不良女「ち、ちょっとツラ貸せよ」女「……」back

不良女「ち、ちょっとツラ貸せよ」女「……」


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1:
――とある高校
先生「えー、つまりこの公式をさっきの計算に代入すると……君、前で答えを書いてみて」
モブ男「え? はは、はい。え、えーと……」カキカキ
不良女「……」クッチャクッチャ
モブ子「クスクス……」
先生「ん。正解だ、席に戻って」
モブ男「は、ははい」イソイソ
不良女「……」ガタッ
モブ男「っ!!?」
ドガシャーン!!
先生「!?」
放課後カルテ(5) (Be・Loveコミックス)
----------------------------------------------------------------------------
7:
先生「なんだ!?」
モブ男「ううう……!」
不良女「せんせー、モブ男君が椅子に座り損ねてこけましたー」
モブ子「ぷくっ、勝手にこけるとかウケるー」
モブ男「ち、ちが……今後ろから椅子を……!」
不良女「あ? あたしのせいにすんのかよ」ギロリ
モブ男「え、い、いや……」
先生「おい、お前が後ろから椅子を引いたのか?」
不良女「へぇー、先生もあたしを疑うんですかぁ?」
先生「ぅぐ……」
不良女「まぁ……別にいいんですけど? 教師が罪もない生徒を疑って罰したなんて聞いたら」
不良女「うちの親は何て言うかなー? 下っ端の先生なんて簡単に首切られちゃいますよねぇー」
モブ子「クスクス……!」
13:
先生「と、とにかくお前も気を付けろ! 座るときくらいちゃんと確認しなさい!」
モブ男「う……は、はい……」
不良女「くくくっ……」ニヤニヤ
――昼休み
不良女「おい、ちゃんと外でマクド買ってきたか?」
モブ美「ち、ちゃんと買ってきたよ! ほら!」
不良女「ん。ほれ、小遣いやるよ」チャリン
モブ美「きゃーありがと! 不良ちゃん最高!」
モブ子「不良ー、私にも小遣いちょうだいよ」
不良女「お前はなんもしてねえだろ。そうだな……じゃああの女の弁当ぶちまけてきたら金やるよ」
モブ江「あー、あいつ最近調子乗ってるしね」
17:
モブ子「え、そんなんでいいの? んじゃ……」
ドガシャーン!!
キャーゴメーン! ツマヅイチャッテ!
不良女「ギャハハハハ! マジでやりやがんの!」
モブ子「ほら、やったから小遣い」
不良女「ほれ」チャリン
モブ子「こんだけー? まいっか」
モブ江「でもこういうのもなんか飽きてきたよね?。このクラスのやつもう大体不良の言いなりだし」
モブ美「だって不良ちゃんエグいもーん。親がヤバイ権力もってるとマジで違うよねー」
不良女「お前ら家の事情知るなり攻であたしになびいてきたもんな」
モブ子「だってお金持ってるしー? 頼りになるじゃーん」
不良女「あたしの金だっての。でもマジで最近ヒマだな。お前ら新しい『友達』連れて来いよ」
20:
モブ子「そんなん不良がみんなシメちゃったじゃん」
モブ江「もうウチらの知り合いじゃつまんないし。転校生とか来たら面白いのに」
不良女「転校生ね……」
――放課後HR
先生「――えー、みんなに言い忘れてたが。明日からこのクラスに新しい生徒が編入してくる」
不良女「!」
先生「転校というよりちょっと急な編入になってな……いろいろ事情があって、お前らより年上の女性だ。しかし学年はみんなと同じ二年生だから仲良くするように」
不良女「(何言ってんだこのハゲ……転校生じゃなくて年上で同学年だぁ?)」
先生「まだ手続きとかは済んでないんだが、今日は挨拶にだけきてくれた。君、入って」
ガラッ
24:
女「……」
先生「この人が転入生の女さんだ。自己紹介を」
女「女です。よろしく」
不良女「(なんだアイツ……スカした態度しやがって)」
先生「……えー、ということだ。明日からみんな話しかけてあげるように」
女「……」
不良女「(なんか気にくわねぇな。まぁちょうどいいや、明日からあいつで遊ぶか……くくっ)」
――翌日、教室
女「……」
不良女「よぉ、はじめまして女ちゃん。ウチの学校はどう?」
女「……まだ慣れないことが多いわ」
モブ子「ふふ……」
モブ美「あーもういきなりヤバイって……ひひひ」
モブ江「……」ニヤニヤ
27:
不良女「なんか雰囲気スカしちゃってるよねぇ女ちゃんて。年上とか言ってたけど今いくつなの?」
女「19だけど」
不良女「へぇ、二つも上なんだね。どんな事情があんのかしらね―けどさ、一応ここじゃあたしらの方が先輩だってことわかってる?」
女「……そうね」
不良女「いい心がけだね。あたしらさァ、女さんに学校のこと教えてあげようと思ってんの。先輩の親切なんだから断るなよ?」
女「……」
不良女「そういうわけだからさァ、今日の放課後体育館の――」
女「ごめんなさい、放課後は時間がないの」
不良女「……あ?」
女「毎日放課後は忙しいから。案内してくれるなら昼休みにお願いしてもいいかしら」
不良女「いや……お前立場わかってんの? いいから放課後ツラ貸せっつってんだよ」
女「ごめんなさい、大事な用なの。先生に呼ばれてるから、また後でお願い」スタスタ……
不良女「あ、おいコラ!」
28:
モブ子「ちょっと何アイツ……舐めすぎじゃね?」
モブ美「ちょー生意気なんですけど」
モブ江「……どうすんの? 一発キツめにシメとかない?」
不良女「ったりめーだっつの……年上だからって調子乗りやがって。ああいう立場わきまえねぇのが一番ムカつくぜ」
――放課後、とある街角の喫茶店
カランカラン……
マスター「いらっしゃ……なんや、女ちゃんか」
女「お疲れ様です。すみません遅くなって」
マスター「今日から学校やったかいな? 大変じゃの、義務教育から復学ゆーのも」
女「……マスターのおかげでこうやって胸を張って、普通に生きていけるんです。大変だなんて思いません」
マスター「ははは、ええねんでそんな気ィ遣わんかて。俺も自分の勝手でやっとるさかい……学業がしんどなったら無理せんと休みや?」
女「まだ学校始まったばかりですよ。大丈夫です」
マスター「それもせやな。ほんなら先に表の看板変えといてくれや」
女「わかりました」
31:
女が切霧さんで再生されてしまう
401:
>>31
俺もそう思ったよww
32:
――翌日、朝
ワイワイ オハヨー ウィース
女「……」カタ
女「(……? 上履きがない……昨日もらったばっかりなのに)」
モブ子「……」ニヤニヤ
女「(……昨日確かにここに入れておいた。じゃあ……)」スタスタ
モブ子「あ……なんだアイツ、裸足のままどっか行きやがって……」
不良女「――おい、ちゃんと隠したんだろうな」
モブ子「でもアイツどっかいっちゃったよ」
ガラッ
先生「席につけー」
女「……」スタスタ
モブ子「あれ、なんでアイツ新しい上履き……!」
不良女「(……野郎いきなりセンコーにチクりやがったな。クソが、だったら容赦しねぇぞ……)」
33:
――昼休み、食堂
女「……」ズルズル
不良女「よお、貧乏くせえモンくってんじゃんか」
モブ美「うっわ、いま時何も入ってないうどんとか終わってるしー」
女「何か用?」
不良女「あ? お前昨日あたしが言ったろうが。この学校のルールってやつを教えてやるってよ」
女「……じゃあもう少し待って。まだ食べてる途中だから」
モブ江「……こいつ」
ガッ ベチャア!
女「!」
不良女「舐めんじゃねえぞ新人が! あたしが来いっつったら来ンだよ! それがウチのルールなンだよボケ!!」
モブ子「あーあー、不良怒らせたら大変なことになるぞー?」ニヤニヤ
34:
ざわ… ざわ…
女「……返してくれる?」
不良女「ンだと?」
女「うどんのお金。あなたが無駄にしたから、お金を返して」
不良女「!!」
オイ……アイツ フリョウオンナニ ケンカウッテルゼ……
モブ子「ちょっと……あんた先輩に対する姿勢がなってないんじゃないの?」
女「そんなの今は関係ない。食べていたものを弁償してって言ってるの」
不良女「こ……このアマ!」
モブ江「待ちなよ、ここだとめんどくさいって……お前、これから覚悟しとけよ」
不良女「……ッチ」スタスタ……
女「……」
36:
――授業中
先生「ではここの回答を……女、できるか? 前に書きに来て」
女「はい」スラスラ
先生「おお、正解だ。編入してきたばかりなのにすごいな。席に戻っていいぞ」
女「はい」
不良女「……」スッ
グサッ!
女「……ッッ!!」ガタン!
先生「女? どうした?」
モブ子「くくく……!」
37:
女「……席に、画鋲が」
先生「なに? だれがやったんだ!?」
女「いえ、大丈夫です。後で保健室に行きますから」
先生「あ、ああ……授業中にいたずらするなよお前ら」
女「(……ちょっと血が出てる)」
モブ江「……これくらいじゃ応えねぇよあいつ」ヒソヒソ
モブ美「いい子ぶってて超ムカつくー……」ヒソヒソ
不良女「……」クッチャクッチャ
38:
はやく不良女さんのデレを見せてください
43:
――別の日、体育の時間
女「(体操服は……ッ!!)」グチャア
女「(ロッカーの中が泥まみれ……の上に、切り刻まれてる)」ハァ
不良女「あっれー? 女の体操服ぐっちゃぐちゃじゃん」
モブ子「うっわ汚ぇー。こっちもってくんなよ」
モブ美「超キモイー! ちょっと女、泥くっさいから授業出ないでよねー」
女「……出ようと思っても出られないわ。先生に説明してくるから、どいてくれる?」
不良女「……待てよおい、コラ」ガン!
