P「どうも。元スパイの赤羽根です」【前編】back

P「どうも。元スパイの赤羽根です」【前編】


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2:
都内某所 4月 23:58
高木「もうこんな時間か……」
私の腕時計は夜の0時を回ろうとしていた。
突然だが、こう見えて私は社長だ。それもアイドル事務所の。
まぁ、まだまだ小さいがね……いずれ大きくする!
――いや、問題はそこじゃない。人手不足だ。
アイドル候補生13人に対し事務員とプロデューサーが1人ずつ。
おかげで私も営業に回っているというわけだ。
音無君はいつも言う。
『社長?いい加減、普通に誰か採用してください普通に!』と。
しかし私の哲学であり経験は曲げられない。ティンとこないのは仕方がないだろう?
3:
高木「とはいえ、限界かな……時には信念を曲げるべきだろうか」
頭を悩ませながらも、夜の街を歩いて帰る。
歩いて帰れる距離だと判明したら、律子君に歩いてくださいと言われてしまった。
『予算もギリギリですので、すみませんが歩いてください』
高木「一応、上司なんだがねぇ……」
不良1「オイおっさん、カバンよこせ」
知らない声でふと我に返る。
思案しすぎて周りが見えてなかったようだ。
いつの間にやら3人の不良に囲まれていた。
不良2「なあ火ィもってない?」
不良3「ちょっとこっち来いよ」
高木「なんだね君たt」
しかし彼らは私の話を聞かずに、カバンをむりやり引きはがす。
4:
高木「コラ君たち!返したまえ!」
不良2「っせーな、火ィ持ってねーならコレで我慢してやるよ」
高木「返しなさい!大事な書類が入ってるんだ!」
不良3「しつけーな、やっちゃう?」
不良1「いいんじゃね?別にバレねーだろ」
その言葉の意味を理解するのには、時間がかからなかった。
あぁ、オヤジ狩りというやつか。下手をすれば、私は死ぬのだろうか?
最初に話しかけてきた不良が、右手をふりあげる。
が、とっさに目をつぶった私に右手はふりおろされなかった。
?「うるせーな。騒ぐならよそでやれ」
見知らぬ青年が、後ろから不良の手をつかんでいた。
地獄で仏、いや救世主とはこのことか。
5:
不良2「な、なんだテメ「だからうるせぇ」ぐわぁ!」
不良3「オイ、大丈夫か!?」
彼はもう一方の手で、目にデコピンをお見舞いする。
?「とっとと失せろ」
その一言で彼らは逃げ出した。
まるで漫画のような出来事に、私はただ茫然としていた。
不良1「離せよクソっ!」
?「おっとお前はカバンを置いていけ」
不良はカバンを投げ捨てると、一目散に走って行った。
6:
高木「ありがとう、恩に着るよ。しかし目はやりすぎではないかね?」
?「目尻だから失明の問題はない。急所の一つだ」
青年は淡々と述べる。冷静さと行動力がすさまじく高いようだ。
?「じゃあ、これで」
高木「待ってくれ。名前は?何かお礼がしたい」
?「礼などいらん。その気持ちがあるなら募金活動でもして……」
しかし彼は一旦区切り、私をじっと見ながらゆっくりと言った。
赤羽根「ひとつ頼みがある。名前は……赤羽根健治だ」
高木「赤羽根君か、なんだねお願いとは?」
思えば、このときが運命だったのかもしれない。
募金から羽を連想し、ありふれた名前を言った彼は――
――まぎれもなく救世主だった。
7:
P「あんた、社長でしかも人手不足なんだな」
高木「なぜそれを?」
P「ブツブツと独り言つぶやいてたぞ」
高木「お恥ずかしい限りだ。まあ貧乏事務所だがね」
P「給料はいらない。事務所を助けてやる。だから働かせてくれ」
高木「……なんだかすごいことをいってないかね?」
P「ああ。だがマジに話してる。ちょっと色々あってリストラされてな」
高木「何をやっていたのかね?」
P「わかりやすく言うなら、『スパイ』ってところだな」
高木「……アッハッハ!面白いジョークだねぇ。うむ、ティンときた!」
私は名刺を渡す。
高木「明日、ここに13時に来なさい。形だけだが面接をしよう」
そういって彼とその場を後にした。
8:
※ここから視点はPに変わります、すみません。
翌日 12:50
P「ここか、確かに貧乏だな」
たるき亭という食堂の上にはその事務所があった。
3階にガムテープで765と貼ってある。
ガムテープというのが、より貧乏に見せるのではないか?
P「まぁ、なんでもいい」
身を隠せるならどこだっていい。
階段を上がり、扉の前で一呼吸。ノックをすると、中から返事が聞こえた。
小鳥「はい、どちら様でしょうか?」
扉を開けると、美人な人が対応してくれた。
アイドルかと思ったが、よく見ると制服を身に着けている。
ここの事務員らしい。
P「13時に社長と面接をさせていただく、赤羽根といいます」
9:
小鳥「えっ?でもそんな連絡h」
高木「いや?待っていたよ!さあ、中に入りたまえ」
小鳥「社長!そういう大事なことは連絡してください!」
高木「すまない音無君。とにかく会議室を使うよ」
小鳥「はぁ、わかりました」
会議室へと通された俺は、一つ質問をぶつける。
P「あの、アイドルは?」
高木「彼女達ならいまはレッスンの時間だ。といっても自主レッスンで、互いに教え合うといった感じだがね」
P「見学は可能ですか?」
高木「今から向かえば1時間くらいは見れると思うよ」
P「なら行きましょう」
高木「いやホントに行動力があるね君は」
10:
レッスンスタジオ 13:19
律子「お疲れ様です社長。えっと、そちらの方は?」
高木「すぐにでも分かるよ。なに、大丈夫だ」
律子「はぁ、わかりました」
とりあえず会釈だけでもしておこう。眼鏡をかけていたということは、恐らく秋月とかいう奴か。
高木「それで、アイドル諸君はどうかね?」
律子「みんないい雰囲気です。ただ、やっぱり個性が強いというかなんというか」
高木「ふむ、そうか。まあこの世界じゃ個性は薬にも毒にもなるからねぇ」
チラリと俺を見ながら続ける。
高木「それを活かすようにサポートをしっかり頼むよ!」
律子「はい!任せてください!」
ハイキュウケイオワリヨー ミキネムイノ コラーミキー リッチャンガオコッター
高木「さてと、君はもっと近くにいかなくていいのかい?」
P「いきなり知らない男が近づいたら警戒するでしょう」
P「とりあえずは社長と遠目から様子見ですね」
高木「なるほど。あぁそうそう、先ほどの彼女は秋月律子君だ。彼女は元トップアイドルでね、今はプロデューサーとして支えているよ」
P「指導者としてはバッチリ、か」
高木「他に訊きたいことはあるかね?」
P「希望ならいくつか」
11:
事務所 18:53
高木「さてみんなにニュースがある」
社長は全員を集めて話す。
高木「気になっていただろうが、ここにいる彼は新しいプロデューサーだ!」
P高木以外「えええぇぇぇーーーー!」
高木「というわけで自己紹介を頼むよ」
P「ただいま紹介されました、えっと赤羽根健二と申します」
P「必ずトップアイドルにするから、よろしく」
高木「それと、彼はワケありでここに住む。まぁ社長室はあまり使ってないから丁度いい」
真美「えっ、住む!?」
亜美「遅刻の心配がなくて楽チンっしょ?」
高木「というわけで、仲良くするように」
響「社長、それ本気で言ってるのか?」
貴音「響、何事も適応が大事ですよ」
千早「まぁ、なんでもいいですけど」
高木「そういうわけで今日は解散。来週も頑張ってくれたまえ」
オツカレサマデシター
高木「さて今日一日でどう思ったかね?」
P「そうですね、とりあえず1時間ずつでいいので接してみてからですね」
12:
P「秋月さん、音無さん。なるべく無駄遣いはしませんから心配はいりません」
P「ひとつお願いがあります」
律子「なんですか?あとよそよそしいので律子でお願いします」
P「それが原因でリストラされたんで遠慮します。それより彼女たちのプロフィールや活動記録なんかを用意できるだけください」
小鳥「相当な量ですよ?」
P「構いません、早くよこして下さい」
律子小鳥(なんなんだろこの人、表情一切変わらないし)
P「じゃあ早資料お借りします」
律子「後からまた持っていきますね」
P「お願いします」
――12人か。まぁ普通に処理できる量だな。
13:
翌週 事務所 7:30
小鳥「おはようございます。って誰もいないいのよね」
いやいるんだけど。
小鳥「えっとコレは?社長宛てね」
小鳥「失礼しキャアっ!」
失礼な女だ。まるで不審者でも見たかのような反応だ。
小鳥「あ、ぷプロデューサーさんでしたか……(そういえば忘れてたわ)」
おおかた忘れていたんだろう。軽く会釈で返しておこう。
小鳥「ところでそれって春香ちゃんの活動記録ですよね?」
P「ええ。天海はいつ来ますか?」
小鳥「たぶん8時くらいには来るかと」
P「分かりました。たるき亭で朝食とってきます」
14:
事務員のいうとおり、8時に天海はきた。
会議室で1時間話をすることにした。
春香「よろしくお願いしますね、プロデューサーさん!」
P「早だが、なぜアイドルを目指す?」
春香「えっ?歌って踊るのが好きで……普通の理由です」
少し赤くなりながら天海は言う。理由が脆いというのは、一番危ないかもしれない。
P「軽く自己紹介してみてくれ」
春香「事故紹介?えっとよく転びますけど……」
訂正、一番危ないヤツ確定。
その後、誤解を解きつつ如月と交代した。
15:
P「早だが、なぜアイドルを目指す?」
千早「私は世界的な歌手を目指しています。アイドルはその手段だと思っています」
淡々と如月は言う。割り切るにはそれ相応の自信があるということか。
P「歌以外の仕事は、できればしたくないという感じか?」
千早「はい、歌に繋がるのであれば受けてもかまいません」
俺と少し似ている。なら、こいつも危ない。
その後、如月の理想を少し聞いてから星井と交代した。
美希「あふぅ、よろしくお願いしますなの」
P「早だが、なぜアイドルを目指す?」
美希「ん?キラキラできるかなって、アハッ☆」
なるほど。独特な感性だがマイペースだ。
才能はあるというが、これでは無駄遣いだ。
P「ウサギとカメなら、どっちを応援する?」
美希「童話のこと?美希的にはお昼寝できるウサギさんかな。でもゆっくり歩くカメさんも捨てがたいの」
その後、星井を観察しながら高槻と交代した。
16:
やよい「よろしくお願いしまーす!高槻やよい14才です!」
資料によれば笑顔が印象的、確かに明るい。
P「早だが、なぜアイドルを目指す?」
やよい「えっとクイズ番組とか面白そうだなーって」
恐らく本音ではない。全てがウソというわけでもなさそうだが。
P「家の掃除をするとき、高槻ならどこから始める?」
やよい「天気がいい日なら先にお洗濯し……はわっ!長介に干してって言うの忘れてた!」
この子は落ち着きが必要だな。
その後、掃除について熱く語った高槻には萩原と交代してもらった。
雪歩「あああの、よよよよろしくお願いしますぅ!」
P「……早だが、なぜアイドルを目指す?」
雪歩「わ、私、自分に自信がなくて、少しでも自分を変えたくて……」
男性恐怖症にもほどがあるだろ。なぜ部屋の隅に行くんだコイツは。
雪歩「ひんそーでちんちくりんな私が夢なんか見ちゃってごめんなさいですぅぅぅ!」
そう言うと萩原は部屋を出て行ってしまった。
17:
俺が怒られかけたがしかたがない。
萩原にはよりいっそう慎重に接さなければならないようだ。
あとスコップがどうとか騒いでたがなんの話だ?
昼食をまたもやたるき亭ですませ、菊地を呼んだ。
真「よろしくお願いします!」
P 「早だが、なぜアイドルを目指す?」
真「だってかわいいじゃないですか!ボクもかわいくなりたいんです!」
なるほど、色々と間違っているとはこういうことか。
P「一人称がボクっていうのは、どうやら普段からみたいだな」
真「うっ!変、ですか?」
――少し試すか。
P「まあ違和感はある」
真「そ、そうですか……あの、ちょっと変えてみます!」
そういうと深呼吸を始める。
真「えへへっ☆こんにちはぷろでゅーさー!」
P「双子を呼んでくれ」
真「」
18:
誰にでも失敗はあるが、アレはやっちゃいけない類だったな。
事故にはなるべく巻き込まれたくない。
真美「よろー兄ちゃん!」
亜美「亜美たちのことなんでも聞いてねー」
P「早だが、なぜアイドルを目指す?」
亜美真美「楽しそうだから」
P「特技は?」
亜美真美「モノマネー!あとゲームとメール!」
このシンクロ感はなんだ?
亜美「んっふっふ?、逆に質問ね!」
真美「真美と亜美ならどっちがお好みかなー?」
ああなるほど、問題児なんてもんじゃないな。
菊地以上の大事故の根源だ。
P「水瀬を呼んでくれ」
真美「まさか、真美たちでは飽き足らないというのか!?」
亜美「貧乳ツンデレのほうがお好みだったかー」
伊織「誰が貧乳ツンデレよ!」
クッ チハヤチャンオチツイテ
19:
P「早だが、なぜアイドルを目指す?」
伊織「家柄に頼らず、自分だけの力で成り上がるためよ」
こいつも少し俺に似ているところがある。
だがどこか大人ぶっているようにしか見えない。
伊織「他に質問は?」
P「人を採用するにあたって一番大事だと思うものは?」
伊織「さあね。能力とか?」
P「なるほどね。とりあえずアドバイスだ」
P「急いては事を仕損じる」
伊織「アンタにもアドバイスしてあげる。もっと愛想をふりまくことを覚えなさい」
伊織「この業界はイメージが大きな要素をもつわ。そんな顔じゃ煙たがられるわよ」
伊織「じゃああずさを呼んでくるわ」
ツンデレ、ね。指導が大変そうだな。
P「採用するにあたって大事なのは信用だ」
20:
あずさ「よろしくお願いしますね、プロデューサーさん」
P「早だが、なぜアイドルを目指す?」
あずさ「運命の人を見つけるためです」
運命の人?まさか電波系か?
