水銀燈は動かない『密漁メメントリオン』back

水銀燈は動かない『密漁メメントリオン』


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めぐ「ちょっと水銀燈!」ドタドタ
水銀燈「なによぉ? 家に帰ってくるなり、いきなり大声出しちゃって」
めぐ「ジュン君がロゼリオン化したって本当なの!?」
水銀燈「……誰から聞いたの、それ?」
めぐ「金糸雀ちゃん」
水銀燈「ちっ、あの『お喋りクソ乙女』め……」
※詳細は桜田ジュンの感冒『その苦輪の運命』参照
559 :
水銀燈「内緒にしていたわけじゃないわ。今のところ大した問題じゃないから……」
めぐ「そんなわけあるはずないでしょ! 金糸雀ちゃん言ってたわよ!
 『ジュンの頭の中には、真紅細胞に侵されたグレープフルーツ大の腫瘍ができてる』って!」
水銀燈「……あのねぇ、それこそ金糸雀の頭の中で勝手に肥大化した妄想よ」
めぐ「そ、そうなの?」
水銀燈「あのオタンコナスと私、どっちが信用できるかぐらい分かるでしょう」
めぐ「う、うん」
560 :
水銀燈「さあ? 近々、槐のところで精密検査をするとか言っていたような気もするけど」
めぐ「ふーん……。それにしても野薔薇由来じゃなく
 ローゼンメイデン由来でもロゼリオンはできるのね」
水銀燈「そのようね。そもそもオズ教団の馬鹿麻呂は当初
  私たちをも(第1世代)ロゼリオン化させようとしていた節があった」
めぐ「……ねぇねぇ、水銀燈!」
水銀燈「?」
めぐ「私もロゼリオン化したい! 勿論、水銀燈で!」
561 :
めぐ「水銀燈? どうしたの? ノーリアクション?」
水銀燈「あっっっきれた!! 本当……もうっ! 呆れた!!
  呆れすぎて少し時間の薇が止まっていたわよ! 私の!」
めぐ「何で怒るの?? 水銀燈の黒羽根の一枚でも
 食べさせてくれたらいいだけの話じゃない」
水銀燈「嫌よ!! そんな気色の悪い! 大体、あなたロゼリオンになって何をしたいって言うの!」
めぐ「ううん、ロゼリオンはただの手段よ。私の目的はね、水銀燈と一つになりたい、それだけ」
水銀燈「ぐ……」
めぐ「だって水銀燈は一向に私の命を吸ってくれないし
 ここは逆転の発想で、私が水銀燈を食べちゃおうって!」
水銀燈「何が『食べちゃおう』よ、このお馬鹿さん!」
めぐ「ええ?? グッドアイデアだと思ったんだけどな?」
562 :
  ただそれだけ食べたんじゃロゼリオンにはなれないの」
めぐ「知ってる。メメントリオンでしょ。
 あれを『繋ぎ』として一緒に食べないと意味がない」
水銀燈「そうそう。お馬鹿さんなりによく覚えていたじゃない。だから諦めなさ……」
めぐ「薔薇水晶ちゃんもプチロゼリオン化していたわよねぇ……。
 確か、槐先生の所に『メメントリオンのミイラ』があって、それを使った。
 ひょっとしてミイラがまだ残ってるかも……」
水銀燈「くっ……、余計なことまでしっかり覚えていてくれちゃって」
めぐ「ネクストくんくん探偵ズヒントをちゃんと次週まで覚えてる私をなめちゃいけないわ水銀燈。
 よし! そうと決まったら善は急げよ。行きましょう槐先生のアトリエへ!」
水銀燈「何がどう決まったって言うの! 私最初からずっと反対してたでしょ!
  あなたって本当、昔から全然、他人の話聞かない子ね!
  それに『善は急げ』なら、『悪はのんびり』よ。私はセカセカと動き回る気はない」
めぐ「むーっ! じゃあ、いいもんいいもん。水銀燈が協力してくれないなら
 また雪華ちゃんと合体しちゃうもん。あれロゼリオンじゃないけど似たようなものだし」
水銀燈「はいはい。好きになさい。そんな脅しに私が屈すると思って?