女「なに?」
不良女「お前さ、いい加減舐めた態度してっとぶち殺すぞ?」
女「そんなことしたらあなたたちが停学になると思うけど」
モブ江「こいつ……!」
46:
不良女「ハッ、お前はそうやってすぐセンコーにチクれば大丈夫だと思ってんだろ? けどな、あたしにはンなもん関係ねーんだよ」
女「……どういう意味?」
モブ美「不良ちゃんの親はなぁ、政治家でヤバイ権力持ってんの!」
モブ子「いままで不良を怒ったセンコーみんなクビになってるしね」
不良女「わかんだろ? あたしに逆らえる奴はいねーのよ。担任だけじゃなくてこの学校の校長までな」
女「……」
不良女「あたしがお前をボコッたところでお咎めなんてこねーし、あたしはいつでもお前を退学にできンだよ。わかったら――」
女「それが何?」
モブ江「ア?」
女「私はいちいち退学にされたくないけど、あなたたちに殴られる気も、やり返す気もない。放っておいてくれない?」
不良女「ンだとてめえ……!」
50:
女「大体お金があるんなら……私なんかに構うよりもっと色んなことができるでしょう? 私は何も余計なことしないから、私に余計なことしないで」スタスタ……
不良女「待てこら! オイ待てっつってんだろが!!」
モブ江「あの年増野郎……マジでもう容赦する必要ねぇって。体で立場わからせるしかねぇよ」
不良女「クソが……! 見てろよあのアマ……!」
――夜、女の家
女「ごちそうさま」
祖母「はいお粗末様。女ちゃんは、学校どうだい?」
女「……うん。ちゃんと勉強できてるよ」
祖母「そうかい? 女ちゃん、みんなと歳が違うでしょ。いじめられたりしてないかい?」
女「いじめられてるとしても別に大したことないよ。昔と比べたらこんなの……何も思わない」
祖母「……そうかい。大丈夫だよ。もう絶対にあんなことさせないからね。辛かったらすぐにばあちゃんに言うんだよ」
女「……うん。ありがとう、ばあちゃん」
51:
祖母「それから、女ちゃん学校終わったらすぐにアルバイトにいってるでしょう? 毎晩遅くまで無理しなくていいんだよ、まだ蓄えは残ってるから……」
女「いいの。ばあちゃんにちょっとでも恩返ししたいから」
祖母「いいんだよそんなのは……女ちゃんの好きに生きたらいいんだよ」
女「わかってる。この本、ちょっと借りるね」
祖母「それもばあちゃんの古い本じゃないの。新しい本買わなくていいのかい?」
女「ばあちゃんの本だから読みたいの。それで十分だから。おやすみ」
――ある日、昼休み
女「(……最近あの人たち何もしてこないわね。まぁ、どうでもいいけど)」
女「(……というか、最近夜更かし続いたせいで眠いわ。やっぱりバイトした後で学校の勉強までするのは無茶かしら……少しだけ寝よう……かな……)」
女「……Zzz」スゥ
モブ子「……おい、アイツ寝てやがるぞ」
不良女「いいご身分だな。ちょうどいいぜ……おい、ハサミ」
モブ美「マジでやんの? プヒヒ、ちょーエグいー!」
モブ江「言ってわかんねぇバカは身をもって学習しねぇとなぁ。くくく……」
55:
キーンコーンカーンコーン
女「(ん……いけない、休み中寝ちゃった)」
ざわ… ざわ…
女「(……? 周りが私を見てる……よだれでも垂らしてたかな)」
ガラッ
先生「――さぁ授業始めるぞ。席に……ッ!? おい、なんだそれは?」
女「?」
先生「お、お前の髪の毛か? なんで教室で髪なんか……!」
女「は? ……っ!!」
女「(なんで席の周りに髪の毛が大量に落ちて……まさか)」スッ
不良女「……」
女「(……私の……髪だ……)」
57:
峰岸みなみみたいになってんのか
62:
先生「女。お前、今朝はそんな髪の毛短くなかったよな? どうしたんだ?」
女「……寝ているときに誰かに髪の毛を切られたみたいです。すみません、片付けますので」
先生「な……だ、誰だこんなことしたのは! 教室にいたやつ誰も見てないのか!?」
し?ん……
女「(誰も名乗り出るわけないじゃない……まぁやった人間はわかってるけど)」
先生「まさかまた……いや、もういい。誰か女を手伝ってやれ」
女「大丈夫です。一人で掃除できますから」サッサッ
先生「し、しかしだな……」
不良女「……ッチ」イライラ
先生「誰がやったかはともかく、こういうことは誰の得にもならないんだぞ! いいか、お前らはもう高校生なんだから――」
女「!……あと、すみませんが先生。もう一つ」
先生「ど、どうした?」
63:
女「教科書も切り刻まれてるので勉強ができません。新しいものは支給してもらえるんでしょうか?」ボロ……
先生「な……わ、わかった。後で職員室まで来なさい。今はとりあえずこの予備を使え」
女「ありがとうございます」
先生「……とりあえず、授業を始める。いいか、今後またこういうことがあれば監督の先生を休み中も待機させることになるからな!」
不良女「……ッ」イライライライラ
――同日、女の家
女「……ただいま」
祖母「あら、今日はアルバイトは――まぁ!? どうしたのその髪の毛!?」
女「……うん、ちょっと。いろいろ邪魔だから友達に切ってもらったんだけど、失敗しちゃって」
祖母「そ、そうなの? 床屋さんに行くお金くらい言ってくれたら……」
女「お金もったいないし、大丈夫だよ自分で整えれば。バイト行く前にちょっと切るね」
祖母「そう……本当に大丈夫?」
女「大丈夫だってば。心配しないでばあちゃん」
女「(……髪の毛ぐらい、軽いものだし)」
65:
――同日、街角の喫茶店
女「お疲れ様です」
マスター「おう、女ちゃ……なんやエライ髪の毛すっきりしてもうとるやんけ」
女「……こっちの方が楽なので」
マスター「イメチェンゆーやつか? 思い切ったのぉ……まぁ、短いのも似合うとるで」
女「よかったです。着替えてきますね……」
マスター「……無粋な質問かしらんが、どっかのアホにやられたんやとしたら、俺に言えよ。まだ俺も昔の勢いくらいは残っとるさかい」
女「……顔が怖いところとか?」
マスター「ちゃうちゃう! いやそれはそやけどもやな、堅気の若造共ちょいとシバくくらいできるっちゅう話や」
女「せっかく暴力から足を洗ったのにまたそんなことしたらダメでしょう」
マスター「う……そ、そりゃまぁ」
女「……まぁ、本当に危なくなったら、ボディガードでもお願いしちゃおうかな。でも今は喫茶店のマスターやっててくださいね」
マスター「ははは……任しとき!」
70:
――放課後、昇降口
女「(……はぁ、今度は靴が盗まれたか。もういつも持ち歩かないとダメみたいね)」
女「(……)」
女「(しょうがない、先生に要らない靴でも借りて……)」
女子生徒「……あ、あの、女さんですよね」
女「! はい……なんですか」
女子生徒「あのー……せ、先生がその……呼んでましたよ」
女「? なぜ?」
女子生徒「し、知らないけど……多目的教室に来いって……」
女「……そう」
女子生徒「じゃ、じゃあ……」ソソクサ
女「(……またあの人たちの仕業かしら)」
73:
――多目的教室
ガラッ
女「……」
DQN1「お、マジできたぞ。きみが女ちゃん?」
DQN2「なんだよ、言ってたより結構イイカンジじゃね?」
DQN3「でも性格きつそ?!」
女「先生は? 呼ばれてると聞いたんだけど」
DQN2「ん? ああ、マジでわかってないんだ?」
DQN3「そんなんしらねーよ俺ら??」ニヤニヤ
DQN1「とりあえずちょっときなよ」グイッ
女「ッ……帰してくれる? あなたたちクラスメイトじゃないでしょう」
DQN1「へ?、気ィ強いねキミ。でもさぁ、状況わかってんの?」
DQN2「鍵しめたぞ」ガチャ
DQN3「バカ、カーテンも引いとけよ……へへへ」
77:
女「……」
DQN3「あっれ?、さすがの女ちゃんも怖くて声でないカンジ?」
DQN2「そりゃこの状態で何されるかなんて……なぁ?」ニヤニヤ
DQN1「まぁそれはそれでいいけどさ……言っとくけど変なマネすんなよ? ぶっ飛ばすからな?」
女「……不良女から言われたの?」
DQN2「さぁな?……そんなのどうでもいいじゃん」グイッ ブチブチッ
女「(!! 制服が……)」
DQN3「おいおい結構胸あんじゃねーの? 女ちゃんて結構ヤってたりする?」
DQN1「たまんねーなオイ。これ犯して金もらえるとかサイコーじゃん」
女「……離してくれない? 別に私じゃなくてもセックスさせてくれる子はいるんでしょう」
DQN2「あ?」
女「悪いけど……あなたたちみたいなガキ相手だったら私も少し我慢できなさそうだから」ボソ
82:
早くキンタマ非難させて金的に備えろ!
84:
DQN3「は? 何言ってんだコイツ」
DQN1「あ、もしかして性欲的な意味で我慢できないってこと? マジで言ってる?」
女「バカの問答に付き合いたくないの。肉便器が欲しいなら然るべきところでお金を払って買いなさい」
DQN2「な……ンだとこら! なめた口きいてんじゃねぇぞ!!」バシッ!
女「っ!」ドサッ
DQN3「もうコイツ抑えとけよ。さっさとヤろうぜ」
DQN1「へへ、んじゃとりあえずこのデケェ乳――ゲブッ!?」ドサァッ
女「……触るな……」
DQN2「このっ……! 調子のんなや!!」ドガッ!
ドガシャアァン!
DQN3「うわ、容赦ねえなお前」
女「ッ! げほ……!」
DQN1「ってぇなこのアマ……マジで殺すかんな」
85:
DQN3「おい、ヤってからでいいじゃん」
DQN1「うるせー、女に顔面蹴られてそのまま済ますかよ。覚悟しろよテメェ」
女「……病院」
DQN1「あ?」
女「予約しときなよ……あんたらしばらく出てこれないと思うから」ガッ……
DQN2「バーカ、それはお前――」ビュン
ッガゴォン!!
DQN1・3「「!!!」」
DQN2「――ッ、んぐ、ぅっ、ぅ――」バタッ ピクピク……
女「……学校の椅子って結構脆いんだね。パイプ曲がっちゃったよ……」
DQN3「いっ……!?」
女「……それなりのことやるってのはさぁ。それなりのことやり返される覚悟があるってことだよね……?」ユラァ
DQN1「ンのヤロォ!!
90:
w盛wりw上wがwっwてw参wりwまwしwたw
96:
――同日、屋上
不良女「――さってと、そろそろあいつらが『お仕置き』してるころだな」
モブ江「これだけされたら流石の女も立場わかるでしょ」
モブ美「マジもーレイプとかされたら女として終わってるくない?」
モブ子「だから効くんじゃんか。ああいうバカは一発犯されて写真ばら撒かれるまでわかんねーんだって」
不良女「ま、それでこっちに縋り付いてきたら……少しは手ぇ緩めてやってもいいがな。くくく……」
モブ美「もー不良ちゃん容赦なさすぎィ?! きゃははは」
prrrrr
不良女「言ってたら報告きたぜ……もしもし?」
DQN3『……ってくれ……!』
不良女「あ? んだよ、お前らヤバイ動画でも撮ってんのか?」
DQN3『こっちきてくれって!! いいから早く!!』ブツッ
不良女「はぁ? ……っち、なんなんだよ。お前らちょっと待ってろ」
108:
――多目的室前
不良女「ったく……お?」
ガラッ
女「……」
不良女「ッ!!?」ビクッ
不良女「(な、なんでコイツが……っていうかあいつらなにやってんだよ!)」
女「……不良さん」
不良女「! な、なんだよ! やんのかテメェ!?」
女「放っておいて、って言ったわよね。自分の手を汚したくない臆病者には通じないかもしれないけど」スタスタ……
不良女「ぅ……!」
女「世間知らずのお嬢様に私の邪魔をしてほしくないの。そんなに私が気に入らないなら個人的に喧嘩を売りにきて頂戴。ヒマなら受けてあげる」
不良女「ん、んだとォ!?」グイッ
女「……それと、私に付いてる血、ほとんどあの人たちのだから。汚いわよ」ベト……
110:
不良女「ッッ!?」バッ
女「素直ね。大丈夫よ、私から『あなたに』やり返す気はないって言ったでしょう」
不良女「な……に……っ」ブルブル
女「お友達なら救急車でも呼んであげれば? 二人の方は意識がないみたいだから……」
スタスタ……
不良女「……?っ」ガタガタ
DQN3「……お、おい不良……」コソコソ
不良女「!! て、テメェらなにやってんだ三人がかりで!」
DQN3「あ、あいつマジでイカレてんだよ! いきなり椅子で殴り掛かってきて……俺ら本気で、殺されそうになって……!」ガタガタ
不良女「……!」ダッ
ガラッ!
119:
万夫不当の豪傑よォ!!
128:
DQN2「――」グッタリ
DQN1「ぅ……ぅぅ……」ビクビク
不良女「(!! な、なんだよこれ……ち、血まみれじゃねえかよ)」タジ……
DQN3「もう金はいいから手ェ引かせてくれよ! あの女ぜってーヤバイって!」
不良女「くそッ……何なんだよアイツ……!」
女「……っ」
女「(口の中ちょっと切ったかな……っていうか、頬っぺた腫れてる)」
女「(……さすがにこれで仕事場には顔出せないわね。今日は休ませてもらおう)」ピッピッ
女「(はぁ……あれでいい加減やめてくれたらいいんだけど)」
女「(ばあちゃんには転んだって言っとこう……痛っ)」ズキズキ
142:
――数日後
モブ子「ちょっと不良?、なんでアンタ最近大人しいの?」
モブ美「女のやつ全然変わってないじゃーん。ほっとく気ィ?」
不良女「うっせーな! テメーらは黙って見てろ!」
モブ江「でもよ、結局前のDQNたちも失敗したみたいだし……このままじゃマジで舐められるぜウチら」
不良女「わ、わかってんだよンなこたぁ! 段取りがあんだよ!」
教頭「お、おい君たち。廊下ではもっと静かに……!」
不良女「うるせーぞハゲ! クビにすんぞ!」
教頭「ぐ……ッ! まったく……!」スタスタ
モブ子「あーあー……ハゲ教頭までシメてる不良が女一人にこんなに手こずるとはね」
不良女「(クソが……あいつらがやられたからなんだってンだ! こっちから先にあいつを潰せば――)」
女「……」スタスタ
モブ美「あっ」
148:
不良女「……!!」
女「……」スタスタ
モブ江「……おい、不良」
女「……」スタスタ……
不良女「……ッ」
モブ子「え……おい、スルーかよ……?」
不良女「あ、あいつはその程度じゃ応えねぇんだよバカ!」
モブ美「でもあんなに堂々と歩かれるとウチらのメンツもヤバイってゆーか……」チラ
ヒソヒソ……オンナサンッテスゲーナ……フリョウノヤツドウシタンダ……?
モブ江「……不良、あんたもしかして」
不良女「……! ハッ、そんなにお望みならやってやるよ! あたしが自分でぶっ潰してやれば文句ねぇだろうが!!」
166:
――女の家
女「……」ペラ……ペラ……
祖母「女ちゃん、お饅頭食べるかい?」
女「あ……うん。食べる……」ペラ……ペラ……
祖母「……その本、面白いかい?」
女「え?」
祖母「それ、ばあちゃんも大好きな本なんだよ。ずうっと昔に買ったまま残してあるの。大切な本だから」
女「そうなんだ……」
祖母「気に入ったんなら女ちゃんにあげるよ」
女「え……いいの?」
祖母「そのくらいいいよ。もうあんまり細かい字も読めないしねぇ……女ちゃんの好きにおし」
女「……! あ、ありがと! 大切にする! 絶対!」
祖母「欲のない娘ねぇ全く……ふふふ」
184:
――翌日、昼休み
女「(……やっと休み時間も静かになってきたわね。落ち着いて本が読める)」ペラ……ペラ……
女「(ばあちゃんからもらった本……大事にしないと。ふふ)」
不良女「……」
モブ江「ほら……さっさとやりなよ不良」
モブ子「もう完全に舐めきってるぜアイツ。なんか一発やらねえと」
不良女「わ、わーってるよ。でもアイツ何やっても平気なツラで済ましやがるし」
モブ美「……なんか最近ずっとあの本読んでるよねー。なんか大事にしてんじゃないの?」
モブ江「ふーん……じゃあさ、あの本ライターで燃やしちまいなよ」
不良女「っ……で、でも逆ギレして暴れたりしたら」
モブ子「なに弱気になってんのさ。キレたら私らが抑えるから」
不良女「……わかったよ」
192:
不良女「……よぉ」
女「! ……何?」
不良女「最近なんにもされないからって調子乗ってんじゃないの? 偉そうに読書してイイ子ちゃんアピールですってかぁ?」
女「……。……」ペラ……
不良女「! 無視すんじゃねえぞクソアマ!」ドガァン!
