士郎「最近、セイバーたちが居間でよく居眠りしてるんだよな」back

士郎「最近、セイバーたちが居間でよく居眠りしてるんだよな」


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1:
リビング
セイバー「先日、不覚にも居間で睡魔に襲われまして、居眠りをしてしまいました」
ライダー「あなた、それでもサーヴァントですか?」
セイバー「そのとき衛宮邸に危険はありませんでしたから、問題ありません」
ライダー「そういうことではないのですが」
セイバー「ふと、体が浮き上がるような気がしたので目を開けて見ると、シロウが私を抱かれていたのです」
ライダー「……!」
セイバー「寝室に運ぼうとしてくれたようなのですが、羞恥心からシロウには強い言葉を使ってしまって」
ライダー「……ああ、そうですか」
セイバー「すぐに謝罪はしたのですが、シロウは気を悪くしていないか心配で……」
ライダー「いいですね。小柄な人は。そういうことをしてもらえるのですから」
セイバー「騎士としては恥ずべきことです。負傷もしていないのに抱き上げられるというのは」
ライダー「それで、貴方はどのように眠っていたのですか?」
3:
>>1
セイバー「ふと、体が浮き上がるような気がしたので目を開けて見ると、シロウが私を抱かれていたのです」

セイバー「ふと、体が浮き上がるような気がしたので目を開けて見ると、シロウが私を抱いていたのです」
104:
>>3
あなたを犯人ですのオマージュかと思ったわ
8:
セイバー「どのようにというのは?」
ライダー「そのときの状況に決まっているではありませんか」
セイバー「あのときは少し気を緩めていましたので……。テーブルに突っ伏して眠っていました」
ライダー「それで、シロウが帰ってきて、貴方を抱き上げたと?」
セイバー「そういうことになりますね」
ライダー「……」
セイバー「どうかしましたか?」
ライダー「いえ、貴方はやはり少し抜けていると思いまして」
セイバー「む。いくら同居の仲とはいえ、聞き捨てなりません」
ライダー「失礼しました」
セイバー「そろそろ見回りの時間ですね」
ライダー「お気をつけて」
セイバー「衛宮邸の平和は私が守りますから」キリッ
ライダー「お願いします」
10:
ライダー「……」
士郎「ただいまー」ガラッ
ライダー「……」
士郎「ライダー? 寝てるのか?」ユサユサ
ライダー「……」
士郎「珍しいな。ライダーが居眠りなんて……」
ライダー「……」
士郎「……」
ライダー「……」ドキドキ
セイバー「――お帰りなさい、シロウ」
士郎「セイバー。見回りご苦労さま」
セイバー「いえ、これが私の務めですから」
士郎「それよりライダーが――」
ライダー「おかえりなさい、セイバー、シロウ」
士郎「あれ? ライダー、起きてたのか?」
12:
ライダー「はい」
士郎「なんだ、てっきり居眠りをしてるもんだと」
ライダー「セイバーのように睡眠は必要ということでもありませんので」
セイバー「なんですか、それは」
士郎「まぁまぁ。それじゃ、俺は夕食の準備をするから」
セイバー「お願いします」
ライダー「……」
セイバー「……寝ていたのですか?」
ライダー「何を言い出すのですか? そんなことあるわけがないでしょう」
セイバー「そうですね。貴女に限ってそのような失態を犯すとは思えません」
ライダー「はい」
セイバー「では……私は……」
ライダー「セイバー? 何の真似ですか?」
セイバー「すぅ……すぅ……」
ライダー「……」
15:
士郎「そうだ。セイバー、今日のおかず――あれ?」
セイバー「すぅ……すぅ……」
ライダー「シロウ……」
士郎「なんだ、寝ちゃったのか、セイバー」
ライダー「いえ、起きていると思います」
士郎「セイバー? 起きてるのか?」
セイバー「すぅ……すぅ……」
士郎「見回りで疲れたのかな?」
ライダー「そんなはずは……」
士郎「ここで寝かしとくわけにもいかないし……よっと」グイッ
ライダー「あ……」
士郎「セイバーを寝室に運んでくる」
セイバー「すぅ……すぅ……」ギュッ
ライダー「はい……」
士郎「そういえば、前もセイバーは居間で寝てたよな。疲れが溜まってるのか……?」
19:
士郎「――さてと、メシの準備するか」
ライダー「シロウ」
士郎「どうした?」
ライダー「彼女を抱き上げて寝室に運ぶ必要性があるのでしょうか?」
士郎「いや、セイバーが恥ずかしい思いをするだろ? 遠坂とかに見つかったら何を言われるか分からないし」
ライダー「その場で起こしてしまえばいいのでは?」
士郎「気持ちよさそうに寝ている女の子をわざわざ起こすのは気が引けるからな」
ライダー「……そうですか」
士郎「ああ、そうだ。なにか夕食のメニューで希望があったら言ってくれ」
ライダー「いえ、ありません」
士郎「そっか。なら、少し待っててくれ」
ライダー「はい」
士郎「ふんふーん」
ライダー「……」
ライダー「……すぅ……すぅ……」
22:
士郎「よっと」
ライダー「……すぅ……すぅ……」
ライダー「……」
ライダー「……」チラッ
桜「……」
ライダー「ひっ!!」ビクッ
桜「おはよう、ライダー」
ライダー「さ、サクラ……おかえりなさい……」
桜「どうしたの? アルバイトの疲れで眠たくなったの?」
ライダー「いえ……その……」