  何度でもアンタから末妹を引っぺがすだけのこと。
  ま、次も上手くいくかどうかは分からないけどぉ」
めぐ「もう???っ! 水銀燈ったら憎まれ口ばっかり! もう知らない!」ダダダッ
水銀燈「やれやれだわ……」
563 :
槐「え?、それでは本日は桜田ジュン君の精密検査を行いたいと思います。
 主な目的はジュン君の体内で実際にロゼリオン化してる部分を確認することです」
ジュン「……よろしくお願いいします」
薔薇水晶「……」
真紅「いぇ?い!」パフパフ
翠星石「検査です検査ですぅ!」ドンドン
雛苺「あいと、あいとー! ジュンー!」
ジュン「うるさいぞ馬鹿ども。鳴り物しまえ。大体、何でついて来た?」
真紅「『何で』とは、つれないわねジュン」
雛苺「ヒナ達はジュンのことが心配で心配でたまらないのよ!」
翠星石「そうですぅ! チビ人間の事で胸がいっぱいで
  翠星石は今朝もフレンチトーストぐらいしか喉を通らなかったのですぅ」
ジュン「お洒落で高カロリーなものをがっつり食ってんじゃねぇかよ」
564 :
ジュン「す、すいません」
槐「ちゃっちゃと始めちゃおうか。それじゃ服脱いで全裸になってそこの台に乗ってくれる?」
ジュン「え!? 全裸!?」
槐「そりゃそうでしょ。だって、ロゼリオン化の影響がどこに出てるか全身くまなく調べるんだからさ」
ジュン「そ、そうですよね。分かりました」
真紅「そうよそうよ! 検査のためよジュン!」
雛苺「恥ずかしがってちゃダメなの!」
翠星石「さっさと脱いでストリップ始めやがれですぅ!」
槐「君達、この部屋に残る気満々みたいだけど、邪魔だし
 ジュン君にも精神衛生上よろしくないから出ていってくれる?」
翠星石「なんですとー!?」
雛苺「そんなのイヤなのー」
真紅「そうよ! 私達はジュンのケツの穴の皺の数まで見届ける義務がある。
  どうしても出ていってほしいのなら力ずくで……」
565 :
薔薇水晶「はい、お父様。では御三方、客間の方に。お菓子も用意してありますから」
雛苺「え! お菓子!?」トテテ
翠星石「こらチビ苺! 食べ物にあっさりつられてるんじゃあねーですよ」
薔薇水晶「さ、残るお二人も」
真紅「私達は雛苺のようにいかなくてよ薔薇水晶!」
薔薇水晶「くんくん探偵スペシャルDVDも用意してありますが?」
真紅「観る観る?」スタタタ
翠星石「真紅ぅ!?」
薔薇水晶「蒼星石も待ってますよ」
翠星石「え、本当ですか?」タタタッ
566 :
槐「ご苦労さん」
ジュン「え、ちょ!? 何で薔薇水晶戻ってきちゃってるの? 僕もう服を脱いじゃって」アタフタ
槐「何言ってるの? 薔薇水晶は僕の助手だよ。検査も手伝ってもらうに
 決まってるじゃない。彼女のロゼリオン探知力も役に立つしね」
ジュン「うぇっ!?」
薔薇水晶「そういうことです桜田ジュン」
槐「よし、それじゃあ先ずはビデオ回して、ちゃんと記録とってね薔薇水晶」
薔薇水晶「はい」
ジュン「ビデオ撮るの!?」
567 :
    ______
  \  |「 ̄ ̄ ̄ `||`l /
  ─  || ォ゚゚゚Πへ.:|| :| ─
  /  |L二二二ニ!| ;| \
   | ̄ ̄| ̄ ̄|~::|
   |__|__|/
くんくん『貴方が水を与えていた観葉植物は造花だったんですよ、犯人さん!』
犯人『な、なんだってーっ!?』
くんくん『このペンションの主人らしく振舞うため、そうしたんでしょうが
  もし本物の主人であれば、そんなことはしない!