あずさ「私、よく道に迷うんです。でもアイドルとして一生懸命やったら」
あずさ「運命の人に見つけてもらえるかなって、うふふ♪」
P「例えば俺がここに入社するのも運命だと思いますか?」
あずさ「うーん、そうかもしれませんし、そうじゃないかもしれません」
あずさ「でも運命だったとしたら、素晴らしいことですよね」
その後、ゆったりとした1時間を過ごしながら四条と交代した。
21:
貴音「よろしくお願いします、ぷろでゅーさー殿」
P「早だが、なぜアイドルを目指す?」
貴音「己の力を試すために、この世界に入った所存です」
P「特徴的な話し方だな。出身地は?」
貴音「秘密です」
P「では何かの漫画に影響されたとか?」
貴音「秘密です」
年齢、名前、志望理由しかわからん。その気になればわかるがしたくはないしな……。
P「四条にとって最も大事なものは?」
四条は微笑みながら、人差し指を口に当てる。
貴音「とっぷしぃくれっとです」
P「分からないが分かった。我那覇を呼んでくれ」
響「はいさーい!もう待ちくたびれたぞ自分!」
P「悪かったな。早だが、なぜアイドルを目指す?」
響「自分、ダンスが好きなんだ。自分のダンスでみんなが笑顔になってくれたらいいなって思って」
こいつも天海タイプか。
響「それに、自分完璧だからすぐにトップになってみせるぞ!」
P「完璧ならすでになっててもおかしくないか?」
響「えっとそれは、こ、これからもっと完璧になるからなんくるないさー!」
もしかしなくてもバカだなコイツ。
22:
18:30
P「みんな集まってくれ」
俺の呼びかけに視線が集まる。星井は寝ぼけているようだが。
P「ハッキリ言おう。このままではトップなどムリだ」
その言葉にざわつく一同。だが、まずは嫌われてでも心を折らなければいけない。
春香「あの、何がいけないんですか?ダメなところは治しますから!」
P「なら天海、歌とダンスと見た目で二番目に得意なものはなんだ?」
春香「えっと二番目、かろうじてダンスです……」
P「なら見せてみろ」
しかし天海は動けないでいた。自信がないからだろう。
P「もういい。わかっただr」
千早「待ってください」
P「なら如月、二番目に得意なのは?」
千早「そうですね、私もダンスで」
そういってステップを踏む。だが何をしようと俺の心は変わらない。
P「正確だが、それまでだ。デモテープを聞いたときのように驚きはしない」
23:
P「星井は本気で取り組まない、高槻は笑顔しかない。萩原はオドオドしすぎ、菊地は可愛さを勘違いしている」
P「双子は悪戯かゲームばかり、水瀬は頼ら無すぎる。三浦は見通しが甘い」
P「四条の秘密主義は扱いづらいし、我那覇は楽観的すぎる」
P「これでどうしろってんだ?」
沈黙があたりを包む。目に涙を浮かべる者もいた。
律子「……言い過ぎです。誰にだって弱点はあるでしょう!」
秋月がそう言うと、ポツリポツリと口を開き始める。
真「ボクたちはまだ、ダメなところもありますけど…」
あずさ「だから逆に頑張っているんじゃないかしら?」
伊織「疑問形じゃダメよあずさ。それに、弱点ぐらい把握してるわ」
美希「よくわかんないけど、言い過ぎだって思うな、そこの人」
雪歩「さ、最初からうまくいく人なんて、ほんの一握りの人だけで、うぅ…」
小鳥「そうよ雪歩ちゃん、今回はプロデューサーさんの言葉がきついと思います」
24:
P「天海、お前はどう思う」
春香「…私たちは、これから輝くんです。だから、今はダメでも…」
春香「絶対なれるって決まったわけじゃないですけど、それでも…」
春香「それでも、みんなといっしょに頑張りたいです!」
P「その台詞が聞けてよかった」
P「お前ら全員、トップアイドルを目指すべきだ」
P「初めからなるべくしてなった者などはほとんどいない」
P「だが、自分を知り、諦めない志があるならなれる」
P「きつく言ってすまなかった」
俺は深々と頭を下げた。
25:
21:00
思春期の女性というのはなかなか大変だ。
謝ったとたんに罵詈雑言の嵐。
まぁ本気で言ってる者はいないようだが。
小鳥「落として上げるなんてどこのホストですか」
P「自信がつきやすい方法です」
小鳥「それに、諦めずに夢を持ち続けるって大変なんですよ?」
P「社長がスカウトしたのはそういう子たちばかりでしょう?」
律子「どうして二番目を挙げさせたんですか?」
P「一番は自分で自覚できる武器、二番は自覚している、これから伸ばせる武器だからです」
小鳥「なるほどー。期待していますね、プロデューサーさん」
P「はい。ところで社長はいますか?」
高木「呼んだかね?」
P「今日飲みに行きませんか。話したいことがあるので」
高木「たるき亭でいいかね?」
P「いえ、個室がいいです。どこか居酒屋ありますかね」
高木「ふむ、わかった。ではちょっと探しておこう」
26:
某居酒屋 22:53
高木「それで話したいこととは?」
P「まず今日の失言です。見捨てずに黙って見守っていたことに感謝します」
高木「いやいや、君なら何かやってくれるだろうと思ってね」
P「それから本題です。前の仕事についてです」
高木「ははっ、スパイと言っていたね。して、本当は?」
P「ええ、スパイです」
高木「君ぃ、真剣に話しているのだよ?」
P「ええ、真剣です」
高木「……真剣というなら詳しく話せるかね?納得できるように」
P「そう、ですね…例えば、世界にはスパイがいるのは分かりますか?」
高木「それは海外の話だろう?それとも君は、海外でスパイだったというのかな?」
P「いえ、海外だけではなく日本にもあるとしたらどうです?」
高木「…まさか、そんな話が…」
P「とりあえず、話せることをお話しします」
27:
P「俺は孤児でした。物心ついたときには組織にいて、色々と教育をうけました」
P「世界を相手に様々なことをしました。結果的に第三次世界大戦を防いだこともあります」
P「基本的には、一人で行動しました」
P「いつしかコードネームを受け継ぎました」
P「コードネームP。パーフェクトのPです」
P「殺人はしたことはありません。手ほどきは受けてますが必要がないんです」
P「情報操作の痕跡すら残さずに、盗むのが理想であり俺のやり方ですから」
高木「…信じられんな。あまりにかけ離れた話だ」
P「でもこれが事実です。日本政府の機密情報ですから、知らないのが当たり前です」
高木「して、パーフェクトな君がなぜこんなところに?私は何も情報などもっていないが?」
P「言ったでしょう?リストラされたんです。ミスをひとつ犯しましてね」
P「俺の存在は、極々一部にしか知られてません。戸籍もありません」
P「ところがドイツの諜報機関BNDに目をつけられました」
P「痕跡は消したハズなのにね。当然、彼らはそれを利用しないハズがない」
P「案の定、日本に交渉をもちかけてきた。俺の存在と俺が持つ情報は、もはや世界をひっくり返す力がある」
28:
高木「もしそれが本当なら、君ひとりでも革命を起こせるのではないかね?」
P「そんなものに興味はない。そういう教育を受けたからですかね」
P「育てたスパイが裏切るなんてのはよくある話で、それを防ぐためにもはや洗脳に近い教育をするんです」
P「話をもどしましょう。日本だけでなく世界にダメージを与える人間の存在がバレた」
P「そりゃあ消そうとしますよね。俺もその命令を受けたとき、死ぬつもりでした」
P「でも、助けてくれた人がいました。まぁ教えられませんが」
P「で、今は世界中の諜報機関から逃げてるってわけです。もちろん助けた人物にすら見つからないように痕跡は消しました」
高木「…ではなぜここに?」
P「動くほどに見つかる危険性は高くなります。だからなるべく一か所に」
高木「この業界は人と関わる。見つかるのでは?」
P「えらい人は言いました。木を隠すなら森の中。人を隠すなら人ごみの中」
高木「…どうすれば信用できる?」
P「そうですねぇ、なら黒井崇男との因縁をお話しすれば信じますか?」
高木「き、君ぃ!なぜそれを!」
P「まぁ調べただけです。その昔、魔王エンジェルというユニット企画が立ちあがった。メンバーは音無小鳥と日高舞」
高木「もういい、そこまでで充分だ。その話を知っているのは私と黒井、音無くんと日高くんだけだったというのに…」
29:
高木「…ひとつ確認したいが、765プロは大丈夫なのかね?」
P「その点は大丈夫です。万が一狙われたら、さっさと逃げます。標的は俺一人だし、765プロは俺のことを知らないことにする」
P「そのくらいの情報操作は簡単です」
P「ある日突然いなくなるかもしれない覚悟はしておいてください」
高木「……なるほど、給料はいらないという意味がいまわかった。かくまってくれということだね」
P「イヤなら断ってくれて構いません。昔も今も、無関係な人はできる限り巻き込みたくないんで」
そう、関わらなければ、楽なんだ。
どうせこの初老も、断るに決まっている。
高木「…この年になっても、まだまだ面白いことはあるものだ」
高木「絶対にアイドル諸君を危険にさらさないように。あとは好きにしなさい」
それは騙し合いの世界で生きてきた俺には、信じがたい反応だった。
30:
某スタジオ 10:20
天海と如月、我那覇と四条。料理はまぁ大丈夫らしい。
春香「千早ちゃん大丈夫?」
千早「ええ、ちょっとカメラマンに腹がたっただけよ」
響「まぁ確かにちょっとその、え、えっちな撮り方っていうか」
貴音「では、わたくしが抗議して参りm」
響「貴音ぇ!そんなことしたら自分たちせっかくのお仕事なくなっちゃうさー!」
貴音「しかしそれでは…」
春香「まぁ深夜枠での放送だし、ちょっとはそういうのも仕方ないよ//」
千早「…そうね。少し外の空気を吸ってくるわ。すぐ戻るから」
とりあえず如月のフォローに回るか。
アオイートリーモシシアワーセー モシチカクニアッテモー
P「確か、蒼い鳥、だったか」
千早「!? 聴いていたんですか?」
31:
P「ああ」
千早「…どう、ですか?」
P「確かに上手い。だが改善点をあげるなら『青い鳥もし幸せ』を一呼吸で無理に歌い上げる必要はない」
千早「っ!…驚きました、てっきり収録の態度を注意されるかと」
P「自分でわかっているなら注意の必要はない。歌の仕事につながるとは限らない、モチベーションが下がるのは本人の気持ち次第だ」
P「ちなみに一呼吸で歌わない時は、低音に力を入れろ」
千早「あの、収録なんですが」
P「自分で判断しろ。やりたくなければやらなきゃいい」
千早「私が言うのも変ですが、それでいいんですか?仕事ですよね。なのにやりたくないならなんて」
P「如月、ハッキリ言おう。今のお前には歌しかない。だが、それの何が悪いんだ?」
千早「っ…歌だけでは通用しないと言われて」
P「だからなんだって?むしろ歌だけで通用するくらいになればいいじゃないか」
千早「それが理想です。でも、現実はそうはいきません」
P「本当に?如月は他が失敗しても歌があるからあなどれない…そんな風に恐れられたくはないのか?」
P「この収録が失敗しても、別の番組で歌えればいつだって巻き返せる」
P「そう思えたら、この収録に敵意をもたず、リラックスできるんじゃないか?」
ソロソロホンバンイキマース
千早「……」
P「巻き返すときのために、もっと歌を磨いておけ。さ、仕事再開だ」
32:
事務所 14:00
千早「あの人は、いえプロデューサーは本当はいい人なのかもしれないわ」
春香「どうしたの千早ちゃん?」
千早「なんというか違うのよ、他の人と」
春香「確かに違うね。なんか変な感じ?」
千早「まあ変人ではあると思うけど…でも頼ってもいいのかもしれないなんて」
千早「ふふっ、気のせいね。忘れて」
春香「あー千早ちゃんが笑ったー」
千早「私も笑うときぐらいあるわ」
春香「アハハごめんね。ところであの人は?」
千早「真に付き添っていったみたい」
春香「大丈夫かなー…」
千早「どうして?」
春香「真、だいぶ苦手意識があるみたいで。私もちょっと苦手だけど」
千早「根拠はないけれど、プロデューサーなら大丈夫だと思うわ」
33:
撮影スタジオ 同時刻
ハイオッケー キュウケイイレマース
真「はぁ…」
これでため息20回目か。しかし話しかけるなオーラがすごい。
真「もっとこう、ふりふりっとしたやつがよかったなー…」
とはいえバッチリと仕事はこなしている。意識は高いようだが…
カメラマン「んーなんか躍動感が欲しいんだよなー」
ディレクター「でも笑顔はいいじゃない」
カメラマン「なんとなく表情かたいんですよ」
ディレクター「そう?キリっとしてかっこいいけどな」
こういう会話も聞こえてしまうと、やはりフォローが必要だよな。
はぁ、耳がいいってのも考えものだな。
P「菊地、勝手に話すぞ」
真「どうぞ」
P「菊地ができる最大限のかわいいアピールってできるか?」
真「ふりふりした服であれば」
P「じゃあやろう」
真「は?」
P「企画を持ち込んでくr」
真「ちょ、ちょっとまってください!」
P「なんだ?」
34:
真「だってボクがそれをやると、まわりがみんな白けるんです」
真「ボクだって空気は読めます。かっこよさを求めてるなら、仕事ですから自重します」
P「黙れ、希望する服を教えればそれでいい」
真「なっ、黙れって!そんな言い方はひどいですよ!」
真「あ、わかりました。一度かわいいのを撮って諦めさせるつもりですね。残念ですけど、そういうのは慣れっこです!」
P「なんでもいいから早く教えろ」
教えてもらえたのはいいが二つ問題が。
一つはセンス、一つは敵意むき出しってことだ。
俺、初日でそんなに嫌われたか…
P「すみません衣装さん、菊地のプロデューサーです。こういうのってありませんか?」
衣装係「えーっと、近いのならいくつか」
P「なら貸していただけませんか?」
衣装係「でも急には…」
P「最高のモデルにこのセンスがある衣装。この組み合わせを見たくないんですね?」
衣装係「それは…」
カメラマン「…そこまで言うならお願いします。売れない雑誌の4ページであろうが、良いものを撮りたいので!」
人は否定形で訊くと了承しやすい、そんな知識がまさかここで役にたつとはな。
まぁカメラマンに助けてもらった感じだが。
35:
P「菊地、準備はできたな?」
真「ホントにいいんですか?」
P「本気でかわいくなりたければこれを守れ。九割セーブしろ」
真「…はい」
P「菊地!お前は可愛い!」
真「っ//行ってきます!」
菊地は外見は整っている。しかし過剰なアピールと古い少女マンガのイメージで減点される。
もし本気でかわいい路線を今のままいくなら――
真「バッチリって言われました!次はどうすればいいですか!」
P「ワンピースなら五割セーブしろ」
真「やってみます!」
ドレスなら淑女らしく黙って微笑む。ワンピースなら少し快活に。
ストリート系ならボーイッシュに。
――つまり力の抑えどころを覚えさせればいい。
カメラマン「いいね!隠れてた良さを引き出せた気がするよ!」
真「ありがとうございます!」
36:
事務所 17:28
真「プロデューサーはすごいや!なんだか今日のボクってボクじゃないみたいだったよ!」
雪歩「どどどうしたの真ちゃん!?あんなに嫌がってたのに!」
真「ボクの勘違いだったってことだよ雪歩!はやく次のお仕事来ないかなー」
雪歩「真ちゃんが言うなら…うぅ、でもやっぱり怖いものはこわいですぅ…」
千早「…見た?春香」
春香「うん。まさか真が認めるなんて…」
千早「言い方はきついけれど、本当にすごい人よ」
春香「うーん…でもつかみどころがなさ過ぎて怖くって」
千早「それは、そうだけど。ゆっくり知っていけばいいわ」
春香「そう、なのかなぁ…」
37:
事務所 22:00
律子「あら、まだいらしていたんですか」
P「高槻と水瀬の仕事をまとめていまして」
律子「いつ仕事とったんですか?」
P「たるき亭で昼食をとっているときですが」
律子「私も効率重視ですけど、昼食ぐらいゆっくりしたらどうです?」
P「時は金なりというだろう」
律子「はぁ、あの、余計なお世話ですけど」
P「余計ならいらん」
律子「うっ…そういうところ直したらどうです?」
P「愛想を振りまくのは、アイドルの仕事だ」
律子「人間関係とか少しは気にしてください!」
P「そういう秋月はどうなんだ?」
律子「私?」
P「俺がいなければ、俺のようになっていた。今は気づいて修正しているみたいだが」
38:
律子「あなたほど極端ではないつもりですが」
P「余計なお世話だが、人は車に追いつけない。だが車は人のスピードに合わせられる」
P「例えば秋月と高槻、どっちがどっちだ?」
律子「……本当に痛いところをあっさりと」
P「ただ、秋月の良さはそこだ」
律子「なんですか急に」
P「時には引っ張る存在が必要だ。とくに団体で行動するなら。見事にこなしていると感心するよ」
律子「けなすか褒めるか一つにしてください。本当にあなたって人はよくわからない人ですね」
P「俺にはできないことだ。特に団体行動ってのはしたことがない」
P「秋月、これからもアイツらをよろしく頼むよ」
律子「言われなくてもそのつもりです。じゃ、お先に失礼しますね」
そういって彼女は事務所を出て行った。
律子「……本当に変な人。でも悪い人じゃないのかしら。ふふっ……」
39:
スタジオ 15:43
МC「では次の問題はこちら!フリップにお書きください!」
クイズ番組は難しい。たとえわかっていても正解してはいけない時もある。
まあ高槻と水瀬にその心配はないハズだったんだが。
MC「おや、水瀬チームの解答がすごい!解答オープン!」
フリップ[なごや県]
芸人「そんな県はねえよ!」
ワハハハ イオリカンチガイシテタワー テンネンダナ
なんとか水瀬がうまく立ち回っているが、高槻の元気がない。
昼食はきちんととっていたし体調も崩してはいなかったハズだ。
やよい「ありがとうございました!」
伊織「またよろしくおねがいしま?す」
伊織「ちょっとやよい、どうしたの?今日は元気ないじゃない」
やよい「伊織ちゃん……ううん、なんでもないよ」
伊織「そんなわけないでしょ?この伊織ちゃんに話せばすぐ解決よ」
やよい「ありがとう伊織ちゃん……でも、ウチの問題だから……」
P「二人ともさっさと車に乗れ」
伊織「分かってるわよ、いちいち言わないで」
40:
P「――高槻、心配事があるなら早く話せ」
やよい「……」
伊織「やよい、無理に話さなくてもいいわ。時間がたったら話したくなるときもあるわよ」
伊織「それにコイツに無理に話すこともないわ」
やれやれ困ったものだ。
こうなったら反発せずに従うとしよう。
P「水瀬の言うとおりだ、俺に話したくなければその必要はない」
P「そのかわり話せばきちんと対応はする」
やよい「……実は長介とけんかしちゃって」
伊織「なにがあったの?」
やよい「長介も色々やりたいことがあるみたいで……私、お姉ちゃんなのに長介のこと、最近放っておいたなって…」
やよい「私の家、お金がないから……長介に我慢ばかりさせてたなぁって……」グスッ
やよい「うぇ、ううっ、うわあぁぁん、ちょうずげに゛ぎらわれちゃっ、うぅ…」
伊織「そういうことだったの。いい、やよい?帰ったら長介に謝るの」
伊織「長介だってバカじゃないんだから、ちゃんと分かるわ」
41:
やよい「で、でも、許じてぐえなかったら?」
伊織「ほらハンカチ貸すから泣き止みなさい。そうね、許してくれなかったら……」
会話から察するに兄弟でしかも高槻が姉で長介とやらは弟か。
そのぐらいの年の子は頑固だからな、根に持つとやっかいだ。
伊織「それでも謝るしかないんじゃないかしら」
水瀬の顔も曇っていた。許してもらえなかった時のことは考えつかなかったらしい。
ここは水瀬を持ち上げつつアドバイスするか。
P「水瀬のいうとおりだ」
水瀬がミラー越しに睨んでくる。話の邪魔をするなといった感じか。
P「高槻、長介くんは嫌ってなどいない」
やよい「ふぇ?」
P「ただストレスがたまってただけだ。それに謝りつづけるのはいいことだ」
P「長介くんだってこのままでいいハズがない。だが変にプライドが邪魔をして、自分からは謝れない」
P「だから姉が先に謝って、会話のキッカケを作ればいい。水瀬はそういうことを言いたいのさ」
やよい「……うん、私、長介にちゃんと謝る!えへへ、ありがとう伊織ちゃん!」
伊織「そ、そうよ!そういうこと!ちゃんと仲直りするのよ!」
P「高槻、お前から笑顔をとったら、みんなは悲しむぞ」
42:
事務所 18:18
やよい「えへへ、プロデューサーってすごいね!」
亜美「どうしたのやよいっち?」
伊織「まぁ、なかなか優秀なんじゃない?私はまだ認めてないけど」
真美「いおりんもとうとう認めたかー」
伊織「認めてないって言ってるでしょ!」
やよい「伊織ちゃんはプロデューサーのこと嫌いなの?」
伊織「べ、別に嫌いとは言ってないわよ」
やよい「じゃあ伊織ちゃんも好きなんだね!」
真美「聴きましたか亜美隊員!」
亜美「もちろんですとも真美隊員!いおりんとやよいっちは兄ちゃんにラブラブなんだねー!」
伊織「ななな//なに言ってんのよアンタたち!そんなわけないでしょー!」
43:
春香「うう…みんながあの人に騙されていっちゃう…」
小鳥「あら?どうしたの春香ちゃん、覗き見なんかして」
春香「っ!こ、小鳥さんビックリさせないでくださいよ?…」
小鳥「えぇ!?えっとごめんね春香ちゃん、それでなにかあったの?」
春香「……あの、小鳥さんはあの人のこと、どう思いますか?」
小鳥「プロデューサーさんのこと?んー…変わった人だとは思うわ」
春香「じゃあその、認めてますか?変な台詞ですけど……」
小鳥「なんとなく言いたいことは分かるわ。仕事はすごくできると思うけれど」
小鳥「ミステリアスすぎて分からないのよねぇ」
春香「そうですよね!あーよかったー」
小鳥「でも別に嫌いではないわ。好きとも思ってないけど」