桜「まさかとは思うけど、居眠りして隙だらけアピールを先輩に……」
ライダー「滅相もありません。ほんの少し気を緩めてしまっただけです」
桜「そう。――せんぱぁーい。お手伝いしまーすっ」テテテッ
士郎「いいよ。桜はゆっくりしててくれ」
ライダー「……」
26:
大河「しろー、おかわりっ!」
士郎「はいはい。セイバーは?」
セイバー「頂きます」
ライダー「……」
桜「姉さん、おかわりはどうします?」
凛「ああ、私はいいわ」
士郎「ダイエットか?」
凛「衛宮くん? 女の子にする質問かしら、それ」
士郎「わ、わるい」
セイバー「リンは自己管理が徹底していますからね。余計な脂肪などつけないでしょう」
凛「ありがとう、セイバー。衛宮くんでも軽々持ち上げられると思うけど?」
士郎「だろうな。というか、遠坂ぐらい持ち上げられないと鍛えている意味がないし」
凛「あら、それはいつか私を抱き上げてくれるってこと?」
士郎「あ、いや……そういうわけじゃ……」
ライダー「……」
27:
このライダーには報われてほしい
28:
ライダーかわいすぎだろ
31:
大河「それじゃ! またねー!!」
士郎「藤ねえ、気をつけてな」
桜「先輩。洗い物は私がしておきますね」
士郎「そうか。なら、俺は風呂の準備でもするかな」
凛「……それ、ホントなの?」
セイバー「はい。ついうっかり居間で寝てしまって。既に二度もシロウに抱かれてしまいました」
凛「ふぅん」
ライダー「……」
セイバー「これからは気を引き締めなければなりません」キリッ
凛「それより、セイバー? そろそろ見回りの時間じゃないの?」
セイバー「そうですね。行ってきます」
凛「はぁい。よろしくぅー」
凛「ふわぁ……あー、ねむたくなってきちゃったー」
ライダー「リン。睡眠をとるのなら部屋に戻ったほうが良いですよ」
凛「ん? ああ、そうね。そうするわ」
32:
桜「はぁー。洗い物終了っと」
ライダー「お疲れ様です」
桜「あれ? 先輩、まだ戻ってきてないの?」
ライダー「そういえば湯殿の準備にしては遅いですね」
桜「ちょっと様子でも見に行こうかな」
ライダー「私が行って来ましょう」
桜「どうして?」
ライダー「……いえ、サクラが行ってください」
桜「うんっ」テテッ
ライダー「……」
士郎「――悪い。桜、ライダー。お待たせ」
桜「あ、先輩。遅かったですね。どうかしたんですか?」
士郎「どうしたもこうしたも、遠坂が廊下で寝ててさ。起きないから部屋まで運んできたんだ」
桜「……そうですか。大変でしたね、先輩」
ライダー「……」
35:
数時間後 廊下
士郎「ふぅー。さっぱりした」
士郎(ライダーから借りた本でも読んで寝ようかな。いや、結構面白くて読み出したら止まらなくなるからな……)
士郎「ん?」
ライダー「……」
士郎「ライダー? どうしたんだ?」
ライダー「……すぅ……すぅ……」
士郎「寝てるのか?」
ライダー「……」コクッ
士郎「参ったな……。遠坂といいセイバーといい。どうして部屋以外で居眠りを……。そんなだらしのないことをするような性格じゃないと思ってたんだけどな」
ライダー「すぅ……すぅ……」
士郎「ライダー? ライダー? こんなところで寝てちゃダメだ」ユサユサ
ライダー「すぅ……すぅ……」
士郎「ダメか……。運ぶしかないか」
ライダー「……」ドキドキ
38:
士郎「よし」
ライダー「……」ドキドキ
士郎「ふっ」グイッ
ライダー「おぉ」ビクッ
士郎「ライダー?」
ライダー「……すぅ……すぅ……」
士郎「起きてるのか?」
ライダー「……」
士郎「ライダー。あまり困らせないでくれ」
ライダー「……申し訳ありません」
士郎「なんで寝た振りをしてたんだ?」
ライダー「……気を緩めていただけです」
士郎「大丈夫か? 体調が悪いとかじゃないよな?」
ライダー「はい。ご心配をおかけしました。おやすみなさい」スタスタ
士郎「あ、ああ、おやすみ」
40:
翌日 リビング
ライダー「……」
凛「ちょっと、きいてよー、桜ぁ」
桜「どうしたんですか?」
凛「昨日さ、うっかり廊下で寝ちゃって。そしたら、士郎が私を抱きかかえてちゃったの。どう思う?」
桜「……」
凛「寝ているからって何でもしていいとか勘違いしてるんじゃないかしらね、あいつ」
桜「姉さん。狸寝入りしていた、とかじゃないですよね?」
凛「なんでそう思うの?」
桜「あの姉さんが、品行方正な姉さんが、才色兼備な姉さんが、廊下で寝てしまうなんて考えられないからです」
凛「ありがとう、褒めてくれて。でもね、私だって完璧じゃないの。ときには失敗だってするわ」
桜「へえ……」
凛「というか、桜も居眠りしてたら、どっかの力持ちが抱き上げてくれるんじゃないの?」
桜「えー? それはないですよー。もー、姉さんったらー」
ライダー「はぁ……」
41:
士郎「ただいまー」
ライダー「おかえりなさい。シロウ」
桜「すぅ……すぅ……」
士郎「セイバーと遠坂は?」グイッ
桜「……すぅ……すぅ……」ギュゥゥ
ライダー「セイバーは見回り、リンは自宅に戻ったようです」
士郎「そっか」
ライダー「あの」
士郎「どうした?」
ライダー「いえ……。桜を当然のように抱き上げたのがすこし意外だったので……」
士郎「ああ。桜は昔から居間で寝ていることが多かったからな。殆ど条件反射みたいなもんだ」
ライダー「……」