  つまり、貴方は主人に成りすました偽者だということです!』
犯人『くっ! そ、そうだったのか』
くんくん『ホンモノそっくりにできていても、僕の鼻はごまかされない。
  作り物の花にも、犯人である貴方にもね』
けんけん『す、素敵です! 流石、くんくん先生』うるうる
真紅「全くだわ。くんくん探偵はいつも素晴らしい観察眼を披露してくれる……」
雛苺「うまうま。薔薇水晶の顔をした人形焼、美味しいの!」モシャモシャ
翠星石「いやー、本当に蒼星石も来てたんですねぇ」
蒼星石「そりゃ僕もジュン君の容態は気になるから」
568 :
槐「ちゃんとビデオ回ってる薔薇水晶? 後で『撮れてませんでした』ってのが一番困るからね」
薔薇水晶「ばっちりです、お父様。桜田ジュンのケツの穴の皺の数まで鮮明に」
ジュン「そ、そこまでしなくても……!」
槐「動かないでジュン君! 今、ローション塗ってるんだから!」
ジュン「……すいません」
569 :
くんくん『ネークストくんくん探偵ズヒーントッ!』
けんけん『【硫酸】!』
くんくん『それじゃ来週も?っ! よろし?っ……くんくーん!!』
雛苺「くんくーん!」
真紅「くんくーん! くーっ! くぁー! くぁああッーーーー!」
蒼星石「ちょ、ちょっと真紅!? 興奮しすぎ……」
翠星石「大丈夫です蒼星石。真紅はくんくん探偵をぶっ続けで見ると、たまにこうなっちまうのです」
真紅「ふーふー……っ。はぁはぁ」ゼイゼイ
570 :
翠星石「それにしてもネクストくんくん探偵ズヒントを次週まで
  ちゃんと覚えている奴なんているんですかねぇ。
  これはDVDだから、すぐ次の事件が始まるんですが」
蒼星石「そうだね……」
♪カランコローン
真紅「ん? 何この音?」
蒼星石「ドア鈴だ。誰かお客さんが来たみたいだね」テクテク
翠星石「え? どこ行くんです蒼星石?」
蒼星石「応対だよ。槐先生と薔薇水晶の手が離せない間は
  僕がお客さんの話を聞くように頼まれている」
翠星石「んー? そんなこと翠星石には一言も言ってなかったですよ槐と薔薇水晶は」
571 :
翠星石「なんですと!」
真紅「失礼ね。私達は人間様に媚び売ってなんぼの人形よ。
  お客様にヘーコラするぐらいで屁でもないのだわだわ」
蒼星石「いや、そんなヘーコラしなくちゃいけないわけでは……」
翠星石「よーし、なら翠星石も接客の一つや二つこなしてみせるですよー!」スタタタ
蒼星石「あ! 翠星石、そんな勝手に」
翠星石「お待たせしないのが接客の基本ですぅ?」テテテッ
蒼星石「それもそうだ。真紅と雛苺はどうする?」
真紅「私はまだくんくんの雄姿を観なくてはいけないから、双子にお任せするわ」
雛苺「ヒナもまだお菓子を食べなくちゃなの」
572 :
翠星石「……」トボトボ
蒼星石「……」テクテク
真紅「あれ? もう戻ってきたの? お客様は?」
雛苺「翠星石がムソウ(無双)して、お客さんが怒って帰ったのよきっと」
翠星石「それ言うならソソウ(粗相)ですよ、どこの世界にお客を討ちとる店員がいるですか」
真紅「じゃあ、何で……?」
蒼星石「それが……実は」
めぐ「やっほーっ! 真紅ちゃん! ひーさーしーぶーりー! ホーリエ元気ぃ?」ヒョコッ
真紅「っ? か、柿崎めぐ!?」
雛苺「水銀燈のマスターの人なのよ。この人が来てたの?」
真紅「ということはまさか、もしかして水銀燈も来て……っ!?」
573 :
雛苺「うゃっ!? それヒナのなのよ! 返してぇ!!」
めぐ「うん、美味しい美味しい。最近、何食べても美味しいわー」モシャモシャ
雛苺「びゃーーーっ!! ヒナのオヤツーーーっ!! 最後の一個取られたーーー!」
蒼星石「落ち着いて雛苺。そもそも、ここのおやつは槐先生が用意してくれたもので……」
真紅「それよりも、めぐ! あなた! 私の質問にまだ答えてな……」
574 :
めぐ「あー、これ知ってるぅ?! 犯人は最初に殺されたと思われてる被害者なのよね。
 顔の潰れていた死体が、実は背恰好の似た奴の身代わりでー……」
真紅「ちょっ!? 何を盛大なネタバレしてくれちゃってるの!
