「今日もご主人様のモノでズコバコかき回して欲しいですっ!」back

「今日もご主人様のモノでズコバコかき回して欲しいですっ!」


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1:
ガチャ
男「ただいまー」
男「おかえりー。ご飯にする? お風呂にする? それともわ・た・し?」
男「うん、一人暮らしの一人芝居はいつやっても虚しいなやめよう」
ジャー
男「腹減ったから飯にするか。手を洗ったらぬか床かき混ぜないとなー」
パカッ
男「今朝初めて漬けたキャベツ、上手く漬かってるといいなー」
グルグル
男「しっかりかき混ぜて……」
コネコネ
??「あんっ……」
元スレ
ニュース報(VIP)@2
「今日もご主人様のモノでズコバコかき回して欲しいですっ!」
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2:
男「ん? なんか声が……気のせいかな」
コネコネコネ
??「ひゃあんっ……」
男「いや、一人暮らしの寂しさが原因による幻聴じゃあないな。これは──」
クリクリクリクリ
??「いやぁ……だめぇ……」
男「うわあぁあー! ぬか床がしゃべったあぁーっ!」
??「はぁ……もう終わりですか?」
男「……お前、誰?」
??「ぬか床です。ご主人様」
4:
男「何でしゃべるの? 朝かき混ぜた時は普通のぬか床だったよな?」
ぬかど子「それはですね……日本人のぬか漬け離れが進む昨今、ご主人様のような方は珍しいのです」
男「そうか?」
ぬかど子「はい。なのでぬか漬けをする人の保護と育成を目的とし、私は漬物の神様によって人格を与えられたのです」
男「臭そうでやな神様だな……」
ぬかど子「馬鹿にしちゃいけませんよ。発酵食品は人類の経験と叡知の結晶ですっ!」
男「わかったわかった。んで具体的にお前は何をするんだ?」
ぬかど子「ぬか漬けです」
男「……そんだけ?」
ぬかど子「だってぬか床ですから」
6:
男「いや、神様から派遣されたんだろ? なんかものすごい力とか無いわけ?」
ぬかど子「……あるわけ無いじゃないですか。だって私、ただのぬか床ですよ?」
男「それじゃただしゃべってうるさいだけじゃないか……捨てようかな」
ぬかど子「ダメーッ! 絶対ダメですっ! いやしくも神様の使いである私を捨てたらバチが当たりますよっ!」
男「例えば?」
ぬかど子「一生ぬか味噌の匂いが体から漂うようになります」
男「ごめんなさい許してください」
ぬかど子「わかれば良いんです。これから一緒に美味しいぬか漬けを作っていきましょうね、ご主人様っ!」
男「じゃあ今朝漬けたキャベツを晩飯に使うぞ」
ぬかど子「はいっ! ご主人様と私の初めての共同作業ですねっ」
8:
男「じゃあ取り出してっと……」
ズボッ
ぬかど子「ひゃんっ!」
男「何でそんな変な声出すんだよ!」
ぬかど子「は、初めてですから優しくして……」
男「……面倒くさいなあ」
ヌッチャヌッチャ
ぬかど子「はあ……ご主人様……そう、そこですそこが……」
男「ほれ、出すぞ」
ボフッ
ぬかど子「はあああぁん!」
男「……じゃあ食べるか」
ぬかど子「待ってください……拭いてくれないと、私のここ、あ、溢れちゃう……」
男「ああ、漬物を出した後の容器の内側は、ちゃんと拭いてやらないと雑菌が繁殖するんだっけな」
10:
ジュー
男「さーて、味噌汁と焼き魚もできたな。いただきまーす」
ぬかど子「ご主人様っ! 漬物のお味はどうですか!? わくわくっ!」
ズズー
ぬかど子「ああんっ……焦らすなんてご主人様のいじわるう……」
男「俺は一口目は味噌汁って決めてるんだよ!」
ぬかど子「早くぅ……」
男「はいはい食べりゃいいんだろ食べりゃ」
ボリボリボリ
男「……しょっぱい。美味しくないな」
ぬかど子「ガ──ン!」
12:
男「まあぬか床作って初めて漬けたからな。塩分が強すぎたのかも」
ぬかど子「………ごめんなさいご主人様」
男「別にお前のせいじゃないさ。そのうち味もこなれてくるだろ」
ぬかど子「えへへっ。優しいんですね」
モグモグ……
男「ごちそうさまー」
ぬかど子「お粗末様でしたー」
男「お前キャベツ漬けただけだろうが」
ぬかど子「えへっ」
13:
ピピピピピピピピ……
カチッ
男「ふぁ〜あ、もう朝か……」
ぬかど子「おはようございますご主人様!」
男「ああおは……そうだ、俺はこれからこいつと一緒に生活しなくてはいけないんだった」
ぬかど子「同棲ですねっ!」
男「いやそれはおかしい」
ぬかど子「ひどい……私の初めてを奪っておいて……」
男「だってたくさん漬けないと美味しくならないじゃないか」
ぬかど子「ご主人様のを……たくさん……」
男「はいはいんじゃまたな」
ぬかど子「待ってください。朝の一回を……その……して欲しいです」
男「あー、ぬか床作ってしばらくは朝晩一日二回かき混ぜなきゃいけないんだったな」
15:
パカッ
男「じゃあ行くぞ」
ズボッ
ぬかど子「あふうんっ……」