桜「ふふ……だぁーすきぃ……せんぱぁい……」ギュゥゥ
士郎「ライダーが桜を部屋まで運んでくれるなら、それでもいいんだけど」
ライダー「いえ、シロウが運ぶべきでしょう」
45:
ライダー「……」
大河「んごぉー……んごぉー……」
士郎「藤ねえ。起きろ」
大河「もう、だめぇ……いやぁ……ぬがさないでぇ……」
士郎「藤ねえ!!!!」
大河「わぁ!! なに!?」
士郎「そろそろ帰らないといけないだろ。桜も待ってるし」
大河「ああ!! はいはい!! 桜ちゃん、帰りましょう!! 送っていくわ!!」
桜「はい。では、先輩。また明日」
士郎「ああ」
桜「今日はとってもよかったですよ?」
士郎「え?」
桜「うふふ」
士郎「なんだ?」
ライダー「……シロウ。少しお話が」
46:
セイバー「すぅ……すぅ……」
士郎「またセイバーは……。悪い、ライダー。話は――」
ライダー「待ってください」
士郎「どうした?」
ライダー「セイバーは熟睡していると思いますか?」
士郎「寝てるんじゃないか?」
ライダー「シロウを困らせるために寝た振りをしている可能性もあるはずです」
セイバー「……」ピクッ
士郎「セイバー? 起きてるのか?」
セイバー「……ぐぅ……ぐぅ……」
士郎「やっぱり寝てるみたいだ」
ライダー「いつもいつもシロウばかりにこのような労働を任せるのは忍びないので、私が運びます」
セイバー「……」ピクッ
士郎「いいのか?」
ライダー「勿論です」
47:
ライダー「ふっ」グイッ
セイバー「……」
士郎「それじゃあ、頼むな」
ライダー「はい」
セイバー「……」
ライダー「……なるほど。貴方ほどの体重ならば、シロウでもさほど力を込めずとも抱き上げることができる。私の時は無駄に力が……」
セイバー「降ろせ。不敬だ」
ライダー「隙を見せ続けた貴方に非があるはずです」
セイバー「いいから降ろせ!!」
ライダー「どうぞ」
セイバー「全く……」
ライダー「シロウを困らせて楽しいですか?」
セイバー「私を抱きかかえて運ぶ程度、シロウならば呼吸をするよりも簡単でしょう。困りはしないはずです」
ライダー「自慢ですか? いいですね。体型に恵まれた方は」
セイバー「恵まれているのは貴方のほうでしょう。私は華奢すぎますし」
50:
ライダー「……」ジャラララ
セイバー「武器を取るとは……!!」
ライダー「それ以上の発言は宣戦布告と受け取ります」
セイバー「どういうことですか?」
ライダー「私だって……夢くらいはあるのです……」
セイバー「夢?」
ライダー「このような体でなければ……このような……!!」
セイバー「ライダー……?」
ライダー「くっ……」
セイバー「あの……」
ライダー「貴方が……にくい……」
セイバー「何を言い出すのですか!?」
ライダー「おやすみなさいっ!!」ダダダッ
セイバー「ライダー!!」
セイバー「一体、ライダーに何が……」
57:
翌日 リビング
凛「ライダーがそんな面白いことを言ったの?」
セイバー「はい。あのようなライダーをみたのは初めてなので、困惑しました」
凛「夢って……男に抱き上げてほしいとか、そういうのかしら?」
セイバー「まさか。女神でもあった彼女がそのような俗物的な願いを持っているとは思えません」
凛「でも、もしそれならイリヤに頼んでバーサーカー辺りに抱き上げてもらうのが一番よね」
セイバー「そうですね。ライダーを抱きあげることができる殿方は中々いませんし」
『ただいまー』
凛「士郎……! 帰ってきたか……!!」
セイバー「ふわぁ……」
凛「すぅ……すぅ……」
士郎「おーい、だれか――」ガラッ
セイバー「すぅ……すぅ……」
凛「……ふぅぅん……すぅ……すぅ……」
士郎「なんでさ? なんでみんな、居間で寝るんだ……?」
60:
ライダー「所詮は夢……。でも、サクラやセイバーのいない隙に居眠りをし続ければ……いつかは……」
ライダー「けれど、体重の問題も……。いや、シロウも男の子ですから、私ぐらい……こう、軽く……」
ライダー「ただいま戻りました」ガラッ
士郎「ライダー。おかえり」
凛「……」
セイバー「……」
ライダー「シロウ、どうかしたのですか? 異様な雰囲気ですが」
士郎「ああ、少し注意したんだ」
ライダー「注意ですか?」
士郎「最近、セイバーたちがよく居間で居眠りしているから、ダメだぞって」
ライダー「え……」
士郎「遠坂もセイバーもなるべく居眠りしないように心がけてくれ。体調崩さないか心配になるからさ」
凛「わかったわよ」
セイバー「申し訳ありませんでした」
ライダー「そんな……」
61:
別の日 廊下
ライダー「居間で眠ることが厳罰化してしまった以上……私はどうしたら……。廊下で眠るのもシロウに咎められてしまったし……」
ライダー「サクラのように自由にできてたらいいのですが……」
イリヤ「……」タタタッ
ライダー「あれは……」
イリヤ「……」ガラッ
ライダー「イリヤスフィール?」
イリヤ「ん? なーんだ。ライダーだったの。驚かせないでよね」
ライダー「シロウの部屋に用事でも?」
イリヤ「ええ。大事な用事よ」
ライダー「何があるのですか?」
イリヤ「これからシロウに抱かれるの」
ライダー「……どういうことですか?」
イリヤ「ここで寝ていれば、シロウは抱いてくれるのよ。強く、優しくリビングまで運んでくれるわ」
ライダー「……」
64:
