真姫「どんな願いも叶える水晶玉……?」back

真姫「どんな願いも叶える水晶玉……?」


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1:
希「そうや。神社の蔵を掃除してたら出てきたんよ」
絵里「ほんとなの?それ……」
凛「うさんくさいにゃー」
希「神主さんが言ってたんやから間違いないで。この水晶玉を使って神様にお願いしたら、どんな願い事でも叶えてくれるんやて」
海未「どんな願いでも、ですか……」
穂乃果「信じられないけど、希ちゃんが言うとなんだかそれっぽいね」
希「ま、信じるか信じないかはみんな次第やけどね」
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2:
真姫「何よそれ。馬鹿馬鹿しい」
希「ん?真姫ちゃんはこういうの全然信じへんの?」
真姫「当たり前じゃない。非科学的にもほどがあるわ」
希「……でも、世の中には科学では割り切れへんこともぎょうさんあるしなぁ」
絵里「そうね、何だかロマンチックだわ。じゃあ私は、音ノ木坂が廃校にならないようお願いしようかしら」
希「それはうちら自身の力でなんとかしたいところやけどね」
絵里「希は何かお願いしてみたの?」
希「うちはこんなのに頼らなくても、たいていの願い事は叶ってしまうんよ。だからみんなに使ってもらおうと思て……」
3:
ことり「でも、どんな願いでもいいって言われると、意外と思いつかないよね……」
穂乃果「うーん、そうだよね……。穂乃果だったら何をお願いするかなあ」
凛「かよちんはどうにゃ?」
花陽「ふむむ……」
希「……信じる信じないは別として、真姫ちゃんは何かないん?」
真姫「べ、別にないわよ」
希「……ほんとうに?」
真姫「しつこいわね。それに、例えあったとしても、私はもっと合理的な方法で叶えるから」
希「理屈ではどうにもならんこともあるやろ?」
真姫「たとえば何よ」
希「うーん、せやね」
希「……恋、とか?」
4:
真姫「!!そ、そんな願い事、あるわけないじゃない」
チラッ
にこ「……」
希「あれ?真姫ちゃん、赤くなった?ひょっとして……」
真姫「な、何言ってるのよ!赤くなんかなってないんだから」
希「……ま、それはともかく」
ゴトッ
希「明日まで、この部室に置いとくから。何か願い事がある人はいつでも使ってもらってええからね」
絵里「……じゃあ、ちょっと早いけど今日は解散としましょうか。最近、練習続きで疲れもたまってるしね」
一同「はーい」
絵里「にこも、それでいいわね?」
5:
にこ「……」
絵里「にこ……?」
にこ「え……?ああ、ごめん。聞いてなかったわ」
絵里「やっぱり疲れてるのね。今日はもう解散よ」
にこ「……そう。わかった」
真姫「……」
絵里「じゃ、私と希は後片づけをしてから帰るから」
希「また明日ねー」
一同「お疲れー」
ゾロゾロゾロ
バタン
6:

絵里「……希。どう思う?」
希「ん?」
絵里「最近、にこの様子、ちょっとおかしくない?さっきもボーっとしてたし……」
希「なんか、悩みでもあるんちゃうかな」
絵里「そうなのかしら……。私たちで力になってあげられることならいいけど」
希「それはどうやろね。それに……」
希「悩みを抱えてる子は、多分もう一人……」
ボソッ
7:
絵里「え?何か言った?」
希「……いや。それより、絵里ちももう帰ってもらってええよ。あとは、うちがやっとくから」
絵里「そう?じゃあ、お願いしちゃおうかしら」
希「うん」
絵里「じゃ、また明日ね」
バタン
希「……」
希「さて、と」
ゴソゴソ
希「……」
8:
―10分後。別室。
希「……」
カタカタタッ
希「……おっ。ちゃんと映るようやね」
希「部室に仕掛けた、隠しカメラの映像……」
希「あとは、うまくかかってくれるかどうか、やけど……」
カチャッ
希「おっ?さっそく部室に誰か戻ってきたようやね」
9:
凛「かよちん、早く早くー!」
花陽「凛ちゃん、待って……」
凛「せっかくなんだから、水晶玉にお願いごとして行くにゃー!」
希「おやおや、あの二人がトップバッターか。どんなお願いするんやろね」
10:
凛「じゃあ、凛からいくよ?」
花陽「うん……!」
凛「……どうか、お腹いーっぱい、ラーメンが食べられますように……!」
花陽「は、花陽は、白いご飯を……!白いご飯を、いやと言うほど、お願いします……」