ざわ… ざわ…
 
マタ フリョウガアバレダシタゾ オイ……
女「……うるさい。やめて」
不良女「機械みてぇなすました顔しやがって……そういうのが一番気に食わねえ……!」
女「なら放っておいて。私だって貴女みたいな人が気に入らないのを我慢してるのよ」
不良女「なっ……」カチン
205:
バッ!
女「ッ!! ……その本を返しなさい」
不良女「あ? 表情が変わったじゃねーか。レイプされかけても動じなかった女王様が」
女「返して。怒るわよ」
不良女「こんなカビくせえ本がそんなに大事かよ? そういやアンタが怒ったところ見たことねえよなぁ……」ニヤニヤ
女「喧嘩したいなら受けてあげるわ。その本を置いてからにして」
不良女「……わかったよ。そら!」ポイッ
女「!」
不良女「おっと、踏んづけちまったァ」グシャア!
女「ッ――!!」ブチィッ
不良女「え――ぐっ!?」バキッ!
モブ子「あ、あの女マジでキレやがった! 抑えんぞ!」ガタッ
221:
不良女「っのクソ女ァ!」ブンッ
女「がっ――!」バキィッ ガシャアァン!
ケ、ケンカダ! センセイヨンデコイ!
女「返せ……っ!?」
モブ江「手ェ出したなアンタ。これでもう退学決定だね」ガシッ
女「離しなさい! 離せぇ!!」
モブ子「うわっ、こ、こいつアタマおかしいの!? 暴れんな!」グイッ
モブ美「ちょ、マジヤバイってそいつ……」オロオロ
不良女「はぁはぁ……クソが、たかが本くらいでブチ切れやがって」ヒョイ
女「その本に触るな! 返せッ!!」
不良女「……そうかい、そんなにこれが大事かよ……」スッ
女「! やめ、やめて! やめてッ!!」
228:
シュボッ ジジ……
女「ぁッあ……!!」
不良女「はははは! どうだこれでわかったろ!? あたしに逆らったらこうなンだよ!!」
女「……」ヘタ……
モブ江「……!?」
モブ子「っと、なんだ、いきなりへたり込みやがって」
不良女「おいコラ! なんかやり返して来いよ!? もうテメーなんざ怖く――」
女「……んで……そん……」
不良女「!!」
女「あなた……なにが欲しくて……こんなこと、できるのよっ……」ポロポロ
不良女「な、何だよ……!」
モブ美「プヒャヒャヒャ! 泣いてやんの! キモいんですけど!」
231:
ガラッ!
先生「おい、何やって……おい不良、何を燃やしてる!?」
不良女「えっ――うわ、あっち!!」パッ
女「!!」
先生「みんな離れなさい! 消火器だ消火器!!」
モブ江「ちょっと何やってんのよ不良!?」
不良女「う、うるせぇな!」
モブ子「これシャレんならねえって!」
先生「お前らも早くあっち行け! 女! 何やってるんだ早くどきなさい!」
女「ぅ……うう……!!」
不良女「(なんなんだよ一体……! いきなり泣かれても意味わかんねえっての……!)」
233:
モブ殺せ
234:
マジクズ女だな
254:
――数時間後、面談室
先生「……お前らの喧嘩が、大きな火事になるかもしれなかったんだぞ。幸い何事もなくすんだものの、一歩違えばどうなってたと思う」
女「……」
不良女「……ケッ」
先生「不良、お前は親でも庇いきれない事故を起こしかけたんだ。言い訳は通用しない、お前から手を出したんだな?」
不良女「だったらなんだよ」
先生「何か女によほどの恨みでもあるのか? 女に何かされたのか?」
不良女「別に……ムカつくんだよ、こいつ」
先生「はぁ……今回は女も不良に手を出したようだし。どちらが悪いということはできんが」
女「……ご迷惑を、おかけ……しました」
先生「いや……とにかく、二人ともこれ以上大きな事故を起こすようなことはするな。わかったな?」
女「……わかり……ました……」
不良女「(……クソ教師が。テメーは面倒しょい込みたくねえだけだろボケ)」
先生「今日のところは他の生徒も早退させた。お前らも一度頭を冷やしなさい」
260:
――その後、教室前
不良女「クソ、あのモブ共さっさと逃げやがって……」
不良女「あーイラつく……さっさと荷物とって――あっ」サッ
女「……」
不良女「(あのアマ……さっさと教室出ていきやがれ。入りにくいだろーが)」
女「……」
不良女「(……本の燃えカス見て何やってんだ……チッ)」
女「……めん……さ……ばあちゃん……」
不良女「……?」
女「ごめんなさい……ううううっ……ひっ……うええええぇぇ……」ボロボロ
不良女「(……なに、たかが本くらいでマジに泣いてンだよ。バカじゃね―の)」
女「ばあちゃん……うええええっえぇぇ……ぐすっ……ううううぅ……」
不良女「(!! ……なにが、ばあちゃんばあちゃんだ……クソが、一生泣いてろ。ざまぁみやがれ……)」スタスタ……
274:
――不良女の家
ガチャ……
不良女「……ただいま」
シーン……
不良女「……」
不良母「ふぅ……あら不良、帰ってたの。やけに早いじゃない」
不良女「ママ……いるなら返事くらいしてよ」
不良母「ごめんね、これからパーティーに出席するから着替えてたのよ」
不良女「……今日もいないの?」
不良母「ええ、帰るのはたぶん明日になると思うわ。パパと一緒に遠くへ泊るから」
不良女「……あっそ」
不良母「お小遣い渡しておくわね。5万あれば足りるでしょ。それじゃ、お留守番お願い」バタン……
279:
不良女「(……ヒマだな)」
不良女「……」
不良女「(あいつ……今まで何やっても平然としてたのに……意味わかんねぇ)」
女『ばあちゃん……ごめんなさい……』
不良女「(……あれ、おばあちゃんからもらった本だったのかな)」
不良女「(ケッ、だったらなんだってんだよ。あたしと何の関係があんだよ)」
不良女「(……あたしも小さいころ、おばあちゃんとよく遊んだな。まぁ親に体よく預けられただけだったけど)」
不良女「(おばあちゃんが死んでから、なんにも面白いことがなくなっちまって……いつの間にかグレちまったんだよなぁ)」
不良女「(……ッチ、アホくさ。なに感傷に浸ってんだ……いいや、時間あるし一人で遊び行くか)」
295:
――夕刻、街中
ツギ カラオケイコーゼー ギャハハハ……
 
不良女「……」スタスタ……
不良女「(なんにもする気にならねぇ……つか、なんでこんなイライラしなきゃならねんだ)」
不良女「(……あ、本屋)」
不良女「(……)」
不良女「(……漫画の新刊出てるかもしんねーし)」ウィーン
不良女「(……。…………ねーや)」
『こんなカビくせえ本がそんなに大事かよ?』
不良女「(……)」
不良女「(んな古い本おいてあるわけねーじゃん……つか探す必要ねえし。帰ろ……)」
302:
――女の家
女「……」
祖母「どうしたの? あんまりご飯食べないね今日は」
女「うん……ちょっと」
祖母「やっぱり体が疲れてきてるんだよ。無理せずに今日はお休み」
女「……ごめんなさい」
祖母「いいんだよ、女ちゃんが元気になれば。残りは冷蔵庫に入れておくから明日食べなさい」
女「ありがとう……ごめん、なさい」
女「……」
女「……ごめんなさい……」
313:
――翌日
モブ美「ねー、今日は不良ちゃんいないの?」
モブ子「サボるってよ。しかも一人がいいんだと」
モブ江「……」
モブ美「つまんなーい。金かかるとこ遊びいけないじゃーん」
モブ子「女の奴はフツーに来てるしよ……もうあきらめたんじゃないの?」
モブ江「……アイツもそろそろダメかもな」
女「……」
――街角の喫茶店
マスター「……女ちゃん、風邪か?」
女「え?」
マスター「なんやえらい元気あらへんで。どないしてんな?」
321:
女「……学校で、少し」
マスター「なんや、まさかいじめか? どこのどいつや、一発いわしたる」
女「いいんです……もう取り返しがつかないですから」
マスター「……おい、ほんまにどこの誰や。堅気やろうが容赦せんぞ。土下座で詫びいれさせなあかん」
女「……気持ちだけもらっておきます。それに、私も一発殴り返しましたから」
マスター「ほうか……しかし、ガキでもやってええこと悪いことくらいわかっとけっちゅうんじゃ。そいつの親はどないな顔しとんねん」
女「政治家だって」
マスター「んな……ほりゃあドエライ幅ァ利かしとるジャリやろうの。大丈夫なんか?」
女「……わからないです。でもたぶん、仲良くはなれないと思う」
マスター「……学校ちゅうのも大変じゃの。どうせ教師も役に立たんじゃろ。俺も役に立てるかどうかわからんが、鉄砲玉なんのは慣れとるさかい。いつでも頼ってや」
女「ありがとうございます……」
330:
――同時刻、女の家前
不良女「(…………何やってんだあたし)」
不良女「(わけわかんねぇ。わざわざ学校サボってまで古本屋行って、こんなホントにカビくせえ本わざわざ……)」
不良女「(……別にあのクソ女は関係ねェよ。もしおばあちゃんにもらった本だったら、おばあちゃんに返さねぇといけねぇから……)」
不良女「(いやだからなんで赤の他人のためにこんなことしてんだよ。ああもう、めんどくせえからもう帰っかな……)」
祖母「……あの、うちに何か御用?」
不良女「へっ!? あ、いや……!」
祖母「あら、その制服……女ちゃんの友達かい? ごめんね、あの子アルバイトやってるから帰り遅いのよ」
不良女「いや、あたしはその……」
祖母「立ちっぱなしで待ってもらうのも悪いから、上がってて頂戴。よいしょ……買い物帰りだからみっともなくてごめんね。ちょっと買いすぎたかしらね」
不良女「あ、あの…………に、荷物持つよ」
祖母「あぁごめんね。ありがとうねぇ」
334:
祖母「今お茶入れるからね」
不良女「いや、いいよそんな……」
祖母「女ちゃんのお友達なんだから遠慮しないでいいのよ。あの子最近元気ないみたいだけど、お友達がきてくれたから安心したよ」
不良女「……」
祖母「はいどうぞ……こんなお婆さんと話すのは気が引けるかもしれないけど、よかったら学校であの子がどんな風か聞かせてくれないかい?」
不良女「え、えっと……アイツはなんてゆーか……辛いことあっても全然へこたれないってゆーか」
祖母「……とっても辛いことを経験してきてる子だからねぇ。あ、この話はもう聞いてるのかい?」
不良女「? な、何の話?」
祖母「あの子がなんで二年遅れで編入したか……ああ、聞いてないならあの子の口から言ってくれるまで待ってあげて頂戴」
不良女「? はぁ……」
祖母「そう……女ちゃん、頑張ってるんだねぇ」ズズ……
347:
祖母「貴女はお名前なんていうの?」
不良女「……不良女」
祖母「そう。不良ちゃんは普段どんなことしてるの?」
不良女「普段って……ツレと遊びに行ったり……メシ食ったり」
祖母「最近の子は、普通はそういう風に友達と遊びに行くのかしら?」
不良女「さぁ……あたしは、金があるから」
祖母「そうなの。女ちゃんは……また話を聞くかもしれないけど、あんまり自分のためにお金を使おうとしない子でね。よかったらいろいろ遊びに連れて行ってほしいの」
不良女「……無理じゃねーかな」
祖母「まぁ、どうして?」
不良女「いや、そもそもあたしらは――」
ガチャ
349:
女「ただいま……ごめんばあちゃん、今日も晩御飯いら――ッ!!」
不良女「(げ……!!)」ビクッ
祖母「お帰り女ちゃん、お友達きてるよ。ずっと待ってくれてたのよ」
女「っ……そ、そう」
不良女「あ、あのよ、別にあたしは」
女「待たせちゃったわね。じゃあ二階の部屋に行きましょうか」
不良女「あぁ!?」
女「ばあちゃん、晩御飯用意しておいて。一緒に食べるから」
祖母「はいはい。じゃあ今日はいっぱい作らなきゃね」
不良女「おい、ちょっと待て――おい女テメェ!」
女「いいから早くきて」ボソ
不良女「っ……」
359:
バタン
――女の部屋
女「……」
不良女「……」
女「……何のつもり? まさか貴女、ばあちゃんに何か……!」ギロッ
不良女「ち、ちげぇよ! あの人には何もしてねぇ!!」
女「! ……だったら、何しに来たの? 昨日の続き?」
不良女「だ……だったらどうしたよ? いつでもやってやんぞ!?」
女「……」
不良女「……な、なんだよ」
女「……まさか今更謝りに来たなんてことないでしょう。殴られたのを理由に脅迫でもしにきたの?」
不良女「ケッ、あたしがその気になりゃいつでもテメーなんざ……」
女「どうでもいい嘘はもういいから。はっきり言ってちょうだい」
367:
不良女「……っせーな。大した用じゃねえよ」ドサッ
女「……! こ、これって……」
不良女「……」
女「……自分で燃やした本をまたわざわざ返しにきたの?」
不良女「……! 気に入らねーんなら捨てろよ! どーでもいいだろが!」
女「……。返しに来たっていうなら、返してもらっておくわ。でも……あれは、ばあちゃんの持ってた本だったから、替えはきかないのよ」
不良女「っ……」
女「……本当にひどいことをされたんだから、これで貴女を許す気はない。謝ったとしても許さない」
不良女「……っは、別にテメーに許してもらうために持って来たんじゃねーよ! 謝る気もね―」
女「そう。別に私も貴女に謝ってほしいわけじゃないわ。私は、ね」
不良女「あ……?」
女「これは元々ばあちゃんの本だった。謝るべき相手が違うわよね」
368:
わくわく
372:
BBA覚醒すんのか
374:
祖母「さて……そろそろ二人を呼ぼうかね。よいしょ」
女「ばあちゃん」
祖母「ああ女ちゃんいい塩梅だよ。晩御飯できたから……」
不良女「……」コソコソ
女「その前にちょっといいかな。……不良」
不良女「っるせーな! ……あ、あの……これ」スッ
祖母「? あら、この前女ちゃんにあげた本……ん? 変ね、なんだか少し綺麗になってる?」
不良女「その……それは……」
女「……。この子が私と喧嘩したときに、持ってたばあちゃんの本を燃やしたの」
祖母「!」
不良女「おまっ……えっと、あの……ごめん、なさい」
381:
女「でも、今日代わりに買って来てくれたんだって。だからちょっと新しくなってるんだけど……ごめん。大切にしてたのに」
祖母「……そう」
不良女「……すみ……ません」