士郎「イリヤー。どこだー?」
士郎「また、俺の部屋か?」ガラッ
士郎「ん?」
イリヤ「すぅ……すぅ……」
ライダー「……すぅ……すぅ……」
士郎「……」
士郎「えーと……。掛けるものを……」
士郎「ライダーはこれでいいか」
ライダー「……」
士郎「イリヤ、起きろ。ここでイリヤが寝てたらまた俺がセラに怒られるだろ」
イリヤ「やぁー。だっこぉ」
士郎「またか……。自分で歩けばいいだろ」グイッ
イリヤ「シロウのだっこがいいんだもんっ」
士郎「悪い気はしないけどな」
ライダー「……」
67:
道場
セイバー「道場の異常は……」
ライダー「……」
セイバー「ライダー? どうしたのですか? 道場の隅で膝を抱えて……」
ライダー「セイバー……待っていました……」
セイバー「な、なんですか?」
ライダー「さあ!! 私の四肢を切り落としてください!!!」
セイバー「何を言い出すのですか!?」
ライダー「この四肢さえなければ体重も大幅に減るはずです!!」
セイバー「ライダー!! 落ち着いてください!!」
ライダー「この際です。胸も切り落としてくれてかまいません」
セイバー「気を確かに!!」
ライダー「手足がなければ、さすがに私を抱き上げざるを得ないでしょう?」
セイバー「ライダー!! どうしてしまったのですか!!」
ライダー「セイバーがやらないというなら、自分で!!!」ジャララララ
71:
セイバー「待て!!」ギィィン
ライダー「邪魔をしないでください……!!」
セイバー「貴方がそこまで追い詰められるとは、何があったのですか?」
ライダー「貴方ではいくら時間をかけても分からないことですよ」
セイバー「話してみてください。私とて騎士王です。貸せる知識、知恵はある」
ライダー「……抱かれたい」
セイバー「は?」
ライダー「私だって……抱かれたい……」ガクッ
セイバー「……わかりました」
ライダー「……え?」
セイバー「ライダー……今は心を休めてください……」ギュッ
ライダー「そうじゃありません」
セイバー「しかし、抱かれたいと言ったではありませんか」
ライダー「だ、抱きかかえてもらいたいんです……男の人に……」モジモジ
セイバー「何故?」
72:
ライダー「何故……? 気づいていないのですね」
セイバー「どういう意味ですか?」
ライダー「貴方も、リンも、サクラも、イリヤスフィールも、タイガ……はしりませんが、衛宮邸に出入りする者たちは皆、シロウに抱きかかえられたことがある」
ライダー「それも一度や二度でなく。何度もです」
セイバー「む……」
ライダー「なのに……私は……ゼロです……。未遂はありましたけど」
セイバー「ライダーがシロウを抱きかかえるのはわかりますが、逆というのはちょっと――」
ライダー「……」ジャララララ
セイバー「分かりました。なんとかしましょう」
ライダー「協力、してくれるのですか?」
セイバー「同居人が困っているのなら手ぐらいは貸します。現在は少なくとも敵ではありませんし」
ライダー「セイバー……。どうやら私は貴方のことをまだ誤解していた部分があったようです」
セイバー「どのような誤解をしていたのかは問わないでおきます。では、リンとイリヤスフィールに相談をしましょう」
ライダー「何故ですか!? 公言してほしくはないのですが」
セイバー「二人の協力は不可欠です。そこは理解して頂きたい」
73:
凛「へー、そうなんだー。ふぅーん。ライダーがねえ。へぇー」
ライダー「……」
イリヤ「ま、ライダーみたいに背が高くて、スタイル抜群の女を抱きかかえるなんて難しいもんね」
セイバー「はい。なので二人に相談をしました」
凛「オッケー。ライダーは桜のことでもお礼をしなきゃと思ってたし、ばっちり手助けしてあげるわ」
ライダー「リン……!」
イリヤ「それぐらいのことなら、私に任せなさい」
ライダー「イリヤスフィール……!!」
セイバー「よかったですね、ライダー」
ライダー「はいっ」
凛「じゃ、ちょっと待ってて」
イリヤ「すぐに戻ってくるから」
ライダー「はい!」
セイバー「ライダーの夢とやらもこれで成就しますね」
ライダー「この時代に居る事ができて、私は幸せです」
76:
イリヤ「――ライダー。こっちに来て」
ライダー「どのようにシロウを説得――」
バーサーカー「……」
ライダー「え……」
イリヤ「さ、バーサーカー。紳士的に扱ってあげなさい」パチンッ
バーサーカー「■■■■■■―――!!!!!」
ライダー「どういうことですか!?」
イリヤ「抱いてほしかったんでしょ? バーサーカーならライダーぐらいヒョイってもちあげちゃうんだから」
バーサーカー「■■■■■■―――!!!!!」
ライダー「狂人に抱かれたら私は……!!」
イリヤ「心配ないわ。バーサーカーは紳士ですもの。レディの扱いぐらい心得ているわ」
ライダー「しかし!!」
バーサーカー「■■■■■■―――!!!!!」グイッ
ライダー「がっ……ぁ……ぁ……!!!」
バーサーカー「■■■■■■―――!!!!!」ググググッ
78:
ライダー(――私は……どうなって……?)
ライダー(確か……バーサーカーに……抱きかかえられて……それから……)
「大丈夫か、ライダー? しっかりしろ」
ライダー(ん……この感じは……? 誰かに……抱かれている……?)
「おい。意識はあるのか? ライダー?」
ライダー(し、ろう……?)