りんぱな「……お願いします!」
希「ふふ。あの二人は、色気より食い気やね」
希「こんなドッキリみたいなことして、申し訳ないけど……。食べ物やったらまた今度うちがおごってあげるし、堪忍やで」
希「さて、お次は……」
11:
カチャッ
穂乃果「……やっぱり、私たちの願い事はあれしかないよね。海未ちゃん、ことりちゃん」
海未「ええ、そうですね」
ことり「うん……!」
希「……あの三人か。まあ、どんな願いをするかはなんとなく想像つくけどね」
穂乃果「……神様。どうかμ'sがラブライブに出場して……」
海未「……満員のお客さんを感動させるようなライブができますように」
ことり「そして、ラブライブが終わった後も、ずっと穂乃果ちゃん、海未ちゃん、そしてμ'sのみんなと、一緒にいられますように」
ことほのうみ「お願いします……!」
12:
希「うふふ。あの三人は、やっぱりブレへんね」
穂乃果「……ちょっと欲張りすぎかな?」
海未「でも、どんな願い事でも構わないということですし……」
ことり「ことりたちの本当に叶えたい願いなんだから、きっと大丈夫だよ!」
ゾロゾロ
バタン
13:
希「……そうや。大丈夫やで」
希「あなたたちの願いは、水晶玉なんかなくても、必ず叶うはずやから……。それはうちが保証するよ」
希「……さて。本題はここからや」
希「水晶のパワーなんか信じへんって大見得を切ってたけど、乙女心はそんな単純やないからね……。おっ!?」
カチャッ
真姫「……」
キョロキョロ
14:
真姫「……誰もいないみたいね」
真姫「べ、別に水晶玉なんか興味はないのよ?」
真姫「ただ、いんちき水晶を信じてる人なんているのかどうか、それを見に来ただけなんだから……」
真姫「……」
真姫「誰もいないということは、みんな信じてないのか……」
真姫「それとも、もう願い事を済ませちゃったのかな」
真姫「……」
希「何やらブツブツ言ってるようやね」
希「でも、ここに戻って来たということは……」
15:
真姫「……ほんとに誰もいないの?」
キョロキョロ
真姫「……」
真姫「こ、これは独り言で、別に願い事とかそんなのじゃないんだけど」
ゴホン
真姫「……最近、にこちゃんが何だかよそよそしいの」
真姫「前は二人で一緒に帰ったりもしてたのに、この頃はそっけないって言うか……」
真姫「廊下ですれ違っても、声もかけてくれないし」
真姫「もしかしたら、私、避けられてるんじゃないか、って……」
真姫「べ、別に、だからどうこうってわけじゃないのよ」
真姫「でも、やっぱり気になるの」
16:
真姫「私、何か嫌われるようなことしたかしら?とか……」
真姫「知りたい……。にこちゃんが、何を考えてるのか」
真姫「私のこと、どう思ってるのか……」
真姫「にこちゃんの気持ちが、知りたい……」
真姫「!!い、今のは、お願いとかそんなんじゃないんだからね!!」
真姫「……誰かに聞かれなかったわよね」
キョロキョロ
希「ふふっ。まったく一人で賑やかなことやね」
希「でも、誰も聞いてない時くらい本音と向き合わへんと、そのうち自分でも分からんようになってしまうよ、真姫ちゃん……」
希「……」
17:
真姫「……ああ」
真姫「なんだろう。自分でも、ほんと嫌になるわ」
真姫「信じてないとか言いながら、こんな水晶玉相手にあたふたして……。滑稽よね」
真姫「……私、自分でもよく分からないの。どうしてにこちゃんのことが気になるのか」
真姫「考えてみれば、前だって別に仲良しってわけじゃなかったのよね」
真姫「よく一緒にいたって言っても、大抵にこちゃんが私のことをからかって……」
真姫「私も、ついムキになって言い返してみたり」
真姫「むしろ、ケンカしてた時間の方が長いかも知れないわね」
真姫「でも、この頃は……」
真姫「この頃のにこちゃんの態度は、そんなのとは全然違って……」
18:
真姫「……苦しい」
真姫「そう……私、苦しいの。にこちゃんのことを考えると、何故だか分からないけど、胸が……」
真姫「こんなこと、ここで話してみたところで……仕方ないのかも知れないけど」
真姫「……」
真姫「理屈ではどうにもならない願い、か……」
ボソッ
真姫「!!ば、馬鹿じゃないの私ったら。よりにもよって、何を考えてるのよ」
真姫「にこちゃんのことを、そんな風に……なんて」
真姫「……」
19:
真姫「……水晶玉さん。私は、あなたのことなんてこれっぽっちも信じてないけど」