  私の聞きたい質問には全く答えずに! だから水銀燈は……っ」
めぐ「あー、そうそう! 水銀燈はね……て、そうだ! 蒼星石!」
蒼星石「え? 僕?」
めぐ「うん。あなた一時期、ローザミスティカを水銀燈に委ねていたんでしょ?
 ねぇ? 水銀燈の中ってどうだった? 温かい? 冷たい? 柔らかい? 硬い?」
蒼星石「あー、いや、その……」
真紅「何なのよ、この子! こっちの都合おかまいなしに喋りまくるじゃない」
翠星石「いやはやチビ人間とは逆の意味でコミュニケーションとりづらい娘ですぅ。
  さっきも、とにかく奥の部屋へ連れてけと言ってきかなくて」
雛苺「水銀燈のマスターなだけはあるのよ」
575 :
真紅「……なるほど。水銀燈の一部を取り込んでロゼリオン化したい……と」
翠星石「なんともはや……馬鹿なことを」
蒼星石「まったくだ。何を好き好んでロゼリオンになんて」
めぐ「だぁーって! 水銀燈ったら全然、私を殺してくれないんだもん! だったらもう
 水銀燈を食べて……水銀燈と同じ天使になるの。これしかない。分かるでしょ?」
雛苺「うにゅにゅ……、分からないの」
真紅「ああもう、全然懲りない娘……」
翠星石「白薔薇の件で、ちっとも反省してないみたいですね」
蒼星石「めぐさん、メメントリオンのミイラの『残し』があるかは
  槐先生に聞かなくちゃ分からないけど、彼は今取り込み中だ。ジュン君の検査で」
めぐ「へー。それ、今日やってるんだ。いつまでかかるの?」
蒼星石「分からない」
めぐ「えーっ? 何で分からないのよー!?」
蒼星石「いや、何でと言われましても」
翠星石(とんだ怪物娘がやって来たですよ、こいつぁ……)ヒソヒソ
真紅(なんで水銀燈はこの娘になついているのかしら)ヒソヒソ
雛苺(ひねくれ者同士気が合ったのよね、きっと)ヒソヒソ
576 :
めぐ「薔薇水晶!」
蒼星石「終わった!? それでジュン君は?」
薔薇水晶「すぐにお父様と桜田ジュンも、この部屋に来ます。詳しい説明はお父様が」
翠星石「そうですか」
577 :
めぐ「どうもー」
ジュン「柿崎さん……!?」
薔薇水晶「お父様に用があるようです」
槐「用? 悪いけどこっちのジュン君の検査報告が済んでからでいいかな?」
めぐ「いいですいいです。おかまいなく。そのロゼリオン化の件とも関係あることですし」
槐「ありがとう」
真紅(なんか槐とジュンが出てきたら急に大人しくなってない? この娘?)ヒソヒソ
翠星石(翠星石には分かるですよ。どうやら人前では猫を被るタイプです、このめぐって奴は)
雛苺(え、ネコさん? ネコさんどこにいるの?)キョロキョロ
578 :
 ロゼリオン化の影響を受けてしまっている部分は、『心臓』と『喉』だ」
ジュン「……ッ!」
めぐ「心臓と……」
蒼星石「喉!」
槐「特殊な照射線による撮影で確認できたが、ジュン君の心臓と喉の血管の一部に
 契約の指輪と非常に似通ったものが埋め込まれていることが分かった。
 実際には、真紅の欠片とメメントリオンとジュン君の肉体が融合して
 血管が変形、指輪状の構造になっていると言った方が正しいが」
ジュン「そ、そんな! 本当ですか槐先生」
槐「ああ。そして、これは今言ったように性質が契約の指輪ととても似ている。
 普通のレントゲン撮影などでは決して映らないし、当然、肉眼でも見えない。
 そもそも実体化しているわけでもないから、よほど身体に負荷がかからない限り
 これらの指輪が『異物』としてジュン君に悪さをするわけではないと思われる」
真紅「ふむふむ。一安心というところね」
雛苺「ひょっとしたのー」
ジュン「それを言うなら『ほっとする』な雛苺。と言うかお前達これで安心しちゃうの?
