いろは「せんぱーい、そろそろ千葉ですよー。起きてくださーい」back

いろは「せんぱーい、そろそろ千葉ですよー。起きてくださーい」


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1:
いろは「…あれ?もしかして比企谷せんぱいですか?」
いろは「せーんぱい♪」八幡「………」ペラ、ペラ
の続きです
では、投下していきます
2:
八幡「………ん」
いろは「やっと起きた?。なかなか起きなくて困りました」
八幡「………」ボー
いろは「まだ意識起きてないですねー。ほら、せんぱいの愛しの千葉ですよー。帰ってきましたよー」
八幡「ああ。……すげえ久しぶりだ千葉。愛してるわ」
いろは「てきとうだなー…。ねーせんぱいせんぱい、私は?」
八幡「一色いろはだろ」
いろは「……いや、そうじゃなくてですね。てかせんぱい、わざと言ってますよね絶対」
八幡「まあな。降りるぞ、一色。俺の実家行くんだろ」
いろは「相変わらずなかなかデレてくれないせんぱいだなあ…。はーい、ちょっと待ってください」
3:
八幡(一色と付き合い始めて、一年近く経った)
八幡(付き合うといっても、特に今までと大きな変化があったかというと。そうでもない)
八幡(バイトが終わったら俺の部屋に一色が来て、何をするわけでもなく、だらだらする)
八幡(漫画読んでたり、レポートやってたり、映画観てたり。日曜の朝なんかは一緒に起きてアニメを見てたりするしな)
八幡(自分でも意外なほど、しっくりくる。こいつといると)
八幡(時々。今の俺を冷めた目で見てくる、昔の俺が出てきたりもするが)
八幡(それでも、続いている。きっと、一色のおかげだったりするのだろう)
4:
―――千葉県千葉市、比企谷家付近
八幡「久しぶりに人ごみの中歩いたせいで疲れたわ……」テクテク
いろは「私たちの大学かなり田舎の方ですもんね?。駅の前にあんなに人がいるの久しぶりに見ました」テクテク
八幡「やっぱ千葉すげえわ。さすがマイ故郷」テクテク
いろは「その故郷でこんなに疲れてるんだから、せんぱいも田舎に染まりましたねー。あ、先輩の家ってあとどのくらいですか?」テクテク
八幡「もう5分もかからんぞ」テクテク
いろは「マジですか。……せんぱい、ちょっといいですか?」ピタ
八幡「なんだよ」ピタ
5:
いろは「……ちょーっとそこの公園行きません?」
八幡「あ?休憩ならいいだろ、もうあと少し歩けばゆっくりできるぞ」
いろは「いや、そうじゃなくてですね。……ちょっと。おねがいします、行きましょー」テクテク
八幡「おい。…なんだよ」テクテク
6:
―――比企谷家近くの公園
八幡「で、どうしたんだよ」
いろは「………ねーせんぱい、ちゅーしてください」
八幡「はあ?アホになったのかお前は。こんな時間のこんな場所で欲情すんな」
いろは「えー違いますよ」
八幡「えーじゃねえ。……だいたい、キスなら今朝あっちを出る前にしただろうが」ボソッ
いろは「そうなんですけど?」
八幡「だろ。話は終わりな、行くぞ」
いろは「…でも、今日から2日間、二人きりになれないじゃないですか」
八幡「ああ。……それが?」
いろは「その間、いちゃいちゃできないじゃないですかー」
八幡「そのくらい我慢できるだろ、お前」
いろは「むりですよー…。ねえせんぱい、おねがいします」
八幡(そう言ってこっちを見上げる一色の顔を見て、やっと気付いた)
7:
八幡「お前……緊張してるのか」
いろは「……あは、ばれちゃいました?」
八幡「まあな。つうか、意外だな。コミュ力の化物と呼ばれるお前が、初対面の人間に会うからってそんな緊張するのは」