男「……なあこれ毎日やるの?」
ぬかど子「もちろんです。神聖なぬか床作りの儀式ですからおろそかにしてはダメですよ」
男「面倒くさいなあ……」
ヌッチャヌッチャ
ぬかど子「んっ……昨日よりこなれてきました……ご主人様のが中で動いてるのがわかりま……ひうっ!」
男「……今日は何を漬けようかな」
16:
ぬかど子「塩分濃度が高いみたいですから、中和するのに水分の多い野菜がオススメですよっ!」
男「じゃあキュウリにするか」
スッ
ぬかど子「あっ……長くておっきい……」
男「近所の無人販売所で買ったやつだ」
ズブッ
ぬかど子「ひうッ! 思いきり反り返ったのが……イボイボ付きのが私の中にぃいっ!?」
男「多分農協とかスーパーに卸せない規格外のやつだな」
ズブブッ
ぬかど子「入っちゃった……規格外のが私の中に全部入っちゃったぁ……」
男「夜には食べられるかな」
ぬかど子「えっ!? 入れっぱなしなんですかっ!? こんなに反り返ったイボイボ付きの太くて長いモノを……!?」
男「お前漬けるのが仕事だろ」
18:
ガチャ
男「ただいまー」
ぬかど子「おかえりなさいませご主人様! 私にしますか? 私にしますか? それともわ・た・し?」
男「拒否権を行使する」
ぬかど子「えー」
男「だって帰宅早々ぬか味噌まみれになりたくねーもん」
ぬかど子「ううっ……」
男「……良く考えると、ぬか床と会話してる独居男性なんて、誰かに見られたら終わるな」
ぬかど子「まさかとは思いますが、このぬか床は、ご主人様の想像上の存在に過ぎないのではないでしょうか」
男「……そうだなしゃべるぬか床なんておかしいよな。これはきっと長い夢だ」
ぬかど子「なーんちゃって……って、え? ご主人様!?」
男「よし、寝て起きたらきっと平和な日常に戻っているに違いない。寝よう」
ぬかど子「ご主人様ー!」
19:
男「ふあぁぁー……あれ? もうこんな時間か。じゃ晩飯にすっかなー」
ぬかど子「ご主人様ぁ……」
男「……さようなら平和な日々」
ぬかど子「ひどいですよ。小粋なジョークを真に受けて私をほったらかして」
男「お前のせいだろうが。……今から飯にするから、かき混ぜてキュウリ出してやるよ」
ジャー パカッ
ぬかど子「は、早くぅ……」
男「さーてうまく漬かってるかなー?」
ズボッ
ぬかど子「あふうぅぅん!」
男「あー、底の方に入れちゃったんだよなー」
ズボボボッ
ぬかど子「放置プレイされた上に奥までなんて……私…わたし……っ」
男「あれ? 抜けないな」
20:
ぬかど子「そんなぁ、私の中もういっぱいなのに……」
男「お、これかな? よっと」
ヌプ
ぬかど子「はあああぁんっ! だめぇ! めくれちゃうぅっ!」
ヌプヌプ
男「出た出た。よいしょ」
ズルッ
ぬかど子「あはあぁ──ん! はあ、はぁ……私の穴がぱっくりモノの形に……」
男「さてしっかりかき混ぜるか」
ぬかど子「やあっ! 出された穴にそんなにすぐにブチ込まないでくださぁいっ!」
男「お前を作った神に一発ブチ込みたいよ。拳を」
21:
クチュクチュ
男「うん、キュウリから出た水分がぬか味噌に混ざって良い感じだ」
ぬかど子「いやらしい音が、私からいやらしい音がでてるのぉ」
男「じゃあ明日の分の野菜を今漬けとこうかな」
ぬかど子「来てぇ……ご主人様ぁ……」
男「今日はナスにしよう」
ヌッ
ぬかど子「ああ……黒くてとっても太くて……」
男「これも近所の無人販売所のだ。無農薬有機栽培だってさ」
ズプッ
ぬかど子「おぉ──オーガニック!」
23:
男「そういやナスの発色を良くするには鉄を入れるんだっけか」
ぬかど子「はあ……んふぅ。こ、これ以上ナニを入れるんですか……?」
男「確か前に買っといたのが……あったあった」
ぬかど子「ナニを、ナニを入れられちゃうんですかご主人様ぁーっ!」
男「鉄玉子だ。食べ物の発色を良くしたり鉄分不足を補うのに使う調理器具だ」
ヌプッ
ぬかど子「おおうッ! 私の中、もうお腹いっぱいですう……」
男「美味しくなれよー。さて晩飯晩飯っと」
トントントン
男「今日は漬物と肉野菜炒めに味噌汁だ。いただきまーす」
ズズー ポリポリ……
ぬかど子「今日はどうですかご主人様?」
男「うん、昨日よりかは良い塩梅になってるな」
ぬかど子「えへへっ。良かったぁ!」
24:
これはかわいいぬかど子
25:
ピピピピピピピピ……
ぬかど子「おはようございます! ご主人様っ!」
男「んふぁ……はよ」
カチッ
ぬかど子「さあ! 新しい希望の朝ですよ! 喜びに胸を広げて二人の愛の結晶をつくりましょう! レッツ神聖な愛の営み!」
男「……ぬか床を人として扱っていいかどうかは甚だ疑問だ」
ジャー
ぬかど子「神様から人格を与えられてますから合ってますよー」
パカッ
男「よいしょ」
ぬかど子「さあどうぞご主人様!」
26:
グルグルグルグル
ぬかど子「んふあぁんっ! 朝から激しいですねご主人様あんっ!」
男「はいはい」
ズポッ
ぬかど子「んあ……あれ? もう抜いちゃうんですか?」
男「まあこんなもんだろ」