祖母「……探すの大変だったでしょう?」
不良女「へ?」
祖母「これ、だいぶ古い本だからね。普通の本屋さんにはもう置いてないのよ」
女「そうだったの? 不良」
不良女「え、いや、まぁ……うん」
祖母「古本屋さんでわざわざ探して見つけてきてくれたんだねぇ。ありがとうね不良ちゃん」
不良女「べ、別にお礼なんか……てか、燃やしたの……あたしだし」
祖母「それでも、悪いと思って頑張って返しにきてくれたじゃないの。本当にいい子だねぇ」ナデナデ
不良女「っ……!」
389:
――数時間後
祖母「――晩御飯美味しかった? あんまり若い子は好きな味じゃなかったかもしれないけど」
不良女「い、いや……美味かった、です」
不良女「(めちゃくちゃ気まずかったけど……)」
女「嘘をつかなくていいのよ」
不良女「う、嘘じゃねえよ! 昔のおばあちゃんのメシとおんなじカンジで……」
女「……へぇ」
不良女「! な、なんだその目ェ喧嘩売ってんのか!?」
祖母「仲良しねぇ二人とも。不良ちゃん、これからも女ちゃんのことよろしくね」
不良女「やだよ! なんでこんな奴と……!」
女「近所迷惑だから叫ばないでちょうだい。近くまで送ってあげるから」
祖母「それじゃあね。またいつでもおいで」
不良女「ぐ……さ、さよなら……」
395:
女「……」スタスタ
不良女「……ついてくんじゃねー」スタスタ
女「ばあちゃんが心配するでしょ。形だけでも送らせなさい」
不良女「チッ、年上ぶりやがってうざってぇ奴……」
女「……貴女って意外と、根っからの救いようのない低能な鬼畜生というわけじゃないのね」
不良女「て、てめえあたしをなんだと……!」
女「ばあちゃんには私の髪の毛を切ったのも、教科書や体操服を切り刻んだのも、レイプさせようとしたのも全部貴女のしわざだとは伝えてないわ」
不良女「ば……んの、クソ女が……!」
女「全部事実じゃないの。いまさら罪悪感を自覚したの?」
不良女「ケッ、誰がんなもん――」
ピタッ
女「……ばあちゃんがいるから貴女との関係は表向きには繕うわ。でもね、私は貴女みたいな人間って、この世で一番嫌いなのよ」ギロリ
398:
不良女「ッ……だ、だったらどうだってンだ。テメーこそいまさら恨み言かよ」
女「別に……ただ、暇つぶしに他人の人生を踏みにじることがどれだけ残酷なことか。その意味くらい弁えておいて欲しいの」
不良女「ハァ? 何言ってやがんだ……」
女「……わからないなら、私が教えてあげるわ。どのみちいつか思い知ることになるでしょうから」
不良女「ど、どういう意味だよ」
女「誰かを傷つけたツケはそのうち返ってくるって意味よ……気が向いたらこの喫茶店にきてみなさい。私の仕事先があるから」ピラ
不良女「あ? なんであたしがンな場所にいかなきゃならねぇんだ」
女「送るのはここまでで充分ね。それじゃ」スタスタ
不良女「あ、待ちやがれおいコラ!」
女「……私に喧嘩を売るならいつでも構わないわ。けどもし、ばあちゃんの気持ちを裏切るようなことしたら、その時はもう容赦しない」
不良女「……!」ビクッ
不良女「……なんだってんだよ、あのアマ……クソッ」
403:
――数日後
モブ子「おい不良ー、アンタ最近やけにおとなしくねぇ? っつかおとなしすぎんだろ」
モブ美「なんか全然前みたいなカンジないよねー。お小遣いちょうだいよ」
不良女「うっせえんだよブス共……あたしだっていつでもバカやってるわけじゃねェっての」
モブ江「……女がいるから?」
不良女「あぁ!? どういう意味だテメー!?」
モブ江「そのまんまの意味だよ。アンタ、この前女とやり合ってからなんにもしてないじゃん。ビビッたの?」
不良女「ンだとこのアマ……舐めた口きいてっとテメーから潰すぞ」
モブ美「ちょ、ちょっとモブ江ちゃんヤバイって……」
モブ江「私は別に退学になるぐらいどーってことねぇし。それよりアンタ、今の状況わかってる?」
不良女「な、なんだよ」
407:
モブ江「アンタさ、最近かなり温くなってるよ。他の連中も気づいてる。見ろよ」
女子A「――あの、女ちゃん。昨日の宿題やってきてる? よかったらちょっと見せてくれないかな」
女「……構わないわよ」
女子B「あ、私も見せてもらっていいー?」
女「どうぞ」
ワイワイ
モブ江「……アンタが完全にシめてた頃はこんな空気じゃなかっただろ。女の奴がアンタに対抗できる存在として、周りから頼られ始めてんのさ」
不良女「……ケッ、大したことじゃねェよんなもん」
モブ子「不良? あのまんまでイイわけ?」
不良女「連中が調子に乗り出したらきっちりシメりゃいいだけの話だ! あんな奴、ほっといてもどうせなんにもしてこねぇよ」
モブ江「……」
409:
――放課後、街角の喫茶店
ザァァァァァ……ゴロゴロ……
女「ありがとうございましたー。……ふぅ」
マスター「そろそろ夜の時間帯になるのぅ。ゆーても、この雨じゃもう客は来んやろなあ。女ちゃん、今日は早い目に上がるか?」
女「そうですね……じゃあ」
カランカラン……
不良女「……」ビシャビシャ
女「!」
マスター「お、らっしゃい……なんやお嬢ちゃん傘忘れたんか? しかもその制服……」
女「……マスター、タオルお借りしてもいいですか? 学校の知り合いなんです」
マスター「ん? おぉ、ちょおまっとき」パタパタ……
不良女「……けっ、テメェうちがバイト禁止だって知っててやってんのか?」
女「生憎と学校側に特例をもらってるのよ。というか、本当に来たのね」
415:
不良女「っせぇな、雨宿りに茶店寄ったらワリィかよ!?」
女「はいはい……」
マスター「おう、嬢ちゃん。これで体拭いとけ」ヌッ
不良女「え、あ……ども」
マスター「……強面で堪忍やで」シュン
女「マスター、この子見た目より子供だから。怖がられても気にしないで」
不良女「だ、誰が!」
マスター「ええねや、慣れとるさかい。女ちゃんの友達やろ? ちょっとジュース入れたるから座っとき」
不良女「い、いや別に……」
女「座りなさい。大人の好意は受け取るものよ」
不良女「……二つしか違わねェくせに大人ぶりやがって」
女「少なくとも、貴女より汚い大人の世界は見てきてるつもりだから」
417:
女「さて、と……ここまで足を運んできたってことは、ちょっとくらい私の話に耳を傾ける気があるってことね?」
不良女「……あたしは雨宿りついでに茶ァ飲みに来ただけだ。ムカつくヤローの話なんざ聞く義理はないね」
女「貴女って、自分が低能だってことを披露したがるのね。まぁ私を放っておいてくれるなら、貴女のことなんでどうでもいいんだけど」
不良女「んだとテメェ……!」
マスター「ほい、オレンジジュース」コト
不良女「ぅ……ども」
マスター「まぁ若いもんにはいろいろあるやろうけど、素直になりや。今日はもう店閉めるさかい、ゆっくりしていき」
女「すみません、マスター」
不良女「……」チュー ゴクゴク
女「そうしてるとただの無垢で無知な女の子よね貴女って。いまのところ悪い意味でしかないけど」
不良女「……言いたいことあんならとっとと言いやがれクソアマ」
女「そうさせてもらうわ。無駄な時間も取りたくないし」
421:
女「前にも言ったけど、私は貴女のことが嫌いなの。だからこれから口にすることに一切繕いなんてないし、どちらかというと脅しを含めて話してあげる」
不良女「はぁ? テメェに脅されてビビるとでも思ってんのかよ?」
女「少しは怖がって距離を置いてくれるとありがたいのだけれど。まぁ、なんでもいいわ。さわりから教えておく」
不良女「……」
女「私ね、15くらいの時に、借金のカタに連れて行かれて売春してたの」
不良女「ぶっは!! やっぱりクソビッチ野郎だったのかよテメェ! そりゃそんだけ乳もデカけりゃ――」
女「いい加減黙って話を聞くってことを学びなさい。次にくだらない茶々をいれたら顔面を引っ叩くわ」ギロッ
不良女「っ……(こ、んのやろ目がガチじゃねーか……)」
女「多分、貴女が想像してるのは精々どこかの風俗みたいなところなんでしょうけど。実際はもっといろんな場所で、いろんな人間に買われたわ。詳細は省くけど、世の女性が想像できる最低最悪の犯され方も経験してきた」スルッ
不良女「な、て、てめっなにいきなり服脱い、で……ん……」
女「まぁ、一部は母親からの虐待の傷もあるけど。結構そこらじゅう痣だらけでしょう? 見えないけど、陰部が炎症を起こして膿んだりもした……女性器なんかもうきちんと機能しないんじゃないかしら」スッ
不良女「(な、なんだよコイツの体……火傷とか痣もだけど、よく見たら切り傷まであちこちあるじゃねーか……)」
425:
女「私の親と呼ばれた人間は、世間一般からみて完全なクズだった。というより、父親が早くに病気で死んでから母親の方が本性出したみたいなんだけど」
不良女「……」ジュースチュー…
女「簡単に言ってしまえば、あちこちで作った借金まみれの状態で、私一人を置いて逃げたわけ。当時は私も親戚を頼るなんて知恵もないくらい子供だったから、ワケもわからないうちに知らない人たちが私を連れて行った」
不良女「(……なんでコイツはさっきから無表情でこんな話できんだよ……)」
女「おそらく、アイツの……母親の中で私はただの荷物で、金ヅルで、ちょうどいい道具だったんでしょうね。死んだ方が世の中のためになるくらい、どうしようもない人間だったわ」
不良女「……っけ、同情でも誘ってんのか?」
女「人の話は最後まで聞きなさい。その母親がね、殺されたのよ。かき集めた不信と怨嗟のしっぺ返しだったんでしょうね」
不良女「あ? どーゆー意味だよ」
女「あちこちで恨みを買って、他人の人生をめちゃくちゃにしてきたツケがきたのよ。借金の保証人だった知り合いに殺されたらしいわ」
不良女「……ハン。自業自得じゃねーか」
女「貴女の口からそんな言葉が出るなんて、案外殊勝なところがあるのね。まぁこれは私の母親の話だけど。言いたいこと、わかるわよね?」
不良女「……ケッ、ンなこと知るかよ」
女「……私は、私の人生をこれ以上他人に弄られたくないし、他人の人生に干渉する気もない。だから何もするなと言っているの。たったそれだけのこと、さすがの貴女でもいい加減理解してくれるでしょう?」
431:
不良女「っつーかよ、テメェマジであたしと二つ違いか? そんな……意味わかんねぇ経験してるくせに、なんで――」
女「もっと擦れて腐った人間になると思った? 自分みたいに」
不良女「アァ!?」
女「まぁ貴女のことなんてどうでもいいんだけれど。……幸いにも、私の前には、私を救ってくれる人が二人も現れたのよ。ばあちゃんと、ここのマスター」
不良女「……」チラ
マスター「……おう女ちゃん、ケツかゆなってまうような話までせんとってくれよ」
女「ありのままをお話しするだけです。差障りあるなら、マスターの話は伏せておきますけど」
マスター「まあ……別に今更隠すようなことでもあれへんけどな。昔のことやさかい」
不良女「……?」
女「元ヤクザなのよ、あの人。一時は組の若頭だったらしいわ」
不良女「んな……!?」ビクッ
マスター「さらっと言いよるな女ちゃん……あぁあぁ、昔のことや昔の! 今はしがない喫茶店の店長やさかい、そんな目で見んとって!」
434:
女「ばあちゃんは、母親に捨てられてから行方が分からなかった私を見つけてくれた。それで、押し付けられた借金を全部返済してくれた」
不良女「……いくらくらいなんだよ、それ」
女「さぁ。あの時点で残っていた額で、一千万と少しだったかしら。ねぇマスター?」
マスター「千二百万や。まぁ、俺が気ィ回したから実質一千万で済んだはずやけどな」
女「あの時は本当にありがとうございます。私、一生あの御恩は忘れてませんから」
マスター「やめぇ。ケツかゆうなるわ。俺かて、あれだけで今までの償いできたとは思うとらん」
不良女「……?」
女「マスターとはね、私があちこちに連れまわされてた時に知り合ったのよ。それで私の境遇を聞くなり、涙流して手を握ってくれて……」
マスター「女ちゃん、それ以上はあかんで。俺の威厳丸つぶれやで」
女「いいえ、言わせてください。元々とても心の優しい人だったのよ、この人。ばあちゃんが来てくれる前にこの人と出会ってなかったら、きっと私はこの世の人間みんな憎むような愚か者になっていたと思う」
マスター「ハァ……もうええわい、頑固じゃからの女ちゃんは。あんま気にせんでな嬢ちゃん」イソイソ
不良女「い、いぇ……」
女「……ああいう優しい人たちに救われたから、今の私の、今の人生があるの。私はそれを誰にも邪魔されたくない。わかった?」
438:
不良女「……」チュー ズズズズ……
女「……聞いてる?」
不良女「……き、聞いてるっての」
女「そ。私から話すことはもうないわ。別に貴女からされてきたことを誰かに告げ口するつもりもないし、貴女に報復する気もない。だからもうほっといてくれる?」
不良女「……」
女「ただ、この前みたいなことをもう一度されたら、私も正直なにをしてしまうかわからない。特にばあちゃんには――」
不良女「しねえよ!」
女「!」
不良女「ア、アンタのばあちゃんには……何もしない」
女「……そう」
不良女「…………帰る」ガタッ
女「まだ雨降ってるわよ。雨宿りついでに来たんじゃないの?」
不良女「っせぇな、帰るったら帰るんだよ!」ダッ カランカラン……
女「……ハァ」
439:
――数日後
女子A「ねぇねぇ女ちゃん! 今日のテストなんだけど――」
女「ごめんなさい、私も数学はまだよくわからなくて……」
女子B「じゃあ一緒にちょっと勉強しようよ!」
女子C「あたしここ全然わかんなくてさ?……」
ワイワイ
不良女「……」
モブ子「最近マジでなーんもしねぇのな、不良」
モブ美「女マジで超調子乗ってるしー……」
不良女「ほっときゃいいだろ。相手すんのもめんどくせーんだよ、アイツ……」
モブ江「……」
ガヤガヤ
442:
女子B「それでさー、この前なんか――」
モブ江「おいテメーら」ガンッ!
