古泉「ありがとう、上条さん」back

古泉「ありがとう、上条さん」


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3:
「うさんくさい」
「どうしても、わかってもらえませんか?」
「あたりまえよ。信じられるわけがないじゃない」
「それでも事実なんです」
「東京の三分の一を占める街。超能力開発のカリキュラムを組み込んだ学園都市? そんなけったいなモン、いままで聞いたことが聞いたことがないわよ」
「この車が向かっている先がその学園都市です。涼宮さんが転入する学校もそこにあるんですよ」
「ねえ、誘拐者さん。今時そんな三流ドラマ並のシナリオじゃあ、頭悪い女子高生ひとり騙せないのね」
「何度も言いますが、私はあなたに危害を加えるつもりはありませんよ」
「人のこと拐っておいてよく言うわ。だったらアンタ一体なんなのよ?」
「わたしは……SOS団の副々団長です」
「なによそれ」
6:
土御門「いやあ、七月に入ってから本格的に暑い日が続くようになってきたぜい」
上条「夏は嫌いだ。冷蔵庫の中身が傷みやすい」
吹寄「上条当麻! 貴様はまたネガティブなことを……もっと日本の四季のありがたみを知りなさい! 季節ごとの楽しみがあるってもんでしょうが」
青ピ「せやで、もうすぐ夏休み! カミやんもテンション上げてかなー!」
上条「へいへい」
小萌「みなさーん。席についてくださーい。朝のホームルームですよー」
8:
小萌「今日はみなさんに素敵なお知らせがあります!」
土御門「なんだにゃー」
小萌「なんとなんとー……このクラスに転校生さんがいらっしゃいましたー!」
ワー キャー
青ピ「いよっしゃァァああああああああ!!」
上条「……夏休み前なのに、転校生?」
小萌「それではゴタイメーン」
ガラッ
古泉「どうも」
11:
青ピ「男かい!!」
小萌「残念でしたヤロウども?」
古泉「とある田舎から越してきた古泉一樹といいます。以後、お見知りおきを」キラーン
青ピ「しかもイケメンや!!」
小萌「おめでとう子猫ちゃんたちー!」
キャー イヤーン
小萌「それじゃあ、古泉くんは上条ちゃんの手前の机が空いてますから、そこに陣取っちゃってくださいな?。あ、上条ちゃんってのはそこのウニ頭クソヤロウですよー」
古泉「古泉です。これからよろしくお願します」
上条「ああ、よろしくな」
13:
寮監「あー、今日から入寮することになった新人だ。仲良くするように」
長門「思念体厨出身。長門有希」
美琴「……」
長門「趣味は読書」
美琴「(……こんな時期に、転校生?)」
長門「よろすく」
美琴「(しかもウチの常盤台って……なんか怪しいわね)」
15:
青ピ「なあなあ! やっぱり古泉くんって彼女とかおるん?」
古泉「いえ、残念ながら」
青ピ「またまたー。そない控えめなこと言うて、ホンマはいろんな属性の娘をとっかえひっかえしとるんちゃうかー!?」
古泉「属性……ですか?」
吹寄「こらっ! そこの三バカ! さっそく転校生にちょっかい出してんじゃないわよ!」
青ピ「人聞きが悪いで、吹寄ちゃん。僕は委員長として、古泉くんがはやくクラスに馴染めるように接してあげてるだけや」
上条「へー。ホントかよ」
青ピ「せや。あわよくばイケメンさんのそばにいて、よってたかってくる女の子を入れ食いしようかなー、なんてことはこれっぽっちも考えておらへんよー」
上条「あのなぁ……」
17:
古泉「ははっ。賑やかなクラスですね」
上条「そうか? うるさいだけだと思うぞ」
古泉「結構なことではないですか。ここに来るまではそれなりに不安だったのです。学園都市がどういう所なのかも、いまいち解らなかったわけですしね」
上条「そっか。まぁ、このクラスで何か困ったことがあったら吹寄を頼った方がいいぞ。そこの関西人モドキはやめておけ」
青ピ「酷いこと言うなー! カミやんまでー!」
小萌「ハーイ。本日の課程はこれでおしまいでーす。完全下校時刻までにはお家に帰ってくださいねー。上条ちゃんは居残りでーす」
上条「不幸だー!!」
18:
黒子「ジャッジメントですの!」
長門「……」ペラッ
黒子「放課後ですの!」
長門「……」ペラッ
黒子「聞いておりますの、長門さん!? もう図書館は閉館の時間ですの!!」
長門「……貴女は何故ここに」
黒子「風紀委員は学校内の警備も兼ねていますのよ……ってそんなことはどうでもいいから、さっさとお帰りくださいまし!!」
長門「そう」ペラッ
黒子「ムッキー! だ・か・らッ!!」
21:
古泉「……」
吹寄「……あら、古泉くん?」
古泉「おや、たしか吹寄さんでしたか」
吹寄「もう覚えてくれたのね、嬉しいわ。屋上に何か用?」
古泉「いえ、特には。ただ少しだけこの学校を探検してみようかなと思いまして」
吹寄「そうなの。本当だったらそういうことは月詠先生が面倒を見てくれるのだけれど……ったく、上条当麻は!」
古泉「んふっ。では、僕はこれで」
吹寄「あっ。なんなら私が付き添ってあげてもいいわよ?」
古泉「ご心配なく。ほとんど見て回りましたから。後は屋上を拝見させてもらって帰宅するつもりです」
吹寄「そう……何か解らないことがあったら、いつでも相談して。それじゃ、また明日ね」
古泉「はい、また明日。車にお気をつけて」
22:
古泉「……さて、そろそろ姿を現してくれてもいいでしょう」
土御門「気付いていたのかにゃー」
古泉「僕に何かご用意でも?」
土御門「単刀直入に訊かせてもらう。お前たちは何者だ?」
古泉「我々に定められた呼称はありませんが……そうですね、『機関』とでもお呼びください」
土御門「呼び名なんてどうでもいいことは訊いちゃいない。それともあくまでシラを切り通すつもりか?」
古泉「なんのことだか」
土御門「涼宮ハルヒ」
25:
古泉「……」
土御門「仮にその『機関』とやらが国家レベルの機密組織であれだ、こんな無法地帯に足を踏み入れようだなんて無謀なマネはしない……よほどのことがないかぎりはな」
古泉「なるほど。統括理事会や『機関』を含めた勢力たちが、涼宮ハルヒという少女が秘めた未知なる力に一目置いている。そこまでアナタは察しているのですか」
土御門「俺自身、裏で動かされている末端の一人に過ぎない。詳しい話は知らん」
古泉「んふっ」
土御門「クラスメイトを脅す趣味はないからな、忠告として受け取ってもらおうか。今すぐ学園都市から手を引け」
古泉「やれやれ。何か誤解をされているようですね。少し言い訳をさせてもらっても、よろしいでしょうか?」
土御門「なんだ」
古泉「僕は涼宮ハルヒなんて女に興味はない。ましてや、アナタ方とやり合おうだなんて気はサラサラありません」
26:
土御門「……なに?」
古泉「たしかに、表向きには彼女の身を守るためにここへ潜入しています。しかし、実際には何もしないし、したくもありません。傍観を決め込むつもりです」
土御門「どういうことだ。お前は『機関』の一員じゃなかったのか?」
古泉「ですから、これは僕の独断専行。ただの私情であって、個人的な問題なんですよ」
土御門「……仲間を裏切るのか」
古泉「見逃してもらえませんか。別にアナタが困るようなことはないでしょう。関係のない話です。その物騒なモノをコチラに向けないでほしいのですが……」
土御門「いいだろう。ただし、妙な動きはするなよ。その時は容赦しない」
古泉「ありがとうございます。アナタが話のわかる人でよかった」
27:
上条「うぅ……結局こんな時間まで補習か。夏休みまでには、なんとか課題を終わらせないとな」
「あのう」
上条「ん?」
みくる「すみません。第七学区というのはここで合ってますか?」
上条「え? あっ、はい、そうですね」
みくる「あ、やっぱり。よかったぁ?。わたし方向オンチだから、道を間違えてないかなぁって不安だったんです」
上条「はぁ」
みくる「……」
上条「……」
みくる「ふみゅん」コテッ
上条「えぇ!?」
28:
上条「あの……どうかしたのでせうか?」
みくる「ごめんなさい。少し日に当たりすぎたみたいです」
上条「……と、とりあえずベンチにでも」
みくる「はい」ムニュ
上条「(むむむ胸がァァあああああああ!!)」
29:
上条「ぜぇぜぇ……」ハァハァ
みくる「大丈夫ですかぁ?」
上条「へっ? ぜ、全然平気ですよ、上条さんは」
みくる「ふふ」ニコッ
上条「! ……その、おれ、なんか飲み物買ってきます!!」
みくる「はーい」
30:
上条「まいったなー。でも、あんなに可愛い女の人、初めて見た。こりゃあ、ついに俺にも出会いのチャンスが到来ってことか!?」
チャリン
上条「んーっと、苺おでん、ウィンナーソーセージ……ヤシのみサイダーでいっか……」
ポチッ
上条「あれ?」
カチカチ…
上条「いや、ははっ、まさかそんなベタな」
ガチガチガチガチッ!!