ぬかど子「昨夜のナスは出さないんですか?」
男「ああ。だって俺、朝はパン派だし」
ぬかど子「ガ──ンッ! ご、ご主人様の浮気者ぉ──っ!」
男「いやいやいや! 俺ずっと朝はパン一筋だよ!」
27:
ぬかど子「あんな白くてふにゃふにゃしたの、ご主人様にふさわしくありませんっ!」
男「お前は茶色くてズブズブじゃないか」
ぬかど子「ひーどーいー! 私のぬか漬けの方が絶対美味しいですーっ!」
男「まあそう言うな、試してみろ。ほれ」
ポイッ まぜまぜ
ぬかど子「わぷっ! ……ん? イケますねこれ!?」
男「だろ? 時間をかけて発酵させたパン屋の食パンだからな」
ぬかど子「むむ。しかしご主人様の認めた味とはいえ……」
男「パンってぬか床の水分や味の調整に使うんだよな」
ぬかど子「えっ? もしかしてご主人様、わざわざ私のために朝食にパンを……!?」
男「うん(まあ違うけど)」
ぬかど子「し、仕方ありませんねっ。私のためだと言うなら、朝食にパンは許してあげますっ!」
男「ありがと(口からでまかせ信じてくれて)」
28:
ガチャ
男「ただいまー」
ぬかど子「二人の愛の巣へようこそおかえりなさいませ、ご主人様っ!」
男「すみません間違えました」
バタン
ガチャ
男「ただいまー」
ぬかど子「ご飯にしますか? 和食にしますか? それともぬ・か・漬・け?」
男「……あんた誰?」
ぬかど子「あなたのぬか床ですよ?」
男「──なんで女の子の姿になってんの?」
29:
ぬかど子「ああ! これはですね。私のぬか床レベルがアップしたので、実体化出来るようになったのですっ!」
男「へー……(ちょっと可愛いじゃないか)」
ぬかど子「モデルはご主人様の漫画や肌色の多い本を参考にしました!」
男「あー! 本が散らかって部屋グチャグチャ! ……ん? 何か臭いぞ?」クンクン
ぬかど子「見た目は美少女ですけど、体を組成しているのはぬか味噌ですからね」
男「ひー! 漫画が! 秘蔵のコレクションからぬか味噌の匂いがぁー!」
ぬかど子「ああんっ……部屋が私の大事なところの匂いで満たされてる……んっ」
男「バカー! どんなに可愛くても体からぬか味噌の香る女と同居できるかーっ!」
ぬかど子「……私を捨てたら、ご主人様ももれなく香水要らずのぬか味噌アロマ漂う愛されボディになれますよ」
男「お前を寄越した漬物の神ってのは邪神じゃないのか……」
ぬかど子「ていうかご主人様ー、私のこと可愛いって思ったんですねー?」
男「見た目だけはな」
ぬかど子「うふふっ」
男「性格とか頭の中身は発酵してるみたいだけどな」
ぬかど子「……ぬか味噌ですから」
33:
男「あれ? 実体化してもぬか床の容器はそのままなのか?」
ぬかど子「ええ。一応こっちが本体です」
男「じゃあ今晩も混ぜるか」
パカッ
ぬかど子「あん! ご主人様ったら積極的!」
男「実体化して目の前にいられるとやりにくいな……」
ぬかど子「どうぞどうぞご遠慮なさらずぐるんぐるんかき回しちゃってください! はあん! ご主人様に私の中見られちゃってるよぉ………」
男「お前はもっとリアクションをご遠慮しろ」
ズボッ
ぬかど子「はひいぃん! ご主人様の太くて固いのが半日ぶりにー! お久しぶりですご主人様ー!」
男「ちょっと発酵が進みすぎてるのかな……」
グニグニ
ぬかど子「んふうぅっ! 意思を持ったように私の中で暴れん坊将軍してますぅー!」
男「昼間テレビの再放送でも見てたのかお前」
34:
男「よし。昨日のナス、漬かってるかな」
ヌプ
ぬかど子「んっ……はぁ、ふといぃ……ふ、太すぎるぅ……」
ヌプヌプヌプッ
ぬかど子「お願いです! もっとゆっくり……でないと私、わたしい……」
スポン
ぬかど子「はあぁぅーん」
男「はいはい混ぜ混ぜ」
くにゅくにゅ
ぬかど子「出したばっかりの敏感ホールいぢっちゃいやあ……ご主人様のえっちぃ」
男「股間押さえながらこっち見て実況するのやめい! てかなんでぬか床にしたことがお前に伝わってんだよ!」
ぬかど子「だから一応そっちが本体なんですよう」
男「てかお前ぬか床のくせに感覚あるのか?」
ぬかど子「ありますよー。私が今どんな感覚か知りたいなら、ご主人様の後ろに手を突っ込んで奥歯ガタガタいわせましょうか?」
男「わかったからやめて」
36:
ぬかど子「ご主人様、今日は何を漬けますか?」
男「そうだなー、大根と人参いってみるか」
ぬかど子「二本挿しっ!? ご主人様大胆ですっ!」
男「ちょっとデカいから細かくしよう」スットントン
男「いくぞー」
ヌプ ヌププッ
ぬかど子「んほおおぉーっ! 赤くて固いのと極太で固いのが中で擦れ合ってあぁぁぁッ──!」
男「ちゃんと漬かれよー」
ぬかど子「はあはあ……んふぅん、クセになりそうですご主人様ぁ……」
37:
トントントン グツグツ
男「今日は根菜と鶏肉の煮物に大根サラダ、味噌汁だ」
ぬかど子「私の中で漬かったナスもよろしくです!」
男「……いただきます」
ズズー モクモク……
男「うん、良く漬かってるわ。色も鮮やかだし」