真姫「もし、あなたが本当に不思議な力を持っているのなら、教えて欲しいものだわ」
真姫「私の……私の、願うべきことを……」
真姫「私はいったい、あなたに何をお願いすればいいの……?どんな願いが叶えば、この苦しさから自由になれるの……?」
真姫「教えて……」
20:
希「真姫ちゃん……。もう、自分の気持ちには気付いてるんとちゃうの……?」
希「でも、なかなか素直になれないんやね……」
希「さて、と」
希「真姫ちゃんも帰ったことやし、あとはにこっちが来るかどうかやけど……」
カチャッ
にこ「……」
希「来た来た……」
希「それにしても、神妙な顔つきやね」
21:
にこ「……」
にこ「……お願いしたいことがあるの」
にこ「聞いてもらえるかしら……?」
にこ「それはー」
22:
希「!!」
希「……なるほど。それが、にこっちの願いなんやね」
希「にこっちの性格らしい、お願いやけど」
希「さて、どうしたもんか……」
希「……」
23:
―翌日。部室。
凛「ねーねー、練習行かないのー?」
希「その前に、今日はみんなに見て欲しいものがあるんや」
絵里「見て欲しいもの……?」
真姫「何よ一体。今度は、魔法の絨毯でも取り出すの?」
希「まあまあ。見てのお楽しみや」
ゴトッ
海未「プロジェクター……?」
穂乃果「あっ、この部室が映ってるよ」
ことり「これ、いつだろう ?誰も部屋にはいないみたいだけど……」
花陽「あ、あれ?真ん中に映ってるのって……」
凛「昨日の水晶玉だにゃー!」
真姫「!!」
24:
希「その通り。実は昨日、この部屋に隠しカメラを仕掛けていたんでしたー!!」
りんぱな「えーっ!?」
ことほのうみ「えっ、隠しカメラを……!?」
真姫「?ぇぇぇぇぇぇっっっっ!!?」
希「みんながどんな願い事するんか、どうしても知りたくてな」
真姫「そんな、そんなのって……!」
海未「あっ、誰か部室に入ってきたみたいですよ」
ことり「あれは……凛ちゃん、花陽ちゃん」
凛「かよちん、凛たちが映ってるよ!」
花陽「あわわ……」
25:
『凛「ラーメンが食べられますように!」』
『花陽「白いご飯が……」』
穂乃果「ちょっとちょっと、花陽ちゃんたち、いつもと同じこと言ってるよ!」
ことり「あはは」
凛「の、希ちゃん、ひどいにゃー!」
花陽「ひどいです……!」
希「いやぁ、堪忍かんに……」
真姫「そ、そうよ!いくらなんでも、これは酷すぎるわ!!」
花陽「!!真姫ちゃん……?」
26:
真姫「勝手に隠し撮りするなんて……。重大なプライバシーの侵害よ……!」
凛「ぷらいばしー……?」
真姫「そうよ。プライバシーの侵害!凛、もっと怒りなさいよ。そして早くこんな映像はストップさせないと……!」
凛「うーん。そういう難しいことはよく分からないけど……」
真姫「え……?」
凛「それより希ちゃん!凛たちは、ほんとにラーメンや白いご飯がお腹いっぱい食べられると信じてたのに……」
花陽「ただのドッキリだったなんて、あんまりです……!」
穂乃果「あ、そっちなんだ……」
27:
希「うふふ、二人とも。水晶玉のご利益は別に嘘やないで。ちゃんと願いは叶うはずやから」
凛「ほんとかにゃー……?」
希「何やったら、隠し撮りのお詫びに、うちが今度おごったげる」
花陽「ほんとですか……!?」
希「うん。約束や」
凛「だったらOKだにゃー!!」
真姫「ちょ、ちょっとあなたたち?そんなことで誤魔化されてていいの?隠し撮りされてるのよ!?」
凛「それは別に……」
真姫「だ、だめよ!希、私は断固抗議するわ!」
28:
花陽「でも、真姫ちゃんはこんなの信じないって言ってたし、お願いもしなかったんでしょ……?どうしてそんなに怒ってるの?」
真姫「わ、わ、私は別に、自分のために言ってるわけではなくて、あくまでプライバシーの観点から……」
海未「あっ、私たちですよ。穂乃果」
ことり「何だかこうして自分たちで見ると恥ずかしいね」
絵里「でも、あなたたちの願いはいつも変わらないわね」
穂乃果「もちろん!それに私たちの夢は、μ'sの夢だから……!」
海未「穂乃果……」
ことり「うん……!」
絵里「そうね。みんなで頑張って、叶えて行きましょう……!」
真姫(な、何よこの流れ。なんかいい話みたいになって来てる……)
29:
真姫(なんとかして止めないと、私の恥ずかしい一人語りが)
真姫(あんなの、にこちゃんに聞かれようものなら……!)