アーチャー「ライダー。しっかりするんだ」
ライダー「……」
凛「あ、気がついた?」
イリヤ「ごめんなさい、ライダー。バーサーカーったら私以外の女性を抱くのは緊張しちゃうんですって」
バーサーカー「……」
イリヤ「バーサーカーも謝りなさい」
バーサーカー「……」ペコッ
ライダー「それはいいのですが……。あの、とりあえず、降ろしてください」
アーチャー「ああ。これはすまなかったな」
81:
セイバー「ですが、これでライダーの願望も――」
ライダー「はぁ……」
イリヤ「膝抱えちゃったわね」
凛「なによ。バーサーカーはともかく、アーチャーはまぁまぁいけてるし、妥協点でしょ」
イリヤ「なによ!! バーサーカーだってかっこいいでしょ!!」
バーサーカー「……」
アーチャー「妥協点か」
セイバー「ライダー、ではランサーのほうがよかったのですか?」
ライダー「……」
イリヤ「もう、なによ。折角協力してあげたのに!」
凛「もしかしてライダーには本命の相手でもいるの?」
ライダー「……」コクッ
セイバー「それは……」
アーチャー「衛宮士郎だろ」
ライダー「な、何故……!」
83:
アーチャー「他に誰が居る」
ライダー「セイバー……」
セイバー「私は喋っていません」
凛「ああ、そうなの」
イリヤ「ふぅーん」
ライダー「……」
凛「でも、衛宮くんが抱えられるのは桜が限界じゃないのー?」
イリヤ「きっとそうねー」
セイバー「二人とも。シロウを見縊ってはいけない。ライダーぐらい余裕で――」
アーチャー「やめておけ」
ライダー「……」
アーチャー「身長差がありすぎる。実行後、惨めな姿を晒すだけだ」
ライダー「……そうですか」
セイバー「アーチャー。何もそこまで言うことは」
アーチャー「現実は知っておいた方が良い。自身のためだ」
111:
リビング
ライダー「……」
大河「おっす。士郎、いる?」
ライダー「外出しています」
大河「あー、バイトの日かぁー。なら、イリヤちゃんを回収して帰りますか」
ライダー「……」
大河「どうかしたの?」
ライダー「はい?」
大河「なんだが、元気がないみたいだから」
ライダー「そう見えますか?」
大河「ええ」
ライダー「……タイガは男性に抱き上げられたとはありますか?」
大河「え? えーと……うん、あるある」
ライダー「それは居眠りをしていてですか?」
大河「え? いや、剣道の稽古中に熱中症で倒れたときとか? 白いヘルメットかぶった人に」
113:
ライダー「そうですか……。タイガも体格的には抱き上げられてもおかしくありませんからね」
大河「なにかったの?」
ライダー「……」
大河「困ったことがあるなら私に話してみてください。これでも教師なんで、相談されることには慣れてますから」
ライダー「もういいのです。知人にもやめておけといわれたばかりなので」
大河「そんなこと言わずに」
ライダー「構わないでください」
大河「でも」
ライダー「ならば、貴方は身長を低くする方法をご存知ですか?」
大河「え?」
ライダー「今すぐに10センチ、いや、15センチも身長を下げる方法を知っているのですか?」
大河「あ、あの……」
ライダー「誰にも私の気持ちなんて、分からないのです。抱き上げられたことのある人には……」
大河「ちょっと……」
ライダー「わからないんですっ!!」ダダダッ
115:
セイバー「タイガもライダーからその話を?」
大河「ええ。あんなに感情的になっているところは初めて見た」
凛「重症ね」
イリヤ「そんなに抱き上げてほしいなら直接言えばいいのに」
セイバー「ライダーの性格上、それは言えないのでしょう」
凛「桜の目もあるしね」
大河「それにしても士郎は居眠りしている人を抱きかかえる癖でもあるの?」
セイバー「いえ、眠っている人の体調を案じての行為かと」
大河「おっかしいなぁ。私はいつも叩き起こされるだけなのに」
セイバー「この際、シロウに私から頼んでおいたほうが良いでしょうか」
凛「ライダーが困るだけじゃない? 急に士郎がやってきて「今から抱き上げるから」なんて言われても、普通なら拒否するでしょ」
イリヤ「私は抱かれちゃうけどね」
セイバー「やはり、飽く迄も自然にですか……」
大河「ここで寝てればいいの? それだけで士郎がお姫様だっこしてくれるのね? おやすみー」
イリヤ「バーサーカーとアーチャーにだっこされたからいいじゃない。ライダーも強欲ね」
119:
セイバー「リン。思いついたことがあるのですが」
凛「なになに?」
セイバー「先ほどタイガが話してくれた内容の中に、熱中症で倒れ抱き上げれたというものがありました」
凛「ああ。藤村先生の数少ない男とのエピソードね」
イリヤ「それが仕事中の救急隊員っていうのがタイガらしいけど」
セイバー「現在、居間での居眠りはシロウからの訓告もあり、状況としては困難です。それ相応の理由がなければなりません」
凛「その理由をつくるってこと?」
セイバー「はい」
凛「ライダーはこっちの意図がわかればきっと拒むわよ?」
セイバー「拒めないようにすればいいだけです」
凛「拒否できず、自然に抱き上げられる状況って……」
セイバー「私が経験したことですが、魔力もなく、歩くのも辛い状態のとき、バーサーカーから追われることになった際、シロウは私を抱き上げ森を疾走してくれました」
凛「あー、あった、あった」
イリヤ「なによ。恨みでもあるの?」
セイバー「あのときとほぼ同じ状況をつくれば、あるいは……」
120:
士郎「ただいまー」ガラッ
大河「すぅ……すぅ……」
士郎「藤ねえ。イリヤを連れて帰るんじゃなかったのか?」
大河「あぁ……シロウ……ほらぁ……みてぇ……」
士郎「どんな夢を見てるんだ……」
大河「でへへへ……すぅ……」
士郎「ここで寝られても邪魔だし、客間に運ぶか」グイッ
大河「すぅ……すぅ……」
士郎「それにしてもセイバーたちがいないな……」
士郎「もう寝たのかな?」
大河「しろぉ……おやつぅ……」
士郎「はいはい」
大河「すぅ……すぅ……」
士郎「あと1時間したら起こすからな、藤ねえ」
大河「あぃ……」
121:

ライダー「……」
ライダー「殺気を感じたのですが……。気のせいでしょうか……」
ライダー「いや。サーヴァントである私がそのような間違いを犯すなど……」
イリヤ「――そうよ、ライダー。貴方の判断は正しいわ」
ライダー「なに……」
バーサーカー「……」
イリヤ「ふふ……。ごきげんよう。今宵の星空は一段と輝いているわ。その中に貴方も入ることになるなんて、とってもロマンチックね」
ライダー「どういう意味でしょうか?」ジャラララ
イリヤ「貴方を殺す理由が出来たってことよ」
ライダー「……!」
イリヤ「――やっちゃえ!! バーサーカー!!!」
バーサーカー「■■■■■■―――!!!!」ブゥン!!!