春香「あ、そうですか……」
44:
オーディション 11:15
P「ローカル地方だが、大御所が誕生した番組でもある。集中していけ」
あずさ「あ、あのプロデューサーさん//そろそろ手を離していただかないと//」
P「断ります」
あずさ「あ、あらあら//どうしてですか?」
P「ギリギリまで離しません。あなたはGPSでも追えませんから」
あずさ「でも周りの視線が気になってしまって//」
P「俺は気にしません。あくまで仕事ですから」
あずさ「そ、そうですよね……」
デワオーデションヲハジメマース
あずさ「時間ですので頑張ってきますね!ふふっ」
P「あ、三浦。一つ言っておく」
あずさ「なんですかプロデューサーさん?」
P「あなたはしっかりしなくて結構です。頑張らないでください。期待はしています」
あずさ「は、はぁ……えっと、とにかく頑張ってきますね!」
だから頑張るなって言ってんだろうが。
45:
スタッフ「結果はすぐ発表されますのでそれまでお待ちください」
P「三浦、どうだった?」
あずさ「あ、プロデューサーさん…うまく質問に答えられませんでした…」
あずさ「あ、でも後半は答えられた気がします!プロデューサーさんさんのおかげですよ?」
P「どんな感じだったんだ?」
あずさ「最初、審査員の方が早口で聞き取れなくて…そこで頑張るなって言葉を思い出したんです」
あずさ「聞き取れなかったですけど、リラックスして答えられました?」
まあ早口だってのはリサーチしたから知ってたんだがな。
P「なら見当違いのことも答えたりしたか?」
あずさ「いくつかはそうなってしまったと思います。他の子はきちんと聞き取れてしっかりしてますね…」
P「あの審査員のためにそういう練習をしてたんだろうな。俺はわざとさせなかったが」
あずさ「えぇっ!?どうしてしなかったんですか?」
スタッフ「4番、三浦あずささんいらっしゃいますかー?合格です!」
P「呼ばれてるぞ、テレビで歌ってこい」
あずさ「え?え?あ、あらあらなんだか忙しいですけどいってきますね!」
46:
リサーチによると、審査員はわざと早口で聞き取らせないようだ。
その状況での判断力と行動を見ているらしい。
それなら興味を引く回答の方が、適切な回答より印象に残りやすい。
例え見当違いの答えでも、面白いと判断されれば儲けだ。
審査員「三浦あずささんですね、あなたなかなかの天然さんだけどキャラじゃないみたいね」
あずさ「よく言われます?」
審査員「やっぱりあなた面白いわ。また機会があったらよろしく。じゃ、収録おつかれさま」
あずさ「ありがとうございましたー。…本当にゆっくり話せたのねぇ…」
オツカレサマデシター オツカレサマ
あずさ「プロデューサーさーん、見てくれました?」
P「いや見てない」
あずさ「え、あ、あの私また何か失敗しちゃいましたか?」
P「いえ見てないので知りません。というか見る必要を感じなかっただけです」
あずさ「わ、私…やっぱりもっとしっかりしてなきゃダメですよね…帰りましょうかプロデューサーさん」
P「帰るのはいいがどこに向かうつもりだ全く」
そう言いながら俺は手をつかむ。
P「色々と誤解してるんだろうけど…ま、車で話す」
47:
車内 12:20
P「別に見捨てたわけじゃない。言ったでしょう?期待はしてるって」
P「三浦は見通しが甘い、甘すぎる。でも…」
あずさ「でも…?」
P「アイドルとしての甘さは嫌いじゃない。むしろ憧れの存在がそんな弱点を持っているとしたら」
P「それは大きな武器として通用する。アイドルが身近な存在だと思えたら好きになるだろ」
P「もちろん俺も好きだ」
あずさ「まぁ…!ふふっ、そんなことを言われたのは初めてです//」
P「顔が赤いぞ?熱でもあるのか?」
あずさ「いえいえ、お気になさらずに//私、これからも頑張ります!ゆっくりと、ね」
P「そうしろ。能力は高いんだから頑張りすぎるな。空回りはダメだ」
あずさ「はーい、あ、着きましたね……」
P「先に降りててください、すぐ行きます」
48:
あずさ「ふふっ//俺も好き、だなんて//」
亜美「あずさお姉ちゃーん、聞こえてるー?」
あずさ「?なーに亜美ちゃん?」
真美「なんか嬉しいことでもあった?」
あずさ「ええまあ。ちょっと、ね」
亜美「いいなー。何があったか知らないけど」
律子「ホラホラあんたたち、給湯室にお弁当おいてるから早く食べなさい」
真美「いえっさー」
律子「ふぅ。ところであずささん、プロデューサー殿となにかあったんですね?」
あずさ「えぇ!?//そ、そんなことないですよ!」
律子「分かりやす過ぎます」
あずさ「うぅ//その、とっても意地悪に見えて優しい人なんだなって気づきました」
律子「また一人陥落、か」
あずさ「『また』ってことは律子さんもですか?」
律子「サアシゴトシゴト」
あずさ「律子さん?律子さーん?」
49:
数日後 9:00
春香千早「おはようございます」
P「おはよう、お前たちはレッスンだ」
真響「おはよーございます!」
P「おはよう、お前たちはバックダンサーの仕事に行って来い」
美希「おはよーございまあふぅ」
P「天海たちについていけ」
雪歩やよい「おはようございますぅ!」
P「雑誌の取材があるから待機してろ」
律子「おはようございます」
P「おはよう、三浦と水瀬、四条が午前はオフ、双子がもう車に乗ってるからスタジオに連れてってくれ」
吉澤記者「おはようさんパーフェクト」
P「おはようござい……今なんと?」
吉澤「取材終わったらたるき亭においで」
あの記者、そういえば…
吉澤「やよいちゃんと雪歩ちゃんだね、可愛い子を前にしちゃうと緊張しちゃうなーなんてね」
吉澤「年寄りには優しく頼むよ」
やよい雪歩「よ、よろしくおねがいしまーすぅ!」
71:
たるき亭 10:53
吉澤「世間は狭いね。表の顔は芸能記者、裏の顔は諜報員。そしてまさかの再開」
P「その説は助けていただいてありがとうございました」
吉澤「ちなみに来てから君がいることを知ったよ」
P「ヤツラにはバレてるんですか?」
吉澤「君の居場所?僕以外にはバレてないね」
P「なぜ助けたんです?」
吉澤「いやぁ、理不尽だと思ったからさ。どう考えても安藤が怪しい」
P「あなたはよく消されませんでしたね」
吉澤「君がうまく逃げてくれたからね。すべて君ひとりの力だと思い込んでるようだ」
P「あなたの立ち位置がよくわかりません」
吉澤「君の元上司であり味方だよ。逃がしたときに命令しただろう?真相を暴くまでは死ぬな」
吉澤「暴走した安藤を止めたいが、僕では力不足だ」
P「……任務了解」
吉澤「僕も可能な限りはサポートするよ、じゃあこれで」
P「……ご主人、サバ味噌煮定食一つ。それと舞台の台詞合わせですよ。だからそんな顔しないでください」
あとで脚本家を雇って書かせなきゃな……
72:
春香「梅雨だねー」
千早「そうね」
春香「お仕事ないから暇だねー」
千早「そうね」
春香「むぅ…ちーはーやーちゃん!」
千早「なに春香?」
春香「千早ちゃん、なんだか生き生きしてるね!梅雨なのにうらやましいよー」
千早「春香、プロデューサーが言ってたわ。来たるべきときに備えて、自分を磨けって」
春香「それはそうだけどさー…小さな目標が欲しいなーって」
美希「あふぅ。美希のこと呼んだ?」
千早「おはよう美希。レッスン再開よ」
春香「星井じゃなくて、欲しいって言ったのを勘違いしちゃったんだね。もう、ドジだなぁ」
美希「春香にだけは言われたくないの」
春香「アハハ、それもそうだね…」
美希「ところで目標なら、プロデューサーにお願いすればいいって思うな」
千早「私もその意見に賛成ね。CМとかならすぐに取ってきてくれるんじゃないかしら」
73:
事務所 12:43
千早「プロデューサー、ちょっといいですか?」
P「どうした如月?」
千早「春香と美希なんですけど、二人に仕事ってありませんか?」
P「ない」
千早「ではなにか取れませんか?小さなお仕事でもいいんです。刺激や目標は必要かと」
P「なるほど。ちょうど午後はデスクワークも片付いて暇だったところだ。営業してこよう」
春香美希「やったぁ!」
P「……お前たち、自分で言いにきたらどうだ」
春香「だ、だって怖いじゃないですか…」
P「なにが」
春香「まだそのレベルに達してないとか言われるかと…」
美希「美希おなか空いたの。春香、今日はお菓子ないの?」
春香「ごめんね美希、明日はクッキー作ってくるよ!」
美希「それなら許すの!」
P「よし、それでいこう」
春香美希千早「はい?」
74:
翌日 9:00
春香美希「おはようございます!なの」
P「製菓のCМの仕事だ。すぐに準備しろ」
春香「え?いきなりですか?」
P「新商品の宣伝だからな。見ない新しい顔でやりたいというのを探してきた」
春香「見ない顔、ですか…うぅ…」
P「イヤなら早く売れろ」
美希「このCМで売れるから問題ないの」
P「大した自信だな」
美希「だって美希たちが出るんだよ?だったら美希たちもお菓子も売れるって思うな、アハッ☆」
春香「そ、そうだよね!よーし頑張るぞー!」
根拠がない自信か。やはり真のプライドの持ち主だな星井は。
75:
スタジオ 9:30
スタッフ「では、このような感じでお願いします」
春香「わかりました!天海春香、頑張ります!」
美希「美希も頑張るの!見ててねプロデューサー!」
P「三浦ほどの安心はないから見ててやる」
ホンバンイキマース
美希「あふぅ、甘いもの食べたいのー」
春香「私はどうかな?天海だけに」
美希「うまくないの。それに比べてすぎのこ村はうまいの!」
春香「きのこ、たけのこ、すぎのこ」
美希「あなたはどれ派?」
ハイオッケーデース チェックオネガイシマース
春香「プロデューサーさんどうでしたか?」
美希「バッチリだったでしょ?」
P「……」
スタッフ「オッケーです!ありがとうございました!」
P「いや、少し修正を加えよう」
76:
スタッフ「テイク2いきまーす、ヨーイスタート!」
美希「あふぅ、甘いものほしいのー」
春香「星井だけに?うまくないよ美希」
美希「うるさいのー!」
春香「まあまあ、じゃあ私なんかどう?天海だけに」
美希「うまくないの。それに比べてすぎのこ村はうまいの!」
春香「きのこ、たけのこ、すぎのこ」
美希「あなたはどれ派?」
スタッフ「オッケーでーす!」
P「口出ししてしまって申し訳ありませんでした」
スタッフ「いえいえ、おかげさまでいい画が撮れました!」
春香「プロデューサーさんってダジャレの才能があったんですね」
美希「ホンの少し出番が増えたの!」
P「天海、ビジュアルレッスンの効果が多少は出てたな」
春香「ホントですか!?」
美希「今日の春香は、美希と同じくらいキラキラしてたって思うな、あふぅ」
P「先に車に乗ってろ。軽く営業してくる」
77:
車内 10:30
春香「……」
美希「」スヤスヤ
春香「はぁ……」
美希「春香?」
春香「起きてたの美希?」
美希「んーと、寝ながら起きてたよ?」
春香「それ、どっちなの?」
美希「どっちでもいいって思うな、それよりため息ついてどうしたの?眠いの?」
春香「それは美希だけじゃないかな」
美希「なんてね。美希わかるよ?プロデューサーでしょ?」
春香「うえぇ!?な、なんで!?」
美希「苦手だって言ってたもん。でも本当は仕事熱心な人だって気づいちゃったんでしょ?」
春香「すごいね美希は。その通りだよ…なんか今までの自分がバカみたいで…」
美希「別にいいんじゃない?最初は味がわからないことって、いっぱいあるよ?」
春香「味?」
美希「おにぎりだって食べてみないと、何の具が入ってるかわからないでしょ?」
春香「ふふっ、美希らしいね。帰ったらプロデューサーさんさんに謝るよ」
美希「それがいいの!」
78:
事務所 11:02
根拠がないのに自信はある。そんな真のプライドがあるのにやる気がないとは。
星井のやる気を引き出すには、何が必要なんだろうか。
春香「ぷ、プロデューサーさん」
P「ん?」
春香「あの、クッキー作ってきたんですけど、どうですか?」
P「毒がないならいただく」
春香「そんなの入ってませんよー!って、そうじゃなくてですね…」
とりあえずひとつ口に運んでみる。…かなり美味いな。
春香「あの、ごめんなさい!私、なんとなく避けてました!」
P「天海、頭をあげろ、謝るな。これから避けなきゃいい」
春香「は、はい!あのそれから……名前でよんでくれませんか、プロデューサーさん?」
P「それはできない。俺の信条に反するからな」
春香「そう、ですか…」
P「…覚えておく。いつか、名前で呼べるようになったら呼ばせてくれ」
春香「は、はい!」
79:
梅雨が明けたある日 8:07
律子「プロデューサー殿、響と貴音のどちらに付き添いますか?」
P「四条は今日はグラビアだったか…同性のほうが相談しやすいだろ」
律子「じゃあ響をお願いしますね。深夜枠ですけど全国区のテレビでしたっけ」
P「沖縄出身というのを活かすなら、あの番組だろ」
律子「本当にいつそんな仕事をとれるんですか?」
P「一昨日の昼食時だが?」
律子「だからごはんくらいゆっくりしてくださいよ」
P「なら秋月も栄養ドリンクを多用するな」
律子「あなたと違って書類の山に苦戦してるんです!」
P「最近になって書類が増えてないか?秋月だけ」
律子「仕事が増えたから嬉しい悲鳴ですけれど、悲鳴は悲鳴ですね」
話をそらすということは、何かを隠しているな。
まあ泳がせておくか。
80:
MC「さあ始まりました県民性観察バラエティ『県民YO!』」
芸人「見ようと民謡をかけてるんですかね?」
MC「そこツッコんじゃダメ」ワハハ
MC「ゲストの紹介です。今日は沖縄出身のアイドルです」
芸人「アイドルきたー!」
MC「落ち着きなさい!ビックリしちゃってるじゃん」
響「はいさーい!765プロ所属の、我那覇響だぞ!今日はよろしく!」
芸人「響ちゃん小っっっちゃ!可愛い!」
響「うがー!そんなに小さくないぞ!」
MC「身長いくつ?」
響「ひゃ、152せんち…」
芸人「小っっっっっっちゃ!可愛い!」
響「さっきよりも小さくなってるじゃないかー!」
82:
P「おつかれさま、なかなか面白いイジられかただったな」
響「ちょっとだけいやだったさー…」
P「我那覇、お前の良さはなんだ?」
響「自分の良さ?んー…編み物とか?」
P「それは別のトークで披露してろ。いいか、お前の良さは表情だ」
響「表情?」
P「如月や四条とは逆だ。豊かな表情が武器なんだから、イジられてる時が真価を発揮する」
響「でもずっと言われるのはいい気がしないぞ」
P「そこで秘密兵器だ。ここ最近ずっとダンスの仕事はさせなかった」
響「そういえば真との仕事が最後だったぞ」
P「面白さとクールでかっこいいダンス。このギャップがさらに完璧へと近づく」
P「そういうの、ワクワクしないか?」
響「おおっ!スゴイぞプロデューサー!」
P「分かったらあの芸人にお礼を言って帰るぞ」
響「うん、わかったプロデューサー!…あれ?それって自分がまだ完璧じゃないってこと?…」
P「気にするな、今日はその可愛さを武器にする日だ」
響「うがー!気にするさー!って、か//可愛いとかそんないきなりずるいぞ!//」
芸人がやたらと言ってた気がするんだが、今だけ反応しないで収録で反応しろよ…
83:
事務所 19:20
小鳥「お疲れさまですプロデューサーさん、今日は上手くいったって聞きましたよ」
P「上手くいったのは我那覇です。アイツを褒めてやってください」
律子「あ、お疲れさまですプロデューサー殿…」
こころなしか顔がうかばれないな。異変でもあったか?
P「どうした。仕事のミスか?」
律子「プロデューサー殿…あなたなら、貴音のフォローもできますよね?」
律子「私には、今日の貴音は何も問題がなかったように見えたわ」
P「本人が何かに納得していないというのか」
律子「そうなんです。私にはそれがわからなくて…」
小鳥「いま屋上にいるみたいですよ、貴音ちゃん」
P「四条か…とりあえずやってみよう」
84:
P「そろそろ夏とはいえ、夜は冷えるぞ」
貴音「その声はあなた様」
P「あなたが赤羽根健二のことなら正解だ」
貴音「なにようですか?」
P「今日の仕事について、だ」
貴音「……わたくしは、今日の失敗が悔しいのです」
P「あててやろうか?」
貴音「そのようなことが可能なのですか?」
P「人間関係のいざこざか」
貴音「っ!なぜお分かりになるのです?」
P「人の集まりでできたのが社会。だからイヤなことの大半がソレだ」
P「あてたご褒美に詳細を教えてくんねぇかな」
貴音「――たのです」
P「は?」
貴音「言われたのです。扱いづらいと」
85:
P「前に俺も言ったな。秘密主義すぎて扱いが難しい」
貴音「わたくしは、なんでもかんでも秘密にしているわけではございません」
貴音「親しき仲になれば、おのずと秘密を明かしあう仲になるとは思いませんか?」
P「そういう信条があったわけね」
手すりの近くへ移動し、四条の隣へと立つ。
P「キャラじゃないってのはこれまた厄介だな」
貴音「わたくしは、まちがっていたのでしょうか?」
そういって四条は月を見る。
貴音「以前、水瀬伊織が申しておりました。月は自分では輝けない。太陽に照らされているのだと」
貴音「わたくしは、一人では輝けないのでしょうか…」
P「…その昔、夏目漱石は教師の頃に生徒に言った」
P「I love youは月が綺麗ですねとでも訳しておけと」
貴音「わたくしも存じ上げております」
P「なんでそんなことを言ったと思う?」
貴音「…ろまんちすと、だったのでしょうか?」
P「トップシークレット」
86:
貴音「いけずです…」
P「なんてな。まあ知らないやつも多いが、ヒントは時代背景だ」
貴音「時代背景…異国の文化が入り始めたころでしょうか」
P「だいたいあってる。それまでは日本古来の考え方ってのがまだ広く浸透していたころだ」
P「想いなんかを秘め事というだろ。愛や恋は隠すことが美徳とされていた時代だった」
P「愛してるなんて言葉は破廉恥なんてレベルなんかじゃなかったんだろうな」
貴音「そのような理由が…して、あなた様はなにをおっしゃりたいのですか?」
貴音「まるで隠すことがよいこと、いまのままでよいというのですか?」
貴音「わたくしは、変わらなければいけません。このままでは、また今日のように」
P「そうじゃない。隠すことは四条の切り札だ」
P「だが切り札はなかなか切らないからこそ威力を発揮する」
貴音「と、いいますと?」
P「一番大事なことだけを隠せ。逆に相手を知りたければ、まずは自分から心を開け」
これだけ伝えれば大丈夫だろう。戻って書類の整理だ。
P「あ、誰も見てないから泣きな。本当は泣き虫の小娘さん」
87:
事務所 19:52
律子「どうでしたか?」
P「自分の中で解決させた。だからどうなったか知らん」
P「強くなるのは最後は自分の力だ。ちょっと手伝ってやっただけ」
律子「本当にすごい人ですね…私もはやく見返さないと!」
P「せいぜい頑張りな」
律子「まったく。貴音のこと、ありがとうございました」
P「はいはい」
小鳥「お茶が入りました?。あ、律子さんはコーヒーでしたね」
ガチャ
貴音「…律子殿、小鳥殿、ご迷惑をおかけしました」
P「派手に泣いたみたいだな」
貴音「な、泣いてなどおりません//」
目が腫れてるんだけどまあいいや。
88:
同時刻 961プロ
黒井「さて、そろそろあのアホの高木が泣いて私に負けを宣言する日が近づいてきたわけだが」
黒井「お前たちの調子はどうだ?」
冬馬「問題ないぜ」
北斗「いつも通りって感じかな」
翔太「不調のときなんてあった?」
黒井「まあさんざん言ってきたことではあるが、961プロは常勝が社訓だ」
黒井「特に765プロなどという低俗で底辺な事務所などには絶対に負けてはならん」
黒井「次のフェスでは765プロも参加するというが、一切気にせず勝ってこい」
黒井「まあ、勝つ以外の選択肢など存在しないがな!ハーハッハ!」
冬馬「相手が誰だろうと関係ねぇ。真っ向からねじ伏せてやる」
89:
某日 フェスティバル会場 18:00
P「なにか不安や質問がある者は?」
春香「プロデューサーさーん、な、なんだか緊張してきちゃいました」
あずさ「あらあら、大丈夫よ春香ちゃん」
千早「そうよ春香、私たちの力を出し切ればいいの」
P「そのとおりだ。実力以上の力はふつう出せない。変に気取らず実力を出し切れば問題ない」
黒井「ハーハッハ!笑わせるな756プロよ!」
P「ウチは765プロです」
黒井「おや?底辺すぎて社名を覚えられなかったようだククク」
P「それでなんの用ですか?まさかそんな底辺な台詞を吐きにきたわけではないですよね」
黒井「まったくこれだから困るよ貧乏プロダクションの貧乏プロデューサーは」
P「では勝手に困ってください。ミーティングの途中なので」
黒井「な、なんだコイツは!この黒井崇男が直々に話しているのだぞ!」
P「で?」
黒井「な、なんなんだ貴様は!」
P「赤羽根健二です。ではミーティングがありますので」
90:
黒井「く!しかしそう平然としていられるのも今のうちだ!アデュー!」
春香「……プロデューサーさん、あんなこと言っちゃっていいんですか?」
P「お前たちが勝てば問題ない。負けても現状の把握と他事務所の観察になる」
千早「随分と冷静ですね」
P「それが俺のやりかただ」
あずさ「でも言い返したときのプロデューサーさん、かっこよかったですよー」
P「じゃあ俺に恥をかかせないように歌ってきてください」
スタッフ「そろそろお時間ですのでおねがいしまーす」
P「じゃ、いってこい。曲はTHE IDOLM@STERとREADY!!だ」
春香千早あずさ「はい!」
さて、色々とこちらの仕事もしますか。
とりあえず情報を整理しよう。
諜報機関のリーダー安藤、奴が俺の存在をドイツに売ったと考えるのが最も整合性がある。
ではなぜ?