  『大丈夫だ、大丈夫だ』と言われても心臓と喉だぞ。不安にならずにいられるか」
579 :
  さらに精度の高い対策が立てられるようになる」
薔薇水晶「蒼星石の言う通りです……桜田ジュン」
ジュン「いや、まあ、そりゃ分からないよりは分かった方が良いには決まってるけど。
  ……それで、対策というのは? 槐先生?」
槐「それはおいおい考える」
ジュン「おいおい!?」
槐「だって、そうじゃん。僕はもう疲れたよ。君のケツの穴ばっか眺めてさ、今日は」
ジュン「ケツ周りをやけに丹念に調べたのは、完全に槐先生の個人的な趣味で……」
槐「いや、僕じゃなくて薔薇水晶が……」
ジュン「薔薇水晶が……っ!?」ジロッ
薔薇水晶「……」ぽっ
ジュン「頬を染めるなーっ! 何考えてるんだよ、お前!! と言うか、そんなキャラだったっけ!?」
580 :
めぐ「サンプル……?」
真紅「あれ? サンプルならミイラが……」
薔薇水晶「それは私の時に全部使ってしまいました」
めぐ「!」
槐「ロゼリオン化を解除する方法として、先ずメメントリオンの繋ぎとしての役割を
 崩せないかどうか検討するところから取り組みたいと思う。
 そのためには、様々な実験用のメメントリオンを確保しなくちゃいけない」
雛苺「?」
槐「ロゼリオンは野薔薇あるいは薔薇乙女とメメントリオン、場合によっては
 さらにもう一人の合体だ。この内、メメントリオン以外は個体差が大きすぎる」
蒼星石「なるほど。野薔薇ではなく、ローゼンメイデンである
  真紅の欠片でもジュン君のロゼリオン化は起きた。
  それに、そもそも、その野薔薇という一括りの中でのバラエティは僕達以上」
ジュン「そうか。そうだよな」
翠星石「野薔薇はローゼンメイデンのパチモンってだけのカテゴライズですから。
  彼女達の数だけ彼女達のお父様(創造主)がいたわけですし……」
薔薇水晶「そういうわけで、これから私はメメントリオンを捕らえに
   nのフィールドへ行きます。お手伝いを頼めますね皆様?」
蒼星石「え?」
真紅「今から!?」
581 :
薔薇水晶「ええ。私は大して疲れていませんし。そもそも皆様も今まで
   存分に飲み食いし、くんくん探偵を観てリラックスしていたはず」
翠星石「ぬおっ! この歓待はまさか賄賂的なヤツだったと言うのですか!?」
蒼星石「急なことには僕も少し驚いたが、薔薇水晶に反対する理由もない。僕は行くよ」
翠星石「む! だ、だったら翠星石も……」
雛苺「ヒナもお菓子いっぱい食べちゃったからその分は働くの。
  見ざる聞かざる食うべからずなのよね」
ジュン「混ざってるぞ、おい」
真紅「あ、あの……薔薇水晶?」
薔薇水晶「何です真紅? あなたはついて来てくれないのですか?」
真紅「いや、そういうわけじゃあないけど。メメントリオンを獲りに行くということは
  つまり、記憶の海に出るってことよね? 第五真紅丸のことを期待しているのなら」
ジュン「……第五真紅丸はギョージ3世との戦いで、沈んじゃったんだよな」
薔薇水晶「船は使いません」
めぐ「え? でもメメントリオンは記憶の海にいるんじゃあ?」
582 :
   渡し守の集いが再びメメントリオンの養殖をしています」
槐「庭師連盟も同じ情報を掴んでいるそうだ。事実と判断して間違いないだろう」
ジュン「な、なにぃ!?」
蒼星石「僕と真紅が破壊した養殖プラントを再稼働させたのか!?」
薔薇水晶「いえ、今度の養殖形態は記憶の海の一部の……