女子A「キャッ!?」
女「!」
女子C「な、なによ?」
モブ江「さっきからぎゃーぎゃーうるせーんだよ。もう少し静かにやれや」
女子B「あ……ご、ごめん」
モブ江「……」スタスタ
女「……」チラ
モブ江「おい、不良」ガタン
不良女「……んだよ」
443:
おや…モブ江の様子が…
446:
モブ江「もうアンタとつるむのやめるわ。親が権力あっからイイと思ってたけど、もうテメェは腑抜けだ」
不良女「!!」
モブ子「……アタシも正直、温くなってきたわ。まぁアンタに逆らう気はないけどさ」
モブ美「えっ、二人とも……それってヤバくなーい?」
不良女「いい度胸じゃねえかテメーら……今まであたしがしてやったこと忘れたってか? なんなら退学にしてやっても――」
モブ江「やってみろよ。あたしは退学くらい別になんともねーからよ」
不良女「……ッ」
モブ子「ってかさ、フツーそんなくだらない理由で親が動く? たかが友達のいざこざでしょ」
不良女「テメーら……!」
モブ江「ま、世話んなったし礼は言っとくけど。金輪際テメーの子分はヤメだ。じゃあな」スタスタ
モブ子「そゆことで、あたしも。モブ江についてくわ」スタスタ……
452:
不良女「ッ……! クソ共が!! 勝手やってろ!!」ドガァン!!
モブ美「ひっ!」ビクッ
ざわざわ……
不良女「……テメェもさっさと消えろよ。あたしは一人になりてーんだ」
モブ美「え、で、でも」
不良女「消えろっつってんだろが殺すぞ!!!」
モブ美「!!」ダダッ
……フリョウノヤツ コリツシチマッタンジャネーノ? ヒソヒソ……
不良女「……っけ。おら、見せモンじゃねーぞこっち見んな!」
女「……」
458:
――夜、不良女の家
コンコン
不良母「不良? いるの?」
不良女「……なに、ママ」
不良母「ママたち少し出張の用事ができたのよ。一週間ほど遠方で仕事があるから、留守番しといてくれるかしら?」
不良女「……」
不良女「不良? 何、お金なら置いて行ってあげるから――」
不良女「……金でなんでもどうにかなると思ってんじゃねーよ!!」
不良母「!! な、なによいきなり。親に向かってなんて口のきき方するの!」
不良女「みんなどこでも勝手に行けばいいじゃんか! あたしのことなんかほっといてよ!」バタン!
不良母「ちょっと不良!? どこ行くの、待ちなさい不良!」
465:
――夜道
不良女「……」カンッ
カンッ カランカラン……
不良女「……っせーんだよ、どいつもこいつもバカにしやがって……」
ヤンキーA「――お、アイツ不良じゃん」
ヤンキーB「久しぶりじゃんか。何やってんだよ一人でよぉ?」
不良女「……別に」
ヤンキーB「ンだよつれねぇなぁ。ちょっと付き合えよ、今から向こうで別校の女と乱交パーティーすんのよ! へへへ」
ヤンキーA「不良もくるかぁ? お前最近付き合いワリィんだからさァ、ちょっとくらいヤらせろよ」
不良女「……るせぇ」イラッ
ヤンキーA「ァん?」
不良女「勝手にヤってろ。テメェらにケツ向けるくらいなら女相手にズリこく方がマシだっての
470:
ヤンキーB「んだとテメ……」
ヤンキーA「やめとけ、こいつの親マジでハンパねーから」
不良女「……ッチ」スタスタ
ヤンキーA「……不良よぉ、なんか最近お前評判ワリーぜ。どこぞの年増女にビビって腑抜けちまったとかって」
不良女「誰もビビってねェ! モブ共が勝手に嘘こいてんだよ!!」
ヤンキーB「何でもいいけどよぉ。ヤらせねーわ暴れねーわ、お前マジで何やってんの最近?」
不良女「それこそテメーらには何の関係もねー。あたしはバカ共とは違うんだよ」
ヤンキーA「ふーん……ま、夜道には気をつけろや。お前そっこら中で恨み買ってんだからよ、そのうち襲われんべ?」
不良女「いらねぇ世話だ。テメェのケツぐらい自分で庇うっての」
ヤンキーB「はー、なんか萎えてきたわ。早く行こうぜおい」
ヤンキーA「おう。じゃあな不良」
不良女「……」
472:
>「おう。じゃあな不良」
いいやつオーラ
474:
――数日後、教室
不良女「……」クッチャクッチャ
……ヒソヒソ……フリョウノヤツ マタヒトリダゼ……
不良女「……」イライライラ
女「……ちょっと」
不良女「……んだよ、話しかけんじゃねー」
女「私だって積極的に貴女に話しかけるのなんて、余程の用事でなければ御免こうむりたいわね」
不良女「ああもう鬱陶しいんだよ! だったら余程の用事をさっさと言いやがれ!!」
女「……貴女のメンツもあるでしょうから、ここで言うのはやめておくわ。とりあえず、今日放課後ウチにきてくれる?」
不良女「……は?」
女「それじゃ」スタスタ
不良女「おいコラ! ……クソッ……オラお前らこっち見てんじゃねェぞボケが!!」ガンッ
610:
――放課後、女の家の前
女「……」
女「…………。!」
不良女「……」
女「ちゃんと人の言うこと覚えるくらいには記憶力あるのね」
不良女「用があんならとっととしろやグズ女。こっちは忙しいんだよ」
女「一人ぼっちなのに?」
不良女「ッ……関係ねえだろがテメェには!」
女「孤立したって自覚はあるのね。ま、そんな事情はどうでもいいわ。祖母が待ってるから入って頂戴」
不良女「は……? な、なんの用だよあたしに」
女「……私の『友達』が最近顔を見せないからって心配してるのよ。形だけでもいいから顔を見せてあげて」
不良女「……『友達』のババアにわざわざ見せる顔なんざねー」
612:
女「あらそう。だったら貴女の悪行を全部話してからにした方がいい?」
不良女「てめ……ロクな死に方しねーぞクソ野郎」
女「貴女よりはマシでしょうよ。無駄話はいいからさっさと入りなさい……ばあちゃん、連れてきたよ」ガチャ
祖母「はいはい……あぁ不良ちゃんお久しぶりねぇ?。元気だったの?」
不良女「……ども」
祖母「あれ以来ちっとも女ちゃんが貴女のこと話さないから心配でねぇ。ゆっくりしていってね」
不良女「いや、あたしは」
女「ばあちゃん、あたしがお茶入れてくるから座っといて」スッ
祖母「そうかい? 悪いねぇ」
不良女「おい待……ッチ、あんにゃろ」
祖母「?」ニコニコ
616:
不良女「……」
祖母「あの子とはどう? 学校でも仲良くしてるの?」
不良女「……あんまり」
祖母「そうなの? まぁ、そんなにおしゃべりな方じゃないからね女ちゃんは」
不良女「……つーかさ、別に友達じゃねーんだよアイツとは。なんていうか、恨み敵同士っていうか……」
祖母「? よく喧嘩するの?」
不良女「っつーか喧嘩しかしねぇ。なんでこんなことになってんのかワケわかんねー」
祖母「そうなの……でも喧嘩するほど仲が良いっていうものねぇ」
不良女「そういうレベルじゃねーんだよ。アイツはあたしに……」
祖母「?」
不良女「……いえ、なんでも……ないっす
619:
女「ばあちゃんと話す時だけ借りてきた猫みたいになるわよね貴女って」コト
不良女「一々うるせーんだよテメェはよ。こっちがわざわざ来てやってんだから少しは感謝しやがれ」
女「だってさ、ばあちゃん」コト
祖母「あら、何か用事でもあったの? 無理して連れてこなくてもよかったのに……ごめんね不良ちゃん」
不良女「い、いや別にあたしは……ヒマだし」
女「…………フッ」
不良女「!! んだテメェ今鼻で笑ったかコラ!?」
女「ガキね」ハッ
不良女「笑うなクソが! 鼻へし折んぞ!!」ガンッ
祖母「元気なのねぇ不良ちゃんって」
不良女「っぐ……なんなんだよコイツのムカつく態度はよ!? どういう教育してこんなムカッ腹立つ野郎に育つんだ!?」
女「それを貴女が言う?」
不良女「そういうところがムカつくってんだよ!! ああーもう!!」
622:
祖母「――女ちゃん、もうこの子には話したの?」
女「ん……うん、一応ね。ちゃんと聞いてたかどうかわからないけど」
不良女「今度は何の話だよ! 喧嘩なら買うぞオラ!?」
女「落ち着きなさい。この前、喫茶店でした話よ」
不良女「ッ――そ、それがどうしたんだよ」
祖母「……」
女「……」
不良女「……な、なんなんだよ」
祖母「……ありがとうね、女ちゃんの友達でいてくれて」
不良女「だ……だからコイツとは別に」
祖母「こんなに率直に言い合える相手が友達じゃないわけないじゃないの」
不良女「だから、そうじゃなくて! イジめてたんだよあたしは! コイツをッ!!」
624:
女「……!」
祖母「……虐めてた?」
不良女「コイツがムカつくから、そのっ……色々、ひどいこととか、やって……殴り合いにもなったんだぜ!? それなのに――」
祖母「女ちゃん、不良ちゃんに何かしたの?」
女「……私は何も。やられたからやり返したことが少しあるくらい」
祖母「……そう。本当なのね? 不良ちゃん」
不良女「……そうだよ」
祖母「ちゃんと謝ったのかい?」
不良女「な、なんで謝らなきゃならねんだよ! 大体、もともとコイツのせいであたしがシメてた連中に舐められて……!」
祖母「でも、ひどいことをしたって。自分で言ったじゃない?」
不良女「ぅ……で、でも」
祖母「ひどいことをしたと思うなら、きちんと謝りなさい。女ちゃんのためにも、自分のためにもよ」
625:
婆ちゃん何者
626:
不良女「……っやだ。意味わかんねーし」
女「ばあちゃん、別に私は無理して謝ってほしくなんかないし……」
祖母「女ちゃんが良くても、不良ちゃんが良くないのよ。この子はちゃんと、自分のやったことを悪いと思ってるじゃないの」
女「……そうかしら」
祖母「ばあちゃんにはわかるの。この子は本当はとっても素直でいい子なんだってね」
女「まぁ……幼稚な子供だってところには同意するけれど」
不良女「テメェはっ……!」
祖母「ね? 不良ちゃん。貴女がどんなにひどいことをしてきたのか知らないけれど……ここで悪い子だった自分とお別れしなさい」
不良女「べ、別にあたしは」
祖母「『ごめんなさい』は?」
不良女「んぎ……ぐ……」
628:
女「……」
不良女「…………ん」
女「……なに?」
不良女「だからっ! ……っご、ごめんって」
女「何に対して?」
不良女「……ッ! アンタの髪の毛切ったりとか、靴隠したりとか! あと、その……ア、アレだよ!」
女「……えぇ、“アレ”ね」
不良女「……わる、かった……と思うから……ごめん……な、さい」
女「……」
祖母「……はい、偉かったわね」ナデナデ
不良女「……っう」ジワ
祖母「よく頑張ったわねぇ。……女ちゃんは、どう? 許してあげるの?」
629:
やはりばあさまが最強だったか
630:
女「……ばあちゃんの本を燃やしたことは、絶対に許さない。どれだけ謝っても」
不良女「……わかってるよ」グシグシ
女「でも、それ以外のことは……前にも言ったけど、別にどうにも思ってないわ。貴女から何か償いをしてほしいわけでもない」
祖母「手厳しいわねぇ」
不良女「……」
女「だからといって、謝罪一つで全部許された気になられるのも困る。せめて、これからの態度を改めてくれたらいいわ」
不良女「……下手に出りゃ好き放題言いやがって」
女「少なからず負い目を感じているなら、これくらい言わなくてもわかってくれると思っていたけれど。それともさっきのは本心じゃなく、ばあちゃんに言わされただけ?」
不良女「ちげえよ! ワリィと思ったから謝ったんだろが!」
女「なら、少しは相手に対する敬意というものを覚えて。というか、いい加減素直になったらどうなの?」
不良女「あぁ!? どういう意味だ」
女「そのままの意味よ。貴女は私に暴力をふるった。それに罪悪感があって、ここで私に謝った。つるんでた仲間からも孤立している。……これ以上もう張る意地もないんじゃない?」
631:
不良女「別に……意地なんか張ってねーし」
女「……そういえば、私も一発貴女を殴り飛ばしたことがあったわね」
祖母「あらま」
不良女「ハッ、そーいやそうだったよな。まぁあん時ゃあたしも一発テメェに……」
女「自分を見失っていたとはいえ、悪かったわ。顔、腫れたりしなかった?」