真姫(!!そういえば、にこちゃん……。にこちゃんは、願い事をしなかったのかしら……?)
チラッ
にこ「……」
真姫(あまり動揺してる気配はないようね……)
真姫(何も願い事なんてしなかった……?)
真姫(それとも……)
穂乃果「さあ、次は誰かな?真姫ちゃん、それともにこちゃん……?」
凛「ワクワク!」
真姫(!!も、もうダメ……!)
30:
プツン
ことり「あれ?」
海未「動画が終わってしまいましたね」
真姫「……!」
希「どうやら、機械の調子がおかしかったようやね。録画はここまでや」
凛「なーんだ」
真姫(た、助かった……)
希「残念やねえ。まだ誰かさんが、水晶玉にお願いに来てたかも分からへんのになあ」
チラッ
真姫「!!」
絵里「……はいはい。座興はこの辺で終わりにしましょう。そろそろ練習を始めるわよ」
一同「はーい」
希「ほーい」
真姫「……」
31:
―練習終了後。部室。
カチャッ
真姫「……希。話があるわ」
希「あれ?真姫ちゃん、まだ残ってたんやね。うちに何の用?」
真姫「さっきの隠し撮り映像、機械が壊れたなんて嘘でしょ。本当は……わ、私が部屋に来ていたところまで、ちゃんと見てたんじゃないの」
希「あれー?おかしいなあ」
真姫「……」
希「確か真姫ちゃんは、水晶玉なんて非科学的なもの、信じてなかったんちゃうの?それなのに、うちに見られる筈なんてないと思うんやけどなぁ」
真姫「と、とぼけないで!!」
32:
希「……」
真姫「希……。あなた、本当に憎らしい人ね。一体、何を企んでいるの……?」
希「企むやなんて……。うち、そんな怖いことようせえへん」
真姫「!!まだそんな……」
希「それに、とぼけてるのは真姫ちゃんの方ちゃうの?」
真姫「わ、私……?私がいつ……」
希「……いつまで、自分の気持ちから目をそらしてるつもりなん?」
真姫「!!」
希「うちなんかより、にこっちと話した方が……ええんとちゃうの?」
真姫「に、にこちゃんは関係ないでしょ!」
希「せやろか」
スッ
希「ほんまに関係ないかどうか、水晶玉に聞いてみてもいいけど……。真姫ちゃんは、自分の胸に聞いた方が早いかも知れへんね」
真姫「……」
ガクッ
33:
真姫「……あなたにはかなわないわね、希」
希「……」
真姫「私、どうしたらいいか分からないのよ」
真姫「にこちゃんと話そうにも、あまり口をきいてくれなくて……」
希「にこっちには、にこっちの悩みがあるみたいやね」
真姫「!!そうだ、にこちゃんは……にこちゃんは、何か願い事をしたの?」
希「……」
コクリ
真姫「な、何を……何をお願いしたの?にこちゃんは……」
希「それは……言われへん」
真姫「……!」
34:
希「にこっちの口から……直接、聞いてみることやね」
真姫「……」
希「うちに言えることは、それだけ」
真姫「……何よ」
希「?」
真姫「何よ。自分はこそこそ覗き見してた癖に……。希一人だけ、何もかもお見通しってわけ?」
希「……それは違うよ。真姫ちゃん」
真姫「何が水晶玉よ。何が願いを叶えるよ。私は、にこちゃんの気持ちが知りたいってお願いしたのよ!?なのに、なんにも教えてくれないじゃない!」
希「真姫ちゃん」
35:
真姫「本人に簡単に聞けるくらいだったら苦労しないわ!それが出来ないからお願いしてるんじゃない!なのに……なのに……」
ガッ
希「……!」
真姫「何よ、こんな水晶玉。やっぱりいんちきじゃない。こんなもの……!!」
ガシャーン!