91:
金か?いや、俺が働いたほうが金は手に入る。
怨恨?そんなものには縁がない。
すべて手柄はヤツのものになっているはず。
誰かの責任を押し付けられた?
それなら調査でソイツ自信が消されるはず。
知ってはならないことを知った?
可能性としてはあり得るが、ではその知ってはならないこととは?
いったいなんだ?
――わからない。
あれから吉澤記者の接触もない。
彼は無事なのか?
それに、765プロは本当に安全なのか?
――近いうちに周辺を探っていないか逆に探ってみるか。
92:
フェスティバル ステージ 18:20
千早(今日は声がよく通る)
あずさ(お客さんもすごくノってくれてるわ)
春香(それでも…)
春香千早あずさ(届かない…っ!)
冬馬「みんなーありがとう!」
北斗「また会えるのを楽しみにしてるよ、エンジェルたち」
翔太「今日はぼくたちも、とっても楽しかったよー!」
キャアァァ!ショータクーン!トウマー!ホクトサーン!
P「――で、泣きそうな顔をしてるワケか」
春香「…負けてしまいました」
千早「私では、まだ実力がたりないようです…」
あずさ「千早ちゃんだけのせいじゃないわ、私も、もっと頑張れたかもしれないもの…」
黒井「ふん、所詮は口だけの事務所ということか!まあ王者の前では誰もが等しく敗者だ気にしたまえ!」
93:
P「気にしてます。黒井社長、あなたがたの勝ちです」
黒井「そんなものは見ればわかる!自分の負けを認めて田舎へ帰りたまえ!」
P「いえ、宣戦布告です。今日のジュピターの力はせいぜい50%といったところでしょう」
P「しかし戦い方のパターン分析はすべて終わりました」
P「次も勝てないでしょうが引き分けにはできます」
P「首を洗ってまっていてください。あと、高木社長から伝言です」
P「あれは私もお前も間違ってない、間違ってるのは会社だったんだ、だそうです」
黒井「…フン、負け犬はいつまでも遠吠えしかできんのかと伝えておけ」
P「断ります。俺は伝書鳩ではありません」
黒井「なっ!どこまでも不快な男だ!失礼するアデュー!」
P「ふう、なかなか面倒な人だ。帰るぞ、今日はゆっくり体を休めろ」
あずさ「まだまだ、これからよね…帰りましょ?春香ちゃん、千早ちゃん」
春香「はい…」
千早「そうですね…」
94:
翌週 事務所 10:00
亜美「兄ちゃーん!」
真美「遊ぼー!」
小鳥「二人とも、プロデューサーさんも忙しいかr」
P「暇だ」
小鳥「」
P「デスクワークは終わった。秋月のも少し手伝った」
亜美「やったー!」
真美「じゃあこの格ゲーやろー!」
P「やったことがないがまあいいだろう」
?開始より1時間?
真美「兄ちゃん弱すぎっしょー」
亜美「もしかしてゲーム全般的にやってない?」
P「ゲームというと、俺の場合はポーカーかバカラなんだ」
亜美「なかなか渋いですなぁ」
真美「もしかして世界を股にかけるスパイだったりして!」
P「どこのジェームズボンドだ。まあそれより」
P「だいたい覚えた」
95:
?開始より2時間?
真美「兄ちゃん強すぎっしょー…」
亜美「もしかしてゲーム全般的にセンスある?」
P「ブラックジャックなんかもやってたな」
亜美「うぅ、悔ちぃよぉ」
真美「ちかたないね」
P「さて、そろそろ営業でもするか」
真美「でも真美たちまだ負けてないもん!」
亜美「ポッケモンならプレイ時間カンストしてるもん!」
P「ポッケモン?あぁ、あのポータブルゲームか」
律子「くだらないこと言ってないで、レッスンの準備しなさいアンタたち」
亜美「いつの間にいたの!?」
真美「仕事でもゲームできたらいいのに…」
律子「そんな都合のいいことはありません」
亜美「えー!?兄ちゃんなんとかしてよー!」
律子「いくらプロデューサー殿でもむりです!」
P「――いや、ひとつ方法はある」
96:
翌々週 16:22
伊織「それでオーディションを突破して、はろスタの準レギュラー取ったってわけね」
やよい「すごいですー!いいなぁ…でもポッケモンスターってなんですかー?」
真「モンスターを集めるゲームだよ。そういえばボクもあんまりやったことないな、父さんに禁止されてたし」
雪歩「みんな、お茶が入ったよ。伊織ちゃんはオレンジジュースね」
伊織「あら、気が利くじゃない。いただくわ雪歩」
雪歩「ふふっ、そういえばそろそろ『はろスタ』の時間だよね?」
やよい「小鳥さーん、チャンネル変えてもいいですかー?」
小鳥「うーん録画はしてるのだけど、やっぱり観たいわね。いいわよやよいちゃん」
やよい「うっうー!ありがとうございまーす!」ガルーン
真「おっ、早二人のミニコーナーみたいだよ」
TV「「亜美と!真美の!目指せポッケモンマスター!」」
ナレーター「このコーナーは、それぞれのバージョンでどちらがより強いかを競うコーナーである!」
雪歩「すごいなぁ二人とも、私より年下なのに…私だけまだお仕事ちゃんとできてないし…」
真「大丈夫だよ雪歩!プロデューサーがちゃんとしたアドバイスくれるって!」
伊織「まあ、能力だけはこの伊織ちゃんと同じくらいすごいって思うわ」
やよい「雪歩さんなら絶対いいお仕事できますよ!」
P「ただいま戻りました」
97:
雪歩「お、お帰りなさいプロデューサー!あの、お茶淹れますね!」
P「ああ、頼む」
真「うーん、やっぱり男の人は苦手なんだなぁ」
伊織「そればっかりは仕方ないわよ。自分で変えなきゃ」
やよい「プロデューサーはとってもいい人ですよ?」
真「いい人ってのはたぶんわかってるんだと思うよ。ただ…」
P「三浦、肩の力を抜け。ジュピターどころか他のアイドルにも負けたいのか?」
あずさ「すみませんプロデューサーさん、しっかりしなきゃって思っちゃうとつい…」
P「散歩のときと同じだ、あれこれ考えるな」
真「言い方がキツイから怖いんじゃないかな…」
小鳥「まあプロデューサーさんの持って生まれた性格なんだから仕方ないわ」
やよい「性格…ですか…」
伊織「?どうしたのやよい?」
やよい「たぶん見間違いだと思うんですけど、たまにプロデューサーの目がとっても怖いときがあるなーって…」
伊織「アイツが野蛮な目をしてるのはいつも通りよ。やよいは間違ってないわ」
98:
小鳥「野蛮はちょっと言い過ぎよ伊織ちゃん」
伊織「でも事実でしょ?さっきあずさを怒るときだってそういう目だったわ」
真「まあまあ、それも持って生まれた目なんだよきっと」
やよい「そ、そうですよね!変なことを言ってすみませーん!」
雪歩「あの、お、お茶が入りました…」
P「そこに置いといてくれ。それから萩原、ちょっと会議室に」
雪歩「ひぅっ!わ、私なにかしちゃいましたか!?」
P「それを話すんだ。手洗いに行ってくるから先に行ってろ」
雪歩「…ま、真ちゃーん、私、クビになっちゃうのかなぁ…」
真「えぇ!?いきなり何を言うんだよ雪歩!?」
やよい「ええっ!雪歩さんクビになっちゃうんですかぁ!?」
雪歩「だってだってだってぇ!私だけなんの成果も出せてないからとうとう怒っt」
伊織「ちょっと落ち着きなさい!そんな権限は社長にしかにゃいわよ!」
真小鳥(噛んだ)
あずさ「ぷっ、ごめんなさい伊織ちゃん。でも誰にでも噛むことはあるわ」
伊織「っ//と、とにかく!アイツにそんな権限はないわ!何かあったらみんなが守るから安心しなさい!」
雪歩「み、みんな、ありがとう……」
99:
会議室 16:38
P「座れ」
雪歩「は、はい!失礼します!」
P「固くなるな。別にクビにしようってわけじゃない」
雪歩「へ?な、なんでそれを?」
P「あれだけデカイ声で騒いだら聞こえるよ」
雪歩「ううぅ//すみませーん//」
P「本題だ。萩原、男性恐怖症は治ったか?」
雪歩「…ごめんなさい、プロデューサーでも近づけません…あ、あの、嫌いってことじゃないんです!」
雪歩「な、なんだか分からないけど怖くって…子どものころ、よくクラスの男子に意地悪されたんです…」
ああ、よくある好意の裏返しってやつか。
好きな人にちょっかい出して、反応を見たくなる心理だな。
P「そうか。それじゃあしばらくはトーク番組なんかは無理だな」
雪歩「す、すみません…せめて一人とかならまだ頑張れる、かもしれないです」
P「そうじゃなきゃ俺とも満足に会話できないだろ」
100:
P「そこで、相手の顔を見ずに会話する方法を考えた」
雪歩「そ、そんな方法があるんですか?」
P「ただし司会者とは顔を合わせるのでそこは努力しかない」
P「ずばり、ラジオでまずは仕事をとれ」
雪歩「ええ!?わ、私、面白いこととか話せないですよぉ…」
P「だろうな。そういうことは期待していない」
雪歩「うう…じゃあ何を話せば…」
P「コイツだ」
俺はカバンから一冊のノートを取り出す。
それは萩原の詩集だった。
雪歩「」
P「一週間前に忘れていたのを発見した。中身を見る気はなかったが、ページが見開きになってた」
俺はそのページを開く。双子のいたずら書きのあとがあるページを。
P「初めは双子の交換日記かと思ったが、持ち主が萩原だと判明した。そういうわけで返すよ」
101:
雪歩「――笑ってください」
P「新手のジョークか?」
雪歩「私みたいなのが、こんなもの書いてて……バカみたいだって思いましたよね」
P「もう少しマシなジョークを言え。一般的にはかなり感性が高いぞ」
雪歩「気を使わなくていいですよ…ハハハ…」
P「俺は勝手ながらある人にいくつか見せてきた」
P「それは見ず知らずのホームレスだ」
雪歩「そう、ですか…アハハハ…」
P「萩原、真面目に聞け。初めは特になんの感想も抱かなかったようだ」
P「だが次第に感動して涙を流すものが続出した」
P「ラジオを通じて、少しでもリスナーの心を癒す。こんなことができるのは、そういない」
雪歩「私が、リスナーさんを癒す?」
P「イヤなら仕事は断る。秋からの新番組だからまだまだ他に候補はいるだろうしな」
雪歩「……ます」
P「大きな声で」
雪歩「や、やります!夏の間に一生懸命書き溜めますぅ!私、頑張ります!」
P「秋にガッカリさせんなよ?」
雪歩「はい!」
102:
雪歩「あ、あの…ひとついいですか…?」
P「なんだ」
雪歩「プロデューサーは、その…どう思いましたか…私のポエムを」
P「蝶が花に集まるのに理由がいるか?批評家ぶって、良いものをわざわざ言葉で飾る必要はない」
雪歩「っ//ありがとうございますぅ//」
P「茶をいただいたら我那覇たちの迎えに行ってくる」
雪歩「でも、少し冷めてしまって」
P「なら帰ってきたらもう一度淹れてくれ」ガチャリ
ワ、ワカリマシタァ//
伊織「アンタ、なかなかやるわね」
P「なんの話だ」
伊織「自信をつけさせるのが上手いって話」
そりゃあ逆のことをしてきたからな。要領は同じだ。
103:
7月28日 14:00
亜美真美「「暑いー」」
美希「暑いの」
伊織「オレンジジュース無いの?」
律子「ないわ。それにしても暑いわね…」
小鳥「ホントに暑いですね…」
あずさ「あせもに気を付けないと」
貴音「いけませんね」
P「一応、男がいるのを忘れないでください」
やよい「?プロデューサーと社長のことは忘れてませんよー?」
雪歩「たぶん違う意味じゃないかな…」
千早「喉に負担をかけないようにしないと」
真「ただいまー!」
響「なかなか白熱した戦いだったぞ!」
P「走って来たのか。スポドリ飲んで汗を拭け」
春香「プロデューサーさーん…なんで汗かいてないんですか…」
P「……激しい運動で慣れてるからな。これくらいまだ普通だ」
発汗をある程度コントロールできるなんて言ったらヤバイな。
――それにウソは言ってない。
104:
真美「ねえねえピヨちゃん、海行きたいYO!」
亜美「律っちゃんがダメって言うYO!」
律子「まだ言ってません!」
伊織「やっぱり言うつもりじゃない」
高木「いやあ諸君、本当に暑いねぇ」
真美「しゃちょ→海行かなーい?」
亜美「亜美たちのせくち→な水着見たくなーい?」
高木「ハッハッハ、確かに見てみたいね」
真美「じゃあ海行こう!」
亜美「ひびきんだって海が恋しいでしょ?」
響「言われてみればしばらく海に行ってないぞ…」
小鳥「だけどそんなお仕事はいまのところないわねぇ」
真「プロデューサー!海の仕事とれませんか?」
P「すでに埋まってた。だからここにいる」
美希「プロデューサーでもダメなの…」
105:
P「もっと名前が売れてりゃ仕事とれたかもな」
春香「アハハハ…」のワの
亜美「ゲームみたいに一気にレベルアップする方法とかないの?」
真美「フルプロの夏合宿みたいな感じ?」
やよい「ふるぷろってなんですか?」
春香「えっと、野球選手を育てるゲームだっけ?」
貴音「なんと!その小さな箱の中に人がいるのですか!」
律子「そんなわけないでしょ…暑さで頭がボケてきちゃってるわね…」
貴音「わたくしはいつも通りですよ律子嬢」
美希「なんでもいいの。クーラーも扇風機も使えないほどお金がないってどういうことなの…」
高木「すまないねぇ…みんなの出番がすこしずつ増えたから、雑誌を買ったり録画していたらいつの間にかねぇ…」
小鳥「録画の仕方ぐらいは覚えてください…一日中録画してたら電気代もかかるに決まってます!」
高木「面目ない…年はとりたくないものだねぇ」
P「――よし、合宿しよう」
そして調査の再開といこう。
106:
8月2日 7:00
P「では社長、一泊二日の合宿に行ってきます」
小鳥「あの、いいんでしょうか?私も残ったほうg」
高木「いやいや、君も765プロの家族なんだ。合宿を通して絆を深めたまえ」
高木「なに、録画はできんが電話番くらいはできるさ。それに、私にもやらなければいけないことはあるからね」
小鳥「…わかりました」
響「プロデューサー!ピヨ子ー!早くいくさー!」
伊織「よく民宿なんか見つけたわね」
律子「プロデューサー殿の知り合いがかけあってくれたそうよ」
あずさ「あらあら、じゃあ現地でそのかたにご挨拶しないとね」
千早「プロデューサーの知り合い…?」
やよい「きっとプロデューサーみたいに優しい人ですー!」
P「じゃ、駅まで歩くぞ」
エエー! クルマツカワナイノ? 15フンダカラガマンガマン
俺はため息を一つつく。吉澤記者は来てくれるだろうか?
107:
電車内 9:36
千早「?♪」シャカシャカ
春香「わぁ!海ですよ海!はやく泳ぎたいなあ」
小鳥「今日の最高気温は38度だそうよ」
貴音「真、暑いですね…」
雪歩「四条さんでもやっぱり暑いですか?」
貴音「はて、それはどのような意味でしょうか萩原雪歩」
雪歩「なんだか、四条さんっていつも涼しげな雰囲気があるから」
貴音「わたくしとてこの暑さには心を乱されてしまいます」
貴音「まだまだ習練が足りませんね…」
雪歩「えっと、冷たい麦茶飲みますか?」
貴音「いくら水筒に氷をいれても、この暑さでは溶けてしまいますよ」
雪歩「魔法瓶だから冷たいままですよ♪どうぞ」
貴音「面妖な!まさしくこれは魔法です!」
108:
あれから調査を続けた結果、知ってはならないことという可能性もつぶれた。
俺の仕事にミスもなかった。
そこで安藤という男ではなく、組織全体を見つめ直すことにした。
安藤というリーダーがいて、その下に何人か幹部がいる。
幹部はいくつかのチームを束ね、チームはだいたい5人くらいで構成されている。
それぞれのチームは役割分担されている。
ハニートラップ部隊や暗殺部隊、裏切り者専用の暗殺部隊もいる。
たしか拷問部隊もあると聞いたな。
ただし例外が一人だけいた。
それが俺。
組織内でも安藤と幹部しか知らない存在。
比較的困難な仕事を専門に、主に単独で動く。
しかも絶対に裏切らない、手柄もすべて他人のもの。余計な感情は排除する教育をうけた。
ロボットより精密に動く生きたロボット。
さて、そんな俺を司式が消そうとしたのはなぜ?
