう俺は世界の違う人とは思わないだろう
ずっと、秋さんの隣にいたいから
「よし、行くか!」
「はい」
秋さんが俺の手を引いて、玄関に向かう
回る視界で、部屋の隅っこに佇む三つのぬいぐるみを見つけた
これは、帰ったあとでからかおう
三匹の猫のぬいぐるみが寄り添わせた、可愛らしい一面を持つ秋さんを
ほら、秋さんのことがまた一つ知れた
俺はまた、秋さんのことを一つ好きになった
こうしていつまでも好きになって
いつまでも俺は、秋さんに好きだと、伝え続けたい
言葉で語らなくても、届くように
大好きですと、伝わるように
終わり
408:
乙!
>>1は現役高校生かい?あと末長く爆発しろ!
409:
ん?
で、今はどうなったの?
412:
>>409
今は週に一回秋さんと連絡を取り合って、三ヶ月に一回遊ぶぐらいですよ
三ヶ月が・・・長い
滅茶苦茶長い
長すぎる、けど
秋さんこういう人なので「将来住むならそれでいいでしょ?貯金しなよ」ってなふうです
410:
おつ
釣りだとしても面白かった
411:
お疲れ様です!
ごめんなさい、ちょっと思いの外長引いた
二時までには終わると思ったのに・・・
気になっているらしい蛇の話をちょっと(どうしてこいつこんなかっこよさげな名前で呼ばれてんだイボでいいですイボで)
風の噂程度にしか聞いてませんが、バンドはまあ続けられなくなったそうです
そして二年経って、もう一年経って俺は高3ですけど、襲撃もされてません
ただ、それもあってこの先地元で暮らすつもりはないですけどね
本当にみなさん、お疲れ様でした
413:
追いついたと思ったら終わった。
面白かった。1の今が気になる
414:
ええ話やー秋さんみたいな人に俺も出会いてぇな
415:
けっきょく幼馴染みにはイボ襲撃から現在の秋さんとの関係まで全部話したの?
416:
さて、まあ、それで、なんですけど
思ったより長引いて申し訳ないなーと本当に思ってます
かなりの数の人が眠ったようですし、でも当初よりは注目されたからまあいいかな、とも思いますけど
うん
釣りでした!!!!!
ないよね!!!
こんな話ないよね!!!
417:
お疲れwww
流石にそうだわなwww
418:
釣りでも面白かった!!
1乙!!!ありがとう!
419:
年齢設定がもう少し上なら信じたぞw
420:
うむ!
乙!
421:
釣りでもおもしろかった
楽しませてもらった
>>1
422:
次回作期待
424:
ほんと長引きすぎたことだけに謝りたい
昨日やったらよかったな
でも昨日思いつかなかったんです
ヌクモリティに感謝感謝・・・
で、本題なんですけど
この中に家出したらお姉さんに拾われたってスレ知ってる人います?
426:
>>424
綺麗な赤髪のお姉様の話だっけか?
430:
>>426
そうそう、それです!
一人でも知ってる人いてよかった・・・
あの話は釣りじゃないんですけど、やけに纏められてて想像以上の人に読まれてて
そのへんは友達に聞いたんですけどね(幼馴染ではないです)
ネヴァーのまとめで閲覧数が50万超えてて驚いて
まあ流石にないと思うんですが友達が
「これでメディア化されたらどうすんの?」と言ってきて
万が一にもないと思ってるんですけどね
最近映画化されたのは1000万PVとかですから、規模が違います
ただ、万が一が起こったら嫌だなぁと思って
一応名乗りあげとこうとした次第です
434:
>>430
思い返せば文体とか全体の構成が似てるわw
髪の毛を特徴的に上げてるのも意識してなんかな?
あの話には個人的に思い入れもあるし嬉しいわwww
436:
>>434
赤髪お姉さんに惚れたのも相まって染髪女性が大好きなんですね、きっと
個人的に思い入れあるとは恥ずかしいです
お疲れ様です!
437:
>>436
何かと羨ましいぜちくしょう
俺も家出してくるわ!
おつかれ
429:
>>424
やっぱそうか
重なってたよ
433:
281 名前:1 ◆ppu7HKpanI :2013/12/09(月) 01:22:40.63 ID:tJlUL6q8i
本当にみんなレスありがとう、嬉しい
トイレいってきます、すぐ戻ります、ありがとう
因みに俺は明日夜勤なので問題ないです
と書いてる時点で
最後の高3設定はないと思ってたw
でも面白かったです。
435:
そんなこんなで改めて
読んでくださった方ありがとうございました!
睡眠時間削ってしまったかた、釣りですすみません!
設定矛盾を指摘した方、ナイフに限っては言い訳できませんねwww
楽屋には果物あったりするから大丈夫かなーとか思ってました甘いですねwww
ハードコアは実際にライブも行くほど好きです
ネットで探すと危険な話も多いですが、少なくとも人はいいですよ、ああいう方たちは
不良とはちょっと違いますから
興味を持ったら是非ライブハウスへ足を運んでみてください
ただ、初参戦だけは壁際をお薦めしますwww
ではでは
お疲れ様です!
>>433
あ!?
・・・忘れてたwww
438:
追いついたー
さすがにフィクションだろうと思ってたけど面白かったよ!乙!
439:
お姉さんに拾われた読んだときもそうだったけど1の文章ほんと引き込まれるー
次回作期待!おやすみ!
442:
追い付いたら、終わってた
途中、あの話に似てるなーって思ってたら、同じひとか
乙でした
面白かったよ
446:
とても面白かったです
途中で貴方だろうと思って読んでました
また新作できたら投下しろください
今度は貴方だと気付かれないようにねw
455:
買ってきたギターどうすりゃいいんだ・・・
459:
>>455
俺とバンド組もうか
461:
乙、楽しく読ませて貰った
釣りって言うかフィクションって方がしっくりくるな
462:
読みやすい文章で楽しかった!
469:
ちょっとライブハウス行ってくるわ
48

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