上条「おいおいおい!! 嘘だろ!? 五千円入れたんだぞ、五千円んん!!」
上条「不幸だー!!」
ハルヒ「うっさい」
31:
クソワロタ
32:
上条「へっ?」
ハルヒ「だから、うるさいっつったのよ。静かにしてくれないかしら? あたし今すごくムカついてんだけど」
上条「うるさいってお前……だって、五千円だぞ五千円……」
ハルヒ「なによ、たかだか五千円でしょ。いいから黙ってなさい」
上条「ふざけんな!! 貧乏学生にとって五千円がどれだけ貴重な生活費なのか……ああ、そうか。上条さんは己の不幸を嘆くことさえも許されないのか……」
ハルヒ「んああ!! もう!!」
上条「ごせん……」
ハルヒ「人の側でぶつぶつぶつぶつ!! イライラすんのよ!!」
上条「あ」
ハルヒ「どりゃあああああああああ!!」ズドンッ!!
上条「ってうおおおおおおおい!!?」
33:
ゴトゴトゴトゴト
ハルヒ「ふん。ま、これで五千円分くらいは元取れたでしょ」
上条「あ、あぁぁ……」
ハルヒ「……ねぇ、もしかしてアンタ」
上条「わああああああぁぁぁぁ!!」
ハルヒ「なっ! ちょっと!! どこ行くのよ!?」
36:
上条「はぁはぁ……なんてこった。自販機の内蔵カメラに映ってないといいけど」
ハルヒ「うらっ」
ゴンッ!!
上条「痛ッ!!」
ハルヒ「ほら、アンタのジュースでしょ。勝手にひとりで逃げてんじゃないわよ」
上条「お、お前!! 俺は知らないぞ!! アンチスキルかなんかに捕まったらお前のせいだかんなっ!?」
ハルヒ「お金持っていかれたんだからいいのよ。泣き寝入りするくらいなら、あたしは犯罪に手を染めるわ」
上条「いや、あれ俺の五千円……」
ハルヒ「それよりさ」ズイ
上条「……な、なんでせうか」
ハルヒ「アンタ、超能力者?」
37:
上条「あ?」
ハルヒ「ここの学生よね。じゃ、なんでもいいから超能力使ってみせなさいよ!!」
上条「いきなりのムチャぶり!?」
ハルヒ「ほらほら、念力でもテレパシーでも空中浮翌遊でも、ちゃっちゃっとやりなさい!!」
上条「……か、上条さんはレベル0の無能力者でして……サイコキネシスもパイロキネシスも満足にできないのですよ」
ハルヒ「つまんない」
上条「そんなこと言われましても……」
ハルヒ「やっぱり嘘っぱちなのね。科学のガラパゴスなんて」
上条「つーか。お前、外から来たのか?」
ハルヒ「そ。なぜか人っ子一人いないし……今日、ここで会ったのもアンタが最初よ」
上条「は? そんなわけないだろ。今の時間帯でも学園都市ならどこも大勢の学生でごった返してるぞ」
ハルヒ「無人よ無人。大通りもアウトレットも電車の中も。ホント気味が悪いわ」
38:
上条「なんだこりゃあ!? マジで誰もいないじゃねーか!」
ハルヒ「だから言ったでしょ」
prrrrr...
青ピ『もしもし、カミやーん。どないしたん』
上条「青ピ、お前いまどこにいる?」
青ピ『どこって第七学区の……うほっ!?』
上条「どうした!?」
青ピ『え、え、え!? 嘘や、ここどこやねん!!』
上条「青ピ! 大丈夫か!? なにがあった!?」
青ピ『なんや、突然よくわからんとこに来てもうたわ!』
上条「お、おい……」
青ピ『いやいや、俺はおかしくないで。いきなし飛ばされたんや、なんか知らんけど』
42:
結標「おかしいわね」
『どうかしたか、結標淡希』
結標「一人だけ転送できない奴がいるの。ツンツン髪の男の子よ」
『ほう、幻想殺しか。今となってはもう必要のないサンプルだな』
結標「もちろんギャラをはずむのよね?」
『無論だ。邪魔者は誰であろうと排除。できれば生かしておいてもらいたいところなのだが』
結標「それで報酬が出るのなら、おやすいごよう」
『解っているな? 涼宮ハルヒに能力は見せるな。手際よく頼む』
結標「了解」
43:
ハルヒ「薬品ばっかすか投与して、脳に電極ぶちこんで能力開発なんて、普通に考えてありえないわ。どんだけ世紀末なのよ」
上条「いや、本当にあるんだよ! 超能力! 」
結標「さあ、ボウヤ」
ハルヒ「大体、学園都市なんて胡散臭いとこにほいほいやってくる馬鹿もどうかしてるんじゃないの? 実験体にされても文句言えないわ」
上条「うっ……それを言われたら見も蓋もありません」
結標「お姉さんが遊んであげる」ジュルリ
46:
森「古泉!」
古泉「勝手に人の家に入ってはいけないと親から教わりませんでしたか、森さん」
森「なぜ電話を取らないのよ!? 一体どこをほっつき歩いてたの!!」
古泉「新しい学校へ行っていたに決まってるじゃないですか。学生の本分は勉強。僕だって一般的な男子高校生ですからね」
森「外にいたならアナタもあれを見たでしょ!! はやくしなさい、私たちだけでは手に負えないの!!」
古泉「お断りします」
森「なっ……!」
古泉「というか、うんざりですね。たったひとりの少女を守るためだの、そんな都合のいい大義名分を背負って生きていくこと自体が」
48:
森「今さら何を言っているのよ……昔から口をすっぱくして教えてきたでしょ!! 私たちがやらなきゃ世界は崩壊してしまうのよ!?」
古泉「別に構いません。自分の命が惜しいわけではないのですが、残りの人生を捧げてまで救うほど価値のある世界だとは到底、思えないので」
森「……」
古泉「他をあたってください。超能力者ならこの街にいくらでもいるんじゃないですか?」
森「……本当にそれでいいのね」
古泉「はい」
森「そう。ならいいわ。さようなら、古泉」
49:
古泉「……アナタはいいですね。好き放題に暴れて、何にも縛られず、誰に咎められることもなく、自由でいられて」
ギャオオオオオオオオオオオン!!
古泉「これでも自分はまったく罪のない人間だと言い張れますか? その非常識さと無神経さが他人を傷付けていることを少しは痛感してもらいたいところですね……涼宮さん」
ドドドォォォォオオオオオオオオオンッ!!!