いろは「言っておきますけど、そのよく分からないあだ名で呼んでくるの先輩ぐらいですからね。……だって、せんぱいの両親と会うんですよ?」
八幡「まあ、そりゃな」
いろは「嫌われたらって考えると、近づくうちにだんだん緊張しちゃって。ていうか、彼氏の母親に初めて会うときに緊張しない彼女なんていませんよー」
八幡「はあ」
八幡(メイクがいつもより更に薄かったり、いつもゆるふわ系(笑)が多い服装が今日は大人っぽくなってたりするのはそういうことか)
8:
いろは「分かったような分かんないような顔しないでください。……せんぱいが私のお父さんと会うとき考えてみてくださいよ」
八幡「…………なるほど」
八幡(無理だわ、その状況。逃げるわ)
いろは「それになんか、婚約前の挨拶みたいだし……わあ」
八幡「自分で言って自分で照れるなバカ。それに婚約してねえだろ」
八幡(俺も照れるから。……主に、右ポケットに入れてある小さな箱が理由で)
いろは「もー。いいですから、分かったなら、勇気ください。はい、ちゅー」
八幡「………」
いろは「今なら誰もこの辺通ってませんよ、はい、ちゅー」
八幡「……しょうがねえな」
いろは「んっ……」
9:
いろは「ふー。じゅーでんかんりょーです。どもでした」
八幡「………おう」
いろは「せんぱいって未だにちゅーするときちょっと照れますよね?。かーわいー」ニヤニヤ
八幡「二度としねえぞバカ後輩……。舌まで入れてきやがって」
いろは「あは、ついべろちゅーしたくなっちゃって。ごめんなさい」ニコニコ
八幡「はあ……エロ後輩が。行くぞ」テクテク
いろは「はーい」テクテク
10:
―――実家、比企谷宅
ガチャ、…、バタン
八幡「ただいま」
いろは「お邪魔しまーす」
バタン、トコトコトコトコ
小町「おっかえりー、お兄ちゃん久しぶり。うわ、ほんとに彼女連れてきてる!小町的にすごいポイント高い!」
八幡「疑ってたのか……」
八幡(兄の彼女の存在を疑う小町、八幡的にポイント低い)
小町「ちょっとだけねー。一色先輩、お久しぶりです。比企谷家へようこそ!」
いろは「小町ちゃん久しぶり?。ありがとー。小町ちゃんに会えるの楽しみだったよー」
小町「小町もです!今日は自分の家だと思って気楽に過ごしてくださいね?」
いろは「うん、ありがとー」
11:
八幡「……玄関で立ち話ってのもなんだろ、上がろうぜ。小町、今日は親父と母さんいるのか?」
小町「んーん、今はいないよー。でも今日は早めに仕事切り上げて夕方には帰ってくるって」
いろは(そうなんだ…ホッとしたような逆にもっと緊張するような)
八幡「そっか。ほら、一色もあがれよ」
いろは「あ、はい。お邪魔します」
小町「いらっしゃい、一色先輩」ニコ
12:
―――比企谷宅、リビング
小町「いやー、それにしてもお兄ちゃんがホントに一色先輩を彼女として連れてくるなんて。電話で聞いた時は信じられなかったです」
一色「あはは、そうだったんだ?」
小町「このヤニいちゃん、この前のお正月帰省しなかったんですよ。小町成人式だったのに。それに、近況報告の電話とかも全然してくれませんし。だからほんとビックリでした」
八幡「この前は卒研の準備に追われてそんな余裕なかったんだよ、あとヤニいちゃん言うな」
いろは(ごめん小町ちゃん、年末年始は私がわがまま言って二人で過ごしてた…)
小町「ねえ、お兄ちゃんが去年のお盆に帰省したときって、お兄ちゃん達もう付き合ってたの?」
八幡「まあ……」
いろは「付き合ってたよー」
13:
小町「へー、そうだったんですか?。このゴミいちゃんはなんで話さないかなあ……」
八幡「うるせ。今回はちゃんと話しただろうが」