不良女「……べ、別に? てかあれはその、アンタのおばあちゃんの本踏んづけたからだし、あたしもやり返したし、んなこと謝られたって意味わかんねーし……」
女「謝るべきだから謝るの。もちろん、ばあちゃんの本を踏んだのは許さない。でも殴るべきじゃなかった。ごめんなさい」
不良女「……いや、だからよ……」
祖母「……女ちゃんは本当に正直な子だからね。うなずいてあげて頂戴?」
不良女「……」コクン
祖母「不良ちゃんはいい子ね」
不良女「……いい子じゃねーし」
633:
女「ばあちゃんがそう言ってるんだからそう思っときなさい。私は欠片も同意できないけど」
不良女「憎まれ口じゃテメェが一番だろうよ」
女「実際に憎まれてるのは貴女の方じゃなくて?」
不良女「ああああああっ! やっぱテメェはムカつく!!」
女「事実を言われると逆上するのも子供の証ね」
不良女「おい、コイツの性格どうにかなんねーのかよ!!? アンタが育ててんだろ!?」
祖母「女ちゃんは、母親がいた時もずぅっと独りだったからねぇ……ばあちゃんが育てたわけじゃないんだよ」
不良女「ぅぐ……」
祖母「まぁちょっと皮肉屋さんだけれど、この子なりの愛情表現だと思ってちょうだい?」
不良女「思えねぇよ! 親バカも大概にしなよ!」
女「一々うるさいわね」
不良女「テメェがムカつくからだろが!! ああああもう!!!」
641:
………………
祖母「――さてと、そろそろ晩御飯の支度しましょうかね。不良ちゃんは何が好き?」
不良女「え? い、いやあたしは別に」
女「ミートボール? それともバナナかしら」
不良女「バカにしてんのかテメェは? してんだな?」
女「えぇ」
不良女「殺す」
祖母「はいはい。それじゃあいつも通りのご飯にしますからね。不良ちゃんは、ご両親に連絡しなくても大丈夫なの?」
不良女「え、いや、は? またメシ食うの?」
祖母「そうだよ。また食べていきなさい」
女「私は御免だけど、ばあちゃんが言うなら別に」
645:
確かにこれは女くどすぎる
646:
祖母「あら、もしかして今日は帰らなくちゃいけないのかしら」
不良女「……いや別に……っつーか、いま家に親いねーし……」プイ
祖母「まぁ……そんなの寂しいじゃないの。なら今日はウチに泊っていきなさい」
不良女「は!?」
女「ち、ちょっとばあちゃん。いきなり言ったって泊める部屋なんてないじゃない。ウチ狭いんだし」
祖母「女ちゃんの部屋にお布団敷いたらいいじゃないの」
女「……」
不良女「コイツと一緒の部屋で寝ろっての!? ヤだよそんなの!」
祖母「いいじゃないの。いろいろとお話したらきっと楽しいよ」
不良女「ケッ、コイツと話すことなんかねぇよ」
女「それは同感……話が通じない人間とは話そうにも話せないわ」
不良女「テメェでテメェのこと言ってんのか? ア?」
651:
祖母「それだけ言い合いできるならいくらでもお話できそうだねぇ。じゃあ、ちょっとお布団の用意してくるからね」スタスタ……
不良女「ちょ、ま…………勝手に決めてんじゃねーよ畜生」
女「……ハァ。もう諦めなさい、私も一晩くらいなら我慢してあげるから」
不良女「こっちのセリフだっての。一晩中テメェと一緒なんざ反吐が出るぜ」
女「……ご飯の用意してくるわ。祖母がああ言ってるんだから、逃げるんじゃないわよ」
不良女「うるせー。とっとと消えろクソアマ」
………………
――深夜、女の部屋
女「…………」
不良女「…………」
女「…………」
654:
不良女「…………。おらクソアマ。なんかしゃべりやがれ」
女「……まだ起きてるの? 睡眠の邪魔しないで」
不良女「居づらいんだよ、なんか……なんなんだよあのばあさんはよ……」
女「……ああいう人なのよ。何の気もなしに、良いことだと思ったら人の都合なんて考えないで世話を焼きたがるの」
不良女「マジで余計な世話だっての……ちっとは空気読めよな」
女「……貴女。祖母に対してだけは、本当に普段の姿が想像できないくらい大人しいわよね」
不良女「…………」
女「何? 年配の人に苦手意識でもあるの? 貴女に限ってそんなデリケートなことないでしょうけど」
656:
女ウザ過ぎだろイライラしてくる
658:
駄目だ。 この女がどうしても雪ノ下で脳内再生されてしまう。
657:
ヶ原さんっぽい
http://www.amazon.co.jp/dp/B00DS4AWIK/
664:
不良女「……あたしのおばあちゃん」
女「……?」
不良女「もう死んだけどよ……いい人だった。ガキん時から家の都合でしょっちゅうおばあちゃんチに預けられててよ」
女「……」モゾ
不良女「……やっぱいい」ゴソ
女「聞いてあげるから。話して」
不良女「…………育ての親みてぇなもんなんだよ、おばあちゃんは。マm……母親より長いこと一緒にいた気がする」
女「そう」
不良女「おばあちゃんとこは、もともと貧乏でよ。母親が父方に嫁いで金持ちンなったんだと。だから、おばあちゃんチもこの家みたいにボロかったな」
女「人の家に対して失礼ね」
不良女「事実だろボケ。とにかく、アレなんだよ……苦手なんだよああいうタイプの年寄りはっ」
666:
女「……要するに、自分がおばあちゃんに甘やかされて育ってきたから、逆らえないってわけ?」
不良女「……ンだよ、だったらワリィかオラ。テメェこそババアっ子じゃねえか」
女「そりゃそうよ。あの人には返しきれないくらいの恩があるもの」
不良女「……それって、なんか借金とかいってた……アレかよ」
女「それも含めて、今の生活を与えてくれたことよ……別に貴女みたいに昔から世話になってたわけじゃない。ただ血縁の孫だからってだけでここまでしてくれてるの」
不良女「……」
女「それくらい、特別なものなのよ。今の私の、この日常生活は……貴女には絶対理解できないでしょうけど」
不良女「別にテメェの事情なんざ関係ねーし、理解する気もねー。勝手にやってろ」
女「初めからそのつもり。だから貴女には何度も話してる。『この生活の邪魔をしないで』と」
不良女「……フン」
669:
女「私自身のためだけじゃないわ。私を助けてくれる祖母やマスターみたいな人たちのためにも、もう余計なことはしないで頂戴。わかった?」
不良女「……っせーな、わかったっての。もうテメェの相手すんのもうんざりなんだよこっちは」
女「気が合うわね。それなら互いに無干渉でありたいものだわ」
不良女「言われなくてもそうするっつーの」
女「そう……」
不良女「……」
女「……貴女が話もできない人間だと言ったこと、訂正するわ」
不良女「……あっそ」
女「……もう満足? なら寝るから。お休み」
不良女「…………ッチ」
………………
672:
――お母さん、ここどこ? この人たち誰?
――やだ! やめてよ! 痛い! 痛いイタイ!! やめてぇ!!
――お母さん! どこ!? お母さん!! おがぁざぁあん!!
――ィ――きろ! 起きやがれコラ!
女「ッかは――!!?」ガバッ
不良女「わっ、テメ、いきなり飛び起きんじゃね―!」
女「ハァ……ハァッ……」グッショリ
不良女「朝からギャーギャー唸ってんじゃねーぞクソ女……耳障りで起きちまっただろがボケ」ボリボリ
女「……ごめんなさい」
不良女「……何素直に謝ってんだ。気味わりーぞテメェ」
女「(……久しぶりね、あの女の夢を見るなんて……)」
675:
――朝、食卓
女「……ごちそうさま」カタン
祖母「あら、女ちゃん食欲ないの? 半分残ってるじゃないの」
女「うん……なんか気分悪くて。帰ってから食べるよ」
不良女「……っそさん」カチャン
祖母「不良ちゃんもそれだけでいいのかい? 少なくなかった?」
不良女「いいよこれで……んじゃもう行くから」スッ
祖母「せっかちな子だねぇ。二人で一緒に行けばいいじゃない」
不良女「ヤだよ。コイツと一緒にいたら何言われるかわかったもんじゃねぇ」
女「じゃあ周りの目がなかったら構わないの?」
不良女「はぁ!? ちげーし、あたしが個人的にテメェと一緒なんざお断りだっつってんだ!」
祖母「意地っ張りだねぇ。まぁまた来てくれるならなんでも構わないよ。それじゃあね」
677:
――学校
不良女「……」ガラッ
シーン……
不良女「……」スタスタ……ガタン!
モブ江「……」
モブ子「あ、不良じゃん」
モブ美「お、おはよ」
不良女「んだよ。気安く話しかけんな」
モブ子「つれねーなぁ。別に声かけるくらいいじゃんか」
不良女「うるせぇ」
モブ江「おい、ほっとけよ」
モブ子「へいへい」
不良女「……っけ」
680:
――放課後
不良女「(……ヒマだな。家帰ってもすることねぇし)」
不良女「(……ゲーセンでも行くか)」
………………
――ゲームセンター
不良女「……」ギョーン ギョーン バキッ
『GAME OVER』
不良女「チッ……もういいか」
不良女「UFOキャッチャーなら金掛けりゃ取れんだろ」チャリンチャリン
不良女「……」グオーン グオーン
不良女「(……あークソ。なんか腹立ってきた)」
682:
――夕方、ゲームセンター前
不良女「(……全部取っちまった。重い)」ウィーン……
女「……何やってるの?」
不良女「!!」
女「ぬいぐるみたくさん抱えて出てきたのが貴女とはね……意外な趣味をお持ちで」
不良女「ちが、これは、ヒマだから根こそぎ取ってやっただけだっての! いらねーよ!」
女「そう。なら私にくれる? 人にあげたいのだけれど」
不良女「あ?」
女「マスターが客寄せにぬいぐるみでも置こうかって言ってたから。例の喫茶店まで持って来て頂戴」
不良女「いや、お前コラ勝手に……待てオラ! 少しは手伝いやがれ!」
女「嫌よ」スタスタ
684:
――街角の喫茶店
カランカラン……
マスター「お、女ちゃんか……ん? 前の嬢ちゃんも一緒やないけ」
不良女「ど、どうも……」
女「ジュース入れてあげるから座ってなさい」
マスター「なんやねんそのデカいぬいぐるみ共は。土産か?」
女「要らないらしいので。せっかくならこのお店に……」
不良女「待てオラ、タダでやるなんて一言も」
マスター「ホンマか! いやぁ、ウチちょっとむさくるしい雰囲気やさかい可愛いコーナーを作ってみたかったんや。おおきに嬢ちゃん」ニカッ
不良女「あ、いえ……」
女「マスターからお金とる気?」
不良女「……うるせぇ」
687:
女「……」
不良女「……」
マスター「いやーエライ可愛らしなったの! こんな喫茶店なら小さなジャリも同伴で入りたくなるで。のう女ちゃん?」
女「……だといいですね」
不良女「(渋い喫茶店がガキの遊び場になっちまった……変なおっさん……)」
マスター「ほな女ちゃんは着替えてきて……ん? 嬢ちゃんは何しに来たんや?」
不良女「へ? いや、あたしは別にコイツに無理矢理」
女「……貴女も少しは働いてみたら?」
不良女「は?」
女「マスター、まだ従業員募集してますよね」
マスター「おう。ちゅうか俺ら二人だけやさかい、まだまだ人がおらんと……もしや嬢ちゃん、ウチで働いてくれんのか?」
不良女「ま、え? なにが?」
女「まるっきり子供なんで役に立つかどうかわかりませんけど。店番くらいにはなるんじゃないかと」
690:
………………
マスター「んじゃ、前の方は二人でよろしく頼むで」
不良女「……ふざけんな」
女「いい社会勉強になるわ。少しは人との接し方を学びなさい」
不良女「んな勉強いらねんだよ」
女「エプロンのつけ方も知らない癖に偉そうなこと言わないでくれる? 小学生にも劣るわ」
不良女「テメェ後で覚悟しとけよ。ぜってー殺す」
女「ちゃんと断らない貴女が悪いのよ……いらっしゃいませ」カランカラン
不良女「ぐ……」
女「そちらへどうぞ……貴女、お水持っていきなさい」
不良女「嫌だね」
女「水も出さない店員がいたら評判が下がるわね。マスターが怒りそう」
692:
不良女「だったらテメェがやれや」
女「……マスターに言われた方がいいかしら?」
不良女「……っせーなやりゃいんだろやりゃあよ!」ガタン!