50:
上条「うわああああああ!? なんだありゃあああああ!!」
ハルヒ「え、なになに。キャー!! なんなのあれー!?」キラキラ
上条「さ、最新の光学兵器かな……?」
ハルヒ「青い巨人よ!! もっと近くに行きましょう!!」
上条「って、おいちょっと待て!! あぶねぇぞ!!」
ヒュン
上条「!?」
ボオオオオオオオンッ!!
51:
結標「タンクローリーはやりすぎだったかしら。これはペシャンコじゃなくて粉々ね」
上条「……誰が粉々だって?」
結標「あら、生きていたの」
上条「白々しいぞ。わざと直撃させなかったんだろ」
結標「できれば殺したくないのよ。一応、アナタも貴重なプランだし」
上条「うおおおおおおおおおッ!!」
結標「迷わず突っ込んでくるのね、嫌いじゃないわ。そういう勇ましい姿」
ヒュン
結標「でも残念。イマジンブレイカーじゃ私には勝てないわ」
52:
ドスン!
上条「がッ」
ドスドスドスドス!!
結標「アナタの右手はテレポートした後の物体まで打ち消すことはできないみたいね」
上条「くそ……!」
結標「悪いことは言わないわ。降参したほうが身のためよ。涼宮ハルヒはともかく、アナタは無関係の人間なんだから」
上条「……涼宮ハルヒってのは、あいつのことか」
結標「ええ、そう。彼女さえ手に入ればそれでいいの」
53:
上条「なにがなんだか、よくわかんねーけど。いきなり攻撃してくるような奴の言うことは聞けねぇなぁ……!」
結標「正義感が強いのはいいことよ。でもね、どうしようもない現実っていうのが世の中には沢山あるの。お姉さんが教えてあげる!」
グサリッ!!
上条「ぐ」
結標「観念しなさい」
上条「ぐぅォォおおおおおおおおおお!!」
結標「なっ」
54:
グサ グサグサグサッ!!
上条「……ぬ、おおおおおおおおおおおお!!」
結標「(な、なんなのよ、コイツ……! 怖いもの知らずにもほどがあるでしょ!? この鉄杭の中を掻いくぐってくるなんて!!)」
上条「」グッ
結標「(まずい、逃げられな――)」
上条「ぬんッッ!!」
ゴキン!!!
55:
ハルヒ「うわー、うわー……どうなってんのよ、これ」
ズシィィン ドシィィン
ハルヒ「でっか! でっかいわね! エヴァン〇リオンみたい!!」
ビシュン ビシュン
ハルヒ「あっ! こらっ! なによあの赤丸は!?」
ズオオオオオ ゴオオオオオン
ハルヒ「そうよ!! いけいけー!! そんなハエ叩きつぶしちゃいなさい!!」
ポンッ
ハルヒ「ん?」
長門「……」
ハルヒ「誰よ、あんた」
長門「ジャッジメントですの」
56:
前と同じでまた忘れてたけど、
ハルヒサイド→北高入学前
禁書サイド→上条さんがインデックスと出会う前
58:
上条「すずみやー!!……あれ、いない」
グモモモモオモオモモモ
上条「さすがに逃げたか。そうだ、あのお姉さんは!?」
ドオオオオオオオオオオオオン!!
上条「……とりあえず、この巨人をなんとかしないと。科学兵器だかなんだか知らないけど、異能の力なら幻想殺しで止められるはずだ!!」
ブオオオオオオオオオオオン
上条「ォォおおおおおおおおおおおッ!!!」
パシュゥン!!
60:
結標「くっ……完全に気圧されたわ、この私が」
土御門「結標ぇ!!」
結標「……土御門」
土御門「これはどういうことだ!! なんだったんだ、あの巨人は!!」
結標「さあ、私に聞かれても。あれがあの娘の能力ってことじゃないのかしら?」
土御門「アレイスターのところへ連れていけ!! 奴から直接話を聞かせてもらうぞ!!」
61:
上条「いない……そりゃそうか。ジュース買いに行くだけで時間かかりすぎだもんなぁ」
上条「だあああ!! もう!! 幸福がきたのかと思ったらって、いつものパターンじゃないですかー!!」
上条「やっぱり不幸だー!!」
62:
青ピ「カミやーん! 見たやろ、昨日の光る巨人!」
上条「あー……そうだなー……」
青ピ「うわっ どうでもよさそっ! 僕なんか腰抜かしてもうてん。学園都市中があの巨人の話でもちきりなんやで!?」
上条「大きかったからなー。東京タワーぐらい?」
古泉「あの」
上条「ん?」
古泉「ちょっとお話があるのですが、よろしいでしょうか」
63:
古泉「実はですね……僕は超能力者なんですよ」
上条「……」
古泉「おや、信じていませんね」
上条「……すまん。信じるもなにも、超能力者なんて学園都市ではありふれた存在だし、いちいちカミングアウトされても驚かないっていうか……」
古泉「んふっ。ここでいう超能力とは少し勝手が違います。僕の場合は科学的に開発された能力ではなく、とある人物によって授けられたシロモノなんです」
ブゥン
上条「!?」
古泉「普段は『閉鎖空間』で神人を狩る時に限り、発動しないのですが……ま、我々にとってここは異次元世界のような場所ですからね」
64:
古泉「あなたは昨日、涼宮さんに会いましたね?」
上条「えぇ!? どうしてそのことを。お前、涼宮の知り合いか? そういや外から来たとか言ってたな……」
古泉「クラスメイトを脅す趣味はないから、忠告として受け取ってもらえるとありがたいのですが」ズイ
上条「……な、なんでせうかって、近い近い!! 顔が近い!!」
古泉「彼女とは関わらない方がいい」
65:
上条「えっ」
古泉「不幸にも巡り合わせたあなたはどんな目に会いましたか? あれは人の形をした爆弾です。まるで新型ウィルスのごとく周りに災厄を振り撒く悪女なのです」
上条「……古泉」
古泉「はい」
上条「あいつがどんな奴なのかは詳しく知らないけど……いくらなんでも、そんな言い方はないだろ!」
古泉「事実ですから仕方ありません。昨日、この第七学区で暴れた神人も、彼女が出現させたモノですよ。自覚はないようですがね」
上条「そんな……」
古泉「というわけで、話は以上です。くれぐれも近づかないように。僕もあなたとは仲良くしていきたいので」
66:
麦野「目標は?」
フレンダ「んー。結局、風紀委員に保護されちゃったみたいね」
麦野「ちっ」
絹旗「諦めるのは、まだ超早いです。必ず私たちにもチャンスはあるはず」
麦野「同じ依頼でクライアントがここまで募るのは前代未聞だかんな。なにしろ、統括理事会じきじきの指令でもあるわけだし?」
フレンダ「彼奴めの身柄は、この『アイテム』が頂くってわけよ!」
67:
初春「うーん。やっぱり、バンク以外のサーバーを探ってみても情報は入っていません」
黒子「疑いようもなく不法侵入者ですの」
固法「困ったわね……」
ガチャッ
長門「……」
固法「あら、長門さん。おかえりなさい」
長門「……」ペコリ
68:
黒子「長門さん!? あなたまた図書館に籠っていましたわね!? それは職権濫用ですの!!」
長門「違う」
黒子「嘘おっしゃい! その手に持っているのは、新しく貸し出しされた本ではありませんか!」
長門「……」
黒子「わたくしの眼は誤魔化せませんのよ!」
長門「そう」
黒子「ムッキー!!」
長門「……彼女はどこ」
初春「へっ……あれ!? 涼宮さんがいません!」
固法「た、大変! やけに大人しいかと思ったら!」
69:
上条「あ」
ハルヒ「」ムッスー
上条「(思ったとおりここにいたか。古泉はああ言ってたけど、悪い奴らに狙われているならほっとけないよなぁ)」
ハルヒ「んあ?」
上条「よう、また超能力者探しでもしてんのか」
ハルヒ「……あんた、性懲りもなく自販機に金をスラれにきたの?」
上条「そんなわけないだろ!! 俺はお前が心配で……」