安藤は、もしくは他の幹部が俺の存在を売ったのはなぜだ?
そのとき脳裏にある単語がよぎった。
109:
『革命』
なぜそれがよぎったかは分からない。
だが、教育のたまもので、たまにある第六感はよく当たる。
だが、革命という単語からどんな答えを導き出すべきか、見当もつかない。
「――さん」
P「――ん?」
小鳥「プロデューサーさん、着きましたよ!」
P「ああ、すまない。いま行く」
小鳥「そんなしかめっ面でなにを考えていたんですか?」
P「ちょっと、ね」
小鳥(本当になにを考えてるのかしら)
P「さてみんな、20分歩けば目的地だ」
マタアルクノー!? ツカレター!
小鳥(気のせいかしら…なんだか遠い存在のように感じたけど…気のせいね)
110:
765プロ会議室 同時刻
高木「よく来てくれた」
黒井「冷房設備も整ってないのかこの事務所は」
高木「昔と変わらない暑さじゃないか」
黒井「昔は地球温暖化などと騒いではいなかったほど涼しかったよ」
高木「――ちっとも変わらないな、お前は」
黒井「フン、貴様もな」
黒井「それで、わざわざこの私を呼んだ理由はなんだ?」
高木「あの時の話の決着をつけようじゃないか」
黒井「くだらん!あれはダメダメなお前のいつものミスだ!」
黒井「……そして、セレブで完璧な私の唯一のミスだ」
高木「いいかげん自分を責めるのはよさないか」
黒井「責めずにいられるか!魔王エンジェルはっ!音無小鳥と日高舞はっ!」
黒井「我々がつぶしたようなものなんだぞ!」
111:
高木「……音無くんと日高くん。あの二人が組めば頂点に立てると信じていた」
高木「だが、焦らずにゆっくりと準備する時間を、会社はくれなかった」
高木「アイドルにランク制度を導入したばかりだったからかな、会社側はすぐにでもデビューさせろとうるさかった」
黒井「その反対を我々が押し切れなかった結果、どうなった!」
黒井「音無小鳥は過労で倒れ、日高舞は目標を見失って妊娠の暴挙に出た!」
黒井「日高舞を問い詰めたとき、彼女はなんと言ったか覚えているか!」
高木「……小鳥と歌えないのならもう意味がない、と言っていたな」
黒井「会社が焦った?笑わせるな!会社はランク制度に臆病になったとでも思っているのか!」
高木「私の目にはそう見えたがね」
黒井「だからお前はいつまでたっても甘いんだ!会社はただ利益が欲しかっただけだ!」
黒井「私は悟った!たとえ早期にデビューしても耐えられるようなアイドルを育てるには」
黒井「十分な資金と十分な設備!これらが必要なんだと!」
高木「しかしそれでは倒れることを前提としているじゃないか!」
黒井「まさか、ゆとりを持って育てることが必要だと思っているのか?」
112:
高木「現にいまのジュピターの三人には、少しゆとりを持たせてるような気がするが?」
黒井「貴様の目は節穴か?過密スケジュールをこなせるようにレッスンを重ねているだけだ!」
高木「……やはりお前はキザなやつだよ」
黒井「ウィ。そういう貴様はいつまでも甘い」
黒井「もういいだろうこの話は。私は貴様に完全勝利して、全面的に認めさせるぞ!」
高木「それなら私はお前に勝って、お前の呪縛を開放してやるよ」
黒井「せいぜいほざけ!アデュー!」バタン
高木「……黒井、いつか救ってやるからな」
?車内?
黒井「車を出せ。我が事務所に帰るぞ」
黒井「高木、いつかお前も懺悔の道連れだ……っ!」
113:
某所 同時刻
??「吉澤、どこへ行く」
吉澤「表の仕事だよ、明後日までに編集長に記事をまとめて提出しなきゃならなくてね」
??「お前の器量なら、すぐにできるだろう」
吉澤「ははは、年寄りをおだてたってお駄賃はでないよ」
??「最近、外出が多いじゃないか。何か個人的に動いてるのか」
吉澤「やだなぁ、そんなわけないでしょう」
吉澤「――2週間も前から僕を見張ってるのに、そんな質問しないでくださいな」
??「…確かに見張らせていた。そして異常なしとの報告がある」
??「だがお前ほどの諜報員なら、監視の目をくぐるのも造作もないことだ」
??「言え、何をしている」
吉澤「…遅刻は減給なんだがねぇ」
??「…食えないヤツだな、行け」
??「だが少しでも怪しい事をつかめば、戦友でも殺す」
吉澤「…僕も同じだよ。じゃあ急ぐから」
114:
民宿 10:02
真「海だー!」
やよい「うっうー!プールより大きいですー!」
伊織「お父様の島と同じくらいかしら」
春香「あいかわらずスケールが違うね」アハハ
P「とりあえず合宿とは名ばかりだが、かならず二人以上で行動しろ」
律子「絆を深めるためにちゃんと守るのよー!」
亜美真美「アイアイサー!」
真「響、どっちがく泳げるか競争だ!」
響「望むところさー!」
貴音「律子嬢、昼食はどうなさるのですか?」
律子「お昼は民宿の方が用意してくれるわ」
春香「千早ちゃん、いっしょに遊ぼ!」
千早「え、ええ…でも私はここで休むわ」
春香「もったいないよ!あずささんもいっしょにビーチバレーやるって言って…ってあずささーん?」
あずさ「えーっと、みんなはどこに行ったのかしらー?声は聞こえるのだけれども」
千早「あずささん、とりあえず後ろに春香がいます」
あずさ「あらあら、いつの間に後ろにいたの?」ドタプーン
千早「……春香、やっぱり休んでるわ」
春香「ええ!?千早ちゃん!?」
115:
雪歩「私、お部屋を片付けてくるね」
やよい「じゃあ雪歩さんのお手伝いしますね!」
雪歩「ふふっ、ありがとうやよいちゃん」
美希「じゃあ美希はでこちゃんの相手してあげるの」
伊織「でこちゃん言うな!まあ、相手してあげてもいいわよ」
美希「じゃあ早遊ぶの!」
P「さて、こっちも仕事しますかね」
小鳥「プロデューサーさん?単独行動はダメですよ?」
P「それはあなたもですよ?」
小鳥「じゃあ今は私と行動しませんか?」
P「音無と?」
小鳥「……だめですか?」
正直、仕事がしたいのだが…まあ怪しまれるよりはマシだな。
P「いいですよ。何をするかは任せます」
小鳥「じゃあちょっと近くでお茶しましょう!ゆっくり話してみたかったんです」
小鳥(気分はまるでスパイ…そう、私は美人スパイ!謎だらけの実態を明かすのよ小鳥!)
P「……音無?」
小鳥「ハッ、すみませんオホホホホ…」
あいかわらず変な女だ。
116:
小鳥「プロデューサーさんは何部だったんですか?」
学校など行ってないとは言えんな。
P「決まったものはやってませんね。頼まれればなにかやる感じです」
小鳥「凄いですね!じゃあモテたんじゃないですか?」
P「残念ながら縁はなかったですね」
小鳥「でも見た目は整ってますよね?メガネ美男子って感じじゃないですか」
視力抑制の特別な眼鏡なんだよな、これ。
P「そんなこと言われたのは初めてですね」
小鳥「へー…そういえば誕生日はいつなんですか?765プロはみんなの誕生日をお祝いするんです!」
俺の誕生日、いつなんだろうか。たぶん32歳って言ったらどう思うだろうか。
P「いつだと思います?」
小鳥「んーなんとなく4月生まれとか?」
P「正解はCMのあとで」
小鳥「なんのCMですか、ふふっ」
小鳥(意外とふつうなのかしら?昔からスペックは高かったみたいだけど)
117:
P「そろそろ戻りますか」
小鳥「そうですね、お昼ご飯の時間ですもんね」
そういって立ち上がろうとしたとき。音無の隣を太った男が通った。
P(あ、ぶつかるな)
とっさに倒れるであろう方向に体を移動させる。
小鳥「キャッ!?」
P「おっと」キャッチ
男「あ、すみません」
小鳥「い、いえ、こちらこそ」
P「大丈夫ですか?」
小鳥(……うわぁ!//な、なんかドキドキしてる私!?そ、そうよ急にぶつかったからビックリしただけよ!)
P「音無?」
小鳥「ひゃい!」
P「……大丈夫ですか?」
小鳥「あ、え、えっと大丈夫です//」
118:
道中を戻るときは無言だった。
成りゆきとはいえ抱きとめたのはやはりまずかったのだろうか。
それと同時に、違和感を抱いていた。
なぜ俺は助けたのだろうか。
以前の俺なら、なるべく関わろうとしなかった。
倒れたければ勝手に倒れればいい。
むしろ自分がぶつからない位置に移動したはず。
だが無意識のうちに俺は助けた。
これはどういうことだ?
P「俺はあなたが好きなんでしょうか?」
小鳥「ピヨ!?な、何を言ってるんですかプロデューサーさん!//」
小鳥(なに、どういうこと!?意識させようって魂胆なの?)
小鳥(落ち着くのよ小鳥、レディコミにもこんな感じの描写はあったわ)
小鳥(でもそれは気があったからこその発言で、つまりプロデューサーさんは…)
小鳥(そういうこと?)
P「いや、そうじゃないな、うん。すみません忘れてください」
小鳥(きっとまだ自分のきもちに気付いてないのね…自分の気持ち…私は?)
119:
民宿中庭 19:34
雪歩「レバーはきちんと焼かないとダメですぅ!」
久々のバーベキューだ。
萩原が仕切ること以外は割と普通のバーベキューだ。
――音無が目を合わせてくれないことを除けば。
やはり昼のアレがまずかったようだ、不本意だがあとで謝りにいこう。
表の仕事に支障はきたしたくない。
律子「たまにはこういうのもアリですね」
P「終わったら馬車馬のごとく働いてもらうがな」
律子「あいかわらずですね。次の作戦でも立ててるんですか?」
P「深夜枠の30分ドラマとか狙ってるよ」
律子「さすがですね、私も早くプロデューサー殿に追いつかないと」
P「詳しいことは分からんが、何か隠してるんだろ?」
律子「メンバーは教えませんが、ユニットをプロデュースする予定です」
P「それで資料の山とにらめっこだったのか」
律子「まあ頼るばかりじゃ成長できませんから。自分の力でやってみたいんです」
雪歩「プロデューサー!そのお肉はあと3秒待ってから裏返してください!」
春香「ゆ、雪歩ちょっと落ち着いて!ほら麦茶持ってきたかうわぁぁ!」ドンガラガッシャーン
120:
貴音「らいよーうえうああうあ」
響「大丈夫ですか春香で合ってる?」
やよい「貴音さん、食べながら喋るのは、めっですよ!」
小鳥「大丈夫?はいタオル」
春香「うう…中が水着でよかったー…」
千早「食べ終わったらお風呂入りましょう」
春香「私は小っちゃい子どもじゃないよー!」
真美「…ねえ兄ちゃん」
P「ん?」
真美「いまはるるんのこと、えっちな目で見てなかった?」
一同「「「「え!?」」」」
春香「ぷ、プロデューサーさん//」
P「まてまて、いきなり転んだやつがいたらそっちを見るだろ」
亜美「そして服が張り付いたはるるん見てあんなことやこんなことを」
P「なんでそうなるんだよ、これ巷で噂の死亡フラグってやつか?」
亜美「大丈夫だよ兄ちゃん、死亡フラグは10人以上立てれば生存フラグかハーレムフラグになるっぽいよ!」
P「そんなに立てれるヤツいねーよ」
121:
大浴場 20:17
あずさ「ふうー、足をのばせるっていいですねー」
響「そうだね、なかなか広いお風呂って浸かれないもんね」
真美「ひびきん別に小さいから」
響「それ以上言うと怒るさー」
小鳥「みんなケンカはダメよ?」
貴音「それにしても、ここの湯は何に効くのでしょうか?」
律子「肩こりや冷え症に効くって書いてあったわ」
千早「……クッ!」
真「うん、気持ちはわかるけど抑えようね」
美希「幸せなのー…このままお仕事も増えていったら、トップアイドルになれるかな?」
やよい「プロデューサーや律子さんがいれば、絶対になれますよ!」
小鳥「ふふっ、ちゃんとレッスンも頑張らなきゃなれないわよ?」
やよい「はわっ!それならレッスンも一生懸命頑張りますー!」
雪歩「プロデューサーが来てから、少しずつだけど変わってきたよね」
千早「そうね…プロデューサーの期待に応えられるように、頑張っていかなきゃね」
122:
亜美「兄ちゃんのおこげだね!」
真美「おかげでしょ?それはわざとらしいよ?」
亜美「うーむ、このネタは使えないか」
伊織「……ねえ、アンタたちってそんなにアイツのこと好きなの?」
一同「」
美希「美希はわりと好きだよ?差し入れにイチゴババロアくれたし」
伊織「あんな野蛮な目で渡されても嬉しくないわよ」
美希「そう?美希的には、お仕事に集中してる目って感じだったな」
春香「言い方はきついけど、確かに人一倍お仕事に真面目に取り組んでるから…」
千早「私はその、す、好きという感情はわからないのだけれど…私の歌に的確なアドバイスをくれるし」
千早「私の歌を、もっとプロデューサーに聴いてほしいとは思うわ」
美希「千早さん、それたぶん恋なの」
千早「な//なにをそんな//」
真美「あれあれー?千早お姉ちゃんが動揺してますなー」ニヤニヤ
千早「そ、それなら真美だって同じよ!さっき春香が転んだとき」
真美「す、ストーップ!真美なんにもないよそんなの!」
123:
亜美「ほほう、姉にそんな秘め事があったとは」ニヤニヤ
真美「なにさ!亜美だって社長室で兄ちゃんのワイシャツにくるまってニヤニヤしてたじゃん!」
亜美「うえぇ!?あれはえと、事故だったんだYO!」
真「ごめん亜美、それたぶんボクも見てた」
亜美「うあうあー!まこちんの裏切り者ー!」
律子「真、裏切りはよくないわ。真はどんなことがあったの?」
真「ボ、ボクこそなんにもないよ!やだなー亜美ったらそんなデタラメを」
亜美「まこちんがワンピで撮った写真、いつも持ち歩いてるの知ってるYO!」
真「」
律子「実に興味深いわね、さっさと白状しちゃいなさい」
真「うぅ//……お、男の人に初めて可愛いって言われたときの恰好で…」
律子「そういえば雑誌のモデルの仕事でそんなのあったわね」
真「あぅ//み、みんなこっち見ないでぇ…//」
小鳥「真ちゃん、可愛いー!」
124:
真「こ、小鳥さんだってなにかあるでしょう!?」
小鳥「私?別にプロデューサーさんとはなに、も…」
?回想?
小鳥『キャッ!?』
P『おっと』キャッチ
P『大丈夫ですか?』キリッ←乙女フィルター補正
律子「音無さーん?」
小鳥「…はっ、な、なんですか?」
一同「」ジーッ
真「なにか、あったみたいですね」ニヤニヤ
小鳥「うぐっ!実は今日…」カクシカ
律子「よかったですねー」ニヤニヤ
小鳥「うぅ…これなんてイジメ…り、律子さんだって!」
律子「やだなあ、私は書類と戦う毎日ですからそんな余裕ありませんよ」
あずさ「あら?前にそういえば話をはぐらかされたことが」
律子「アレーナンダカノボセテキタミタイダワー」
小鳥「確保ー!」
125:
律子「わ、わかりました!私も話します!話せばいいんでしょまったくもう…」
律子「その、好きとかは分かりませんがなんとなく悪い人ではないなー、とは」
美希「律子、さんも恋してるの」
律子「美希!余計なこと言わないの!」
あずさ「でもなんだか顔が赤いですよー」
律子「血行が促進されてるだけです//というかあずささんだってそういうことあったじゃないですか」
亜美「ここにきてあずさお姉ちゃんまでフラグかー!?」
真美(ぐぬぬ…ライバルが多い…)
律子「なんでも好きって言われたそうじゃないですか!」
響「うえぇ!?そ、そんなことがあったのかー!?」
あずさ「ご、誤解です律子さん!アイドルとしてとっても魅力があるって言われただけで」
あずさ「決してプロデューサーさんがそういう感情で言ったわけでは…」
亜美「あのとき機嫌が良かったのはそういうことだったんだー」
貴音「あずさ、素直に認めたほうが楽ですよ?」
126:
あずさ「…貴音ちゃん、そうやって自分だけ隠したままなのはずるいわよ?」
響「なんだかこの流れはイヤな予感しかしないぞ…」
貴音「わたくしは確かに、ぷろでゅーさーをとても頼りにしています」
小鳥「…そういえば、前に泣いてたことあったわね」
律子「何を言われたのか、プロデューサーとして知っておくべきね」ニヤニヤ
貴音「あなたがたはいけずです//」
貴音「そうですね…ぷろでゅーさーには、これからの方針を指南していただきました」
小鳥「本当にそれだけ?」
貴音「とっぷしーくれっとです」
律子「そう、それならプロデューサー殿に直接」
貴音「お、お待ちください律子嬢!」
律子「話す気になった?」
貴音「そ、その…誰も見ていないから泣けと…//」
一同(そりゃ惚れるわ)
127:
貴音「しかし、わたくしはあいどる。この気持ちは胸のうちに秘めておきます」
律子「そりゃそうよ。しっかしそんなことがあったとは…」
貴音「…響、どちらへ?」
響「へ?い、いや、髪を洗おうかと」
貴音「先ほど洗っていたではありませんか。せっかくですから響もひとつお話を」
響「なんか貴音が怖いさー!」
貴音「なにを面妖なことを、わたくしはいつも通りですよ?」
千早「我那覇さん、もうこうなったら諦めが肝心よ?」
響「うう…じ、自分はその、特にエピソードは」
律子「ある芸人さんに可愛いって言われても反応しなかったけど、プロデューサー殿には反応したらしいじゃない」
響「そ、それはたまたまで//」
律子「プロデューサー殿が嘆いてたわよ。収録でも反応すればいいのにって」
響「だってプロデューサーはいきなりっていうか、とにかく不意打ちで言われたら照れるじゃないか!」
一同(確かに)
128:
響「と、とにかく自分の話はもう終わり!雪歩はどうなの!」
雪歩「ひゃう!わ、私はいつもダメだしばっかりでそういうのは…」
真美「…ゆきぴょん、電車で何か書くたびに兄ちゃんに見せてなかった?」
亜美「まさか愛の言葉を…」
千早「萩原さん大胆…」
雪歩「ちちち違いますぅ!!!!あれはポエムを評価してもらってただけですぅ!」
真「ポエム?雪歩、ボクにもあまり見せたことないよね?」
春香「私も誰のノートか見ようとしたら慌てて止められた記憶が…」
あずさ「あらあらー、意外とやるのねぇ雪歩ちゃん、うふふ」
貴音「萩原雪歩、なぜぷろでゅーさーには簡単に見せるのですか?」
雪歩「うう…秋からラジオでポエムのコーナーがあって…書き溜めてプロデューサーに評価してもらってたんですぅ…」
伊織「そういえばここ最近ずっと何かを書いてるとは思ってたわ」
129:
雪歩「プロデューサー、私のポエムをすごく褒めてくれて…創作意欲がすごく湧いてくるんですぅ!」
美希「じゃあプロデューサーのおかげなんだね!」
亜美「もはや兄ちゃんなしでは、生きていけない体になってしまったのだ…」
やよい「ええっ!?雪歩さんなにかの病気なんですかー!?」
春香「きっとそいう意味ではないかなーって」
雪歩(プロデューサーなしでは生きていけない…えっとそれって…はうぅっ!//////)ボンッ
真「ゆ、雪歩!?しっかりして!」
雪歩「だ、大丈夫だよ真ちゃん…////」マッカッカー
亜美「おやおやーゆきぴょんはなにを想像したのかなー?」ニヤニヤ
雪歩「ななな何も考えてませぇーん////」
伊織「亜美、それくらいにしてあげなさい」
亜美「しょうがないなー。じゃあ代わりにやよいっちはどうなの?」
やよい「プロデューサーのことは大好きですよ?本当の家族だったらいいのになーって」
亜美「うーむ、やよいっちは手ごわいですなぁ」
美希「えっと、やよい、プロデューサーと手をつなぐところを想像してみて」
130:
やよい「プロデューサーとですか?……はい、しました!」
美希「そのまま色んなところをまわるの!大きな公園とかをのんびりしてたら、いつの間にか夕方なの」
美希「突然プロデューサーが、やよいの目をじっとみてこう言うの」
美希「やよい、キスしていいかな(低音ボイス)」
やよい「はわわ//プロデューサーとそんな//だ、ダメですけどダメじゃないというか…//」
美希「もう目を開けていいよ、やよいもプロデューサーに恋してるの!」
やよい「うう//なんだか恥ずかしいです…」
春香(あの真剣な目で迫られたら…)
真(君だけが俺のお姫様だよ、なんて…な、なに考えてるんだボクは//)
響(変態プロデューサーがどうしてもって言うならそれはそれで…な、なに考えてるんさー自分のバカー!)