ぬかど子「いやっほぉーウ! ご主人様にぶち込まれたのが私の中で育ってこんにちは! 美味しいは嬉しい、私ハッピー! やったぜ私!」
男「ちょっと発酵しすぎてるかな(頭が)」
38:
ピピピピピピ……
ぬかど子「おはようございますご主人様っ!」
男「zzz……」
ぬかど子「ご主人様? ……これはチャンスですかねぇ……えい」
ピピピ……カチッ
ぬかど子「んちゅー──」
男「……ん? うわッ! ぬか味噌臭ェ!」
ぬかど子「ご主人様ー、私はぬか床ですからぬか味噌臭いのは当たり前なんですけど、そうあからさまだと乙女心が傷付いちゃいますよー」
男「おはよう。今日も爽やかな朝だな。部屋がぬか味噌臭い以外は」
ぬかど子「キングオブ難聴とか唐変木オブ唐変木って言われたことないですか?」
男「ああ、お前、性別女なのか。何でそんなとこまで設定したんだ漬物邪神は」
40:
ぬかど子「さあご主人様!」
男「はいはい」
パカッ ズブッ
ぬかど子「んむほおおぉーん! 朝から一発目のあちゅあちゅ極太ご主人様きましたワあぁぁ──っ!!」
コネコネ
男「朝から絶好調だなおい」
まぜまぜ
ぬかど子「はあ、はあん……ふぅ。あら、今日の朝食はパンと……?」
男「ヨーグルトだ。そういやヨーグルトの乳酸菌もぬか味噌に良いとか聞いたな」
ぬかど子「ご主人様、私のために……」
男「はいはい、じゃちょっとぬか床に入れてみようか」
ポトッ
ぬかど子「ひゃんっ! 白くてドロッとしたの入れられちゃいましたぁ……」
男「脳味噌までぬか味噌だと人生楽しそうだな」
41:
大家「あら、おかえり」
男「あ、こんばんは」
大家「……ねえねえ、彼女でもできたの?」
男「いえ……どうしてですか?」
大家「だってここんとこ毎日、女の子と楽しそうに話してる声がするから」
男「あ……(しまった聞こえてたのか)」
大家「もし一緒に住むんなら、早いとこ教えなさいよねー」
男「はあ。その時はよろしくお願いします(もう住んでます……ぬか床が)」
42:
ガチャ
男「ただいまー」
ぬかど子「おかえりなさいませご主人様ー! 私しかできないご主人様のお迎えのやり方を一言で表現します!」
男「なんだ?」
ぬかど子「お・つ・け・も・の。お漬物」
男「なんかムカつく」
ぬかど子「ひーどーいー!」
男「ちょっと静かにしろよ。大家さんとかに彼女と同棲してるんじゃって思われてるみたいだから」
ぬかど子「なんと! 大家さん公認ですか! 大家さんといえば親も同然。親の承諾を得たら婚姻届を提出しましょうそうしましょう」
男「いやあのな」
ぬかど子「でもご主人様が形式に縛られたくない! と言うのでしたらこのままでも良いですよ。でもいずれはちゃんと形にして欲しいですねー」
男「いやあの」
ぬかど子「将来はぬか付きのぬか味噌色の家に住んで、ぬか味噌色の犬を飼いましょう。そして私達の愛の結晶、ぬか漬けに囲まれて暮ら……」
男「話聞けよ」
ズビシイッ
43:
ボロボロッ
男「のわーっ! 体がく、崩れたーっ!」
ぬかど子「あーあ、突っ込み入れられたところが無くなっちゃいました」
男「何? 何でお前こんなに脆いの?」
ぬかど子「私の体はぬか味噌で出来てますからねえ。ご主人様、女の子はデリケートなんですから優しく扱わなきゃダメですよ?」
男「俺が悪かった! ……これ元に戻るの?」
ぬかど子「戻りますよ。ほら」ヒュンッ
男「ああ、良かった」
ぬかど子「ぬかが少し減っちゃいますけどね……ご主人様、ボディタッチは24時間OKですけど、くれぐれもソフトにお願いしますねっ」
男「俺、お前の本体、毎日力一杯かき混ぜてるぞ」
ぬかど子「いやん! そういう事はもっと雰囲気を大事に……ご主人様、したいんですか? ちらっ」
男「ぬか味噌かき混ぜるのにふさわしい雰囲気ってどんなのだよ。学校じゃ教えてくれないぞ」
44:
男「まあいいや。手を洗って始めようか」
ぬかど子「はいなー」
パカッ
男「大根と人参漬かってるかなー」
ズボッ
ぬかど子「ひいッ!」
スポポーン
ぬかど子「んおおぅーっ! ……ご主人様、もっと優しくぅ。二本一気には体がもたないですよぅ」
男「あれ? 野菜から水分出すぎて水が溜まってるな」
クチュクチュ
ぬかど子「恥ずかしいっ! 私のクレヴァスからおつゆが滲み出てるの見ないでーっ!」
男「このままだとぬか味噌が悪くなりそうだな……キッチンペーパーで吸いとるか。よっと」
ジワッ
ぬかど子「あぁっ! 恥ずかしい染みが……ジュンジュワーッってできちゃったぁ……」
45:
男「さて、今晩も頑張ってかき混ぜるか。よいしょ」
くちゅっくちゅっ
ぬかど子「ああ……また溢れて……」
男「うーん、まだ湿り気が多いかな……じゃ今日漬けるのは……」
ぬかど子「はい……ぬ、濡れてる私のここに……ご主人様の……を……」
男「干し椎茸だ」ヌッ
ぬかど子「はあ……カサの張った立派なキノコが……私の……に」
男「水分を吸い取るのと、ぬか床に旨味を補充できるので一石二鳥だな。大家さんからの貰い物だ」