ハルヒ「はぁー、退屈。青い巨人も消えちゃったみたいだし」
上条「(結局、あれってコイツの仕業だったんだよな……)」
ハルヒ「ところであんたさ、自分がこの地球でどれだけちっぽけな存在なのか、思い知らされたことってある?」
70:
上条「はい?」
ハルヒ「あたしはある。だから、意地でも自分を変えてやろうと思ったの」
上条「ふーん……」
ハルヒ「なによ、いかにも興味なさげって感じ?」
上条「そんなことはないですよー」
ハルヒ「フン! 別にいいわ。アンタみたいな普通の人間なんてどーでもいいし」
上条「普通ねぇ。俺はそれでも全然構わないけど」
71:
ハルヒ「よくないわよ!!」
上条「おう!?」
ハルヒ「ごくありふれた平々凡々の人生なんて価値がないのよ!! あたしはまっぴらゴメンだわ!!」
上条「……それじゃあ、お前は普通以外の人生に何を求めているんだよ?」
ハルヒ「不思議よ、不思議!! 宇宙人、未来人、異世界人、そして超能力者!! そいつらを探しだして一緒に遊ぶことが、あたしの夢なの!!」
上条「(んー。これまた典型的な反抗期ムスメだな。あのビリビリ中学生みたいに電撃ぶっぱなしてこないだけマシか)」
ハルヒ「ちょっと、聞いてんの!?」
上条「へいへい。しっかり聞いてますよ」
72:
土御門「はやく手を打った方がいいな」
結標「せっかちね。急いだところでしょうがないと思うけど」
土御門「暗部同士が小競り合いを始める前に終わらせてやる。でないと、ここは格好の修羅場と化すぞ!」
結標「とにかく私はパス。アレイスターに見限られたし、大人しく案内人に徹するわ」
土御門「時空改変能力……願望を実現させる力だと? 冗談なら笑える話にしてもらいたいな」
73:
長門「……」
古泉「お探しものですか?」
長門「……」
古泉「一足遅かったようですね。涼宮さんはついさっきまでそこにいたのですが」
長門「あなたは?」
古泉「初顔合わせになりますかね、古泉一樹です。僕の方はあなたのことをよくご存知ですよ、TFEI端末の長門有希さん」
美琴「(あの娘……男は知らない奴だけど、何してるのかしら?)」
74:
古泉「先日起こった二度目の情報爆発、並びに次元断裂。決して交わることのない二つの世界が入り乱れた状態です。いやはや、彼女の力は底知れずとしか言いようがありません」
美琴「(なんの話かしら……)」
古泉「ここに情報統合思念体が存在するのかは測りかねますが、涼宮さんに付いて回る人形はあなただけのようですね」
長門「……」
ブゥン
美琴「!?」
古泉「余計なことをされると面倒だ。ここで消え失せてもらえませんか」
長門「なぜ」
古泉「涼宮さんにはどうしても死んでもらいたいのです。害しか生まないような人間は殺されて当然でしょう?」
75:
ビシュゥゥゥゥーーン!!
古泉「おっと」
美琴「…う、動かないで!! もう一回撃つわよ!?」
古泉「邪魔が入りましたか……残念。今日はこれぐらいにしておきます。では、失礼」
美琴「ちょっと!! 待ちなさいよ!!」
長門「……」
美琴「大丈夫?怪我はない?」
長門「」スッ
美琴「おいィ!! アンタもどこ行くのよ!! 助けてやったんだからお礼くらい言いなさいよね、もー!!」
76:
ハルヒ「なんか今日は人がいっぱいだわ。昨日は避難訓練かなんかだったの?」
上条「(誰がどこで攻撃してくるのか解らない……人ごみなら安心ってわけでもないよな)」
ハルヒ「近未来都市といっても、ウチの地元と大差ないのね。目立つのは掃除機ぐらいかしら」
上条「なぁ、そういえばお前。自分の部屋まだ借りてないのか?」
ハルヒ「さあね。そもそもあたしは変な姉ちゃんに連れられてこられたのよ。気づいたらあそこのベンチで寝てたってわけ」
上条「なんだそりゃ!?」
ハルヒ「こっちが聞きたいわよ」
77:
上条「……やっぱ、アンチスキルに行くかな。俺だけじゃどうしようもないし」
ハルヒ「いやよ。さっきまで風紀委員ってとこで取り調べされてたのに」
上条「お前それ抜け出して来たんかい!?」
ハルヒ「うん」
上条「ええい!! はやく戻りなさい!!」
ハルヒ「嫌よ、今度こそ超能力者に会うんだから。よっしゃ! んじゃ、手当たり次第探すわよ!」
上条「おい!!」
ハルヒ「ねぇねぇ、そこの人。ちょろーといいかしら?」
「? はい。私ですか?」
ハルヒ「あなた、超能力者? なんでもいいから能力を見せて――」
ドゴッ
78:
ハルヒ「かはっ」
上条「!?」
「…と、まぁこんな感じです」
ハルヒ「」グッタリ
上条「涼宮ッ!!」
絹旗「私はレベル4の『窒素装甲(オフェンスアーマー)』。少しの間だけ超気絶してもらいますよ、涼宮ハルヒ」
上条「テメェ!! そいつをどうするつもりだ!?」
絹旗「あなた誰ですか。あいにく、一般人と会話している暇は超皆無です。それでは」
上条「待ちやがれ!! くそっ……!」
79:
フレンダ「絹旗こっちこっちー!!」
滝壺「……誰か追ってる」
麦野「あぁん? 他の暗部組織の連中か?」
絹旗「パス、フレンダ」
フレンダ「ほいきた!」
麦野「あんたらは先に行ってなさい。私と絹旗はあれを片付ける。ほら、さっさと車出して!!」
ブロロロロロ…
80:
上条「うおおおおおおおおおォォォォッ!!」
絹旗「麦野の手は煩わせません。ここは私が」
上条「そげぶ!」
ゴッチン!!
絹旗「にゃん」バタリ
麦野「なっ!?」
81:
上条「お、お前ら……!」
麦野「そんな……絹旗が素手のパンチでやられるわけ……」
上条「涼宮をどこへやったァァあああああ!!
!」
麦野「……誰だか知らないけど。とりあえず、ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ねッ!!」
83:
滝壺「前方から信号がきている」
フレンダ「にぎゃああああ!! もういいから引き殺しちゃえ!!」
土御門「デクのボウどもせめてタテとしてヤクにタてッ!!」
ゴシャアアアアアアアアン!!
土御門「ごふぁ!」
滝壺「大丈夫? フレンダ」
フレンダ「うーん……なんとか」
84:
土御門「……麦野沈利はいないのか」
フレンダ「今は取り込み中。ってか、結局お前なんかに教えてやる義理はないってわけよ!」
土御門「威勢がいいな、小娘。『アイテム』の戦闘要員は二人だけのはずだが」
フレンダ「それは聞き捨てならないってわけよ!」
滝壺「だいたいあってる」
フレンダ「うおい!?」ガビーン
滝壺「大丈夫だよ、わたしはそんなフレンダを応援している」
85:
土御門「涼宮ハルヒをコチラへ渡してもらおうか。貴様らが相手ならここで一悶着を起こす必要もない」
フレンダ「完全に舐められてるわけよ!」
滝壺「せめて絹旗がいてくれたらなぁ」
土御門「さあ、どうする?」
フレンダ「ぐぬぬ……」
「よーよー。能無しどもが雁首揃えやがって、お遊戯でも始める気か?」
土御門「!?」
垣根「俺も混ぜてくれよ」
86:
麦野「チぃッ!!」
ピシュゥゥゥゥゥンッッ!!
上条「グッ!」
パシュゥン
麦野「……どういう理屈か知らないけど、その右手、能力を無効化できるようね」
上条「こっちだってなりふり構ってられないんだ、さっさと終わらせてやるよ!!」
麦野「ヒャハ!! 調子乗ってんじゃねーぞ、クソガキ!! スクラップにすんぞゴラァッ!!」
87:
上条「おおおおおォォォ!!」
麦野「オラオラオラオラオラオラー!!」
ピシュン ピシュン ピシュン
上条「っ!!」
麦野「いい加減にくたばりやがれェェええええ!!」
ジュオオオオオオオオオン!!!