伊織「アンタたちも戻ってきなさいよ…」
美希「でこちゃんはどうなの?」
伊織「でこちゃん言うな!別にどうとも思ってないわよあんな変態」
美希「そうじゃなくて、プロデューサーとキスしたいって思う?美希は彼氏にするのはアリだけど、キスはまだってカンジ」
伊織「は、はぁ!?あんな変態大人とき、きききキスぅ!?」
131:
美希「されたい?されたくない?」
伊織「そ、そんなの…たぃに決まってるじゃなぃ…」
美希「?よく聞こえなかったの」
伊織「キィー!どうしてもって言うならしてあげないこともないわよ!//」
美希「ツンデレ乙なの」
伊織「うるさいうるさいうるさーい!」
亜美「……つまり、みんな兄ちゃんのこと好きってこと?」
あずさ「あらあら、プロデューサーさんったらモテモテですねぇ」
真美「に、兄ちゃんは誰にもわたさないよ!」
春香「真美のものじゃないよ!」
雪歩「ま、まだ誰のものでもありませぇん…」
千早「私は歌さえ聴いてくれればそれで…」
律子「ちょ、ちょっとストーップ!いつから暴露大会になったのよもう!」
響「今更すぎるぞ…」
132:
無人駅 同時刻
吉澤「遅れてすまない」
P「俺もいま来たばかりです」
吉澤「あれからなにか分かったか?」
P「さっぱりだ。よくあたる第六感で革命の単語が浮かんだということ以外は」
吉澤「革命?」
P「なにか分かりますか?」
吉澤「ふむ…一応調べてみよう」
P「お願いします、そちらはなにか分かりましたか?」
吉澤「主に悪いニュースなら」
P「…どうぞ」
吉澤「ひとつ、ボクを監視しているヤツがいた。すぐに振り切ったが」
P「吉澤さんを?」
吉澤「そうだ。それから二つ目、いま組織は二つの派閥に別れている」
133:
吉澤「安藤派と吉澤派だ。僕の名前は使わないでくれと言ったんだけどねぇ…」
P「なかなかヤバイ状況ですね」
吉澤「まだ衝突はないけれど、時間の問題だろうね」
P「……まだあります?」
吉澤「あるよー♪」
P「でしょうね。なんですか?」
吉澤「ドイツ以外にも情報は売られていたようだ」
P「…は?なぜ?」
吉澤「さあ、今のところはわからない。世界中を混乱の渦にでも叩き込みたいのかねぇ」
P「……俺は、裏切るなんてことは一度も考えたことはない。裏切られるのは別にかまわないが」
P「だけど、今回ばかりは納得できない。世界平和のために動いてきたハズなのに」
吉澤「…四つ目、いいニュースだ。765プロの安全は保障するよ」
吉澤「私の部下に765プロを守らせている。最悪の場合は狙撃部隊で君を守る」
P「アイツらの安全も保障できるのか?」
吉澤「もちろん。まあ限界があるかもしれないが、可能な限りは守るよ」
吉澤「部隊のメンバーには、君の素性を知らせていない。混乱と情報の洩れを防ぐためにね」
吉澤「それにお得意様がいなくなったら、記者として困ってしまうからね」
134:
吉澤「――最後にひとつ、ボクからの忠告だ」
吉澤「あの子たちに、早く素性を教えた方がいい。それかあの場を去ることだ」
P「なぜ?安藤派にはバレていないのでしょう?」
吉澤「そうじゃない。君も薄々感づいているんじゃないのか?よく当たる第六感とやらで」
P「……いつか、正体がバレるかもしれない。そんなのは最初から覚悟している」
吉澤「このまま黙ってるなんて、あの子たちが可哀想じゃないか」
P「あなたも知ってるでしょう?俺は普通じゃない…世間的には、俺は存在していない人間だ」
P「そんな人間だと知ったら、アイツらは拒絶するさ……」
吉澤「でも順二朗くんは拒絶しなかっただろ?」
P「あれは社長さんが頭イカれてんだよ……」
吉澤「ふぅ、まあ君の生まれてはじめての自由な人生だ。僕が口出ししても、ね」
P「……あなたが俺の立場なら、どうしますか」
吉澤「難しい質問だね。君ほど強くもないからきっとすぐに自殺したんじゃないかな」
P「では生きてると仮定したらどうです」
吉澤「そうだね…………悩んだ末に、打ち明けるんじゃないかな。なんかこう、信頼してしまうんだよ」
吉澤「記者としての立場から言うと、ダイヤモンドの原石ってあんな感じなんだろうね」
135:
大部屋 22:00
春香「……なんか、ビックリしちゃったね」
千早「……そうね」
伊織「……まあ、そういうこともあるわよ」
やよい「……こんなとこまでみんな仲良しなんですね」
真「……これ、もしかしてすごいことなんじゃない?」
雪歩「……もしかしなくてもすごいことですぅ」
亜美「……これからは早いもの勝ちなの?」
あずさ「……抜け駆けはダメよ?亜美ちゃん」
真美「……抜け駆けしないと勝ち目なんてないっぽいよー」
響「……でも本当にすごいことだぞ、こんな人数」
貴音「……それほどまでに、あの方は素晴らしい殿方ということでしょう」
律子「……アンタたち、アイドルの間は絶対にだめよ?」
小鳥「……でも他事務所にもモテるんだろうなぁ」
一同(……あり得る)
美希「……」zzz
136:
8月3日 7:00
P「みんな、おはよう。朝食をとったら各自帰り支度をして待機。8時くらいに出発だ」
一同「……」
P「体調はしっかりと管理しろよー、明日からまた仕事があるからな」
一同「……」
P「……なにか?」
一同「「「「浮気はダメだよ!」です!」」」
P「はぁ?」
真美「朝ごはん一番乗りー!」
亜美「そうはさせるかー!」
春香「走ったら転んじゃわああぁ!」ドンガラガッシャーン
美希「平常運転で安心なの」
どうやら絆というか、団結力は格段に高まったようだ。
……俺を除いて。
137:
9月14日(土) 20:00
俳優「オールナイトジャパーン!」タータラッタ タッタララッタッタラ
俳優「本日のゲストは、765プロよりお越しの竜宮小町の三人でーす!」
亜美「こんばんわー!双海亜美でーす!」
伊織「みんなこんばんわっ、水瀬伊織ちゃんですっ」
あずさ「うふふ、三浦あずさです、よろしくおねがいしまーす」
俳優「いやー三人とも可愛いですねー!残暑がまだまだ厳しいけど、三人を見たら頑張れそうですよ」
あずさ「あらあらー、ありがとうございますー」
俳優「さあ、軽く紹介いたしましょう!リーダーは水瀬伊織こといおりん!」
伊織「はーい!みんな、今日はラジオだけで姿を見せられなくてごめんね。でもその分、トーク頑張っちゃうから応援してね!」
俳優「いやあ素敵な挨拶ありがとう!続いて元気いっぱいの双海亜美こと亜美ちゃん!」
亜美「やっほー、全国の兄ちゃん姉ちゃん、今日も亜美、メチャ頑張るかんね!」
俳優「亜美ちゃんを見てるとなんでもできそうな気になれるな、ハハっ」
俳優「最後は大人の魅力たっぷり三浦あずさこと、あずささん!」
あずさ「ただいま紹介にあずかりました、三浦あずさと申します。今日は、リスナーのみなさんを楽しませられるよう頑張りますね」
俳優「このゆったりとした独特の空気がクセになっちゃいそうです。えーまずは曲ですね」
俳優「曲はsmoky thrillです、どうぞ!」シラヌガーホトケッホットケナイッ
138:
事務所 22:15
律子「ただいまもどりましたー」
P「三人は直帰か。ラジオは問題なかったぞ」
律子「それはよかった。えーと握手会の会場がアレでその前はCМが2本と。それから……」
P「土曜日の午後にフェス、だな。相手はおそらくジュピター」
律子「そうですね、プロデューサー殿が練った対策は頭に入ってます!」
P「そうか、ならあとは体調の管理を怠るな」
律子「お気遣いどーも。それじゃあとは家で仕事しますのでお先に失礼します」
P「気をつけろよ」バタン
P「……音無は明日も休みか、電話番もしなきゃな」
俺は二冊手帳を取り出す。
黒井手帳には、土曜日 ジュピターと書く。
赤い手帳には、思いつく限りの推理を書きなぐっている。
デジタルで編集した方が楽だが、万が一ハッキングされたら最悪だ。
デジタル対策はアナログで充分だ。
139:
TV「次のニュースです、今日○○署の署長ら三名が、着服に関与したとして逮捕、起訴されました」
悪いニュースばかりだ。
合宿以来ろくなニュースを聞かない。
レッサーパンダの赤ちゃんが生まれたとか、その程度なら明るいニュースもあった。
だがTVを点けるたびに、殺人だ放火だ汚職だ領土問題だと毎日よくネタが尽きないもんだ。
竜宮小町という、秋月プロデュースの新ユニットが、爆発的なヒットだというのはもちろんいいニュースだが。
アイドルたちと生活しているせいか、ホンの少し危機管理能力が下がってきたような気もする。
それとも、トレーニングをしていないせいで減退期に入っているのだろうか。
自分でプログラムを組んで、それをハッキングしたってトレーニングにはならないし……。
真美『もしかして世界を股にかけるスパイだったりして!』
唐突に双海姉の言葉がフラッシュバックした。
P「……大丈夫、バレやしない」
無理やりそう言い聞かせて、俺は予算表を片手に電卓をたたき始めた。
140:
P『ただいまもどりました』
音無『こっちに来ないで!』
P『え?』
春香『この、人殺し!』
P『待て!俺は殺しなんか』
高木『すぐに出ていきたまえ!』
P『そ、そんな……ここはどこだ!?』
急に景色が切り替わる。
そこは深い暗闇。
闇の中から見覚えのある目が俺を捕らえる。
安藤『今日から俺たちは家族だ』
吉澤『僕はなかなか君とは会えないだろうが、仲良くしよう』
また景色が切り替わる。
今度はすべてが白い光の中。
眩しくて思わず目を細める。
??『―な――!』
俺はそれに手を伸ばすがギリギリで届かない。
??『―――で!』
もう少し……もう少し……身を乗り出してそれをつかむ。
途端にそれは振り返り、俺に叫んだ。
亜美『来ないで!』
141:
事務所 9月15日(日) 4:53
P「……朝一でまずはコインランドリーか」
自分史上稀にみる悪夢だった。
睡眠をとっていたハズなのにひどく疲れている。
P「……仕事、今日だけは休みてーなー」
ふと口に出してみる。
もちろん休む気などさらさらないが、普通の人間ならこんな愚痴をこぼすのだろうか。
結局布団も汗でグッショリと濡れていたため、二度寝することは諦めた。
――そろそろ、ここを去るべきなのかもしれない。
情が移ってきているのが、なんとなくわかる。
信じがたいが、排除してきた余計な感情が芽生えてきているのだろう。
あの組織にずっと長くいたハズなのに、
ココ(765プロ)にいた時間の方が倍は長く感じる。
P「……決めた」
今月、俺はここから立ち去ろう――。
142:
9月18日(水) 23:00
P「…はい…はい…では高槻を起用していただけると…失礼します」ピッ
P「……いきなり電話かけてきて高槻の使わせろだと?どれだけ上から目線だよ」
まあ上なんだけどさ。
愚痴を言いながらながら携帯を切る。
……そうだ、そろそろ携帯も解約しないとな。
……腹減ったな、コンビニでも行ってくるか。
アリガトゴザイマシター
P「えーっとフェスには竜宮小町が出るから、天海・如月・星井も出させたほうがいいか」
ドサッ
後ろで何かが崩れ落ちた。
本能が振り向くなと告げているが、振り向いてしまう。
危機管理能力の著しい低下。
俺は何をやっているんだ。
P「……嘘だろ、ウソだと誰か言ってくれ」
血だらけの男が一人、倒れていた。
143:
男「はーっ、はーっ、かはっ……はーっ」
そいつはまだ息があった。
いつ死んでもおかしくないような状態だ。
目の焦点が定まってないが、親の仇でも見る様な目つきだ。
P「トマト祭りの帰りかぁ?」
男「ぜぇ、ぜぇ、ど、どっちだ…」
P「は?」
男「安藤派か?安藤派なら…わ、わたしの命にかえても…」
――そうか、コイツ下っ端の諜報員なんだ。
しかも吉澤派だ。
安藤派と答えれば襲い掛かってくる。
吉澤派と言ってもまともに考えられるか怪しいもんだ。
――試しに、こう言ってみるか。
P「6代目Мr.Perfect だ。何があった」
男は目を見開き、俺に這いずりながら寄ってくる。
144:
男「噂は本当だったんだ…こ、これを…」
男は一枚の折りたたんだ紙を震える手で差し出した。
しゃがみこんで紙を受け取ると、男はまた話し出す。
男「それ、には、わたしの、お、親の墓の、場所だ…死ぬ前に、墓参り、したかった…」
男「親不孝のわたしのか、代わ、りに……た、頼む…」
P「……泣くな、適切な処置を施せば」
男「も、もう無理だ…もうひ、一つだ、け、聞いてくれ…」
男「みんな、い、言ってた…あなた、だけが、希望だと…」
男「逃げ、て、…ください…でも、た、た…戦うことを、やめないでください…」
P「……好きな花はなんだ」
男「と、トルコキキョウ…ぜぇ、ぜぇ…」
P「……近いうちに必ずお供えしておく」
男の目がだんだんと穏やかになっていく。
男「た、戦って、勝っで、ぐぇ…」
P「……任務了解」
男「あ、あ、うぁあぁ、ヒグッ、うぁりが、ど、お゛…」
言い終えた直後、男の手から力が抜けた。
P「……逃げろ、戦え、か」
145:
そのとき遠くで声が聞こえた。
津田はどこだ、逃がすな始末しろ、と。
安藤派のヤツらだろう。
津田とはこの男のことか。
とにかく逃げさせてもらう。
涙を流ないことはなにもおかしくない。
だが、いわゆる悲しみという感情だろうか。
俺の心を支配していくのが分かる。
……心?