ズプッ ズプッ ズプッ
ぬかど子「はうんッ! 一気に3本も……っ! 私の中でカサが開いて、おっきくなっていくのがわかりますぅ……」
男「そりゃ良かった」
46:
ストトントン
ぬかど子「ご主人様、今日の晩ごはんは?」
男「あー、今日はビール買ってきたから、先に漬物つまみにしながら飲むわ」
プシュッ
男「んっ、んくッ──ふー。今日の俺、一日お疲れさん」
ぬかど子「ご主人様ぁ……」
男「はいはいぬか漬けね」ボリボリ
ぬかど子「どうですか?」
男「うん、ちゃんと漬かってる。ちょっと酸っぱいけど、飲みながらだし気にはならないかな。ングッンッ」
ぬかど子「そうですか……じー」
48:
男「ふぅー……ん? なんだ? もしかして飲みたいの?」
ぬかど子「はい! ご主人様が美味しそうに飲んでるので気になりますっ」
男「……お前、歳いくつ?」
ぬかど子「ご主人様……女の子に年齢の話題なんて、お酒の席でも許されないですよー」
男「ごめん、俺がバカだったわ(ぬか床に聞いたのが間違いだな)。はいよ」
ぬかど子「わーい! いただきまーす! ……んくっんくっ」
男「おー、良い飲みっぷり」
ぬかど子「──ふー。苦いけどのど越しが良いですね! そういえばビールっで酵母がばだらいでるがら゛ぬ゛がどごに゛も゛い゛い゛っ゛ででるぇーびぃーどぅぇーいやぁーどうえあぁぁぁぁー 」
男「ギャー! 溶けてる! お前体溶けてるぞ──!!」
ぬかど子「あ゛あ゛ぁーじま゛っ゛た゛あ゛ぁぁぁー」
男「そうだよな! お前の体ぬか味噌だもんな! そりゃ溶けるよな!」
ぬかど子「す゛ーびーばーずぅぇーんぐおぉぉぉーん」
男「しゃべらなくて良いから! 早く体を再生してくれーッ!」
49:
ピピピピピピピ
男「うーん……うぅ──ん……」
ぬかど子「おっはよーございまーす! ラブリーベイベー私のご主人様ぁー! ……ご主人様?」
男「んっ……来るなぁ……来ないでくれぇ……」
ぬかど子「うーん、これは……」
ピピピピピ カチッ
ぬかど子「目覚めのキッスチャンスですね! んちゅ──」
男「う、うわあぁぁーっ! 来るな! 妖怪アゴ無し女あぁーッ!!」
ガバッ
ぬかど子「ちッ、残念……おはようございますご主人様。朝ですよ」
男「ハア……ハアッ……酷い夢だった」
ぬかど子「うなされてましたね。ご気分は大丈夫ですか?」
男「ああ……昨夜あんなスプラッターを見て悪酔いしたせいかな……」
50:
ぬかど子「ご飯はどうされますか?」
男「う……いらない……調子悪いから午前中は休む……」
ぬかど子「……そうですか。確か冷蔵庫にスポーツドリンクがありましたね……あったあった。どうぞご主人様」
男「うん……んぐっ」
ぬかど子「何か私にできることありますか?」
男「……悪いんだけどしばらく一人で休ませて欲しい」
ぬかど子「……わかりました。ご用ができたら呼んでくださいねっ!」
ヒュンッ



男「ふー、だいぶ気分は楽になったな。そろそろ出かけ……ん? このメモは……」ペラッ
ご主人様へ
具合はいかがですか?
昨夜はお手数かけてしまってごめんなさい
私も少し休ませていただきますね。お見送りができなかったらすみません
お気を付けていってらっしゃいませ
ぬかど子
男「…………」
51:
ガチャ
男「ただいま」
パタパタ
ぬかど子「ご主人様、おかえりなさいませ」
男「うん」
ぬかど子「……お加減はどうですか?」
男「ああ、もう大丈夫だ」
ぬかど子「そうですか。良かったです」
男「……心配、かけたな」
ぬかど子「えへへっ。ご主人様が元気ならそれでいーんですっ!」
男「お土産だ」
ドサッ
ぬかど子「あら? 私にですか?」
52:
男「ああ。ほら」
ぬかど子「ありがとうございますっ! ……これはぬかですね」
男「昨日だいぶ減ったからな。補充用にと思って」
ぬかど子「すみません……私のせいなのに気遣ってくださるなんて……」
男「……もう一個あるぞ」
ぬかど子「え!? ……こ、これは!」
ガサガサ
男「常滑焼の甕だ。いつまでもプラスチック容器のぬか床なのもなんだしな」
ぬかど子「私……ご主人様のお側にこれからも居られるんですね……うッ」
男「泣くなよ」
ぬかど子「なっ、泣いてません! これは野菜から出た水分ですっ!」
53:
男「……じゃあ甕を洗って良く拭いて、と」
ぬかど子「わくわく」
ザパー キュッキュッ
男「まずプラスチック容器の中のものを全部だそう。よいしょ」
ぬかど子「んぁ……最初にいれた昆布と唐辛子、それに鉄玉子と椎茸ですね」
男「ぬかを甕に移し替えて、ぬかと塩を足さないと……よっと」
ぬかど子「私の中身が増えてきましたよっ」
男「よく混ぜて……うん、これくらいでいいかな」
カポッ
ぬかど子「あれ? 今日は何も入れないんですか?」
男「うん。昨日の大根と人参がちょっと酸っぱかったから、新しいぬかとしばらく馴染ませた方が良いと思って」
ぬかど子「じゃあしばらくお休みですか……」
男「漬けてなくても毎日ちゃんと手入れはするよ」
ぬかど子「えへへー」
54:
パァアアアア──