麦野「ヒャハハハハハ!! 死んだ死んだ!! あっけないねぇ……レベル5に逆らうとこうなるのよ!!」
89:
上条「そこで勝ち誇っているようじゃ、レベル5も大したことないな」
麦野「なにぃ!?」
上条「るあっ!」
ガァンッ!!
麦野「ぐけ」
上条「よし! 待ってろよ涼宮!」
麦野「……どーこに行ーくのかにゃあああああん!!?」
コォオ シュオン!!
上条「があああああ!!」
麦野「この私がしくじるわけないでしょ。獲物をみすみす逃すほど生ぬるい『アイテム』じゃねぇんだよ、あァ!?」
90:
上条「左足が……」
麦野「ゲームオーバー♪」
上条「(まずい、殺される――)」
タン
長門「」ヒュッ
麦野「!?」
ドッ
91:
麦野「……こ」ポックリ
上条「え」
長門「行って」
上条「ど、どちらさまで……」
長門「はやく」
上条「……わ、わかった。ありがとう!!」
92:
フレ「 」 ンダ「 」
滝壺「……」ツー
土御門「クソッタレだ、『スクール』の畜生め……っ!」
垣根「まだへらず口を叩ける余裕があるのか。大した野郎だな」
バサッ!!
垣根「安心しろ。殺しやしねぇ。しばらくここで眠っているといい」
土御門「待て……」
垣根「じゃあな」
93:
上条「はぁ、はぁ……」
上条「くそっ……足が……」
上条「つか、そもそも涼宮の居場所が解らない。どうする……」
「どうしました」
上条「!?」
みくる「道に迷っちゃいましたか?」
94:
上条「あなたは……昨日のお姉さん?」
みくる「あ、自己紹介がまだでしたね。わたしは朝比奈みくる。この前はお世話になりました、上条当麻くん」
上条「あれ、どうして俺の名前を」
みくる「お返しに、今度はわたしがあなたを導く番です」スッ
上条「……?」
みくる「この道をまっすぐ行った先の広場。いまから大体15分くらいでしょうか、そこに涼宮さんがいます」
95:
上条「ほ、本当か!?」
みくる「はい」
上条「……でも、なんでそんなことが」
みくる「規定事項なんです。……といっても、私たちが確定した未来が必ずしも、この時間平面上に当てはまるわけではありませんが」
上条「規定事項?」
みくる「道しるべが必要なんです。今回の鍵は、あなた」
97:
みくる「信じてもらえますか?」
上条「えっ」
みくる「これからあなたに託す未来が、正しい道筋なのか……わたしにはわかりません。それでも信じてもらえますか?」
上条「……」
みくる「涼宮さんを、守ってあげてはくれませんか?」
98:
上条「……未来がどうとか、正しいのがなんだとか。そんなに難しいことは俺にもよく解らないけど」
みくる「はい……」
上条「要は、あいつを助ければいいんだろ? つべこべ言わずにさ、助けたいって気持ちがあるなら、きっと理由なんてそれだけで十分なんだよ」
100:
みくる「ふふっ」
上条「えっ。俺なんかおかしなこと言った?」
みくる「いえ。……本当にお願いできますか」
上条「まかせろよ。あいつは俺が救ってみせる!」
みくる「ありがとうございます」
上条「礼を言うのはこっちの方さ。教えてくれてありがとな!! それじゃ!!」
ダッ
101:
みくる「……あなたがこれから進む未来は、数多くの困難が待ち受けています」
上条「わっ! とぉ!?」
みくる「ひとりの少年が背負うには、あまりに重く……残酷な運命」
上条「あっぶねぇ。コケるとこだった」
みくる「だけど、それでもあなたは、臆することなく立ち向かって、乗り越えられることができるんだわ。どんなに絶望的な幻想も、その手で打ち砕いていける。とても強い人だから」
上条「待ってろよ、涼宮」
みくる「違う世界で、英雄として語り継がれるあなたのことを」
上条「いま行くからなッ!!」
みくる「偽りのないその信念を、信じていたい……わたしは心からそう思います」
102:
キョンはどうしたの?いないの?
103:
10032「E地点にターゲットを補足。14510号は応戦ねがいます」
14510「了解しました。と、ミサカは自らの任務を遂行するべくこの『駆動鎧(パワードスーツ)』に搭載された電磁砲を構えます」ガシャコン
長門「!」
ビシュゥゥゥゥゥゥゥゥン!!
10032「やりましたか?」
14510「消し飛んだようですね。と、ミサカは勝ち誇りながら答えます」
長門「」ヒュッ
14510「!? しまっ――」
バチン!!
104:
シュー… ガクン
14510「……面目ない。完全に沈黙、壊れてしまったようです」
ゾロゾロ ウィーンガシャン
長門「……」
13333「多勢に無勢とはよく言ったものですが、ここはやはり総力戦しかないでしょう。と、ミサカは決意の旨を表明します」
19090「同じく。妹達全員でかかれば恐いものなしです。と、ミサカは己を奮い立たせます」
「もういい。お前らは引っ込ンでろ。これ以上馬鹿みたいに散らかすンじゃねェよ、三下」
10032「あなたは……」
一方通行「俺が片付けてやらァ」
105:
一方通行「……ったく、どいつもこいつもガチャガチャうるせェ。つーかよォ、普段からその装備で実験してりゃ、少しはマシになるンじゃないのかァ?」
10032「今回の案件は異例であって緊急に駆り出されたモノです。あの実験はできるかぎり最小限のコストで行われています。それに、あなたとはこのスーツで戦っても無駄にしかならないでしょう。と、ミサカは説明します」
一方通行「まァ、そうなンだけどよォ。……ンで、テメェか? 裏でこそこそ嗅ぎ回ってやがるネズミは」
長門「……学園都市の第一位。最強のレベル5。アクセラレータ」
一方通行「光栄だなァ。外から来た奴にまで名が知れ渡っているたァ」
長門「……」
一方通行「……でもよォ。それだけじゃダメなンだ」
トィン ズゴゴゴゴゴ!!
長門「!」
ターン
106:
一方通行「学園都市で一番強いっつってもよォ」
長門「ターミネートモード」
一方通行「俺が目指している場所はそこじゃねェ」
長門「」ヒュッ
バキンンッ!!!
長門「!?」
一方通行「まだまだ足りないンだ……『絶対能力(レベル6)』にはなァァアアアア!!」
107:
上条「痛ッ……」
上条「さっきのダメージが脚にきてる……けど、気にしている暇なんてないよな」
上条「もう時間が少ない」
上条「急がねーと……」
「レベル0の無能力者ごときに、ここまで手こずりますか」
上条「!? お前……」
古泉「学園都市の暗部組織も大したことはありませんね」
108:
古泉「忠告しておいたはずですが」
上条「なんでだよ……」
古泉「はい?」
上条「涼宮が大変な目に遭うって……お前は知ってたんだろ!? どうしてこんなことになるまで放って置いたんだ!!」
古泉「言いましたよね。あれは害悪で、周りに不幸をバラまく疫病神なんです。それだけ彼女の力は大きすぎた」
上条「関係あるかよ!! そこをどけ!! 俺はあいつを助けに行く!!」
109:
古泉「やれやれだ」スッ
上条「!?」
古泉「ふんもっふ!」
ズアアアン!!!