P「今月とは言わず、仕事片付いたらすぐに出ていこう」
腕時計は0時を回ろうとしていた。
誰もいない事務所に鍵をかける。
今夜もまた眠れそうにはないだろう。
146:
9月21日(土) 11:58 社長室
高木「本気なのかね?」
P「はい、仕事が片付きしだいここを去ります」
  同時刻 車内(事務所前)
律子「もう、あれほど準備しなさいって言ったでしょ!」
亜美「ごめんね律っちゃん、すぐに取ってくるよ」
律子「まったく、先に車に乗ってるからね!」
亜美「わかったー!」
  11:59 社長室/事務所
高木『ふむ、ちなみに理由を聞かせてもらえるかね?』
亜美「えーっとどこに置いたっけ?」
P『あくまで推測ですが、ここを特定された可能性があります。』
亜美「あ、あった!……しゃちょーと兄ちゃん?なに話してんだろ?」
147:
高木『……そうか、それでは仕方がない』
P『ひとつ、いいですか?』
高木『なにかね?』
P『俺が元スパイだと知っても、ここにいさせてくれた理由はなんですか』
亜美「兄ちゃんが元スパイ?なんかのゲームしてんのかな」
高木『ティンときたからだ、本当にそれだけだよ』
P『ハハッ、変わってますね』
高木『よく言われるよ。ちなみにギリギリまで居てくれと言ったら、いつまでかね?』
P『今月までです。今月中には辞めさせていただきます』
亜美「兄ちゃんが辞める……辞める?え、辞める!?」
P『アイツらには迷惑かけました。テロリストを撲滅させた人間が、アイドルプロデュースなんて笑えるよ』
亜美「え、え、えっと、兄ちゃんが…スパイで辞める…え?」
律子「亜美ー!早くしなさーい!」
亜美「あっ、う、うん……」
律子「ちょっと亜美!遅いから様子を見にきたわよ、ってどうしたの?」
亜美「え、えっと…は、早く行こ!」
律子「あ、ちょ、ちょっと亜美!階段を走らないで!」
148:
フェスティバル会場 13:00
律子「いい?相手がジュピターでも大丈夫!」
あずさ「プロデューサーさんが作戦考えてくださったものねー」
伊織「まあ、アイツにしてはマシな作戦なんじゃない?」
亜美「……」ショボーン
伊織「?ちょっと亜美、具合でも悪いの?」
あずさ「亜美ちゃん?」
亜美「ふぇ?だ、だいじょーぶだよ!ちょっと眠くなっただけだよ!」
伊織「大事な戦いの前に緊張感もちなさいよ!」
亜美「ごめんごめん、説教はあとで!」
律子(なにか様子がおかしい、大丈夫かしら)
亜美「れっつらごー!あまとうなんかやっつけろー!」
律子「いっとくけど、春香たちもくるからねー。負けてられないわよ!」
あずさ「そうでしたか、うふふ。負けないくらい楽しまないと!」
149:
P「いいか如月、お前の技術にかかってる」
千早「はい、どんなことでもやり遂げます!」
P「最初、まずはとにかく目立て!注目を集めろ」
P「そのあとは抑えろ。天海と星井が目立ちすぎないように持ちこたえろ」
春香美希「「はい!」なの!」
P「如月、お前はいわば一発屋状態をキープすることになる」
P「するとファンは注目してるぶん不審に思う」
P「だが飽きられないようにギリギリのところで二人がつなぎ」
P「サビでもう一度爆発させる。最後のサビでは三人とも力を振り絞れ」
P「かの有名なヒトラーの演説にならって作戦を立ててみたが、質問はあるか?」
美希「ねえプロデューサー」
P「なんだ星井」
美希「ヒトラーって誰?」
P「歴史の教科書あたりに載ってるよ」
美希「ふーん。よくわかんないけど、美希は最後までキラキラするのガマンすればいいんだねっ☆」
P「それでいい。あとは周りを気にしないで歌ってこい」
150:
律子(あずささんはとてもいい状態で動けてる)
律子(伊織は周りが見えてるみたいね。うまくフォローに回れてる)
律子(でも、亜美がおかしい。全然集中できてない)
P(如月はしっかりと歌い上げてる)
P(天海はミスしかけたが、持ち前のあざとs、機転を効かせて魅力にしている)
P(星井は……才能に頼りすぎだ)
P(くそっ、力を引き出せないまま辞めるのか)
P(それでもなんとかジュピターには食いついていってる)
P(――だが、それまでだ)
冬馬(確か、あいつ天海とか言ったな。なかなかやるじゃねえか)
北斗(竜宮小町のレディたちはなんだかうまくいってないみたいですね)
翔太(765のプロデューサーさん、なんか面白いことやってるなー)
151:
律子「……」
あずさ「」オロオロ
伊織「……」
亜美「」グス
律子「……今日のことは怒ってないわ。またレッスン頑張りましょう」
伊織「そうね、くよくよしても仕方ないわ」
あずさ(なんだか不穏な空気…年長者の私がなんとかしないと…)
冬馬「オイ、ちょっと待てよお前ら」
律子「あら?何のようかしら天ケ瀬冬馬」
翔太「僕たちもちゃんといるよー」
北斗「チャオ☆」
律子「今日は文句がつけられないほど素晴らしかったわ。じっくりと研究させt」
冬馬「ふざけんじゃねえ!」
亜美「」ビクッ
伊織「女相手にそんなに叫ぶことないじゃない」
北斗「はは、確かにそうだ。それについては謝ります」
152:
北斗「だけど、同じアイドルとしての戦いに性別は関係ないですよね?」
翔太「うんうん、正直期待してたんだよ僕たち」
律子「期待?嫌味なら別に聞きたくないわ」
翔太「えー、ホントに期待してたのに。特に冬馬くんは本気でやろうって盛り上がってたよ」
あずさ(ど、どうしましょう…なんとか丸くおさめたいのだけど…)
冬馬「アンタらにはがっかりだぜ。仲間がどうとか言っておきながら」
冬馬「まるで連携できてねーじゃねーか!」
伊織「……それは、リーダーの私の責任よ」
翔太「え?君の責任なの?それ本気で言ってる?」
伊織「本気で言ってるに決まってるじゃない」
北斗「状況判断の力を、もっと身に着けたらどうかな?お嬢さん」
冬馬「もしそれが本気なら、ホントにおめでたいやつらだぜ」
冬馬「仲間をかばったつもりか?所詮そうやって傷をなめ合うだけじゃねえか」
律子「それで何が言いたいのかしら?話が長い男は嫌われるわよ」
翔太「アッハハハハ!確かに僕もそういうのは好きじゃないかも」
北斗「冬馬、言うなら優しく言「そこのチビ!」」
冬馬「確か双海亜美とかいったな。今日のお前はプロ失格だ!」
冬馬「仮に体調不良だとしても、管理できないんじゃあダメだ」
北斗「だからオブラートに、まあいいか。冬馬はそういう奴だし」
翔太「それに見抜けなかったメガネのお姉さんやメンバーにも、ちょっと問題があったんじゃないかな」
153:
亜美「ゎ、わかってるもん……亜美が足を引っ張ってたって…うう、うえええええん!」
亜美「で、でも、亜美にだって色々あって、なんにも知らないくせに、うわあぁぁん!」
亜美「あまとうの、ヒッグ、あまとうの、ヒッグ、あまとうのバカーーーーーーー!」
翔太「あーあ、冬馬くん泣かせたー」
北斗「これはやりすぎかな。ほら、冬馬」
冬馬「うぐっ!な、なんだよ!その、少し言い過ぎたよ」
P「はいそこまでー。やっぱりお前らは来ると思ってたよ」
翔太「あ、765のお兄さんじゃーん!」
北斗「今日はすごく盛り上がってましたね」
P「それで、このありさまは?」
冬馬「……俺のせいだよ。俺が事実を言ったからこうなった」
冬馬「だけどな、こっちは真剣にやってるんだ!仲良しごっこならよそでやれ!」
北斗「おい冬馬!冷静になれ」
P「まあまあ、ここは一旦終わろうぜ、な?」
154:
P「秋月、三人をつれて楽屋に戻れ」
律子「わかりました」
P「それにジュピターの三人も、特に天ケ瀬は勘違いしていることがある」
ホライクワヨ ダイジョウブアミチャン ゴメンネ ワスレモノナイワネ
冬馬「勘違い?」
P「お前らも真剣だしウチも真剣だ。そしてあの四人も真剣だ」
P「それに仲良しごっこと団結は違う」
P「……まあ、どうせ明日話すだろうし、今は帰って左足の管理をしとけ」
P「最後の決め、太もものスジに軽い痛みが走ったように見えた」
冬馬「な、なんでそれを!つーか明日ってどういうことだよ!」
P「今は頭も冷やせ。じゃ、仕事あるからこれで」
オイマテヨ モウイイジャントウマクン イマハシタガオウ
春香「プロデューサーさん♪」
美希「今日の美希たち、ジュピターに負けてなかったって思うな」
千早「プロデューサーのおかげです、ありがとうございました」
P「お前らはなかなか頑張ったみたいだが、細かいミスが目立つな」
春香「うぅ、すみませーん…」
P「だが成長した証でもある。今日はしっかり休め。如月と星井は明日はオフ。天海はレコーディングだ」
春香美希千早「はい!」
155:
9月22日(日) 14:00 961プロ エントランス
P「ジュピターに会わせてくれ。765プロの赤羽根と言えば通じるハズ」
受付嬢「すみませんが765プロとは関わるなと社長が」
P「昨日約束してるんだ直接。それに携帯を忘れてったみたいだから返しにきた」
受付嬢「しかし、規則は規則で」
翔太「あれー?765のお兄さん、なんでここにいるの?」
P「よう御手洗、携帯忘れてたみたいだから届けにきたんだ。中にいれてくんない?」
北斗「おや誰かと思えば、別に黒井社長も席を外してるし少しくらいいいんじゃないですか?」
P「さすがモテるやつは話がわかるな。じゃあお邪魔します」
受付嬢「ちょちょっと困ります!社長に連絡しますよ!」
P「どうぞどうぞご勝手に」
北斗「ところでどうして敵地に?」
P「携帯返すのと話の続きをね」
冬馬「ん?てっテメー!人の携帯なんで持ってやがる!」
P「お前たちの楽屋に落ちてたんだよ」
冬馬「それ泥棒じゃねーか!」
P「人聞き悪いな、それに返したからいいだろ?」
冬馬「な、なんなんだ765プロの連中は……」
156:
961プロ 第三応接室 14:12
P「さて、一度おまえたちとじっくり話がしてみたかったんだよな」
翔太「僕たちと?」
P「そう。いったい黒井社長になにを吹き込まれたのか気になってね」
北斗「ああ、そういうことですか。俺は昔社長が女性をとられたって聞きましたね」
翔太「えークロちゃんそんなことがあったの?」
冬馬「それ本当なのか!?」
北斗「どうした冬馬?何を慌てているんだ?」
冬馬「俺は765プロは裏で汚いことをしてるって」
俺に限ればそれで正解なんですけどね……。
翔太「んー765プロってそもそもあんまりお金ないのにそんなことできるの?」
P「できるならとっくにやってるな」
北斗「気にするなよ冬馬」
冬馬「まだ何も言ってねえ!」
P「なるほどね。まあ黒井社長の過去を考えたら憎むのもわかるかな」
冬馬「おっさんの過去を知ってるのか?」
157:
P「お前らは直接聞けばいいだろう」
翔太「だーって全然教えてくれないんだもん」
北斗「そういえば聞いたことがないですねぇ」
P「ま、せいぜい頑張れ。とりあえず俺が聞きたいことはそれだけだ」
冬馬「オイ待てよ!自分だけ言いたいこと言って帰んのかよ!」
P「ダメ?」
冬馬「俺にも言わせろ!仲良しごっこじゃないってどういうことだ」
P「ああ、ソレか。今は仲良しごっこに近い」
P「だが、自分のためだけに動くのと、他人のために動くのでは結果が違うのさ」
冬馬「チッ、くだらねえ……」
P「もちろん、個人の力も大事だけどね。ただこのままならウチがいつか圧倒的な差をつけて勝つ」
――このまま俺が残ればの話だがな。
冬馬「だったらなんだ!負けねえように力をつけてねじ伏せてやる!」
P「はは、いいねえその闘争心」
冬馬「バカにすんじゃねえ!」
158:
P「いやいや星井に見習わせたいよまったく」
冬馬「くそっ!だいたい昨日のアイツらはなんだ!結局負けたじゃねえか」
P「竜宮小町か?それなら御手洗が言ったように俺の責任だ」
P「つまり俺の負けであって秋月たちの負けじゃない」
冬馬「……それなら、次で決着をつけてやる」
P「次のフェス?」
冬馬「昨日はオレがさいごにミスをした。次はそうはいかない、全力でやってやる」
冬馬「だからそっちも、ベストメンバーのベストな状態で挑んでこい!」
冬馬「アンタがいう団結の強さってやつを、俺に勝って証明してみせろ!」
P「……オーケー、9月29日の日曜日、証明しよう」
すると天ケ瀬が手を差し出してきた。
冬馬「男と男の勝負だ。誓いの握手をしろ」
北斗「やれやれホントに冬馬は熱血感だな」
黒井「ノンノンノン、下衆と握手などする価値はない」
159:
P「黒井社長……お久しぶりです」
黒井「まったく756プロのドブネズミが一匹入り込んだと聞いたから来てみれば貴様か」
P「ウチは765プロです。そんな暗記力で大丈夫ですk」
黒井「大丈夫だ問題はない。それより貴様にこのセレブな私がひとつ質問してやろう」
P「光栄ですが恐れ多いのでお断りします」
黒井「まず一つ、貴様の名は?」
スルーかよ。
P「赤羽根健二です」
黒井「そうか、ま、頭の片隅に覚えといてやろう」
黒井「さっさと帰りたまえ」
P「失礼します、アデュー」
黒井「言い方がなっとらんアデューだ!」
翔太「クロちゃん怒るとこソコなんだ……」
黒井「うるさい!お前たちはレッスンしていろ!」
160:
事務所 19:00
律子「ハァ」
P「どうした、飲酒運転の検査はしてないぞ」
律子「飲んでません……プロデューサー殿、最近亜美になにかあったとか知りませんか」
P「双海妹か、特には」
律子「いったいどうしちゃったのよ……ハァ」
P「双子姉には聞いたのか」
律子「真美にも聞いたけど、何も教えてくれないんです」
律子「なんだか、常に何かにおびえていて……」
P「ふーん……なにか分かったら連絡するよ」
律子「すみません、お願いします……」
  同時刻 千早宅
千早(…コンビニの帰り、誰かに見られていたような…気のせい、よね)
161:
9月26日(木) 16:45
スタッフ「それじゃ如月さん、レコーディングの方はじめますねー」
千早「はい!」
?♪
音声係「いやぁ流石の歌唱力だなぁ」
P「ありがとうございます」
音声係「前からすごかったんだけどさ、いい歌声になったよ」
P「ありがとうございます」
音声係「なんかバラエティもできる歌手って感じでオレ好きだな」
P「歌手ですか、如月も喜ぶと思います」
歌手、か。
それはいいんだが、複雑な気分になる。
如月の目標は歌手だから嬉しいが、
今はまだ、「アイドル」なんだ……。
162:
P「レコーディング、うまくいって良かったな」
千早「はい、プロデューサーのおかげです」
P「いや、お前自身の努力のおかげだ」
千早「しかし、プロデューサーがいたから」
P「俺がいなくなったらダメになるのか」
千早「そういうわけでは……」
P「だからお前自身の手柄だ」
千早「そう、ですね……私、頑張りましたよね」
P「ああ」
千早「私、頑張りましたよ?」
P「……なんだ?」
千早「その、頑張った人は褒められるべきですよね……」
P「さっき褒めたぞ」
千早「で、でしたら、その…ぁ…」
千早「頭を撫でてくださぃ//」
P「悪いが無理だ。それに場所をわきまえろ」
千早「へっ?……はっ//」
音声係(オレちーちゃんのファン一筋で生きてく)
スタッフ(俺もそうするよ)
163:
事務所 18:00
律子「お疲れさま、学校帰りで疲れたでしょ?」
千早「まあ少し……それより喉の保湿が大変だったわ」
律子「徹底してるわね」
小鳥「そこが千早ちゃんの良さでもあるのよね」
千早「音無さん、そんなに持ち上げても何もだせませんよ?」
小鳥「ふふっ、なんだか千早ちゃん可愛くなったわね」
千早「なっ、かっかわ//」
律子「小鳥さん、千早は前から可愛いわよ?」
小鳥「それもそうですね、ごめんなさい」
千早「あの、もうやめて//」
P「ホラさっさと帰れまったく」
千早「あっ、あのプロデューサー!」
P「なんだ?」
千早「あの、私の勘違いだとは思うんですが…最近、誰かにつけられてるような」
小鳥「それってストーカー!?」
P「……そうか、こちらからも色々と探っておく」
164:
事務所 9月29日(日) 6:00
今日、俺は退社する。
社長以外の誰にも気づかれずに。
今日の仕事は、フェスでジュピターに勝つこと。
前回は天海と星井で固め、如月という爆弾で盛り上げた。
今回は天海が爆弾だ。
星井と如月でまずは先制する。
そして天海の歌と、表情。
天海は笑顔も似合うが、もうひとつの秘密兵器がある。
――涙だ。
意外なことに、天海の涙を見た者はほとんどいない。
偶然にも俺は、事務所でDVDを見ていた天海に声をかけた。
春香『グス、あ、プロデューサーさん。これスゴく泣けるんですよ』
どうやら悲恋モノの映画だったらしい。
そして俺は、今日そこに賭けることにした。
フェス向きではないが、バラードであるmy songでいく。
既存の作戦ではジュピターには勝てない。
時には大胆に行動しないと勝てない。
165:
――で、なぜ俺がこの時間に起きているかというと
千早「……」
P「……病院に行こう」
今朝、如月から電話があった。
歌が、歌がとしか言わない。
その後すぐに事務所に如月は来た。
如月は歌えなくなっていた。
歌おうとすると声が出ない。
異常事態に戸惑う事が、俺にはできない。
そこに激しい苛立ちを覚えながら、病院をたたき起こして診てもらった。
待っている間、看護師たちの会話が聞こえてしまう。
――ねえ確か如月千早って――
――そうだわ、昨日発売の週刊誌に――
P「なあ、知ってる情報をすべて教えてくれ」
166:
事務所 9:00
P「まさかスクープされるとはな」
如月にはかつて弟がいた。
子どもの頃に事故死し、家族は次第に仲が悪くなっていった。
決して如月は悪くない。
悪かったのは運だ。
そしてそれは、トラウマとして残っていた。
医者の判断では、一時的な発作らしい。
炎症もなく、失声症というやつに近いのだろう。
P「水曜以降、お前の近くをうろついてる輩がいないか知らべた」
P「だが見つからなかった。水曜日の段階で記事はできていたんだろう」
千早「すみません……」
P「今後の対策は、とりあえず社長の指示を仰いでからだ」
P「そしてフェスだが」
千早「大丈夫です、歌わせてください」
P「できればそうしたいが、無理だ」
千早「お願いします!」
P「……」
168:
明らかにマズい。誰だって止めるハズ。
千早「……最初で最後のワガママです」
千早「あの記事に、負けたくないんです」
千早「だから……お願いします!じゃないと、私は…優に…」
P「……時には大胆に、か」
P「本来なら絶対に許可しない」
P「だから俺はお前を止める」
P「あの作戦も中止だ。それでも出たいなら、俺を振り切ってでも出ろ」
P「いいか。俺は、止めたからな」
千早「ありがとうございます」
これでいい、これでいいんだ。
俺は今日いなくなるから、もう俺には関係のないことだ。
コイツらも、俺と関与なんかしていない。
そのほうが幸せなんだ。
169:
フェス会場 12:00
P「よう、逃げなかったのか」
北斗「お言葉ですが、そちらはあまりにも不利ですよ?」
P「だからなんだ?」
翔太「悪いけど、僕たちも手は抜けないんだー」
P「それで?」
冬馬「アンタ、ふざけんなよ」
冬馬「ベストな状態でっつったよな?」
冬馬「こんなんで勝っても嬉しくねえ!」
P「……じゃあ、ミーティングあるから」
P「それに、竜宮小町だっているんだ。勝ってから言え」
冬馬「……クソっ!」
??「」コソコソ
翔太「あれ?今誰か通ったような」
北斗「……なあ冬馬、もしかしたらなんだが」
冬馬「ん?」
170:
14:00
律子「千早、大丈夫?」
P「如月、いつもに比べたら伸びがなかった」
律子「……仕方ないわ、しばらくは無理よ」
千早「」ギリッ
律子「本当なら歌わせたくなかったし、プロデューサー殿を殴ろうと思った」
律子「でもそんなことしても意味はないし、何よりあなたが心配だった……」
律子「…ごめんなさい、私、頭の中がもうぐちゃぐちゃでなんて言っていいか…」
P「……竜宮小町も、なんだかギクシャクしてたな。特に亜美」
P「いったい何があったかは分からないが、早く解決しろ」
P「お前には仲間がいるんだから」
亜美「……うん」
黒井「おい、765のプロデューサー」
P「おや、いらしてたんですね」
黒井「少し顔を貸せ。話したいことがある」
P「分かりました。……みんな先に帰ってろ」
律子「……わかりました」
171:
フェス会場外 14:07
黒井「ここならいいだろう」
P「なんでしょうか」
黒井「単刀直入に言おう。ジュピターの行方を知らないか」
P「知りません」
黒井「そうか……」
P「……何かあったんですね」
黒井「貴様に話す義理など」
P「いいから答えろ!」
黒井「……これは独り言だ。もしもこの私の考えが正しいなら、渋沢という男を追っているかもしれん」
P「渋沢?」
黒井「如月千早の記事を書いた下衆だ。あの記事があっても歌うアイドルなど、記事のネタにしかならん」
P「まさか、来ていたんですか?」
黒井「ウィ、そうだろうな。ま、私としては貴様らが負けるのはいっこうに構わん」
黒井「……だが、これでは勝っても気分が悪い。まったく765プロは本当にダメな事務所だな」
黒井「だが、貴様だけはどうやら違うようだな」
172:
黒井「本当の名前を言ってみろ」
P「赤羽n」
黒井「そんな男は存在しない、引き抜き工作をしようとしたが、貴様の存在は一切分からなかった」
黒井「何者だ貴様」
P「……それこそ教える義理はありません」
黒井「フン、そうか。……貴様なら、ジュピターを探し出せるか?」
P「あなたの人脈を使えばいいでしょう」
黒井「もうやっている!だからこそだ…本当は765の人間に頼むなど有りえん」
黒井「しかも得体が知れん奴などもってのほかだ!」
黒井「……しかし、アホの高木が信用しているというから頼むんだ」
黒井「一刻も早く探し出し、連れ戻してほしい」
黒井「この黒井崇男、恥を忍んで貴様に頭を下げる」
黒井「頼む、嫌な予感がするのだ…」
P「……いいでしょう。今日であなたともお別れですから」
黒井「……相変わらず、意味のわからん男だ」
173:
最寄駅 16:23
冬馬「翔太!アイツはどっちに行った!」
翔太「たぶん右!」
北斗「冬馬、ここは挟み撃ちだ!」
冬馬「分かった!逃がさねえぞあのやろう!」
渋沢「ヒィ、ヒィ、えな畜生!」
女子校生「ねえアレジュピターじゃない!?」
女子高生「わっ、ほんとだ!何かの撮影?」
女子校生「ーい!」
P「――聞こえた」
およそ700メートル先、地下2階か。
視力抑制眼鏡を外そう。
冬馬「翔太!左から行け!」
翔太「冬馬くんは?」
冬馬「このまま行くぜ!」
174:
P「――いた、見つけたぞ」
渋沢「ひぃ、ひぃ、ひぃ」
北斗「残念ですけど、行き止まりですよ」
渋沢「のわぁ!」
翔太「はぁ、はぁ、確かあの記事書いた人だよねぇ、はぁ」
冬馬「やっと追いついたぜ……真剣勝負をぶち壊しやがって!」
P「殴るな!天ケ瀬!」
冬馬「なっ!あ、アンタは!」
翔太「765のお兄さん!」
北斗「おっと、逃がしませんよ?」
渋沢「畜生!」
P「絶対に手を出すな、それすら記事にされるぞ」
渋沢「ひ、表現の自由を」
P「ほう、俺を相手に法律で挑むか」ゴゴゴ
渋沢「ヒッ!」
175:
P「あとは俺がこいつの出版社に連れて行く。お前らはく帰れ、社長命令だぞ」
北斗「……わかりました」
冬馬「おい北斗!」
翔太「冬馬くん、ここは任せようよ」
冬馬「チッ、分かったよ……」
P「……さて、積もる話は歩きながらしようか」
渋沢「」ガクブル
 同時刻 765プロ事務所
律子「亜美、もうダメ。話しなさい」
亜美「……」
律子「私だってあなたをみんなで囲んで話させるなんてやりたくないわ」
律子「それに春香たちだってこんなのはイヤなの」
貴音「あの、律子嬢、いったいなにを」
律子「貴音、今は黙って亜美が逃げないようにして」
貴音「……承知しました」
176:
真美「真美にだけでも、話してよ…」
亜美「本当は話したいけど、それだけはダメなんだよ」
響「なんでダメなんだ?」
亜美「……亜美、みんなが好きだから。だから、これはダメ」
亜美「例え真美でも…真美だからこそ、たった一人のお姉ちゃんだからこそ」
亜美「ダメだよ。亜美が黙ってないと、ダメだよ…」
律子「いいかげんにしなさい!」
亜美「律っちゃんこそいいかげんにしてよ!」
あずさ(……どうしてこんな時に私は…年長者なのに…)
律子「亜美!こんなこと言いたくはないけど」
亜美「じゃあ言わなきゃいいじゃん!」
177:
律子「な!あのねえ最近あなたがちゃんとできないから」
亜美「そんなの分かってるよ!だったら亜美を外せばいいじゃん!」
あずさ「!」
亜美「お願いだから一人にして!」
あずさ「……!」プルプル
律子「亜美!あなたなんてこt」
スッ
あずさ「亜美ちゃん、ごめんなさい」
パチン!