真姫「いんちきよ!水晶玉も、希、あなたも……何もかも、いんちきじゃない!」
ダッ
希「真姫ちゃん!」
ハァハァ
真姫「馬鹿にして……馬鹿にして……!」
36:
―屋上。
真姫「……」
真姫「水晶玉、壊しちゃった……」
真姫「神社の宝物だったのよね、あれ」
真姫「でも、希がいけないのよ。人を……人の心を弄ぶようなこと、するから……」
真姫「……」
カチャッ
真姫(あ、誰か来た)
にこ「……」
真姫「!!に、にこちゃん?」
にこ「……どういうつもりよ。こんなところに呼び出して」
37:
真姫「……?」
にこ「話って、なに」
真姫「え?」
にこ「希から聞いたわよ。ニコに話があるんでしょ?」
真姫「……!!」
真姫(希、余計なお節介を……!)
真姫「わ、私は……別に……」
にこ「……?用もないのに呼び出したの?」
真姫「!あ、いや、その」
真姫(せっかくにこちゃんと二人きりになれたんだから、うまく話をしなきゃ……)
38:
真姫「……えっとね、その……そ、そう、水晶玉よ」
にこ「……水晶玉?」
真姫「う、うん。ほら、さっき部室でみんなのお願いを見たじゃない?にこちゃんは、何かお願いしたのかな、って……」
にこ「そんなこと聞くために、わざわざ屋上に?」
真姫「え、いや、だからそれはね」
アタフタ
にこ「……まあいいわ。別に急ぐ用事があったわけでもないし」
真姫(……ホッ)
真姫「……にこちゃんはあまり水晶玉の話に興味はなさそうだったけど……どうなの?」
にこ「したわ」
39:
真姫「!!そ、そうなんだ……」
にこ「……」
真姫「な、何を……お願いしたの……?」
にこ「……それを聞いて、どうするわけ?」
真姫「!!そ、それは……ええと……ええとね……」
モジモジ
にこ「……」
真姫「じ、実は……わ、私も、お願いごとをしてみたの……」
にこ「……そうなんだ」
真姫「でも、上手く言葉に出来なくて……自分でも何をお願いしたいのか、分からなくなって」
にこ「……」
真姫「私の願いは……にこちゃんにも関係のあること、なんだけど、……」
40:
にこ「……」
真姫「そ、それで、ね。もし、にこちゃんの願い事を教えてくれたら、私も、自分の願い事を言っちゃおうかなって……」
真姫「それとも……わ、私から、言った方がよければ……」
にこ「やめて」
真姫「……!」
にこ「あんたの願い事を聞くわけにはいかないわ。もし聞いちゃったら、たぶん……」
真姫「……?」
にこ「……ニコの願いが叶う邪魔になるから」
41:
真姫「!!」
にこ「だから、それ以上は言わないで」
真姫「そ、それ、どういう意味……?」
にこ「……そのままの意味よ。あと、ニコの願いは、真姫には……関係のない事だから」
真姫「……!!」
真姫(そ、そっか。そういうことね)
真姫(にこちゃんには、他に好きな人がいるんだ)
真姫(そして、その人のことを水晶玉にお願いしたんだ)
真姫(きっと私の様子を見て、私の気持ちに気づいて……)
真姫(だから、私の言葉を聞くわけにはいかないんだ)
真姫(!!ひょっとしたら、もっとずっと前から、私の気持ちは見抜かれてた……?)
真姫(だからあんなにそっけなく……)
真姫(ああ、馬鹿みたい。それなのに私……)
真姫(もしかしたらにこちゃんも、水晶玉に私のことをお願いしてくれてるかも……なんて)
真姫(馬鹿みたい……)
42:
にこ「……?真姫?」
真姫「……」
にこ「大丈夫?急に黙りこんじゃって」
真姫「……ふふ。うふふ」
にこ「!!……ど、どうしたのよ」
真姫「に、にこちゃんは何か勘違いしてるんじゃないかしら。私の願い事はたぶん、にこちゃんが思ってるようなものじゃないわよ……?」
にこ「え……?」
真姫「私はね、ただ、もっと歌が上手くなりたいって、そうお願いしたの。今でも上手な真姫ちゃんだけど、もっと、ずーっと上手くなりますように、ってね」
43:
にこ「!!……そ、そうだったの……?」
真姫「そうよ。でも、ただでさえにこちゃんの歌唱力とはずいぶん差があるのに、これ以上私が上手くなっちゃったら困るじゃない……?」
真姫「だから、にこちゃんがくだらない願い事をしてるようだったら、ちゃんと歌が上達するようにお願いしろって、そう言ってやるつもりだったのよ」
にこ「……そう。なるほどね」
真姫「まあ、あんな水晶玉なんて別に信じてないけど、にこちゃんの歌唱力がちょっとでもマシになるなら……」
にこ「……」
真姫(あ、あれ……?)