上条「ぐぅウッ」
古泉「おやおや、話になりませんね。涼宮さんを助けると言いましたか? 大言壮語ですよ。所詮、あなたなんてその程度の人間です」
上条「ゲホッ ゴホ」
古泉「僕がこの力に目覚めたのは、今から三年前になります」
110:
古泉「それまでの僕は、どこにでもいるなんの変鉄もないごく普通の少年でした。普通の家庭があり、普通に学校へ通い、普通に友達がいた。ところが、ある日を境に僕の人生は一変します」
古泉「涼宮さんが心の葛藤により生み出す閉鎖空間。そこで神人を倒すことが僕に与えられた使命でした」
古泉「始めの頃は、神人に対する恐怖心もありましたが、それ以上に燃えていました。自分たちは世界を守るために選ばれたヒーローなんだ……ってね」
111:
古泉「……しかし、時が立つにつれそんな思い過ごしをする余裕はなくなる。どれだけたくさんの神人を倒しても発生する閉鎖空間。負傷する同志たち。組織間で幾度となく繰り返される抗争と血みどろの殲滅戦……」
古泉「常にその中心にいたのは彼女です。当事者である本人は僕たちの苦悩の日々など知る由もない。常識を覆すような現象があることを伝えてはならないから……そんなことは解っています」
古泉「ただ納得ができなかったのです。多くの人たちが世界の崩壊を食い止めようと奔走する傍ら、安全な立ち位置で世の中を否定する彼女のことが、どうしても気に入らなかった」
112:
上条「……」
古泉「挙げ句の果てには……このとおり。彼女は二度目の情報爆発を起こし、世界は混同してしまいました。僕たちが涼宮ハルヒの横暴に耐え抜いた結果がこのザマです」
上条「」ギリッ
古泉「死ねばいいんですよ。涼宮さんがいなくなるだけで世界が救われるのならね」
上条「……ぇよ」
古泉「はい? 今なんと言いました?」
上条「ふざけたこと言ってんじゃねぇよ!! この大馬鹿野郎がッ!!」
113:
上条「なにが世界のためだ。テメェが叶えられなかった夢のツケを、涼宮ひとりに押し付けやがって!!」
古泉「実際そうなんですよ……彼女さえいなければ僕は平和な毎日を送ることができた。『機関』の一員となったおかげで、青春を無駄にしたんです!!」
上条「逆恨みしてんじゃねぇ!! お前自身に力がなかっただけの話だろうが!!」
古泉「知った口を!! あなたに何がわかるのですか!!」
上条「仮に涼宮が死ぬことで世界が救われるとして!! 本当にそれでいいのかよ!?」
114:
古泉「――ッ!!」
上条「あいつが死んでなにもかも解決するのなら、なんで涼宮は今もああやって生きているんだよ!?」
古泉「黙れ……」
上条「助けてやりたかったんじゃないのか!? 自分の人生や青春を犠牲にしてまで!! お前たちはこれまでずっと!! あいつの世界を守り続けてきたんじゃないのかよ!?」
古泉「黙れぇ!!」
上条「諦めるつもりなのか!? みんなが幸せに笑っていられる世界を!! お前やお前の仲間たちがどうしても叶えたかった大切な願いを!! こんなところで諦めちまって本当にいいのかよ!! それで満足できるわけないよなぁ、古泉ぃ!!」
115:
古泉「うるさあああああああい!!」
ブォン
古泉「青臭いことを!! それが簡単にできれば誰も苦労はしない!! もう終わりにしなければ……それが世界のためであり、涼宮さんのためなんだああああ!!!」
ビュンんん!!!
上条「くっ!」
パシュゥン
116:
古泉「なっ!?」
上条「いいぜ……」
古泉「馬鹿な!! 一体なにが!?」
上条「お前に世界も、涼宮も、全部まとめて救えるだけ力がないというのなら……」
古泉「!!」
上条「―――まずはッ!!」
上条「 そ の 幻 想 を ぶ ち 殺 す ッ ! ! 」
117:
ドッパアアアアアンッッ!!!
古泉「ごふっ」
上条「見せてやるよ、古泉」
古泉「…な……に…を……」
上条「俺みたいに無能で最弱な人間でも、誰かを守ってやれるんだってな。そして、少しだけお前の夢に協力してやる」
古泉「……」
上条「必ず涼宮は連れて帰る。約束だ」
118:
ベキッ
長門「……」
一方通行「今度は右足がイッちまったな。降参すンなら今のうちだぜェ」
長門「」ブンッ
一方通行「だーかーらァー」
ビュン グサグサッ!!
長門「……っ」
一方通行「物理攻撃は効かねェンだ。デフォルトで『反射』に設定されてるかンな」
119:
一方通行「あァ、つまンねェ。少なくともコイツらよりは腕がたつと思ったンだが」
10032「……」
一方通行「拍子抜けだァ」
長門「……この次元断層は私に負荷をかける」
一方通行「で、また馬鹿の一つ覚えみてェに噛みついてくンのか?」
長門「……」ググッ
一方通行「いい眼をしているな、お前。自分が死んでも代わりはいくらでもいるっていう、俺が大ッ嫌いなクッソタレどもの眼だァ」
121:
一方通行「そンなに死にてェンなら……」
ヒュン
長門「!」
一方通行「殺してやらァ!!」スッ
轟ッッ!!!
122:
ズサアアア……!
長門「……?」
10032「えっ!?」
一方通行「……な、なンだこりゃァ!? 血ィ!? この俺が……」
ザッ!!
「大丈夫か、嬢ちゃん」
長門「誰?」
一方通行「ハッ! やっぱり俺にはまだ足りねェのか!?」
「そうだな。お前には絶対に欠けてはならない、圧倒的に足りないモノがひとつだけあるッ!!」
一方通行「て、テメェは……」
削板「全然足りねぇ……根性ってヤツがよッ!!」
123:
ハルヒ「……ん」
垣根「お目覚めかい、お姫様」
ハルヒ「だれ……?」
垣根「天界の王子さ。空から君を迎えにきたんだよ」キリッ
ハルヒ「(うわっ……なんか気持ち悪いわね、コイツ)」
バサッ バサッ
ハルヒ「!? 飛んでる!!」
124:
ハルヒ「あ、あんた。本当に天使なの?」
垣根「ああ」
ハルヒ「ありえないわ……」
垣根「ありえない、なんてないさ。俺の『未元物質(ダークマター)』に常識は通用しねぇ」
ハルヒ「はっ?」
垣根「ん?」
ハルヒ「……」
垣根「……まぁ、もういいからダマッテロヨ」
ハルヒ「うっ……」スゥ
125:
削板「すごいパーンチッ!!!」バチコーン
一方通行「ピギュァ!!」
削板「きっさまァァああああああッ!! よくも弱っている女性に暴力をッ!! 男として恥ずかしくないのかッ!!?」
一方通行「反射が効かねェだと……テメェは一体なンなンですかァ!?」
10032「削板軍覇……レベル5の第七位です」
一方通行「七位だァ? おィおィ、俺が誰だかわかってンのか? 格下のくせに逆らってンじゃねェぞ!! こらァアアアアアアア!!」
トィン ズゴゴゴゴゴゴ
長門「あぶない……!」
削板「いたたたたッ!!」
長門「!?」
127:
10032「……」
削板「卑怯者ッ!! 人に向かって石を投げつけてくるたぁ、しつけがなってない小学生だッ!!」
一方通行「無傷ゥ!? ……肉体強化の能力かァ?」
長門「……」
一方通行「おい、お前らの力を貸せ」
10032「え?」
一方通行「電力を溜めるんだよォ!! 集まれェェエエエエエ!!」
ギュオオオオオォォォォォ
128:
ジジジジジジジジジジジッ
長門「うっ……」ググッ
削板「じっとしてな」
長門「しかし、あれはとても危険」
削板「いいからまかせろッ!!」
一方通行「ぐきこきかけけくきくくかー!!」
ビジュゥゥゥゥゥウウウウン
129:
削板「超すごいパンチガードッ!!」
カッ
削板「ムンッ!!」
一方通行「は……」
削板「根性ォォおおおおおおおッ!!」バッキーン
一方通行「はァアアアアアアア!?」
130:
削板「フー……フー……! ハッハッハッハ!! どうってことないわッ!! そんな水鉄砲ッ!!」
10032「これが学園都市最大の『原石』ですか」
一方通行「ふっ」
10032「!! いけない、一方通行!」
一方通行「ざけンなよォォォォォォ!!!三下がァァァァァァァ!!」
ビュオッ
131:
削板「真っ向勝負か、いい根性だ。よっしゃッ!! 受けてたとうッ!!」
一方通行「オケケケケケケケケケ!!」
削板「はぁぁぁぁああああああああ……ッ!!」ゴゴゴ
一方通行「自転ベクトルパンチィ!!!」
削板「すごいパーンチッ!!!」
ズンッ!!!!