亜美「……え?」
一同「え、え?」
律子「あ、あずさ、さん……?」
亜美「う、うそ、亜美いま、あずさお姉ちゃんに」
律子「な、なんで、平手打ちなんか…」
178:
あずさ「亜美ちゃん、私いまの言葉は許せないわ」
あずさ「亜美ちゃんがどんなことを抱えているのかはわからないわ」
あずさ「でもそれが私たちに良くないことなのは分かるの」
あずさ「そうだとしたら、隠していてもいつかは分かるかもしれない」
あずさ「あとから知ってしまったら、どうにもできなくなってるかもしれないでしょう?」
亜美「……でも、これは今知ってもどうにも」
あずさ「たとえそうだとしても、私たちはバラバラにはならないわ」
あずさ「さっき一人にしてって言ったけど、苦しんでる亜美ちゃんを一人にはできないわ」
あずさ「それとも、その秘密を話したら私たちがバラバラになっちゃう」
あずさ「私たちの団結って、そんなものだったかしら?」
亜美「それは、違う、と思う……」
あずさ「亜美ちゃん、私は年長者なのにフラフラしてて頼りないけど」
あずさ「他に頼れる人はいっぱいいるわ」
あずさ「だから……お願い」ダキッ
亜美「…グス、ヒグ、あ、あずさ、お姉ぢゃ、ん、うぅ…」
亜美「うわああぁぁぁん、ごめんなざいぃぃ、うわああぁん」
179:
あずさ「亜美ちゃんは、怖かったのよね」
あずさ「私もみんなが好きだから、その気持ちは分かるわ」
あずさ「痛かったわよね……ごめんなさい」
亜美「亜美が、亜美が悪かったよ…グス」
律子「亜美、私も謝るわ。キツイこと言ってごめんなさい」
亜美「律っぢゃぁん、うう、ごめんね」
律子「……亜美、ゆっくりでいいわ。だからおねがい」
律子「なにがあったのか、みんなで解決しましょう」
亜美「う、うん…グス…え、えっと…ちょっと待って…」
真美「大丈夫だよ、亜美は真美の妹だから…ずっと待てるよ」
亜美「ありがと…」
180:
亜美「……この前の土曜日のお昼、忘れ物を取りにきたの」
亜美「しゃちょーと兄ちゃ、…あの人が話してた」
亜美「それで、今月に辞めるって言ってた」
亜美「辞める理由は元スパイで、テロをする悪い人をやっつけたからって」
亜美「それで、あの人がいると765プロが危ないって…」
小鳥「えっと、あ、亜美ちゃん?」
真美「ウソだ!兄ちゃんがそんなハズ…」
一同「」ビクッ
亜美「ウソだって、亜美も信じたいよ!でも…でも…」
真美「……ホント、なんだね」
律子「えっと、どういうこと?」
真美「つまり…兄ちゃんはスパイだったんだよ…」
春香「えっと、映画とかの?」
美希「ジェームスボンド?」
真美「うん……あの人は、危険、だと思う…思いたくないけど」
181:
律子「いくらなんでも、イタズラにしちゃやりすg」
真美「違うよ!違うよ…」
小鳥「プロデューサーさんは、辞めるって言ったのね?」
亜美「うん、確かに言ってた…」
小鳥「…なら、社長に聞きましょう」
律子「でも社長は今日、日本アイドル協会の会議に」
小鳥「予定では15時には終わります。そろそr」ガチャ
高木「ふぅーなかなかためになる話だったよ音無くん。……みんな、そんなところに固まってどうしたのかね?」
小鳥「社長、お話があります。プロデューサーさんが辞めるって本当ですか」
高木「……誰からその話を?」
小鳥「辞めるか辞めないのかを言ってください!」
高木「ああ、本当だ。今日、彼はここを去る」
182:
某出版社前 16:39
P「つまり、お前はあくまで個人に責任はないと言うのか」
渋沢「如月千早の話は金になる、会社の判断だ」
P「だがお前もそれを楽しんでいたんじゃないのか?」
渋沢「し、仕事を楽しんで何が悪い!」
P「下衆な野郎だ。社長の嫌な予感ってのもうなずける」
渋沢「事実を書いて何が悪い!」
P「断片的にしか書いてないのは明らかに取材不足だ」
P「それか、意図的にそう書いたかのどちらかだろう」
渋沢「い、いいかげんにしろ!それ以上問い詰めるならお前の記事を書くぞ!」
P「……やれるもんならやってみろ。どのみち俺にも仕事がある、いつまでもテメーを相手にしてられねぇよ」
俺は渋沢から手を離し、急いで事務所へ戻った。
渋沢「……覚えてろ、いつかテメーを記事にしてやる……っ!」
183:
小鳥「……理由は、なんですか」
高木「実家のお父様が倒れたらしく、家業を継ぐそうだ」
律子「そう言うようにって打ち合わせでもしたんですか」
高木「っ!……何を言ってるのかね」
律子「そう、なんですね」
春香「え、そ、それって」
千早「そんな……そんな!」
美希「これ、ドッキリ、だよね?」
やよい「プロデューサーが、スパイ……」
伊織「ここは日本よ?そんなのありえないわ」
あずさ「嘘、なんですよね?」
真「ボク、いま何も考えられないや」
響「ど、どういうことなんだ…なんなんだこれ…」
貴音「あの方が、まさか……」
雪歩「でも、でも、でも…」
亜美「……」
真美「……」
198:
事務所 16:56
P「ただいま戻りました」
高木「…赤羽根くん、まずは会議室へ」
P「会議室?なにか書類でも」ガチャ
一同「……」
P「……なんだみんな」
伊織「本当の名前を言いなさい」
P「は?赤羽根k」
律子「本当の名前を、言いなさい」
……あぁ、そういうことか。
P「……名前は無い。誰が気づいたんだ?なに、危害は加えないさ」
亜美「亜美が、ぐーぜん聞いたんだよ」
はあ、やっぱりか。
第六感は本当によく当たりやがる。
P「話せることは話そう」
俺はすべてを語った。
孤児であること。
パーフェクトと呼ばれたこと。
殺人は未だにしていないこと。
組織の誰かが、俺を売ったこと。
怪しいのは安藤ということ。
名前は明かせないが、協力者がいること。
ニュースになる前に揉み消された、津田という男のこと。
標的である俺が、特定されてるかもしれないこと。
199:
P「だいたい話した通りだ。あとは好きにしてくれ」
P「警察に突き出してもいい。マトモに取り合ってくれるならな」
沈黙があたりを包む。目に涙を浮かべる者もいた。
確か4月にもこんなことがあった。
あのときとは状況がまったく違うが、どうなるんだろう。
まあ、もうどうでもいいのだが。
P「決まらないなら、俺は荷物をまとめて出ていく。邪魔なものは勝手に処分しろ」
俺は会議室のドアノブに手をかけ、その場を立ち去った。
――あの言葉が無ければの話だが。
春香「待ってください!」
200:
春香「勝手にいなくなるなんて、そんなのズルいですよ!」
誰もが度肝を抜かれた。
この俺ですら、振り向かずにはいられなかった。
P「スパイはズルくなきゃ、生きていけないんだよ」
春香「スパイなら約束を破ってもいいんですか!」
裏切りは常套手段だ、と言いかけて飲み込んだ。
天海と約束したこと、何かあったか?
春香「いつか、名前で呼ぶって……呼ばせてくれって言ったじゃないですか!」
P「……」
春香「トップアイドルにするって、言ったじゃないですか!」
春香「それも、最初からウソだったんですか?盛り上げるための、なんでもないウソだったんですか?
春香「例えそうだったとしても、私は本気で信じてました……」
P「天海……」
春香「危険人物かもしれないのは、分かってます。でも、信じてるんです!あんなに私たちのために一生懸命に
なってくれた人が、そんなに怖い人なんですか?少なくとも、ここにいるときはそんな人じゃなかった!」
201:
P「……それでも俺は、こういう人間だ。赤の他人が、お前たちの人生を壊しちゃならない」
春香「赤の他人なんかじゃありません!765プロは、家族なんです!」
春香「本音を言ってしまえば、最初はプロデューサーさんが嫌いでした。乱暴な口調だし、ムスっとしてるし」
春香「でもあのCM撮影でアイディアを出してくれた時、とっても嬉しかったんです!それもウソだったんですか?」
P「ああウソだ。職場の人間が、俺を冷たい目で見てることはすぐ分かった。信用させて働きやすくするために、動いたまでだ」
春香「……たとえ働きやすくするためだったとしても、嬉しかったんです……」
春香「例えスパイだったとしても、プロデューサーさんはプロデューサーさんなんです!」
春香「私たちが知らないことや、危ないこともしてきたのは分かりました。でも、人を殺したりはしていないって言いましたよね?」
春香「それって、最後の一線は超えないようにした、プロデューサーさんの優しさじゃないんですか?」
P「っ、違う!殺人ほど証拠が残りリスクを負うものはない。放火だろうが窃盗だろうが、同じだ」
春香「スパイって情報を盗むんでしょう?同じじゃないですか!」
P「……だから、最もリスクが低い手段であって」
春香「プロデューサーさん!」
P「……黙れ」
春香「プロデューサーさんの代わりは、いないんです…家族の代わりはいないんです…」グス
春香「ずっと尊敬し、てるんれず…ヒック、かっ、家族は、一緒にいなきゃ…」
春香「だから、ヒック、い、行かないでぐだざ、い゛……」
P「……黙れと言っただろ……春香」
202:
どうして、なんだ。
春香、その武器になる涙は俺なんかに使うもんじゃない。
春香「やっと、名前で呼んでくれましたね、えへへ」グス
P「……」
貴音「あなた様、月はひとりでには輝けぬものです」
貴音「あなた様という太陽がいるから、美しく輝けるものです」
P「……貴音」
響「自分がトップアイドルになるところを見ないなんて、すっごく損だぞ」
響「……それに、今のプロデューサーはとってもいい人じゃないか。昔なんか、知らないぞ!」
P「……響」
美希「響の言うとおりなの。大事なのはこれからだって思うな」
美希「おにぎりもいちごババロアもくれたし、それにプロデューサーのおかげで
最近アイドルちょっと楽しいって思うな、アハッ☆」
P「……美希」
203:
律子「……あなたは後輩だけど、なんでもできて先輩みたいだった。まあ年齢もたぶん先輩だし」
律子「それにここにいる間、私たちに危険はなかった。恐らくその協力者とやらが守ってくれてるのでしょう」
律子「つまりあなたがいても安全ってことね。それなら、私が追い越すまで辞めないでください」
律子「目標がいなくなったら、探さなきゃいけないじゃないですか」
P「……律子」
小鳥「はぁ、ホント謎すぎて不気味です。話を聞いたら余計わからなくなりました」
小鳥「でも、だからこそ知りたいです。765プロのみんなに、あなたは愛されています」
小鳥「なくてはならない存在なんです!」
P「……小鳥」
あずさ「プロデューサーさん、前にお話ししましたよね。ここに来たことは運命だったのかって」
あずさ「最近、考えていたんです。運命だったから来たんじゃないか」
あずさ「もし違ったとしても、運命であってほしいって思うんです」
あずさ「プロデューサーは、運命だって思いたくはないですか?」
P「……あずさ」
204:
伊織「あんた、スパイのなかじゃ相当スゴイんでしょ?」
伊織「思うんだけど、アンタがいたほうが安全じゃない」
伊織「万が一、危ないことがあってもアンタなら守れるんじゃないの?」
伊織「ミジンコよりは使えるんだから、ここに残って伊織ちゃんに仕えなさい、にひひっ♪」
P「……伊織」
亜美「本当に、危険じゃないんだよね?」
亜美「亜美、スパイだったことより黙って辞めることの方がショックだったよ……」
亜美「兄ちゃんは竜宮小町のプロデューサーじゃないけど、それでも亜美のプロデューサーだよ!」
亜美「残るって言ってくれたら、許すよ!だから残って!」
P「……亜美」
真美「兄ちゃんズルいよ、真美まだ兄ちゃんにゲームで勝ってないよ!」
真美「勝つまでいつでも挑戦受けるって言ったじゃん!」
真美「裏切らないでよ!……真美はもう大人だから許すけど」
真美「次に裏切ったら本当に許さないから!」
P「……真美」
205:
やよい「プロデューサーは自分のことをダメだって言ってたけど」
やよい「それは違うと思います!」
やよい「だってプロデューサーはとっても優しい人です!」
やよい「プロデューサー、手を出してくれますか?」
俺は言われたとおりに手を前に出す。
やよい「はい、ターッチ!イェイ!」パチン
やよい「えへへ、元気が出るおまじないです!」
やよい「これをやってくれる人に、悪い人はいないかなーって」
P「……やよい」
雪歩「わ、私、男の人が苦手でした……今も苦手ですけど、プロデューサーならなんとなく平気です」
雪歩「初めて家族以外の男の人と仲良くなれたって思ってましたぁ」
雪歩「それなのにいなくなるなんて、そんなこと言わないでくださいぃ」
雪歩「プロデューサーのおかげでお仕事もできるようになりました」
206:
雪歩「でも私はまだまだダメダメなダメドルなんですぅ!」
雪歩「だからここに残ってくださいぃ!」
雪歩「私のこと、嫌いになっちゃったんですか……?私はプロデューサーを尊敬してますぅ!」
P「……雪歩」
千早「プロデューサー、私は歌以外に興味はありませんでした」
千早「でも、プロデューサーのおかげで変われたんです」
千早「歌以外のことが、歌を成長させてくれる」
千早「成長した歌を、もっと聴いてほしい、もっと話したいこともいっぱいあるのに」
千早「担当アイドルの悩みを聞かずに辞めていいんですか?」
P「……千早」
真「あの時、可愛いって言ったのはウソだったんですか?」
真「仕事を進めるためのウソだったんですか?」
真「もしそうだって言うなら、見ていてください、絶対に可愛いって言わせてみせますから!」
真「可愛くないかもしれないけど、秘策だって考えてあるんですから!」
P「……真」
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