小町「帰省する一日前にね。昨日とかお父さんとお母さん凄いびっくりしてたよ、お父さんなんか慌てて美容室行ってたし」
いろは(なにそれパパさん可愛い)
八幡「親父……はしゃぎすぎだろ」
小町「しょうがないよ、お兄ちゃんが家に彼女連れてくるなんて初めてだし」
八幡「まあ、な」
14:
小町「それにしても、なんか信じられないです。やっぱり。あの学校中の人気者だった生徒会長が、お兄ちゃんなんかの彼氏なんて。小町達の代なんて、未だに一色先輩のファンがいるんですよ?」
いろは「そうなんだー、もう私高校卒業してから3年ぐらい経つのにね」
小町「ですよ、同窓会とかで集まった時よく話題になりますもん」
八幡「同窓会……知らない言葉だな」
小町「ゴミいちゃんは呼ばれても行かないだけでしょ……。いつもお兄ちゃんに確認した後、葉書きの行かないに○付けて出してたの小町なんだよ?」
いろは「うわー想像できる。同窓会って単語を見てすぐに返信するせんぱいが」
八幡「行っても話すことなんかねえしな」
いろは「……そーですか」
15:
いろは(奉仕部の先輩方と、やっぱり疎遠になっちゃってるのかな)
いろは(知りたい。なにがあったのか。……せんぱいが聞いてほしくなさそうだから、聞かないけど)
いろは「それより、小町ちゃんももう大学2年生だし、彼氏とかできたの??聞かせてよー」
小町「えー私の話ですかー?」
いろは「知りたいなー」
小町「えーそうですねー何から話そうかなー」
八幡「俺は聞かんぞ。断じて認めんぞ」
小町「久しぶりに見たなーその顔……」
いろは「シスコンせんぱいだー」
八幡「うるせ、千葉出身のお兄ちゃんは皆シスコンなんだよ」
16:
―――比企谷家族と一色いろはによる夕食終了後。八幡、自室のベランダにて
八幡「………」カチ、シュボ、スパー
八幡「ふー……」スパー
八幡(やっぱ実家落ち着くな……。一色を前にした親父の落ち着きのなさは少し笑えたが)
八幡(母さんも一色を気に入ってたようだし、一色の心配していたようなことにはならないだろう)
八幡(今は小町も含めて三人で仲良く皿洗いしてるようだしな。今日は小町の部屋で寝るらしい)
八幡(あいつらが高校時代に仲良かったとはな。少し意外だ)
カマクラ「にゃー」
八幡「お前も久しぶりだな。元気か?」
カマクラ「にゃん」
八幡「そうか」
カマクラ「………」プイ、トコトコ、モソモソ
17:
八幡(布団の上で丸まったカマクラは、なんというか時の流れを感じさせた。お前とこの家でじゃれ合っていた毎日も、もう4年近く前か)
八幡(今回の帰省は、一応俺の大学卒業祝いと、社畜の仲間入り決定を祝ってのものだ。……後付けで、一色の紹介も兼ねてしまったが)
八幡(まさか俺が普通の企業に就職決めるとか、高校時代の俺は考えもしないだろう。1年前の俺ですら信じないかもしれん)
八幡「ふー……」スパー
八幡(ここに帰ってくるたび、高校時代のことを思い出す)
八幡(思い出したくないことを、たくさん)
八幡(二人の大切な女の子ができて。そして二人から離れたこと。そうするしかできなかったこと)
八幡「すー……はー」スパー
18:
八幡(煙草の煙を思い切り肺に入れて、吐き出す)
八幡(考えてももうどうしようもないことは、考えるな。結局、どうするのが正解だったのかなんて、もう誰にも分からないんだから)
八幡「ふー…」スパー
八幡(それより、今の俺の目的について考える方がよほど建設的だ)
八幡(昨日買ったこれ、はたしていつ渡すべきかな)
19:
―――深夜、小町の部屋。いろはと二人でちょっとした宴会中
いろは「ん、ん、ぷはあ」
小町「うわーいい飲みっぷりですね?」