ライダー「くっ!! 本気のようですね」
イリヤ「当然でしょ?」
123:
ライダー「ならば、こちらも全力を賭して挑みましょう」
バーサーカー「■■■■■■―――!!!!」
ライダー「はぁぁぁ!!!」
バーサーカー「……」バキィ
ライダー「ぁう!?」
イリヤ「もう終わり?」
ライダー「ま、まだです……!! ベルレ――」
バーサーカー「■■■■■■―――!!!!」
ライダー「フォーン!!!」ゴォォォ
バーサーカー「……」ペシッ
ライダー「ずっ……!!?」
イリヤ「無様ね」
ライダー「ぐ……うぅ……この場にサクラがいなくて……よかった。サクラを庇いながらでは、本気を出せませんからね。行きます!!! はぁぁぁ!!!」
バーサーカー「……」ドゴォ
ライダー「はぅ!?」
126:
イリヤ「どうやらはっきりと貴方とバーサーカーの差が出てしまったみたいね」
ライダー「くっ……まだ……やれます……」
イリヤ「もういいわ。貴方、セイバーに四肢を切り落として欲しいって願ったそうね」
ライダー「……!」
イリヤ「貴方みたいな人形はいらないけど、壊して欲しいなら、脳が蕩けちゃうまで壊して、あ、げ、る」
ライダー「サクラ……!! 私がいなくなっても……強く……生きて――」
イリヤ「バラバラにしちゃえ!! バーサーカー!!!」
バーサーカー「■■■■■■―――!!!!」
ライダー「……っ」
アーチャー「そこまでだ」
バーサーカー「……」
ライダー「……え?」
セイバー「イリヤスフィール。気が違ってしまいましたか?」
アーチャー「静寂の夜に獣の慟哭は似つかわしくないな」
ライダー「セイバー……アーチャー……」
127:
士郎「……」ペラッ
士郎「お。もうこんな時間か。やっぱりライダーから本、面白いな。時間を忘れる」
士郎「そろそろ藤ねえを起こして……」
凛「士郎!!」ガラッ
士郎「どうした?」
凛「庭が大変なことになってるの!!」
士郎「庭が?」
凛「はやくきて!!」
士郎「な、なにがあったんだ?」
凛「見ればわかるから!!」
士郎「一体――」
バーサーカー「……」
セイバー「さぁ、私が相手だ!!」
アーチャー「かかってくるがいい」
士郎「な、なんでさ!?」
129:
イリヤ「シロウだ」
士郎「イリヤ!! これはなんだ!?」
ライダー「シロウ……はなれて……」
士郎「ライダー!? ボロボロじゃないか!! 大丈夫か!?」
ライダー「こ、ここは……危険です……」
士郎「でも……!!」
凛「セイバー! アーチャー!! 私たちが逃げる時間を稼いで!!」
セイバー「はい」
士郎「遠坂!! 相手はイリヤなんだぞ!?」
凛「死にたいの?」
士郎「まずはどうしてこんなことをしたのか理由をきかないとダメだろ!?」
凛「イリヤに理由なんてないわ。きっと」
士郎「なんでそう決め付けるんだ!?」
凛「とにかく逃げるの!! ほら、ライダーを運んで、士郎!! 私の家まで行くわよ!!」
士郎「で、でも……!!」
130:
ライダー「いえ……まだ、動けます……。お二人だけで逃げてください……」
凛「無茶いわないで!」
バーサーカー「……」ペシッ
ライダー「がぁっ!?」
セイバー「しまった!!」
アーチャー「おのれ!! 一番の手負いを襲うとは!! 外道に落ちたか!! イリヤ!!」
イリヤ「ふんふふーん」
ライダー「ぁ……ぁ……」ピクッピクッ
凛「ほら、もう運ばなきゃダメでしょ? 行くわよ、士郎」
士郎「……わ、わかった」
アーチャー「ところで凛。――時間を稼ぐのはいいが、別にアレを倒してしまっても構わんのだろう?」
凛「……え、ええ!! もう生意気な口がきけないぐらいにしちゃって!!」
アーチャー「了解した」
セイバー「いきましょう」
士郎「……」
132:
イリヤ「なによ!! なによ!! バーサーカー!! 本気でやりなさい!!!」
バーサーカー「■■■■■■―――!!!!」
セイバー「はぁぁぁ!!!」
アーチャー「せぇい!!」
凛「ほら、士郎。ライダーを抱えてあげて」
ライダー「うぅ……」
士郎「バーサーカーから逃げるんだろ? 俺が抱えたら却って遅くなる。遠坂、ライダーの足をもってくれ」
凛「え?」
士郎「俺は頭をほうを持つから」
凛「いや……それは……」
士郎「はやくっ!!」
凛「は、はい」グイッ
士郎「よし」グイッ
ライダー「ぅぅ……」
士郎「いくぞ。いち、に。いち、に」
138:
遠坂邸 リビング
士郎「ライダーは大丈夫か?」
凛「もう落ち着いたわ」
士郎「それはよかった」
凛「でも、士郎? 士郎一人でライダーを抱きかかえても別に問題はなかったんじゃない?」
士郎「なんでさ? 二人で運んだほうが早いだろ」
凛「それはそうもしれないんだけど」
士郎「でも、不思議だな」
凛「なにが?」
士郎「セイバー、アーチャー、ライダーがいるのに、遠坂が退却を選ぶなんて」
凛「だって、相手はバーサーカーだし」
士郎「3人いればバーサーカーを倒すまではいかなくても、退却させるぐらいはできるだろ?」
凛「……」
士郎「いや。確かにバーサーカーとイリヤが相手じゃマスターは足手まといになるし、逃げたほうがいいんだろうけど」
凛「そうよ。私はそれを今、言おうとしたのよ」
140:
ライダー「う……ここは……」
ライダー「私は……バーサーカーと戦って……」
士郎「ライダー、目が覚めたか」
ライダー「シロウ……。どうなったのですか……?」
士郎「ここは遠坂の家だ。傷ついたライダーをここまで運んだ」
ライダー「……シロウが?」
士郎「ああ」
ライダー「抱きかかえて?」
士郎「うん」
ライダー「……」モジモジ
士郎「どうした?」
ライダー「あ、ありがとう……ございます……シロウ……」