   浅瀬かつ岩礁が続く海岸地域を利用しているものです」
真紅「どういうこと?」
薔薇水晶「施設を建てて、大きな水槽を用意するのは目立つし管理も大変。
   そこで海岸の一部に結界を張り、その中にメメントリオンの幼生を放し飼いにして
   大きく育てているようです。幼生をどこから調達しているかは不明ですが」
翠星石「ぬうう……」
583 :
薔薇水晶「はい。『密漁』します。海は浅く、岸から素潜り程度で充分、捕獲は可能。
   大きめの潮だまりでヤドカリを拾うようなものと考えてください」
ジュン「ちょっと待てよ! 密漁なんて! そんなことしていいのか!」
翠星石「いいに決まってるじゃねーですか」
ジュン「ええっ!? ちょ、ちょっと蒼星石!! 翠星石にどんな教育して」
蒼星石「僕は別に翠星石のお目付け役とかじゃあないよジュン君。
  けれども、やや翠星石は乱暴かもね」
ジュン「やっぱりそうだよな。蒼星石はわきまえて……」
蒼星石「確かに良くはない……が、悪くもない」
ジュン「蒼星石ぃ!?」
真紅「渡し守の集いは勝手に記憶の海岸を占有して、そんなことをしているのよ。
  記憶の海はみんなの物。そこの恵みもみんなの物」
雛苺「みんなヒナ達で分ければ問題ないのよね」
薔薇水晶「そもそも渡し守の集いもロゼリオン目的で、養殖を再開したことは明白。
   その機先を制す意味も『密漁』にあると思ってください桜田ジュン」
ジュン「そ、そうか」
真紅「ぶっちゃけ薔薇乙女は、欲しいものは力ずくで奪い取るのがデフォルト設定なんだけどね」
蒼星石「それって本当に初期も初期のアリスゲームのやり方でしょ……真紅」
翠星石「ふっふっふ。久しぶりに大暴れできる予感ですぅ。何より密漁という響きが気に入ったですぅ」
雛苺「ヒナ頑張っちゃうの」
蒼星石「密漁だから、ことは静かにエレガントにだよ皆」
ジュン(ローゼンさん、この子達は本当この上なくたくましく生きてますよ……)
584 :
槐「!?」
薔薇水晶「な、何ですか柿崎めぐ? 急に? 挙手なんかして」
めぐ「私も密漁を手伝う!」
ジュン「ええっ!?」
蒼星石「ほ、本気かい!?」
真紅「ちゃんと話を聞いていたのあなた!? 少しだけとはいえ記憶の海に潜るのよ」
翠星石「悪いこた言わねーです。記憶の海の水は人間の心にゃ随分と沁みるですよ」
ジュン「そ、そうだよ! 止めときなよ柿崎さん」
めぐ「私はメメントリオンが欲しいの。自分のために」
槐「……!?」
めぐ「足は引っ張らない。ちゃんと働くわ。だから、その代わり
 一匹だけでいいからメメントリオンをもらいたい」
薔薇水晶「……」
めぐ「それに私、『あまちゃん』三回観たから大丈夫」
槐「うーん……」
薔薇水晶「どうします? お父様?」
槐「判断は任せるよ薔薇水晶。密漁メンバーは君が決めてくれ」
薔薇水晶「そうですか」
585 :
めぐ「♪密漁! ♪みっつりょう! ♪楽しい密漁?っ!!」テクテク
雛苺「♪みんなでいっぱいお魚とるの?」トテトテ
蒼星石「メメントリオンは魚じゃないよ雛苺」
薔薇水晶「本体は大小様々ですが、基本的にはクリオネのような形態です。
   そしてヤドカリのように貝殻などに住みついている」
蒼星石「成長して巨大化したものは船に宿ったりする」
雛苺「二葉さんが乗っていた、お船もそうだったのよね」
真紅「そうそう。よく覚えていたわ雛苺」
雛苺「うぃ! 乙女として当然なの」
翠星石(しかし薔薇水晶、本当に水銀燈のマスターを同行させて良かったんですかぁ?