いろは「そうかな。せんぱいに影響されたかも。せんぱい、ビール飲むときすごい気持ちよく飲むんだよー」
小町「あーそれは多分某教師の影響ですね……」
いろは「え?……あー平塚先生かな?」
小町「はい。明日もあの二人飲みに行くらしいんですけど……いいんですか?彼女ほっといて他の女の人と二人でお酒なんて」
いろは「いいんだよ、あの人は。……せんぱいにとって、その方がいいって分かるから。せんぱいが家族以外で信頼してる数少ない人だし」
小町「……」
いろは「私はせんぱいのこと信じてるしね。せんぱい、理性の化け物だし」
小町「……そーですね、そこだけは小町も信じてます。悪く言えば凄いヘタレなんですけど」クス
いろは「ね」クス
20:
いろは「それに明日は、私も久しぶりに実家の方帰らないと。お父さん寂しがってるから」
小町「あー、なるほど」
いろは「もしせんぱいが朝まで帰ってこなかったら、こっそり私に教えてね」
小町「りょーかいです♪」
いろは「あは、頼もしい妹ができたなー」
小町「先輩がお姉ちゃんになるとか、小町的にポイントめちゃくちゃ高いです」
いろは「なれたら、いいね。なりたいなあ……」
小町(一色先輩、本当に。ほんとうにお兄ちゃんのこと好きなんだなあ……)
22:
―――家に置いてたお酒をあらかた飲んだ頃
小町「あの、一色先輩」
いろは「んー?」
小町「小町、先輩に感謝してるんです」
いろは「えー?急にどうしたのー?」
小町「……お兄ちゃん、高校卒業して家を出るころ、本当にずっと沈んでたんです。理由とか、小町にも話してくれなかったんですけど」
いろは「………」
小町「何を考えてるのかよく分かんないような顔で煙草ボーっと吸ってたりして」
いろは(私が再会した頃のせんぱい、みたいな感じなのかな)
小町「たまに帰省するときもそんな状態がずっと続いてたんですけど、去年のお正月の時はちょっと違ってて」
いろは「………」
24:
小町「あの頃には、もう二人とも再会してたんですよね?」
いろは「うん、まだ付き合ってはなかったころだけど」
小町「お兄ちゃん、なんか……表面上はあんまり変わってなかったんですけど。相変わらずヤニいちゃんだったし。でも、前ほどブラックな雰囲気とかなくて」
いろは「………」
小町「で、次にお盆に帰省してきた時は、凄く雰囲気が柔らかくなってて。一瞬誰か分からなくなりましたもん」
いろは「あは、何それ」
小町「本当なんですって。それで、なんでなんだろう。なんでお兄ちゃんこんなに変わったんだろうってずっと思ってたんです」
いろは「………」
小町「昨日、やっと分かりました。……一色先輩のおかげだったんですね」
小町「だから、ありがとうございます。お兄ちゃんを助けてくれて。ありがとう、先輩」
いろは(そう言ってほほ笑む小町ちゃんの顔は、すごく優しいものだった)
小町「色々とダメなところが多い兄ですけど、あれでも小町にとっては大切なお兄ちゃんなので。これからもどうかよろしくお願いしますね」
いろは「……うん、こちらこそ。ほんとうに、これからもずっとよろしくね。小町ちゃん」
小町「はい。一色先輩と本当に家族になれる日、小町楽しみに待ってますね!」
25:
―――次の日の深夜、駅近くの繁華街
八幡「ほら先生、タクシーきましたよ。……すみません運転手さん、お代はこれで。お釣り出たらこの人に渡しておいてください」
ハイヨ、マイドー
八幡「多分足りると思いますけど、足りなかったら自分で出しといてくださいよ、先生」
平塚「ああ、悪い。じゃあな彼女持ち」フラフラ
八幡「まだそれ言いますか……。ちゃんと自宅の住所いえますか?」
平塚「なめるな。独り身が長いとな、こうなってからの意識覚醒度は桁違いだぞ」