44:
真姫(な、何よ。神妙な顔しちゃって……)
真姫(!もしかして……言い過ぎちゃった?)
真姫「あ、あの、にこちゃん……」
にこ「……確かに、あんたの言うとおりね。真姫」
真姫「え……?」
にこ「あんたに比べて、ニコは何にも持ってないんだもの……。ニコの方こそ、そういうお願いをすべきだったんだわ」
真姫「ち、違うの。私、別にそんなつもりじゃ……」
にこ「でも、ちょっと意外ね。真姫がそんな願い事をするなんて」
45:
真姫「意外……?」
にこ「だって歌うことにかけては、あんたは絶対の自信を持ってるじゃない。実際、それだけの才能に恵まれてるわけだしね」
真姫「……」
にこ「……悔しいけど」
真姫「!な、何よ。そんな言い方……」
にこ「本心から言ってるのよ。……この際だから言うけど、何度、あんたのことを羨ましいって思ったことか」
真姫「そんな……嘘でしょ?」
にこ「どうして?」
真姫「だ、だって、にこちゃんこそ、いつも自信に溢れてて……自分のスタイルを強く信じてるって言うか」
46:
にこ「ふふ」
真姫「……にこちゃん?」
にこ「そうね。確かにそうだわ。でも、それは……そうするしかなかったからよ」
真姫「……?」
にこ「ちょうど、今の真姫くらいの頃だったかしらね……。ニコの身体は、もうこれ以上成長しないんだって、諦めるようになったのは」
真姫「!!」
にこ「今でこそ、この体型を活かしたキャラづくり……なんて、前向きに捉えられるようにもなったけど」
にこ「音ノ木坂に入ったばかりの頃は、卒業までにはもっともっと手足も伸びて、モデルみたいな体型になれるかも……なんて思い描いてたのよ」
真姫「……」
47:
にこ「でも現実は御覧の通り……。まったく、笑っちゃうわよね」
真姫「にこちゃん……」
にこ「歌だってそう。もっと高い声が出たら、もっときれいな声で歌えたら……ずっとそう思ってやってきたわ。なのに……」
真姫「……」
にこ「なのに、あんたは初めから全部持ってるんだもの。ニコが欲しかったもの、全部……。やってらんないわ」
真姫「それは……」
にこ「……神様はきっと、真姫のことが好きなのね。だからたくさん贈り物を貰えたんだわ」
真姫「そんなこと、ない……」
にこ「ニコもね、昨日だけは神様を信じてみようと思ったの。あんたがくだらないって笑った、水晶玉にお願いしてみたの。でも……」
にこ「ニコの願いは、また叶わなかったみたい……」
ボソッ
48:
真姫「……」
にこ「……じゃあね。他に用がないなら、もう行くわ」
真姫「……待って」
にこ「え……?」
真姫「待って。まだ行かないで。私の話は終わってないわ」
にこ「真姫……?」
真姫「……私は、神様なんて信じてない」
真姫「でも、もし本当にそんなものがいるんだとしたら……きっと神様は、私のことが嫌いだと思うわ」
49:
にこ「は……?何言ってるのよ。あんたが嫌われてるってんなら、ニコなんか……」
真姫「……確かに私は、歌が得意よ。自信もあるし、歌っている時は本当に楽しいと思うわ」
にこ「……」
真姫「踊るのだって好きだし、容姿もまあ……悪くないと思うの。μ'sに入って、自分の好きなこと、得意なことを思いっきりやれる今は……最高に幸せだと思う」
にこ「だからそれは……」
真姫「でも……いくら歌が好きでも、いくらμ'sでいることが幸せでも……私はいずれ、全部やめなくちゃいけないのよ?」
にこ「……!!」
50:
真姫「医学部に行かなきゃいけない私が音楽をやっていられる時間は、きっとそんなに長くはなくて……」
真姫「だから私は、みんな、何もかも、置いてかなくちゃならないのよ……!」
真姫「歌も、踊りも、μ'sの思い出も……こんなに大好きな、何もかも……」
にこ「真姫、あんた……」
真姫「神様の贈り物……?確かにそうかも知れないわね。でも、だとしたら酷く残酷で意地悪な神様よ。だって、最後には全部取り上げるつもりでいるんだもの」
真姫「だったら、初めから何もくれない方が、よかった……」
グスッ
51:
にこ「……」