  やっぱりチビ人間と一緒に現世に置いてきてやった方が……。
  下手に怪我でもされたら、そりゃもう水銀燈が超人ハルクみてぇに暴れ狂うですよ?)
薔薇水晶(怪我などさせません。私が守りきってみせます。
   無理に断りでもすれば、それこそ彼女が次はどんな強硬手段を採るか……)
翠星石(むぅ、そういうことですか……)
586 :
薔薇水晶「さて、目的地が見えてきました」
真紅「見えてきた……と言われてもねぇ」
翠星石「さっきから、ずぅーと歩いてきた海岸と何も変わることがない遠浅の海ですぅ」
蒼星石「この海の下に本当にメメントリオンが?」
薔薇水晶「雪華綺晶の話によれば『結界』は侵入者を防ぐだけでなく
   外側からの見た目も誤魔化しているようです」
めぐ「?」
蒼星石「僕たちが見ているこの海は偽の景色……ということか?」
薔薇水晶「はい。これから結界を破りますので少しお待ちを」
真紅「あら? 結界破りだなんてできるの? 薔薇水晶?
  渡し守達の結界は複雑で強力よ。私や白薔薇でさえ捕らえられたことがあるんだから」
薔薇水晶「その雪華綺晶から、渡し守の集いがここで使っている結界の術式も聞いています」
翠星石「あんにゃろの情報網はとんでもねーです」
蒼星石「あちこちに『糸』を放っているからね」
587 :
めぐ「番人!?」
薔薇水晶「はい。渡し守の集いのメンバーが交代制で就いているのですが
   私がまずい結界の破り方などをすると、とんでくるはずですので御注意を」
翠星石「いやいや、ご注意をたって、おめぇ……」
真紅「何に気を付ければいいの?」
薔薇水晶「大声を出したり、私の作業中に暇だからといって
   はしゃぎまわったり、水切り石に興じたりしないでください」
蒼星石「もう、やっちゃってるけどあの二人」
薔薇水晶「え!?」
めぐ「そーれっ」ビュンッ
雛苺「ヒナも、ヒナもーっ!」ブンッ
薔薇水晶「い、今すぐ二人を止めてください。番人に気づかれる!」
588 :
薔薇水晶「多少、肝を冷やしましたが結界破りは成功……。とても静かに」
翠星石「どうやら番人にも気づかれてないみたいですね」
蒼星石「やるなら今……か」
めぐ「さあ、皆の衆! とっととお宝をいただいてズラかっちゃいましょー!!」
雛苺「ずらかるのーっ!」
薔薇水晶「お・し・ず・か・に」
めぐ「ご、ごめーん薔薇水晶……」
真紅「やれやれだわ」
589 :
薔薇水晶「さてと……では、ある程度メメントリオンも獲れたようですし帰りましょう」
めぐ「意外にあっさりとたくさん捕まえられたわね」
翠星石「こいつら養殖ものだから危機感ってものが足りねーんですよ、危機感が」
蒼星石「……」
薔薇水晶「何か気にかかることでも? 蒼星石?」
蒼星石「いや、あれほど『静かに』と念を押したのに、結局
  翠星石が『メメントリオン獲ったどーっ』とか叫びまくったじゃないか」
薔薇水晶「ええ、そうですね」
翠星石「……ぐ」
蒼星石「なのに番人は一人も現れなかった」
翠星石「た、多分! みんなサボって居眠りでもしてるんですぅ!」
蒼星石「なら、いいんだけど……」
590 :
真紅「おやめなさい雛苺。根こそぎ取るのは獣よ。いえ……獣ですら、そんなことはしない。
  海に生きるものは皆そのことが分かっている。記憶の海も、その自然律は同じ」
雛苺「うぃ……」
蒼星石「真紅船長が言うと重みが違うね」
真紅「私も副船長に教えられたことよ。私が漁で調子に乗るたびに……
  さかなクンJr.もパウル君もダニーもそう言って私を窘めてくれた」