士郎「気にするな。それより、どうしてあんなことに?」
ライダー「わかりません。突然、イリヤスフィールが襲い掛かってきたのです」
士郎「イリヤから? そんな馬鹿な……」
142:
ライダー「私もイリヤスフィールがなんの意図もなくあのようなことをするとは思えないのですが……」
士郎「同感だ。それにどうしてライダーなんだ? 俺やセイバーならまだ分からなくもないけど」
ライダー「……」
士郎「分からないな。もう一度、遠坂と話し合ってみるか」
ライダー「あ、あの」
士郎「どうした?」
ライダー「私も話し合いに参加したいのですが……」
士郎「ライダーは安静にしていたほうが」
ライダー「いえ。私が狙われているのですから。参加する義務があると思われます」
士郎「そうか。立てるか?」
ライダー「……いっ」
士郎「ライダー!!」
ライダー「すいません……。足が……」
士郎「それじゃあ、ライダーにとっては屈辱かもしれないけど……。はい、俺の背中にのってくれ」
ライダー「……」ギュッ
145:
士郎「よっと……」
ライダー「重たくないですか?」
士郎「全然」
ライダー「……」ギュッ
『だから、失敗しちゃったんだってば』
士郎「ん?」
ライダー「リンの声ですね……」
士郎「遠坂……?」
凛「そうなの。士郎のバカが一緒に抱えて運んだほうが早いっていって。うん。私も言ったのよ? 別に一人でも大丈夫でしょって」
凛「なのに二人で運んだほうが早いからっていって。いや、もう一回は無理でしょ。アーチャーとセイバーに怪我はないの? そう、ならいいんだけど」
凛「次やるなら、金ピカとかランサーに頼むしかないけど……。あのカレンが素直に協力してくれるとは思えないのよね」
凛「きっと、ライダーが士郎に抱きかかえられている姿を写真におさめたいとか言い出すわ。流石にそれはライダーがかわいそうでしょ?」
凛「え? ああ、バーサーカーからの傷はもう平気よ。見た目が派手なだけで大した傷じゃないし。イリヤも考えてくれていたみたいねー」
士郎「……」
ライダー「あの……わたしは……なにも知りませんでした……」ギュゥゥ
148:
凛「ああ、うん。それじゃあ、頃合を見計らって帰るから。バーサーカーは上手く撃退したって伝えておくわ。うん。おやすみ」ガチャン
凛「ふぅ。さてと、一応カレンに相談を――」
士郎「遠坂」
凛「きゃぁ!! 士郎!! いつのまに!?」
士郎「どういうことだ?」
凛「え……なにが?」
士郎「悪いが全部聞いたぞ、今の会話。誰と喋ってたのかはわからないけど、俺の家にいるだれかだろ?」
凛「……」
士郎「遠坂。どういうことなんだ?」
凛「えっと……」
士郎「答えてくれ」
凛「……」
ライダー「リン……もしかして……私の為に……ですか?」
凛「う、うん……」
ライダー「リン……」
152:
凛「――以上が事のあらましだけど」
士郎「……」
凛「衛宮くん、怒ってる?」
士郎「当たり前だろ。ライダーに一言言ってからからならまだしも、勝手に進めて、しかもライダーに怪我までさせて」
凛「だから、ライダーの怪我も見た目ほど酷くは……」
士郎「ライダーは足を痛めたんだぞ!!」
凛「えー? サーヴァントならその程度すぐに――」
士郎「遠坂。反省してないのか?」
凛「ご、ごめんなさい」
士郎「俺じゃなくてライダーに謝ってくれ。かかなくてもいい恥をかいたんだからな」
ライダー「シロウ……そんな……」
凛「ごめんなさい。ライダー」
ライダー「はい」
士郎「セイバーやアーチャーにも頭を下げさせないといけないな。ライダー、家に戻ろう」
ライダー「は、はい」
156:
凛「衛宮くん、私は……」
士郎「カレンのところに連絡しなくてもいいのか? 騒ぎになってるかもしれないのに」
凛「あぁ……そうね……」
ライダー「……」
士郎「ああ、悪い。ライダーは足を痛めてるのに……。帰るのは明日にするか?」
ライダー「いえ。平気です」
士郎「でも、無理をさせるのも……。そうだ。よっと」グイッ
ライダー「し、シロウ!! なに、を……!!」
士郎「今回の一件も元を辿れば俺がライダーを抱きかかえなかったのが原因だろ? だから、家までライダーを抱えていくよ」
ライダー「し、かし!! 外ですし! まだ外を歩いている人もいるかもしれないのに!!! 誰かに見られたら……!!」
士郎「やっぱり、恥ずかしいよな。なら、やめようか」
ライダー「……」ギュゥゥ
士郎「……髪が地面につかないようにしないとな」
ライダー「はい」
士郎「じゃ、行くか」
157:
士郎「でも、最近居間でみんなが寝るようになったのは、抱きかかえられたかったからなんだな」
ライダー「……」
士郎「気持ちは嬉しいけど、何度もやられたらな……」
ライダー「迷惑ですよね」
士郎「迷惑というか。俺は善意でやっていたからな。狸寝入りだってわかったあとは、流石に抱きかかえるのには躊躇うぞ」
ライダー「何故ですか?」
士郎「ほら、寝ている分にはいいけど、起きてるなら意識しちゃうし」
ライダー「意識とは、なんですか?」
士郎「……聞かないでくれ」
ライダー「言ってください。どのような気分になるのですか?」ギュッ
士郎「ライダー。顔が近いから」
ライダー「抱きかかえているのですから、近くなって当然です」
士郎「……」
ライダー「ほら、言ってください……ふふ……シロウ? 邪な気分になるのですか? 普通、寝ている相手にそういった感情は擡げるものなのですが。シロウは変わっていますね」
士郎「あまり、虐めないでくれ……」
159:
ライダー「……ありがとうございます、シロウ」
士郎「え?」
ライダー「貴方のぬくもりを感じながら帰路につけるとは」