真姫「私……音楽をやめたくない。ずっとみんなと……にこちゃんと一緒に歌っていたい。私、私……」
ボロボロボロ
にこ「真姫」
ギュッ
真姫「!!にこちゃ……」
にこ「いい歳して、ボロボロ泣くんじゃないわよ。みっともないわね……」
真姫「にこちゃん、私、私……」
にこ「あんたってほんとに不思議な子ね、真姫。自信家かと思えば、急に怯えて見せたり、強いかと思えば、子供みたいに泣き出したり」
真姫「だって、だって……」
グスッ
にこ「まあ、そんな真姫だからこそ、好きになったんだけどね」
真姫「……」
グスッ
真姫「……え?」
52:
にこ「……聞こえなかった?」
にこ「なら、もう一度言うわ。……好きよ、真姫」
真姫「……!!」
にこ「好き。大好き……」
真姫「にこちゃん……!」
にこ「よかった。ちゃんと言えた……」
53:
真姫「ど、どうして……?」
にこ「どうしてもこうしてもないわ。ただ、あんたが好きなの。真姫……」
真姫「で、でも……にこちゃんには、他に好きな人が……」
にこ「え?」
キョトン
にこ「……誰がそんなこと言ったのよ」
真姫「だ、だって、さっきにこちゃんは、私の願いを聞きたくないって……にこちゃんの願い事は、私には関係ないって……」
にこ「それがどうして「他に好きな人がいる」って解釈になるわけ?」
真姫「そ、それは……」
にこ「……何だかよく分からないけど、あんたの早合点よ、真姫。ニコの願い事は、誰か他の人に捧げたわけじゃないわ」
54:
真姫「じゃあ、一体なにを……?」
にこ「ニコはね、こうお願いしたの。答えを恐れず、好きな相手に想いを伝える勇気が欲しいって……」
真姫「!!」
にこ「……ずっと、苦しかったわ。誰にも言えない想いを抱えて……」
真姫「にこちゃん………」
にこ「自分の気持ちに気付いた時は、戸惑ったりもしたけれど」
にこ「もし真姫に気持ちを知られたら、嫌われちゃうんじゃないかって、いつも怯えてたけど」
にこ「でも、希の水晶玉のおかげで、こうやって想いを伝える勇気が持てた……」
ギュッ……
55:
真姫「だ、だけど……。だったら何で、私には関係ないなんて言ったのよ……!」
にこ「だって、ニコがあんたに告白する勇気を持てるかどうかは、ニコ自身の問題でしょ。真姫には関係のないことだわ」
真姫「それは……じゃ、じゃあ、どうして私の願い事を聞こうとしなかったの?」
にこ「……そこは、ニコの早合点だったわ」
真姫「早合点……?」
にこ「あんたの様子がなんだかおかしかったから、ひょっとしたら、真姫もニコを想って願いをかけてくれたんじゃないか、なんて……虫のいいことを考えちゃったわけ」
真姫「!!」
56:
にこ「告白する勇気を下さいって神様にお願いした以上、先にあんたの気持ちを聞くわけにはいかないでしょ。だから……」
真姫「そういう……わけだったのね……」
にこ「まあ、全部ニコの勘違いだったわね。あんたの願い事が歌のことだって聞いて、ちょっと、気持ちが挫けて……やっぱり、想いは秘めたままにしようとも思ったんだけど」
真姫「!!あ、そ、それは」
にこ「真姫がそこまで歌うことに想いを持ってたなんて、ね。神様からタダで何でも貰ってるみたいに言って、悪かったわ。あんたはあんたなりに必死だったのよね」
真姫「……」
にこ「そういうところも全部ひっくるめて……あんたのことが好きよ、真姫」
57:
真姫「にこちゃん、私……」
にこ「でも、安心して。ニコのことを好きになってくれとは言わないから」
真姫「!!」
にこ「あんたは、残された時間、歌や音楽に全ての情熱を捧げなきゃいけないんだもんね。まあ、さっきみたいに泣きたくなった時くらいは、ニコのことも思い出して欲しいけど」
真姫「に、にこちゃん、違うの。私は……」
にこ「……今日はありがとう、真姫。ニコの想いを聞いてくれて。これでもう……」
真姫「お願いにこちゃん、私の話を聞いて!」
58:
にこ「……!?」
真姫「さっきの話……あれは、嘘なの」
にこ「え?嘘……?」
真姫「……」
コクン
にこ「……どういうことよ?」