女「静かに」
不良女「……っ」
客『すみませーん』
女「お呼びよ。ついでに注文も取ってきなさい、何が欲しいかメモするだけだから」
不良女「命令すんなボケ……」
客「……?」
不良女「……み、水、どぞ」コットン
客「ありがとう。アイス一つと、パンケーキくれる?」
不良女「わ、わかった」
693:
スパーンッ!
不良女「って!? なにしやがる!」
女「敬語くらい使いなさいバカ。すみません、この子まだ世間慣れしていなくて……」
客「ああ、いえいえ。頑張ってね」
不良女「……は、い」
女「アイスとパンケーキですよね。少々お待ちください」
不良女「……」
カランカラン
女「いらっしゃいませ。……席まで案内して」
不良女「……っしゃーせ」
女「はっきり声出しなさい! いつもの威勢はどうしたの!」
不良女「!」
695:
――夜、喫茶店
マスター「お疲れさんやったな。どうやった?」
不良女「……わけわかんねぇし」ゲッソリ
女「まぁいきなりでしたし、この子の素質から考えたら頑張ったと思います」
不良女「……!」
マスター「ふーん。ま、何も問題なかったわけやし。ほれ、今日の代金や」スッ
不良女「……? なんだこれ」
女「バイト代。貴女にとっては端金でしょうけど」
不良女「(……2800円? あんだけ働いて?)」
マスター「ふむ。嬢ちゃんはボンボンか?」
女「らしいです」
マスター「ほんならこんな金たかが知れとるやろな。正直、どう思う? そのお金もろて」
699:
不良女「……す、すくねぇ、かな」
マスター「ん。それがお前さんの行動の対価や。それでも女ちゃんの紹介やさかい色つけたってんねんで」
不良女「……」
マスター「……女ちゃんとは、なんやようしらんが浅からぬ仲とみた。嬢ちゃん、学校でもエライやんちゃしとる……いや、しとったやろ」
女「……」
不良女「……」
マスター「自分がつまらんことやっとる間も、こうやって細々と金を稼いどる人間もおるんや。そういう人間の邪魔をしたらアカン。これは人に対する『礼儀』ちゅうヤツや」
不良女「……はい」
マスター「……まぁ、ワシも昔はひどいことやっとった。偉そうなこと言えへんけども、嬢ちゃんはちゃんとした生き方しいや」ポンポン
不良女「!」ビクッ
マスター「……いや、そないに怖がらんかて……まぁ、また働きに来てくれや」
不良女「……は、はい」
女「……ふふ」
702:
――夜道
女「……今日はどうするの?」
不良女「あ? 何がだよ」
女「ウチに来るの?」
不良女「……なんで目の敵の家にんな何回も行かなきゃならねーんだよ」
女「私だって誘いたくないわ。けど、貴女の顔を見たら祖母が喜ぶから」
不良女「…………今日はいい」
女「……そう。でもお家に誰もいないんじゃなかった?」
不良女「外で飯食うんだよ。金、稼いだし」
女「……」
不良女「んだよ、文句あんのかクソアマ」
女「いえ……貴女、本当にもう少し素直になればいいと思うわ」
708:
不良女「は?」
女「貴女、心の底から汚れてるわけじゃないもの。まともな親もいるし……私とは、違うんだって。そう、思う……」
不良女「……意味わかんねーし。何言ってんだテメェ」
女「……ごめんなさい、なんだか今日は具合が変だから失礼するわ」スタスタ……
不良女「あ? おい……なんだってんだよ、意味わかんねぇよ……」
………………
――夜道
女「……ふぅ」フラフラ
女「(なんだか妙に頭が重い……なんなのよ……あの女の……顔を思い出したから?)」
???「……」コツコツ……
女「(早く帰ろう……)」
???「……ラァ!!」ブンッ
女「ッ――!!?」ゴッ
711:
女「ぐっう……!?」バッ
DQN2「死ねゴラァ!!」バキッ ドゴッ ガァン!
女「が……ッ――アァ!!」ドガッ
DQN2「っこっおぐッッ……!!」キーン!!
女「!……お前……この前の」ハァハァ
DQN2「うっぐ、おおお……!」ブルブル
女「いい加減にしろ……殺すぞ」ドカッ!
DQN2「おぅえっ!! げっほええほ!!」ドサァ
女「消えろ……」ハァハァ
DQN2「っぐ、うぐ……!」ズリズリ……
女「……っぐ……」フラッ……ドサッ……
720:
――翌朝、教室
ワイワイ ガヤガヤ
不良女「(……女のヤツいねぇし。風邪かあのバカ女)」
ガラッ
先生「……緊急連絡だ。昨日、女が病院に運ばれた」
不良女「!」
先生「命に別状はないらしいが、ここの……同じ学校の、生徒に襲われたそうだ」
不良女「(……まさか)」チラ
モブ江「……」
先生「疑いたくないが、他の生徒にも危害が及ぶ可能性がある。犯人の生徒については特定次第、警察に通報する」
不良女「(……まぁ、あたしには関係ねぇし……なにやってんだアイツ……関係ねぇけど)」
モブ江「……くく」
723:
――放課後、喫茶店
マスター「……おう、おう。……わかった。見つけたらキツイのいわしたる。いーや、俺は許さん」
カランカラン……
マスター「おっと、らっしゃい……嬢ちゃんやないか」
不良女「……うっす」
マスター「あぁ、不良の嬢ちゃんや……あぁ、そやな。心配せんでええから、治しとき。ほなまたな」チンッ
不良女「……女、っすか?」
マスター「おう……どこぞのクソガキが襲ってきたそうや。なんや、女ちゃんも恨み買うようなことしとったらしいが……」
不良女「(……あいつらじゃ、ねえだろな……)」
マスター「んで? 今日は客か? バイトか?」
不良女「い、いや……すんません、アイツのいる病院って」
マスター「あぁ、見舞いに行ったるんか。○○病院や、はよ行ったってや」
726:
――○○病院
ガラッ
不良女「……」
祖母「? あらまぁ、不良ちゃん……」
女「……何しに来たの?」
不良女「……ざまぁねぇな。包帯まみれじゃねェか」
女「……元をたどれば誰の仕業かしらね」
不良女「……やっぱあいつらか」
女「襲ってきたのは一人だけどね。金玉蹴り飛ばしたら逃げて行ったわ」
不良女「……」
祖母「不良ちゃん、襲ってきた人のこと知ってるの……?」
不良女「……ごめん」ダッ
女「!」
727:
不良女「あいつら、調子づきやがって……!」prrrr…
DQN3『――もしもし』
不良女「おいボケ。女のヤツ闇討ちしたのテメェか」
DQN3『……俺じゃねぇ。DQN2だよ』
不良女「そいつに言っとけ。アイツはあたしがボコるから、次手ェ出したら豚箱ブチ込むぞってな」
DQN3『いや……今あいつらマジでイっちまってんだよ』
不良女「あぁ?」
DQN3『あいつとDQN1が、女にボコられてからずっと復讐しようとしてたみたいでさ……』
不良女「……!」
DQN3『もうお前も手ェ引いた方がいーぜ。あいつら、不良のこともあんましよく思ってねぇみたいだからよ……』
不良女「うるせぇ」
DQN3『え?』
729:
不良女「余計なことしてみろ。マジで社会的にぶっ殺すぞゴミ共」
DQN3『ちょ、不良――』ブツッ
不良女「……」
不良女「(なにやってんだよあたしは……いい気味じゃねーのかよ……なんでこんな胸糞ワリイんだ)」
………………
――翌日、学校
女「……」ガラッ
女子D「あ、女ちゃん大丈夫!?」
女「えぇ……ごめんなさい、事件になってしまったみたいで」
女子F「怪我ひどいじゃん……無理しちゃだめだよ?」
女「ありがとう……大丈夫……」
不良女「……」
731:
不良女「……おいモブ共」
モブ美「! ふ、不良ちゃん……」
モブ子「……よぉ」
モブ江「なんだい……仲間に入れてほしいわけ?」
不良女「ちげぇよブス共。……DQNの連中煽ったりしたかテメェら」
モブ江「……さぁ。なにがそんなに気になるの?」
不良女「質問に答えろボケ。お前らなんか吹き込んだか。あの女はあたしの獲物だっつってんだろ」
モブ子「……どーすんの?」
モブ江「黙ってな。誰の獲物だとか関係ないだろ、ムカつく奴をどうしようがウチらの勝手だ」
不良女「……テメェ」
734:
(処女膜が喋ってるだと!?)
738:
モブ江「あたしはアンタの脅しはどうでもいいからね。別にアンタに何かしようとしてるわけじゃない、何も問題ないだろ?」
不良女「……」
モブ江「昔のアンタはもっと尖ってたけどな。一々他人に口うるさく言うような奴じゃなかった」
モブ子「確かに。てか、虐めたいならウチらが何やってても関係ないっしょ」
モブ江「もうアンタの言うことはきかない。じゃあな」スタスタ
モブ美「あ、まってよ……!」
不良女「っち……クソ女ども」
モブ江「……もしもし? ああうん……もうやっちゃっていいんじゃないの。もうアイツ完全にダメだし」
モブ子「……いいのかなぁ」
モブ江「DQN共がやることだ。あたしらは手出ししてない」
モブ美「……。……」
742:
――放課後
女「……っ」ガタッ
不良女「……よう」
女「……何?」
不良女「ち、ちょっとツラ貸せよ」
女「……」
不良女「……んだよその目は」
女「用事ならココで言ってくれる? マスターのとこに顔を出さないといけないから」
不良女「だ、だったらそこで言う」
女「……? ホントに何の用?」
不良女「なんでもいいだろが! あたしにツラ貸しとけっつてんだ!」グイグイ
女「ちょっと、痛いから引っ張らないで」
不良女「うるせぇ早くしろボケ!」
747:
――街角の喫茶店
カランカラン……
マスター「お、嬢ちゃん? と女ちゃんやないか。体はもう大丈夫なんか?」
女「……この子に引っ張られてきたところが痛いです」
不良女「そ、それくらい我慢しやがれ」
マスター「アホいうてんと。ほれ、飲みもん入れたるから座っとれ」
女「すみません……で、何の用だったの?」
不良女「あ?」
女「あ? じゃないわよ……なんであんなに急いでたの」
不良女「べ、別に……喉だよ、喉渇いてたんだよ!」
女「……貴女、バカでしょう。知ってるけど。さっさと本当のこと言いなさい。このやり取りもいい加減疲れるわ」
749:
不良女「……前のDQN共」
女「!」
不良女「あいつらがテメェに復讐しようとしてんだと……」
女「それは想像がついてたけど……それが貴女の今の行動とどう関係があるの?」
不良女「な、何でもいいだろボケ! ここなら安全だろが!」
女「……」
不良女「……な、なんだよ」
女「……少し前の貴女からは考えられない行動ね。自分がいじめてた相手を今度は守ろうとするなんて……」
不良女「べ、別に守ってるわけじゃねェし」
女「じゃあなんでついてくるのよ」
不良女「……なんか胸糞ワリイんだよ。他人にそういうことされんのは。テメェはあたしが相手すんだ」
750:
スレタイ回収見ると謎の高揚感がある
755:
女「意図を理解しかねるわ……貴女って、根っからバカなのか天然なのか、子供なのか大人なのか」ハァ
不良女「ンだよ、喧嘩売ってんのか」
女「違うわよ。もういいわ……好きにして頂戴」
不良女「……」
マスター「女ちゃん、このお嬢ちゃんにいじめられとったんか」
不良女「!」
女「……少し前まで、です。今は……」
マスター「複雑な事情か? まぁ、ちゃんと謝ったんなら、ええけどな」
不良女「……いえ」
女「……?」
不良女「その……なんていうか、正直、ここまで人の人生めちゃくちゃにしてるって思わなくて……」
759:
マスター「ふむ……?」
不良女「あ、いや、その……謝ったていうか……なんかもう、どうすりゃいいのかわかんなくて……」
女「……」
不良女「なんかもう……ごめんとしか……ああもう何言ってんだあたしは!?」
女「……バカね」
不良女「あたしは何かしらねェけどアンタと一緒にいるとムカつくんだよ! でもその、今までやったことは悪かったっていうか……!」
マスター「なるほど。ええ子やな、女ちゃん」
女「らしいですね。いじめられてたのは事実ですけど」
不良女「っぐ……だ、だからそれはよ」
女「いいわよ、もう……もういい。貴女の気持ちはなんとなくわかったわ」
不良女「……」
762:
女「心配してくれてどうも。でも大丈夫よ。……幸か不幸か暴力沙汰は慣れっこだし、いざとなったらマスターを呼ぶからね」
マスター「あんまり派手な事案は堪忍やで女ちゃん」
女「さぁ……どうでしょう」
不良女「……か、帰る」ガタッ
女「喉が渇いてたんじゃないの? マスターがジュース入れてくれてるのに」
不良女「……ッ!!」チュー ゴクゴクゴクゴク
マスター「不器用じゃのう」
不良女「っぷ……帰る!」カランカラン……
女「……変な子」
マスター「女ちゃんは優しいのう。ちゃんと許してあげるんか」
女「過去は、過去ですから……あの子は私ほど汚れてないし……」
マスター「……女ちゃんもジュース飲みや。今日はゆっくりしといで」
768:
――夕刻
不良女「(あーもう……何がしてぇんだあたしは)」
prrrr
不良女「(んだよ……あ? モブ美?)」ピッ
モブ美『あ……もしもし不良ちゃーん?』
不良女「何の用だモブ公」
モブ美『ちょ、モブ美だってばぁ……あの、不良ちゃんヤバイんだよ』
不良女「あ? 何が」
モブ美『いや、その……DQNらが』
不良女「……どういう意味だ」
モブ美『えっと、不良ちゃんどこにいるの? あたしちょっとモブ江ちゃんとかと合わない感じでさぁ……』
不良女「……学校の近くの繁華街」
770:
モブ美『マジ? ヤバ?い、じゃあちょっとそっちいっていい? マクドおごって?』
不良女「勝手にしやがれ。ついでに奢らせんなボケ」ブツッ
――喫茶店前
女「すみませんマスター、しばらくお休みもらって……」
マスター「そんな怪我で接客されたらお客も怖がってまうわ。事故や思うて怪我直し」
女「はい……」
ゴロゴロ……
マスター「やれやれ、また雨やな。濡れんうちに帰るんやで」
女「はい。それじゃあ……」
775:
ゴロゴロ……ポツ……ポツ……
不良女「……ったく、雨かよ」
???「……」バッ
不良女「んあ? あ、テメ――ッぐむ!?」グイッ
???「……へへ」
不良女「むう……っぐ! ぅ――」グッタリ
モブ美「あ、不良ちゃんいた……え? え? あれ?」
モブ美「……え、これヤバくない……マジで?」
780:
――???