士郎「そうか?」
ライダー「今は羞恥よりも幸福のほうが先にきてしまいますね」
士郎「喜んでくれてるなら何よりだ」
ライダー「あの、シロウ?」
士郎「ん?」
ライダー「今後も居間で居眠りをしてしまうことがあるかもしれませんが、そのときはよろしくお願いします」
士郎「……きちんと寝ているなら、運ぶよ」
ライダー「分かりました。努力します」
士郎「あはは。ライダーもそんな冗談を言うんだな」
ライダー「冗談ではないのですが……」
桜「……」
163:
衛宮邸
士郎「ただいま」
セイバー「おかえりなさい、シロウ」
士郎「セイバー……」
ライダー「……」
カレン「遅かったですね。ライダーと遠回りで帰ってきたのですか?」
士郎「カレン……!? どうして!?」
カレン「遠坂凛から連絡を受けて来ました。全く、ここまでの足労の対価を支払ってもらいたいものです」
ランサー「てめえはずっと俺が抱きかかえていただろうが!!」
カレン「下らない事でサーヴァントの力を行使してほしくありませんね。誰かさんは宝具まで使用したらしいですし」
ライダー「……」
カレン「それにしても。間桐桜は?」
士郎「桜?」
カレン「おかしいですね。召集をかけておいたのですが。ライダーが絡んでいるだけにマスターにも話を聞かねばならないと思って……ふふふ……見かけませんでしたか?」
士郎「いや……。見てないけど……」
166:
カレン「そうですか。残念ですね」
士郎「カレン。今はちょっとセイバーと話がしたいんだけどいいか?」
カレン「ええ、どうぞ」
士郎「セイバー。俺が何をいいたいのか、分かるよな」
セイバー「ライダーを不憫に思い、このようなことを。申し訳ありません、シロウ」
士郎「反省しているならいいよ。イリヤとアーチャーは?」
セイバー「イリヤは眠っています。アーチャーはあのあとすぐに去っていきました」
士郎「アーチャーのやろう……!!」
ライダー「シロウ。もういいですから」
士郎「でも、ライダーが……」
ライダー「私はもう十分に満たされましたから」
士郎「そうか?」
ライダー「はい」
桜「――お邪魔します」ガラッ
士郎「桜、おかえり」
167:
カレン「では、集まったところでお話を――」
桜「ライダー。ちょっと」
ライダー「なんですか?」
桜「いいから」
ライダー「分かりました」
桜「……」
ランサー「なんでもいいけどよ、早く済ませてかえろーぜ」
カレン「そうですね。では、衛宮士郎を叱り付けて、それで責任を取らせたということにしましょうか」
士郎「なんだ?」
カレン「めっ」
士郎「……」
カレン「それでは」
士郎「カレン、それだけでいいのか?」
カレン「はぁ……怒るのもエネルギーがいりますね。疲れてしまいました。犬、私を抱き、運びなさい」
ランサー「犬じゃねえよ!」グイッ
170:
カレン「もっとはやく」ペチペチ
ランサー「頭を叩くんじゃねえ!!」
士郎「結局、何しに来たんだ……?」
セイバー「さぁ……。シスターカレンの言うことは時として難解ですから」
士郎「セイバー」
セイバー「はい」
士郎「居間で居眠りするときは、しっかり寝ててくれ。いいな?」
セイバー「む……」
士郎「嘘はダメだからな」
セイバー「分かりました」
桜「カレンさんから連絡を受けて、先輩の家まで急いでいたら……。ライダーが幸せそうに先輩に抱き上げられているところ見ちゃったの」
ライダー「……」
桜「私の言いたいことは、もう分かるわよね。ライダーなら」
ライダー「あ……あの……」
桜「ふふふ……。いいなぁ……ライダー……先輩に外で抱かれて……。あぁ、いいなぁ……いいなぁ……。私も外で抱かれたいのになぁ……ライダー……ずるいなぁ……」
172:
数日後 リビング
凛「……」
士郎「遠坂、狸寝入りは禁止だ」
凛「……ちっ」
士郎「セイバーも」
セイバー「何故ですか!? 完璧な寝たふりだったのに!!」
凛「最近、士郎のやつ鋭くなってるわね」
セイバー「寝ているときは呼吸が違うと言っていました」
凛「なにそれ?」
士郎「そういえば、買い物にいった桜とライダー遅いな……」
ライダー「――シロウ!!」
士郎「どうした、血相変えて」
ライダー「サクラが……」
士郎「桜がどうかしたのか!?」
ライダー「こちらです」
175:
商店街
桜「いたーい。あし、くじいちゃったぁー」
士郎「桜ぁ!! 大丈夫か!!」
桜「先輩! あし、いたいんですぅ」
士郎「歩けるか?」
桜「ダメです。むりです」
士郎「ライダー、桜を――」
ライダー「私は買い物袋を持っているのでサクラを抱き上げることはできません」
士郎「……」
桜「せんぱぁい。だっこ」
士郎「いや、でも、商店街では……。知ってる顔もいるし」
桜「だから、いいんじゃないですか」
士郎「仕方ないか。よっと」グイッ
桜「先輩、ありがとうございます」ギュッ
ライダー「(この程度で許してもらえてよかった……)」
179:
夕方
士郎「ふぅー。少し疲れたなぁ」
士郎「……」ウトウト
士郎「……すぅ……すぅ……」
ライダー「――シロウ。サクラの足はほぼ完治……。おや」
士郎「すぅ……すぅ……」
ライダー「……」グイッ
士郎「うぅん……」
ライダー「油断しているシロウが悪いのです……」カプッ
士郎「うっ……ぁ……」ビクッビクッ
ライダー「……ふぅ……おいしい……。続きはシロウを寝室に運んでからにしましょうか」
士郎「うぅ……うぅん……」
ライダー「ふふ……。やはり、居間で居眠りはしないほうがいいですね、シロウ?」
桜「……」
DEAD END
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