八幡「何をそんな自慢げに言ってるんですか。……でも先生、今日も誘ってくれてありがとうございました」
平塚「また帰ってきたら連絡しなさい。今度はしめにラーメンでも食べに行こうか」
八幡「うっす。それじゃあ、また」
バタン、ブロロロロ・・・
26:
八幡(帰省したら平塚先生とさし飲みってのも恒例になってきたな……)テクテク
八幡(最初は楽しいんだが、途中から平塚先生の婚活の愚痴ばかり聞かされるという)テクテク
八幡(マジで誰かあの人もらってやれよ。幸せそうな平塚先生が見たいです)テクテク
八幡(にしても、今日は久しぶりに結構飲んだな……。若干目まいがする)テクテク
???「……くん……きたにくん」
八幡(幻聴まで聞こえる…これは明日二日酔い確定だな。一色との駅での待ち合わせ時間までに起きれるといいが)テクテク
???「…ひきたにくん……比企谷くん」
八幡(幻聴にしてはやけにはっきり聴こえるな。つうかこの声…まさか)ピタ
雪乃「やっぱり、比企谷くん。やっと気づいてくれたわね。……久しぶり、ね」
28:
八幡「………お前、雪ノ下、か?」
雪乃「別の誰かに見える?」
八幡「…いや。久しぶり、だな」
雪乃「ええ。びっくりしたわ。由比ヶ浜さんと二人でお酒を飲みに来てて、さっき別れたところだったんだけれど」
八幡「由比ヶ浜……懐かしいな。お前ら、今でも仲いいんだな」
雪乃「誰かさんのおかげで、ね」
雪乃(あなたが、逃げたから。逃げて、くれたから)
八幡「……なんのことだよ」
29:
雪乃「いいえ、それよりあなたはなんでここに?遠くの大学に行ったでしょう」
八幡「ちょっと、帰省中でな。さっきまで平塚先生と飲んでたんだ」
雪乃「そう……」
八幡「ああ。まあ、明日にはまたあっちに戻るんだが」
雪乃「………」
八幡「……じゃあ、またな。……元気でな」
雪乃「ええ。……あなたも、元気で」
テクテク、テクテク、テクテク…
ピタ
雪乃「あの。……もう少しだけ、話をしない?」
八幡「………」
雪乃「もう少しだけ、話をしたいの」
八幡「……分かった。もう少しだけ、な」
30:
―――繁華街外れのとあるバー
八幡「じゃあ、乾杯」
雪乃「……乾杯」
八幡「ふう……うまいな。お前、バーとかよく来るのか?」
雪乃「たまに、由比ヶ浜さんと二人で来るぐらいよ」
八幡「そうか。………悪い、一服させてもらっていいか?」
雪乃「ええ。どうぞ」
八幡「………」カチ、シュボ、スパー
八幡「ふー……」スパー
31:
雪乃「煙草、吸うようになったのね」
八幡「ああ。意外と性に合っていたらしい」
雪乃「そう。意外ね」
八幡「小町には怒られたけどな」
雪乃「でしょうね。似合ってないわよ、全然」クスクス
八幡「……あっそ。変わんねえな、毒舌」
八幡(あるいは、やっと取り戻したのかもしれないが)
八幡(また、そんなふうにほほ笑むことができるようになったんだな、雪ノ下。……やっぱり流石だな、由比ヶ浜)
八幡(きっとあのまま俺が近くにいたら、見ることのできなかった表情)
八幡(俺が遠くへ逃げたかいも、少しはあったのかもしれないと思える。悪くない)
32:
雪乃「………」
雪乃(あなたが、逃げたから。遠くへ行くことを決めたから)
雪乃(私は、あなたとの距離を埋める努力を諦めた)
雪乃(そして、由比ヶ浜さんという生涯無二の親友を手に入れた)
33:
八幡「………」スパー
八幡(俺は怖かった。奉仕部の中で、二人と一人になることが。そうなることで、雪ノ下か、由比ヶ浜か、どちらかが酷く傷つくことが)
八幡(だから俺は、俺を独りにした。そうすれば、彼女たちの友情は壊れないことを知っていたからだ)