男「ん? なんだこの光は!?」
ぬかど子「おぉ──体にみなぎってくるこの力は──」
男「どうした?」
ぬかど子「私のぬか床レベルがアップしましたっ!」
男「おお。……この間は実体化したけど、今度はどうなるんだ?」
ぬかど子「はい! 特に何も変わりません!」
男「それレベルアップって言うのか……」
ぬかど子「ただし耐久性が上昇しました。日常生活で崩れたり溶けたりしません」
男「そりゃ良かったな」
ぬかど子「はいっ! これで食べたり飲んだりご主人様に触ったりできますっ!」
ギュッ
55:
男「お、おい……」
ぬかど子「えへへへー。体組成も変化しましたから、今の私からは良い匂いがしますよー」
男「え……?」クンクン
ぬかど子「どうですか?」
男「なんか甘い匂いだ……」
ぬかど子「へっへへー。更には触り心地も格段にアップ!」
男「知らん」
ぬかど子「至るところがフカフカですよ? もっとタッチしても良いんですよ? ご主人様ならオールオッケーです! やんやんっ!」
男「……他には?」
ぬかど子「……後は少し離れた所までなら移動が可能です。近所におつかいくらいはできますよ」
56:
男「へー、大した進歩だな」
ぬかど子「ありがとうございますご主人様。全部ご主人様のおかげです」
男「俺は特に何もしてないよ」
ぬかど子「いえ。手間のかかる私を、一から大事に育てて手入れをしてくださったのはご主人様ですから」
男「まあ自分のぬか床だしな」
ぬかど子「私はとっても幸せ者です」
男「そうか」
ぬかど子「……」
男「……飯にするか」
ぬかど子「……そうですね!」
59:
ちょっとぬか買ってくる
60:
男「今日は出来合いので簡単にすまそう」
ぬかど子「スーパーのメンチカツにサラダ、味噌汁と干し椎茸のぬか漬けですね」
男「お前の分もできるけど本当にいらないのか?」
ぬかど子「私は飲食が可能というだけで、必須ではないですから。ぬか床が手入れされてれば大丈夫です!」
男「そっか。じゃあいただきます」
もくもく……
男「うん、うまい。干し椎茸にほど良く味が染みてて結構いけるな」
ぬかど子「うまく漬かってて良かったですっ。ご主人様はぬか漬け名人ですねっ!」
男「それは褒めすぎだろ」
ぬかど子「そんなこと無いです! このまま精進すれば、漬物神様認定・ぬか漬けマイスター検定1級合格間違いなし!」
男「邪神の認定なんて受けたくないぞ」
ぬかど子「次の試験日は56億7千万年後です」
男「地球あるかな……なあ、ちょっと聞きたいんだけど」
ぬかど子「はいっ! 私の趣味はご主人様のお世話とぬか漬け! 好みのタイプはご主人様! 下着の色はクリーム色ですっ!」
男「そうじゃない……俺、お前には余計なお世話しかされてないような」
62:
ぬかど子「うわーん!」
男「ああもう……俺が聞きたいのはだな、体が丈夫になったなら自分でぬか床の手入れしたり漬けたりできるんじゃないの? ってことなんだが」
ぬかど子「えっとですね。私の実体化は、ご主人様の愛情によるお手入れの賜物なんです。そしてぬか床レベルはご主人様にしか保てません」
男「自分で自分の世話はできないのか。結構不便なんだな」
ぬかど子「できない事はないんですが、ぬか床レベルに蓄積された愛情ゲージを著しく消費するので出来れば避けたいですね」
男「ゲージが無くなるとどうなるんだ?」
ぬかど子「ご主人様の体からぬか味噌フレグランスが出てきて楽しめます。一生」
男「やっぱり邪神の呪いじゃねーか!」
ぬかど子「ご主人様の生活に支障が出るのは私も困ります。なので私自身はご主人様のお世話をして、ぬか床を大事にしてもらえるようにするんです」
男「それが漬物神の目的ってやつ?」
ぬかど子「そうですね。ぬか漬けを大事にする人のサポートです」
男「神の気まぐれで働かされるのも大変だな」
ぬかど子「いいえー。ご主人様がお相手ですから毎日楽しいですよっ!」
63:
ピピピピピピピ
ぬかど子「おはようございますご主人様!」
カチッ
男「おはよ」
ぬかど子「ご主人様、今日のご予定は?」
男「んー、今日は休みだし駅前で散歩がてら買い物でもしようかな」
ぬかど子「そうですか。楽しんできてくださいね」
男「……お前も来る?」
ぬかど子「良いんですかっ!?」
男「あ、駅前まで行けるか? もっと近場でも……」
ぬかど子「そのあたりなら多分大丈夫ですっ! ご主人様とお出かけーお出かけー! 嬉しいなーっ!」
男「じゃあ飯とぬか床の手入れ終わったら支度するか」
64:
ぬかど子「おー、ここが外の世界ですかーっ!」
男「そんなに珍しいか? お前、俺のいない昼間にテレビやネット見てたんだろ?」
ぬかど子「いやー、実際に経験するのとはやっぱり違いますよー……にしても、さっきから人に見られているような?」
男「あー……お前見てくれだけは良いからな」
ぬかど子「なるほど。まあ外見を努力して磨くのは女の子の甲斐性ですからね」
男「努力? 漫画とかグラビアで見て化けただけなんじゃ?」