133:
削板「ぬ」
一方通行「でへへへへェ!!」ニタァ
削板「…ヌオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
ビキッ
一方通行「なァ!?」
削板「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
ビキビキッ!! ブシュウ!!
一方通行「……で、デタラメだァ!! 俺に演算できないモンがあるわけ……」
134:
14510「まさか」
19090「あれが」
13333「人が神ならぬ身にて、到達すると云われる」
10032「天上の意志……!」
一方通行「なンだよそりゃァ……なンなンだ、その力はァアアアアアアア!?」
削板「……根ッ!!!性ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーッッッ!!!!!」
轟轟轟ゥゥウウウウウウッ!!!!
135:
ヒュゥゥゥゥ……
一方通行「あべェェエエエエエエエエ!!」
ドサッ
一方通行「げはっ」
長門「……」
一方通行「」チーン
10032「……今日はこれぐらいにしておいてやる。と、ミサカは若干かませ犬っぽい台詞を吐きながら負け犬を担ぎ上げます。さあ、帰りますよ」
一方通行「」
削板「おうッ!! 俺とタイマンはりたい時はいつでもこいッ!!」
妹達「「「 えっさ ほいさ 」」」
137:
長門「……」
削板「ケガはないか?」
長門「……」
削板「大丈夫そうだな。んじゃ、俺もそろそろ行くぜ」
長門「待って」
削板「ン?」
長門「あなたは……何者……?」
138:
削板「俺か」
削板「俺は学園都市のナンバーセブンッ!!」
削板「削板軍覇だッ!!」
どん!
長門「……」
削板「あばよッ!!ダチ公ッ!!」
ダッ
長門「……ナンバーセブン」
139:
上条「!!」
垣根「女を連れてきたぞ、アレイスター!! ここを開けろ!!」
ハルヒ「」
上条「涼宮!」
垣根「あん? 誰だ、お前」
140:
上条「涼宮を離せ!!」
垣根「馴れ馴れしいぞ、クソガキ。俺は今から大事な用があるんだよ」
上条「はなせっつってんだ!! 聞こえねーのかぁ!!」
垣根「フン」
バサッ
上条「うおおおおおォォォォッ!!」
垣根「カタギとは取り合わない主義だが。邪魔するってんなら、仕方ないよな」
144:
垣根「一分もいらねぇ。愉快な死体になりやがれ」
ゾオオオオオオッ!!
上条「どらぁッ!!」
パシュゥン
垣根「んな……!?」
上条「そげぶ!」
ゴッチン!!
垣根「ヴいっ」
上条「涼宮!!」
垣根「……くそがっ!」
バチィン
上条「が……!」
垣根「……このガキ、俺の『未元物質(ダークマター)』を完璧に消滅させやがったのか!?」
147:
上条「ハァハァ……」
垣根「初めてお目にかかる能力だな……とんでもないブツを隠してやがったか、あの野郎!」
上条「」ガクン
垣根「?」
上条「(ちくしょう……さすがにこれ以上は立っていられねぇ……)」
垣根「うわっ、ダッセ。もうへばったのかよ」
151:
上条「……」
垣根「そーそー。そうやって黙り混んでりゃいいんだ。さっきの無礼は許してやるからよ」
上条「……ぐ」
垣根「特別に殺さないでおいてやってもいい。この女を助けようとしているみたいだが、見て見ぬフリが一番だぜ?」
上条「おおおお……!」
垣根「弱いくせして俺に歯向かうなんてムチャなことは……」
上条「おおおおおおおおおおおッ!!!」ググッ
154:
垣根「!」
上条「……だれが、見捨てるかよ」
垣根「へぇ」
上条「俺は……助ける……ッ!」フラッ
垣根「泣けるねぇ。馬鹿もここまできたら最高だな」
上条「すず、みや……」
垣根「お前の偽善っぷりを表してトドメさしてやろう」
バサッ
上条「くっ」
垣根「じゃあな」
「させませんよ」
ビシュン
156:
ビシュンwww
157:
垣根「―――ッ!!」
トン
上条「…おまえ」
古泉「ご無事ですか、涼宮さん」
ハルヒ「」
160:
上条「ははっ……来てくれたのか……」
古泉「ええ。アナタだけに任せるわけにはいきませんから」
垣根「またか……意味わかんねぇ。テメェもそいつを助けようってか?」
古泉「お察しのとおりです」
垣根「ハッ! どいつもこいつもヒーロー気取りかよ!! 偽善でやっていけるほど世間様は甘くねぇんだぞ!?」
164:
古泉「……少し前までの僕なら、あなたと同じ意見でした」
垣根「あ?」
古泉「自分には不可能だと言い訳をして。限界を決めつけて、無難な道だけを歩こう。目の前に大きな壁があるのなら、避けて通ればいい……そんなふうに考えていましたよ」
垣根「そうさ。それが人生ってヤツだ!! そこまで解っていながら、どうしてこんなマネをしやがる!?」
古泉「単純なことですよ」
上条「古泉……」
古泉「カッコいいと、思ってしまったんです。どこまでも真っ直ぐに突き進もうとする彼の生き方が。大それたことを言いながらも、行動できるその姿勢が」
166:
垣根「……」
古泉「ですから」パチン
ブォン
古泉「僕も向き合っていくと決めました。自分が成すべき事に、全力で」
168:
垣根「久々にぶちギレた……」
上条「くるぞ!!」
垣根「そんなやり方で悪党に、勝てると思うなァァあああああああああああ!!」
ビュオッッ!!!
上条「うおおおおおお!!」
172:
垣根「!?」
上条「ぐゥゥううんッッ!!!」
パシュゥン
垣根「テメェ……まだ立ち上がってこれたのか……!?」
上条「今だ!! 古泉ッ!!」
古泉「ぬをおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!!」グッ
垣根「……く、くそがァァあああああああ!!」
ダァンッ!!