薔薇水晶「真紅……」
真紅「ごめんなさい。こんなところで黄昏ている場合じゃないわよね。さあ、帰りましょう」
591 :
水銀燈「……本当に、やれやれって感じだわぁ」
金糸雀「あら、どうしたのかしら水銀燈? 急に黄昏た顔になっちゃって。
  ばっちり、きっかり、ここの番人を全員カナの演奏で眠らせたのに」
渡し守の番人達『……zzZ』
水銀燈「自己嫌悪してるだけ。最初に『私は手助けする気はない』ってめぐに言ったのに……」
金糸雀「……自己嫌悪は薔薇乙女を殺すわよ水銀燈」
水銀燈「利いた風なこと言わないで金糸雀」
金糸雀「それに、ばれなきゃあ手助けじゃあないのかしら」
水銀燈「ふん。屁理屈……」
592 :
金糸雀「あ、メイメイが戻ってきたかしら!」
メイメイ「……!」
水銀燈「そう。薔薇水晶達は無事に帰路に着いたようね。今日一日めぐの見張りと
  連絡ご苦労様メイメイ。じゃあ、私達もお暇しましょうか金糸雀」
金糸雀「ええ。でも水銀燈にしては優しいじゃない」
水銀燈「なんとでも言いなさい。どうせ、私もマスターにべったりよ」
金糸雀「そっちじゃなくて。渡し守達に対してかしら。
  懲りずにロゼリオン計画を再開した奴らだし、今後のために根絶やし……
  かと思いきや眠らせるだけで、とどめを刺さずに済ますなんて」
水銀燈「アンタの頭の中で私どんな外道キャラになってるのよ……」
593 :
水銀燈「その言い方は止めなさい。口を縫い付けて、二度と囀れなくするわよ」
金糸雀「やっぱり厳しいかしら」
水銀燈「大体、根こそぎやるのは獣と同じ……」
金糸雀「なるほどなるほど。水銀燈もそういう考え方するようになったのね」
水銀燈「無駄口叩いてないで、さっさと帰る!」
金糸雀「が、合点かしら。それはそうと約束忘れちゃだめよ!
  すぺしゃるな腕前を持つ、このカナを雇ったんだから……!」
水銀燈「はいはい。パスタでもアイスでも好きなのを後で奢るわぁ」
金糸雀「いぇーい! お姉ちゃん大好きーっ!」
水銀燈「だから止めてって言ってるでしょ、それ」
水銀燈は動かない『密漁メメントリオン』 【終】
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2013/10/14(月) 16:14:03コメント(16)ユーザータグ ローゼンメイデン -->
コメント
※103990 :-:2013/10/14(月) 16:31:53早最新ネタキタ━━(゚∀゚)━━!!※103993 :-:2013/10/14(月) 16:41:10あれ?水銀燈不在?と思ったら別働してる銀ちゃんマジツンデレ
そして肛門を観察するって薔薇水晶・・・(察し)※103995 :-:2013/10/14(月) 17:05:45ジュン… 喉と心臓って死のウエディングリングじゃねーか
日数制限がないだけマシか?※103996 :-:2013/10/14(月) 17:15:10密漁海岸ネタってことは 二日で書いたのか…お疲れ様です。
真紅細胞は 肉の芽より厄介そうだな…※103997 :-:2013/10/14(月) 17:29:13あまちゃん(+密漁海岸)からの滝川クリステルっぽい薔薇水晶ときたんで半沢ネタも来るかと思った
伏線を回収するついでにばらしーのご趣味も収束してきてるな…※104003 :

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