ぬかど子「"だけ"ってなんですかっ! ご主人様に気に入って欲しくて、他にもご奉仕や愛の営みも頑張ってるのにーっ!」
男「わー! お前のぬか味噌の漬かり具合は良いよなっ! わかってるからこれ以上注目を集めないで!」
ぬかど子「わかればいーです……ところでご主人様、何か欲しい物あるんですか?」
男「うーん、まずはブラブラ見て回ろうか」
ぬかど子「ブラジャー×2を……そういうご主人様も嫌いではないですが……」
男「ちげーよ。脳神経までぬか味噌製なのかお前は」
ぬかど子「イッツジョーク! ピクルスジョークデース!」
65:
男「おっ、この服良いな」
ぬかど子「ご主人様にはこっちのアースカラーの方が似合いますよ!」
男「そうか?」
ぬかど子「これとかこれとか」
男「……辛子色とか黄土色とか、アースカラーってよりぬか味噌っぽい色ばっかりだな」
ぬかど子「あ、これなんてどうです。黄櫨染」
男「なんで置いてあるんだ……」
ぬかど子「ご主人様、結構ワガママですね」
男「いやー、お前には及ばないよ」
66:
男「お前の服は買わなくて良かったのか?」
ぬかど子「いくらでも変身で替えられますからね。今日いろいろ見たので、変身できる服のバリエーションも増えましたよ!」
男「便利な上に懐に優しいな」
ぬかど子「あ、ここも参考のために見たいですね」
男「ランジェリーショップ……」
ぬかど子「それともあっちのお店にしましょうか。セーラー服とかメイド服なんかがいっぱいあるみたいですよ」
男「あのー、俺からかわれてますか?」
67:
男「さて、何を食べようかな」
ぬかど子「ふわあー……このファミレスというところは、メニューがいっぱいあるんですねえ」
男「よし、俺は和風ハンバーグのライスセットとドリンクバーにしよう」
ぬかど子「うーん……じゃあ私はなんとなく気になった、ミックスフライのセットとドリンクバーにします」
男「気になった?」
ぬかど子「ミックスという言葉にシンパシーを感じるんです……ご主人様のアレが私の中をミックスして、やがて二人の愛の結晶が育って……あぁんっ!」
キンコーン♪ キンコーン♪ キコキコキコキンコーン♪
男「店員さーん、早く来て俺を助けてー!」
69:
ぬかど子「ご主人様、飲み物は何にしたんですか?」
男「アイスコーヒーだけど……お前のコップの中身、すげえ色だな。そんなのドリンクバーにあったっけ?」
ぬかど子「これはいろんな飲み物をミックスしたオリジナルドリンクです」
男「あー。俺も中学生くらいまでは良くやったな」
ぬかど子「名付けて『宵闇の炎帝が刹那に放ちしぬか味噌色の甘露』!」
男「中2病かよ」
ぬかど子「一口どうぞ」
男「やだよ、そんなぬか味噌フレーバーっぽいの」
ぬかど子「これさえ飲めば契約完了……貴方も魔界で永遠に生きられるのに……フッ、残念だわ」
男「現実世界へ帰ってこい」
70:
男「おっ、このアーティストのCD初めて見たな」
ぬかど子「ご主人様はどんな曲がお好きなんですか?」
男「最近はジャズかな。くつろぎたい時にたまに聴くぞ」
ぬかど子「へー。あ、このクラシックのCD良いですね」
男「ん? お前こういうの好きなの?」
ぬかど子「いえ『赤ちゃんのための胎教CD〜感受性を育てるクラシック〜』だそうです。二人が愛し合ってできたぬか漬けのために……」
男「断る」
ぬかど子「ではこっちの『メイドに死ぬほどご奉仕されてご主人様が寝不足になるCD』にしましょうか。毎日聴かせればきっと献身的なぬか漬けが……」
男「そこから離れろ。そして漬物なら味の方でご奉仕してくれ」
71:
男「結局飯食って適当にうろついただけだな」
ぬかど子「ご主人様と一緒ならどこにいても楽しいですよー……あっ、これかわいい」
男「アクセサリー? お前、漬物用の鉄以外の光り物に興味あったの?」
ぬかど子「ご主人様……一応私、女の子ですから」
男「はいはい。欲しけりゃ買ってやっても良いぞ」
ぬかど子「本当ですか!?」
男「300円以内で」
ぬかど子「遠足のお菓子の予算ですかー!?」
72:
ぬかど子「んふふー。むふふー」
男「2000円の指輪でずいぶん浮かれてるなあ」
ぬかど子「値段は関係ないですねー。うふっふー」
男「安上がりなぬか床だな」
ぬかど子「はい! ご主人様限定お買い得キャンペーン大絶賛開催中ですっ!」
男「誰が大絶賛したんだ誰が……」
ぬかど子「……ご主人様、今日はありがとうございます。とっても楽しいです」
男「俺は特に何もしてないよ」
ぬかど子「ええ。だから楽しいんです」
男「俺もお前といると退屈しないな」
73:
ぬかど子「……ありがとうございます。私、毎日大事に手入れしてくれるご主人様に感謝してます」
男「ああ、まあ自分のぬか床だし」
ぬかど子「毎日かき混ぜられてればどんな方か解ります。私を育ててくれるご主人様が優しい人で良かったです」
男「ああ……」
ぬかど子「私、ご主人様が好きです。大好きです」
男「…………」
ぬかど子「…………」
ピリリリリリッ ピリリリリリッ
男「あ、悪い。電話……」
ぬかど子「は、はい! どうぞっ!」