174:
ハルヒ「……おが?」
上条「よぉ、起きたか」
ハルヒ「あんた……そいつは、誰?」
古泉「怪しい者ではありません。ただの通りすがりですよ」
ハルヒ「ボロボロじゃない……一体なにがあったの」
上条「何もなかったさ。気にすんな。お前は少し眠っていたんだ」
ハルヒ「そう……」
175:
ハルヒ「夢を見ていたわ。天使と空を飛んだの」
上条「そっか」
ハルヒ「……はぁ。憂鬱ね」
上条「やっぱ、どうしても超能力者に会いたいか?」
ハルヒ「どうせいないんでしょ。解ってんのよ、そんなこと」
古泉「んふっ」
176:
ハルヒ「あたしね、小学生の頃は同年代の女の子たちと比べても、平均より高い境遇の持ち主なんだって、思い込んでいたの」
ハルヒ「裕福な家庭と、尊敬に値する両親がいたわ。そんな環境に恵まれて、容姿も良ければ学業の成績も常にトップクラス」
上条「(嫌みかよ……)」
ハルヒ「不満があるとしたら、この世界が『普通』であることだけ」
178:
ハルヒ「人生の中で獲得し得るかぎりの幸福に、生まれながらにして満たされていたあたしが、唯一悩ましいと思える点はそこだけだった」
ハルヒ「心の底から本気で感動できることがなんなのか……知りたかったの。かけがえのない宝物だって、胸を張って誇れるだけの思い出が……どうしても欲しかったのよ」
179:
上条「……そうか」
ハルヒ「うん」
上条「なら、今までどおり不思議を探し求めてみればいいさ」
古泉「……」
上条「でもよ、涼宮。宇宙人や未来人……もちろん超能力者だっていいけど、お前が知らないだけで、面白いことはお前自身の世界にも沢山あるんだぜ?」
180:
ハルヒ「あたしの世界?」
上条「ああ。お前は普通なんて面白くないって言ってたけどな」
ハルヒ「……」
上条「友達作って一緒に遊んだり、学校行事や部活で頑張ったりしてさ。高校生活を目一杯になってハシャぎながら過ごすのも、それはそれで楽しいし、悪くないんじゃないかって……俺は思うんだ」
ハルヒ「……」
上条「世界に対して悲観的になるほど、お前の幻想はまだまだ終わっちゃいない。……不思議なこと、面白いこと、楽しいこと、そういうのも含めて、これからたくさん確かめてみるといいぜ」
181:
ハルヒ「くっさ」
上条「へ?」
ハルヒ「なによそれ、お説教? よくもまぁ、そんなこっぱずかしいことを堂々と言えるわね」
古泉「あはは」
上条「笑うなよ!」
古泉「これは失礼」
ハルヒ「フン。……ま、多分それもいいのかもしれないわね」
上条「……あ、立てるか? ほらっ」スッ
ハルヒ「ん」
パシュゥン
182:
上条「え」
ぽつーん
上条「涼宮!? 古泉!?」
シーン
上条「……き、消えた?」
フラリ
上条「(……って、ヤバい。どっと疲れが)」
バタリ
183:
上条「ハッ」
冥土帰し「気がついたかい」
上条「うわあああああ!?」
冥土帰し「おおっ。いや、すまないね。驚かせるつもりはなかったんだ」
上条「えっと、ここは……?」
冥土帰し「病院だね。路上で君が倒れているところを風紀委員の人が運んでくれたんだよ。しばらく安静にしてるといい」
184:
上条「(今日、俺は何をしてたんだっけ……思い出せねぇ。……なんだろう、この、すごく面白い夢を見たはずなのに、忘れちまってるような感覚……)」
ブォン
上条「ん?」
『やあ、どうも』
上条「のわあああああああ!?」
『おや、まるで幽霊でも目の当たりにしているようなリアクションですね』
上条「んなっ……ど、どどどどどちらさまでせうか!?」
『僕ですよ。古泉です』
上条「古泉……?」
185:
『覚えていませんか』
上条「……いや知ってるよ。記憶にうっすらとだけど……」
『まったく、馬鹿正直な方だ』
上条「そっちに帰ったのか……その、涼宮も」
『あなたの右手のおかげでね』
上条「……っつーことはさ、始めから俺があいつに触れていたら元通りだったんじゃ……?」
『そうなりますね』
上条「なあああああああ!?」
187:
上条「一体なんだったんだ……あの苦労は……」
『いいではないですか。終わりよければなんとやら、と言いますし』
上条「……そんで。まだ何かこっちに用があるのか」
『はい。ひとつだけ思い残したことがあります』
上条「なにを?」
『……あなたに、お礼をね』
188:
『異次元世界への入り口は塞がりつつあります。それに伴い、僕たちの記憶も消滅していく仕組みです』
上条「……」
『最終的には、この二日間の出来事は全て無かったことになるでしょう。そうなる前に感謝の一言を……』
上条「なにが?」
『……え?』
上条「俺はあたりまえのことを、自分がやりたいようにやっただけだ。お礼なんて言われるほどじゃないさ。それに……涼宮を救ったのは、お前だろ?」
『ふふっ……』
上条「?」
『あなたとは、いずれまたどこかでお会いできそうな気がします』
189:
スゥ……
上条「!? 古泉、お前……」
『そろそろ時間のようですね』
上条「……そっか。涼宮によろしくな」
『はい。あなたはそちらの世界をよろしくお願いします』
上条「どういう意味だ、それ?」
『さあ、なんでしょうね』
上条「……まぁ、いいさ。お互い頑張ろうぜ。絶対にまた会おうな!!」
『約束します。いつか必ず』
『―――ありがとう、上条さん』
190:
土御門「いやー。この頃、寒い日が続くようになってきたぜい」
上条「冬は嫌いだ。とにかく寒い」
青ピ「カミやーん!!」
上条「なんだ、ロリコン野郎」
青ピ「ロリコンやない。ロリも好きなんや! それより大ニュース!」
土御門「どうしたにゃー」
青ピ「ハルヒの新刊が出るらしいで!!」
土御門「なにぃぃいいいいいい!!?」
191:
上条「ハルヒ?」
青ピ「えっ!? カミやん知らんの!?」
土御門「涼宮ハルヒシリーズと言えば、ラノベ界を震撼させた不朽の名作だぜい」
上条「ああ、涼宮って聞いたことが……ラノベ?」
青ピ「そこから知らんのかい!?」
土御門「ほらこれシリーズ全巻だにゃー!」
ドンッ!!
192:
上条「……か、上条さんは小説の類いにはあんまり嗜みがなくて……」
青ピ「ええから、ええから。僕も押し付けがましいのはよくないと思うけどな、これは絶ッッッ対おもろいから!!」
土御門「ダチの趣味には付きやってやるモンだぜい」
上条「へいへい」ペラッ
青ピ「あー! それは違う! 分裂やん! 一巻は憂鬱やで! 順番ずつやないとあかん!」
上条「ややこしいな……あれ、古泉?」
193:
土御門「古泉? 古泉一樹のことかにゃー」
青ピ「なんや、カミやんもハルヒ知っとったやんけ」
上条「……んと、なんつーか」ポリポリ
土御門「古泉はいいキャラだにゃー。裏で暗躍しているとこに親しみを感じるぜい」
青ピ「えっ。土御門くん、やっぱり妹さんと!?」
土御門「どうして古泉だけ知ってるのかにゃー?」
青ピ「スルーかい!!」
上条「ずっと……待っていたんだ。いつかまた再開できる日を、ってさ」
土御門「?」
194:
ハルヒ「本屋に着いたわ!!」
キョン「正確にはTSUTAYAな」
ハルヒ「いちいちうっさいわね、キョンは。み・く・る・ちゃん!!」
みくる「はいぃ!?」
ハルヒ「泣いた赤鬼どころか、桃太郎も知らないなんてっ!! よくそれで去年、童話が描けたものねっ!!」
みくる「ふぇ……」
ハルヒ「こっちへ来なさい!! 日本の昔話、ひとつ残らず、このあたしが読み聞かせしてあげるから!!」
195:
みくる「助けてくださーい」
ハルヒ「無駄な抵抗はやめなさいっ!! 他の団員は各自自由行動っ!!」
長門「……」テクテク
キョン「気の毒に。あの人、大学受験は大丈夫なんだろうか」
古泉「どうなさいますか」
キョン「なにが悲しくて野郎と二人きりなんだ」
古泉「僕は嬉しいですよ」
キョン「やめろ、気色悪い」
196:
キョン「おっ。禁書の原作、 もう新しいの出てたのか」
古泉「なんですか、それ」
キョン「お前も今時の高校生なら、ボードゲームだけじゃなくてライトノベルくらい読んどけ。『とある魔術の禁書目録』なんて常識だぞ。主人公はウザカッコいいが、女にモテモテなんだ……忌々しい」
古泉「それをアナタが言いますか……どれ」
『まずは、その幻想をぶち殺すッ!!』
古泉「!」
199:
キョン「うん? ああ、それはアニメのPVだな」
古泉「上条……さん……」
キョン「なんだ、知ってるじゃねーか」
古泉「この作品のことは、今日まで知りませんでした。彼は……」
キョン「上条さんは知ってて、禁書は知らないってどうなんだ。そんな半端な予備知識、どこにあったんだ」
古泉「……そんなの決まってますよ」
キョン「ホワイ!? なんで泣いてんだよ、お前!?」
古泉「―――心に、じゃないですか?」
おしまい
201:
思いのほか面白かったよ
20

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