八幡(一度でも二人と一人になったら、もう三人には戻れない)
八幡(きっとそれを、俺と雪ノ下は分かっていた。だから俺は、一番良い『二人と一人』を選択した)
34:
雪乃「………」
雪乃(あなたは私たち二人の好意を、受け入れることは絶対にしないと分かっていたから。遠くの大学を志望していると知った時に、それが分かってしまったから)
雪乃(だから卒業間近の頃、由比ヶ浜さんの告白を断ったと知ったとき、胸が張り裂けそうだった)
雪乃(あなたはそのまま、由比ヶ浜さんと二人になることができたのに)
雪乃(一人になるのは、私でよかったのに。あなたじゃなくて、私が一人になればよかったのに)
35:
雪乃(高校を卒業したばかりの頃は、そんなことばかり考えていたけど)
雪乃(由比ヶ浜さんと一緒に、遊んだり、笑ったり、泣いたりしているうちに)
雪乃(こんな素敵な親友が、そばにいることに気づけたときに)
雪乃(やっと、素直に思えるようになったの。比企谷くんに)
雪乃「ありがとうって」
八幡「ん?」
雪乃「ありがとうって、あなたにずっと言いたかった」
36:
八幡(そう言った雪ノ下は、静かに涙を流していた)
八幡(初めて見た、雪ノ下の泣いてる姿は)
八幡(その綺麗な顔を歪めて泣いている彼女の心は、やっぱりどうしようもなく美しくて)
八幡「………いいから。泣きやめよ」
八幡(きっと、恋ではなかったけれど。そんな雪ノ下の心に、俺はずっと憧れていたんだ)
37:
―――数十分後
八幡「落ち着いたか」
雪乃「ええ……。見苦しいところを、見せたわね」
八幡「別に。気にするな」
雪乃「……そろそろ、私は帰らなけばいけない時間なのだけれど、あなたは?」
八幡「俺はもう少しだけ飲んでいく」
雪乃「そう」
八幡「ああ。……なあ、雪ノ下。最後に一つだけ聞いてほしい」
雪乃「…なにかしら」
八幡「俺な。………俺、彼女ができた」
38:
雪乃「……そう」
八幡「ああ……」
雪乃「おめでとう、比企谷くん」
八幡「え?」
雪乃「おめでとう。……本当に、嬉しいわ。心の底から。おめでとう、比企谷くん」
雪乃(あなたをそういう暖かい雰囲気の人間に変えてくれたのは、きっとその人なのね。……さようなら、比企谷くん)
雪乃(どうか、あなたがそのまま幸せになりますように)
八幡(雪ノ下は最後に、今まで一度も見せたことがないような満開の笑顔を見せた)
八幡(そしてお代を置くと、店から出て行った)
八幡「さようなら、雪ノ下。……元気で」
八幡(今になって俺は、やっと総武高校奉仕部を抜けたような気がした)
八幡(そして俺は、一つの決心をする)
39:
―――次の日、駅にて
小町「じゃあ一色先輩、お兄ちゃん、またね。お兄ちゃんはもっとマメに近況報告すること!一色先輩はまたいつでも遊びに来てくださいね、なんならお兄ちゃんなしでも!」
八幡「おい」
いろは「うん、次来るときはそうするね?」
八幡「……おい」
いろは「小町ちゃんも、いつでも私たちの方に遊びに来てねー。待ってるよー」
小町「はい!ぜひぜひ!」
八幡「……そこらへんでいいだろ。もう新幹線出るぞ」
いろは「はーい。じゃあ小町ちゃん、またねー」
八幡「小町、またな」
小町「ばいばーい」
42:
―――新幹線内にて
八幡「どうだった、俺の実家は」
いろは「すごい楽しかったです。また行きたいですねー」
八幡「そうか」
いろは「はい。……ねーせんぱい、手、つないでください」
八幡「…はいよ」
いろは「せんぱいの手、好きです。料理してる時とか、煙草持ってる時とか。……あと、私の体さわってる時も」ボソッ
八幡「おい、どさくさに紛れて何言ってんだエロ後輩」