男「……もしもし。……うん、うん……えっ!?」
74:
男「よし、出掛けるか」
ぬかど子「行ってらっしゃいませ、ご主人様」
男「田舎の不幸の手伝いなら2、3日で帰れるよ」
ぬかど子「はい。その間、私はこの冷蔵庫でお休みしてますね」
男「多分明後日には戻るから」
ぬかど子「お待ちしてます」
男「じゃあ行ってくるわ」
ぬかど子「お気を付けて」
パタン
ぬかど子「……さて、愛しいご主人様を夢の中でお待ちしますかね………」
……バタン……ガチャリ
ぬかど子「ご主人様………すやすや……」
76:
ピリリリリリッ ピリリリリリッ
男「はい。もしもし……ええ、大丈夫です大家さん…………はあッ!? ……わかりました。すぐ帰りますから詳しい話はまた」
ピッ
男「家が、火事……」
78:
タッタッタッタッ
男「はあ……はあっ」
大家「あ、帰ってきたのね!」
男「ハア、ハア……ど、どういう事ですか!」
大家「……隣の家から出火してね。一番近かったあなたの部屋の被害が……」
サクッ サクッ
男「……台所が!」
大家「台所以外はだいぶ損傷が軽いけど……」
男「冷蔵庫!」
バカッ! ……ドサッ
男「っ!」
大家「ここは火元に近くて激しく燃えたみたいで」
男「ぬか床! ぬか床はっ……あった!」
79:
カパッ
男「……中身はかなり水分が飛んで干からびてるな」
大家「火が強かったみたいだから……」
男「おい……俺だぞ。帰って来たぞ。聞こえてるか? ……ダメか」
ザッ……ザッ
男「くっ、表面がボロボロ崩れて……」
ザッザッザッ……
男「中は……まだ無事だ! プラスチックじゃなくて甕にしておいて良かった……」
大家「……これからどうする? 当てが無いなら、私の持ち家に空き物件あるからおいでなさい」
男「そうさせてください……」
80:
男「本当に助かりました。引っ越しの手配に家具まで譲ってもらって……」
大家「台所以外は被害が軽くて、貴重品が無事だったのは不幸中の幸いね……とりあえずは大丈夫そうかしら?」
男「はい。保険に入っておいて良かったです。この新しい家でも何とかなると思います」
大家「じゃあ何か困ったらいつでも言ってきてね」
男「ありがとうございました」
バタン
男「……さて、まずは……ぬか床の再生だな」
82:
男「……何でダメなんだ!? どうして何度やっても全然巧くいかないんだよ!」
ゴクゴク
男「……クソッ! ……残ったのを種ぬかにして新しくぬかを補充しても、全部悪くなっちまう!」
ゴクッゴクッゴクッ
男「ブハァー……」
ピーンポーン
男「……はーい」
ガチャ
大家「こんにちは……大丈夫?」
男「ええまあ……あの、何か?」
大家「焼け跡の改装工事をしててね。で、工事中にそこで……これを見付けたの」
キラッ
男「指輪……」
83:
大家「もしかしたらあなたの大事なものじゃないかと思って」
男「……はい、そうです……わざわざありがとうございました」
大家「そう。良かったわ──じゃあね」
バタン
男「……」
男「おい、出てきても良いんだぞ」
男「早く出てこないと知らないぞ。種ぬかも残り少ないし」
男「いい加減、何度もぬか床作るのも飽きてきたんだからな」
男「残りの種ぬかからしてこれで最後かな。だから出てこいよ」
男「一人にしたから怒ってるのか? 悪かったよ。ごめんな」
男「ぬか漬け食いてえなあ……これで最後だ。ダメならもう二度とぬか漬け食わないよ」
男「……」
男「──好きだよ」
84:
ぬかど子死んじゃうん(´・ω・`)
87:
ガチャ
男「ただいまー」
男「おかえりー。ご飯にする? お風呂にする? それとも」
ぬかど子「わ・た・し?」
男「……遅いぞ」
ぬかど子「主役は遅れてやってくるものですよー……ところでご主人様」
男「ん?」
ぬかど子「私のこと好きなんですよね? 私達両想いなんですねっ!?」
男「ああ、好きだよ」
ぬかど子「イヤッホォ──イッ! じゃあ今から役所で婚姻届を! 家族が増えるよやったね漬物神様! あ、新婦側の証人は大家さんに頼みましょうかねっ!?」
88:
男「ぬか漬けが」
ぬかど子「…………はいぃ? えーっと私の耳にぬか味噌が詰まったんですかねぇ。ほじほじ。ご主人様、ワンモアプリーズ」
男「好きだよ、ぬか漬けが」
ぬかど子「ご主人様ー、ここまできてそれは無いですよー。無いですよー」
男「黙れ。待たせてくれた分、落とし前はつけてやるぞ」
ぬかど子「うー……ごめんなさい」
男「じゃあ野菜買ってくるか」
ぬかど子「あんッ! 久しぶりの私に耐えきれないなんてせっかちなご主人様! やんやんっ!」
男「うん順調に頭まで発酵が進んでるな」
ぬかど子「私、ぬか床ですから」
男「……おかえり、ぬかど子」
ぬかど子「はいっ! ご主人様専用ぬか床ぬかど子、ただいま帰還しました! 今日もご主人様のモノでズコバコかき回して欲しいですっ!」
─完─
90:
おつおつ
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