不良女「――……ぐ……」
DQN1「オラ、起きろこのアバズレ」バシッ!
不良女「って!! ――くぁ、ん、だテメェ……!?」
DQN2「よう不良……ずいぶん丸くなったなテメェ」
不良女「……ッケ、テメェの大層な包帯はあのクソ女にやられたんだろ? いいザマだな」
DQN2「……」ドガッ!!
不良女「!? っぅげほっ、オエッ……!」
DQN1「お前、立場わかってんのか? お前は今から俺らにボコられてレイプされんだよ」
DQN4「おい、マジで不良犯していいの? コイツ親とかヤバいんじゃねーの?」
DQN2「っるせえな! 元はといえばこの野郎がけしかけたからこんなことになってんだ」
DQN1「そもそも前から気にくわねぇんだよこの女は。親の権力だけで偉そうにしやがって」
DQN5「まぁヤれるならなんでもいいべ? つか、金持ちの令嬢だべ? 下半身っべーわマジで
782:
アホの子って可愛いよな
790:
不良女「あの女相手じゃ勝てねェから、弱い方犯して満足ってか? 低脳共が」
DQN2「とりあえず黙っとけよ、オラ」バキッ!
不良女「っぐ! ……ぶぁ」
DQN1「テメェのプライドずたずたにして、その吠え面二度とかけねぇようにしてやる」バチンッ ビィーッ ビリビリ
DQN5「うわ、ナイフで服着るとか興奮すんべ? へっへ」
不良女「……ぜ、ぜってー、殺す」カタカタ
DQN2「は! コイツ震えてやがんの! カワイイじゃね―の、一丁前なのは口だけだろテメェ」
DQN4「んだよ、胸はあんまねーのな」グニッ
不良女「ッ……さ、触んな殺すぞ!」
DQN5「うは、ガチで震えてやんの。たまんねーべ」
DQN1「もういいだろ、さっさと剥いでヤっちまえ」ビリッ
不良女「やっ……! マジでぶっ殺すぞ! 触んな!」ジタバタ
794:
DQN2「黙れっつってんだろが」パァンッ!
不良女「ッ……ぅ……!」ポロポロ
DQN4「おい、泣いてんぞコイツ。やべぇ」
DQN1「俺からだ。お前らすっこんでろ」
不良女「や、めろ……! やめろ、殺すぞ!! ふざけんな!!」ガタガタ
DQN1「オラ、殺してみろやこの状況でよ!」ズボッ!
不良女「ッッッ――!! いった、あああああっくっあ――!!」
DQN5「え、血出てるくね? 処女かよコイツ」
DQN2「流石に金持ちは違うよなぁ? くく……」
DQN1「うお……締まりやべぇ」
不良女「うっく……い、今すぐ、抜けクソ……があっあぐ!」
不良女「(な、んなんだよ……なんなんだよコレ……嫌だよっ……!)」
796:
――ウーウーウー……!
DQN4「……!? え、なんかパトカーの音しねぇ?」
DQN2「あ?」
DQN5「うっそ、マジで? ヤバくね?」
DQN1「んだよ、今ヤり始めたばっかだろうるせぇな」
不良女「うぁ、あ、ぐ、うっぐ……!」
ガチャ! ドカドカ
警官「――いたぞ。女子学生とその他数名……強姦か」
DQN1「え、は? え? あいでっ!!」ガチャン!
不良女「っくあ……! うう……」グタッ……
警官「現行犯だ。他の生徒も拘束するぞ」
DQN2「くそっ、誰だ通報しやがったの! 離せよオラ!」
798:
モブ美ちゃん天使だったけど膜が…
801:
エーホンブヘ ダンシセイトヨンメイ ゴウカンヨウギデ ゲンコウハンタイホ……
モブ美「――ふ、不良ちゃん……?」
不良女「!……く、くんなっ……」ガタガタ
モブ美「こ、これマジでヤバイじゃん……なんか不良ちゃんが連れていかれたっぽいの見たから、ケーサツ呼んだんだよ……」
不良女「……う……ひっく……ううぅ」
警官「キミ、この子の友達? 悪いけど、保護するから署までついてきてくれるかな」
不良女「女……んとこ……連れ、てってくれ……」
警官「……? 女って、友達かね?」
モブ美「お、女って……アイツ?」
不良女「たっ頼むから……助けてっ……ひっぅ……」ポロポロ
809:
――女の家の前
ウーウー……
祖母「ち、ちょっと何事……不良ちゃん!?」
女「……!? 貴女……どうしたのそれ……?」
不良女「……しっぺ返し……だろ」
女「え……?」
不良女「今まで散々最低なことしたから……自分がこの、ザマだよ」
女「……貴女」
不良女「……こ、怖くて……嫌で……」
女「不良」
不良女「あたし、あんなこと、アンタに、ひどいこっと……う、ひう、うううう」
女「……」ギュ
821:
不良女「ごめ……ひっ……ホントにごめん……」
女「もう謝らなくていい。辛かったでしょ。痛かったでしょ」ギュウウウ
不良女「い、痛かった……怖かったぁ……!」ボロボロ
女「……もう大丈夫。大丈夫よ……」ポンポン
モブ美「……なんか、ヤバーい」
女「……居たの」
警官「この子の通報で早く発見できたんです。……事情聴取は、後日の方がよさそうですかね」
女「……そうしていただけると」
不良女「うぅ……」
モブ美「あ、あのさ。不良ちゃん元気になったら……メールしてよ」
不良女「……ありがと……モブ美、助かった」
モブ美「いや、ヤバそうだったし……あ、あたし先帰るね」
825:
………………
――深夜、女の部屋
女「……」
不良女「……」
女「……」
不良女「……なぁ」
女「……何?」
不良女「……アンタ、なんで……こんなに優しいんだよ」
女「そう思う?」
不良女「……あたし、アンタにひどいことしかしてねぇのに……さっきも体、洗ってくれたし……」
女「……『アレ』の辛さは知ってるからね。洗えるうちに洗い流しておかないとダメよ」
不良女「……なんで受け入れられるんだよ。あたし、は、アンタの……」
女「私は……もう取り返しがつかないくらいに汚されてきたわ。洗っても心は綺麗にならないし、もう貴女みたいに穢されて出る涙もない」
845:
不良女「でも……」
女「でも、それ以上に私は奇跡的に救われてきた。理不尽な残酷さに捨てられたのと同じくらいの、理不尽な優しさに救われてきたの」
不良女「……」
女「母親を恨んでも、貴女を恨んでも誰も救われない……だったら、貴女みたいな人を私が救う。それだけ」
不良女「……女」
女「何?」
不良女「今までほんとうにごめんなさい……ありがとう」
女「……気にしないで。もしかしたらあなたは、自分が当然の報いを受けてるなんて考えるかもしれないけど」
不良女「……?」
女「報いなんて……誰かが定めるものじゃないわ。世の中なんて理不尽なことばかりなんだから……」
868:
――数日後、教室
モブ子「DQNのやつら、まとめて退学だとよ。何やらかしたんだよあいつら」
モブ江「……ッチ」
モブ美「……」
ガラッ
不良女「……」
モブ子「げっ、不良……」
モブ美「不良ちゃん!」
不良女「……おいモブ」
モブ江「……なんだ?」
不良女「テメェはあたしとの付き合いはやめるって言ったな」
モブ江「言ったね。それがどうした?」
876:
不良女「あたしも金輪際テメェらとの付き合いはやめる。二度とあたしらに関わるんじゃねぇ」
モブ子「……あたし『ら』?」
モブ江「……」
不良女「話はそれだけだ。あばよクソ女」
モブ美「ふ、不良ちゃん、あたしは?……?」
不良女「勝手にしろ」
モブ美「マジで? じゃ、じゃあモブ江ちゃん、あたしは向こうに……」
モブ江「勝手にしろクソゴミ共!!!」ドガァン!!
モブ子「!!」ビクッ
ガラッ
女「……? 何の音?」
878:
おお、モブ美への態度が戻ってる
879:
斎藤さんみたいな流れだな
891:
モブ江「……」ギロ
女「……」
不良女「……フン」
モブ江「……ムカつくツラ並べやがって。好きにしろ」スタスタ……
モブ子「ちょ……モブ江待ってって……」
モブ美「うわ……やっぱ雰囲気やばいよね」
不良女「知るか。ほっとけ」
女「……モブ美、っていったかしら」
モブ美「え? あ、ああうん」
女「……貴女、私を虐めていたグループにいたわよね?」
モブ美「あ、あははウッケる?……あの時はマジごめんって感じ?」
女「……まぁ、もういいわ」
924:
――放課後、街角の喫茶店
マスター「……お前らはなんや、俺を怒りと心配で営業不能にさせたいんか」
不良女「いえ……」
女「落ち着いてください」
マスター「ボケ落ち着いてられるか! 調子こきよったジャリ共連れてこいや! ケツの穴ヒィヒィいわしたらな気ぃすまんわ!!」
女「今頃は留置所ですから……どっちみちヒィヒィ言ってると思いますよ」
マスター「くそったれ……嬢ちゃん、強く生きるんやで……! 俺がついとるさかい! 肝心な時に役に立てへんで申し訳あらへん……!」グスッ
不良女「い、いや……もう仕方ないですし……」
マスター「それでもやがな! ジュース飲んでいくか! な!? ちょっと待っとれ!」
不良女「……ホントにいい人なんだな」
女「でしょう?」
マスター「ところでそこの新しいのは誰や? 友達か?」
不良女「オマケっす」
モブ美「え、その扱いやばくない? あたしもジュース飲みたいんですけど」
939:
………………
――街角
女「そうだ、ばあちゃんが『いつでも遊びにきていいんだよ』ってさ」
不良女「……うん」
モブ美「なんか不良ちゃんいつもとキャラ違うくね?」
不良女「う、うるせぇ。ちがわねぇよ」
モブ美「うは、ウケる?! ねぇ、どっか遊びにいこーよ」
女「……遊びって何するの?」
不良女「……アンタ、外で遊んだことねぇのかよ」
女「そんなお金ないもの」
モブ美「え、じゃあ奢ってもらえばいいじゃん。女ちゃん超金持ちだし」
不良女「テメェは金目当てかブス」
モブ美「え?違うって?」
954:
不良女「……奢ってやる。マクド行こうぜ」
女「……行ったことないわ」
モブ美「え?超美味しいよ?」
不良女「どこでもいいよ。あたしが女に遊び方教えてやる」
女「……」
不良女「……んだよ」
女「変わったね。不良」
不良女「……っけ」
モブ美「不良ちゃんなんか変えたの? あ、なんか顔赤?い。チーク?」
不良女「っせーな。とっとといくぞツラ貸せ」グイッ
女「……」クス
おわり
973:
>>954

ROMってたけど面白かったよ
974:
よく完結したと思う
乙!!
981:
終わっちまった…
おつ
100

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