いろは「あは、ちょっとえっちい気分になりました?トイレ行って口でしてあげましょうか??」
八幡「アホか。したら通報されるぞ、俺が」
いろは「冗談ですよ?。……ただ、なんとなく思ったんですよー。せんぱいのこと好きだなーって。せんぱーい。すきすきー。せんぱいはー?」
八幡「はいはい、俺もすきすき」
いろは「うわー適当だなー。……でも本当、先輩の実家、すごく居心地良かったです。家族になりたいくらい」
八幡(……これは、やっぱそういう意味だよな。誤解の余地がない)
43:
八幡(いや、誤解とかなんとかそういう話ではない。何故なら、俺はこいつとずっと一緒にいたいって。そう思っているんだから)
八幡「……一色。帰ってからちょっと話があるんだが」
いろは「えーなんですかー。プロポーズですかー?」
八幡「………」
いろは「あは、冗談ですよ?」
八幡(一瞬心臓が口から出るかと思った。……だが、本当にそうだとは一色は予想してないだろう)
八幡(さて、なんて言って切り出したらこいつは驚くだろうか)
八幡(俺はポケットの中に忍ばせた婚約指輪の箱を、手で弄びながらそんなことを考えていた)

51:
―――エピローグ
いろは「娘ちゃーん。なーに見てるのー?」ダキッ
娘「きゃっ。もー、母さん。びっくりさせないでよ」
いろは「あはは、ごめんねー。……ああ、私と旦那さんのアルバム見てたんだあ」
娘「うん。押入れから出てきたから。二人とも若いねー」
いろは「まあ十五年くらい前の写真だしね?これ」
娘「へー……うわ、この父さん煙草吸ってる。娘的にポイント低い」
いろは「昔は吸ってたんだよー。似合ってたなあ」
娘「子供の前で堂々とのろける母さんも娘的にポイント低い。……煙草、なんでやめたの?」
いろは「んー聞いてはないけど、娘ちゃん妊娠したって伝えたときからやめたから、それが理由かもね」
娘「へー。……それはちょっと娘的にポイント高い」
いろは「でしょ」クス
52:
いろは「あ、これ結婚式の時の写真だー」
娘「へー。……ねえ、もしかしてこのボロボロに泣いてる人、父さん?」
いろは「そうだよー」
娘「父さんの泣いてるところ初めて見た…。なんで泣いてるの?」
いろは「んー。たしか、小町ちゃんがメッセージ読んでる時だったかな?」
娘「小町おばちゃん!へーそうなんだ」
いろは「小町ちゃんも泣いてたなーこの時。懐かしいなあ」
53:
娘「……ところで、父さんってなんで母さんを好きになったの?ねえ父さん」
八幡「ばれてたか」
いろは「わ、なんで隠れてたんですか」
八幡「娘と嫁が俺のいないところでどんな会話してるのかと思ってな」
いろは「旦那さんすきすきーって話をだいたい私がしてますよ?」
八幡「はいはい、そりゃどうも」
娘「娘の前でそういう会話をしないでほしいな……」
娘「それで、なんでかって聞かせてよ」
いろは「私も知りたいな?」
八幡「……言わん。それよりいろは、今日はカレーが食べたい」
いろは「えー、教えてくださいよー。……もう、カレーですね。娘ちゃん、買いものいこー」
娘「はーい。アイス買ってね、ハーゲンダッツ」
いろは「はいはい、じゃあ旦那さん。行ってきます」ニコ
八幡「おう」
54:
八幡(なんで好きになったのかって。そんなの分からん)
八幡(だが、そう聞かれるたびに頭に浮かぶのは、結局いつも同じだ)
いろは『せーんぱい』
八幡(あいつが俺に向けてくれる、笑顔)
八幡(つまり、それが答えってやつなんだろう)

55:
これで完結です
今までお付き合い下さった人たちほんとうにありがとうございました
5

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