真姫「歌や、μ'sを愛してることは、もちろん本当よ。でも、私が希の水晶玉にした願い事は……違ったの」
にこ「……」
59:
真姫「私、ずっとにこちゃんに嫌われてると思ってて……それで苦しくて、でもどうしたらいいか、わからなくて……」
にこ「!!」
真姫「だからこう言ったの。にこちゃんの気持ちを知りたいって……そして、私はどうすればこの苦しさから逃れられるのか、それを教えて、って……」
にこ「真姫、あんた……」
真姫「ついさっきまで、あんな水晶玉なんてこれっぽっちも信じてなかったわ。でも、一つ目の願い事が叶って、二つ目も……」
にこ「……」
真姫「に、にこちゃん。わ、私も今から、私の願いを叶えるわ。いい……?」
にこ「……」
コクン
真姫「……好きよ、にこちゃん」
60:
真姫「私、にこちゃんのことが……好き」
ギュッ……
にこ「真姫……」
真姫「にこちゃん……」
ボロボロ
にこ「やだ、何で泣くのよ……」
真姫「だって、嬉しくて……すごく、嬉しくて……」
にこ「……どれくらい?」
真姫「大嫌いだった神様に、歌を捧げたくなるくらい……」
にこ「自分より歌が下手くそで、自分よりチビな先輩だけど……それでもいいの?」
真姫「……自分より背の高い、生意気な下級生を好きになるより、マシ……かもね」
にこ「もう。相変わらず口が悪いのね……」
真姫「にこちゃん。大好き……」
ギューッ
にこ「ニコも好きよ。真姫……」
にこまき「……」
61:
―物陰。
希「……どうやら、うまくいったようやね」
絵里「こういうことだったの……希が怪しげな水晶玉なんて持ち出した時は、何事かと思ったけど」
希「あの二人やったら、水晶玉の力なんてなくても、きっとこうなってたと思うけどね」
絵里「それにしても、凄いご利益ね。私ももっと何かお願いしてこようかしら」
希「実は、あの水晶玉はさっき真姫ちゃんが割っちゃったんや」
絵里「え?神社の宝物を……?」
希「あれは嘘。ほんまは、その辺の骨董品屋で1,000円で買うてきたガラス玉やから」
62:
絵里「!!呆れた……!希、あなたったら……」
希「二人の気持ちをちょっと後押ししたくて、な」
絵里「……でも、こんなにうまく行くなんて、あの水晶玉にはやっぱり不思議な力があったのかもしれないわよ?」
希「そうかも知れへんなあ」
絵里「割れちゃう前に、願い事をしておくべきだったわね」
希「ふふっ。言ったやろ?あんなのに頼らなくても……」
ギュッ
希「……うちの願い事は、こうしてもう叶ってるんやから……」
絵里「ちょっと、希……!誰かに見られたら……!」
希「大丈夫や。うちらの他にこの屋上にいるのは……」
チラッ
希「今はお互いのことしか見えない、あの二人だけやから……」
希(真姫、にこっち……。幸せにね)
希(たった1,000円のガラス玉で二人がうまくいくなら、安いもんや……)
63:
―翌日。
希「ちょ、ちょっと二人とも……?お店の人も呆れてはるし、その辺で……」
花陽「何を言ってるんですか希ちゃん……!」
凛「そうだよー。これからが本番だにゃー!」
花陽「ということで、ライスおかわりお願いします!」
凛「凛も替え玉追加だにゃー!」
希「ああ……」
店員「へいお待ち!」
りんぱな「いただきまーす!」
64:
希「せ、1,000円で済むと思ってたのに、とんだ出費になってもうた……」
希「にこっちと真姫ちゃんには今度おごってもらわんと、割が合わへんわ……」
花陽「ふう。じゃあそろそろ……」
希「!!せ、せやね。そろそろ行こか」
凛「……二軒目に行くにゃー!」
希「神様……!」
りんぱな「希ちゃんの水晶玉、すごいご利益だね!」
希「神様……どうか、うちを助けて……」
65:
ーーおしまいーー
最後まで読んでいただき、ありがとうございました
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67:
にこまきは正義
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