ハルヒ「女友達が欲しい」back

ハルヒ「女友達が欲しい」


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1:
キョン「女友達?朝比奈さんや長門や、鶴屋さんだっているじゃないか」
ハルヒ「でも、みくるちゃんと鶴屋さんは先輩だし」
キョン「今さら何を言うか。なら朝比奈さんをちゃん付けで呼ぶな」
ハルヒ「それとこれとは別なの!」
どこで区別しているんだこいつは。
ハルヒ「ユキだって全然喋ってくれないし」
キョン「長門か?あいつはああいうキャラだからな。でも話かければ案外返してくれるぞ?」
ハルヒ「ろくに返してくれないじゃない!」
キョン「それが長門なんだから仕方ないだろう。」
ハルヒ「兎に角!私はもっと身近な女友達と普通に過ごしたいのよ!わからないの!?」
キョン「全くわからない。」
ハルヒ「はぁ!?」
3:
キョン「だってお前、いつかの自己紹介の時に言ってただろう。普通の人間には興味無いって」
ハルヒ「そうよ?だから身近にいる変わった女の子と友達になって普通に遊びたいんじゃない!」
キョン「お前以上に変わった女なんてそうそう居ねえよ。」
ハルヒ「そうかしら?」
キョン「大体、お前の普通の遊びってなんだ?宇宙人や未確認生物を探す事か?セミを捕まえる事か?あいにく、今時の高校生でそんな遊びをしているやつは中々いないぞ?もっとも、俺も人の事は言えないがな」
ハルヒ「・・・」
キョン「大体な、ハルヒ、お前は黙ってりゃ普通の女の子よりも遥かに上等な生活が待ってるんだ。少しは女らしくだな、、、」
ハルヒ「・・・もう私、帰るわ。」
キョン「え?」
ハルヒ「鍵、頼んだわよ。」
バタンっ。
・・・・・すまん古泉。
どうやらハルヒを怒らせてしまったようだ。
7:
翌日。
俺は昨日ハルヒに言った言葉を思い返して、なんとなぁく罪悪感に浸りながら校門前の坂を登っていた。
まあ、あいつもこの高校生活の中で少しは大人になったのだろうか。
普通の人間にも興味を持ち始めたらしい。このままハルヒがおとなしくしてくれれば、どれだけ平和だろうか。
しかし、仮にだ。
仮にもハルヒが普通の人間しかいない、この世界に満足してしまったら、古泉や長門や朝比奈さんはどうなってしまうのだろうか。
SOS団は用済みになってしまうのだろうか。
それはそれで、また別の問題だ。
朝比奈さんの淹れたお茶が飲めなくなるのはもう嫌だ。
そんな事を考えながら、俺はもう教室の前に立っていた。
ハルヒはまだ怒っているだろうか。
9:
教室に入り、自分の席を見るとそこには見知らぬ少女が座っていた。
驚くべきはその少女、後ろのハルヒと親しげに話しているのだ。
「なんてことだ・・・」
俺は思わず言葉を漏らした。
まさかあいつはたった1日で、いや、昨日の放課後から今朝の間に女友達を一人作ってしまったというのか。
どんなコミュニケーション能力があればそんな事ができるのか。
その能力を俺にも少し分けて貰いたいね。
11:
しかし、本当にハルヒの友達だと決まった訳ではあるまい。
俺は二人に近づき、ハルヒに声を掛けた。
「よう、ハルヒ」
ハルヒは一瞬こっちを向いたが、そのままなにも無かったように、俺の席に座る少女と話を続けた。
おいおいハルヒ、やっぱりまだ怒っていたのか。
閉鎖空間が出ていなければいいが。
俺はもう一度ハルヒに声を掛けた。
「なあ、ハルヒ、昨日の事怒ってるのか?言い過ぎたよ。悪かったな」
ハルヒはもう一度こっちを向き、ようやく口を開いた。
ハルヒ「誰よ、あんた。」
16:
それは予想していない答えだった。
しらを切っているのか?ハルヒ。
「ハルヒ、冗談はよせ。いい加減機嫌治してくれよ。じゃないと俺が困るんだ」
我ながらこんな言い方もどうかと思うが、しかし本当のことなのだ。
古泉から連絡が来ていないということは、きっとまだ閉鎖空間は生まれていないのだろう。
今のうちにハルヒの機嫌を直さなければ!
「それに、お前にも念願の女友達ができたようじゃないか。」
そう言いながら自分の席の少女を見る。
そこに居たのはポニーテールの美少女だった。
こいつも宇宙人か何かなのか?
見た感じは変わった様子もなく、普通の女の子に見えるが。
ハルヒ「なにジロジロ見てるのよ。っていうかあんた何であたしの名前を知ってるわけ?ナンパなら他を当たってちょうだい。」
キョン「おい、ハルヒいくらなんでも、、、!」
少女「あのー。」
俺の席の少女が、始めて口を開いた。
17:
キョン「・・・なんでしょう」
少女「人違いじゃ、ないですか?ハルヒも困ってるみたいだしそろそろ・・・」
ハルヒ「ふんっ。」
くそ、ハルヒわざとやってるな
しょうがない、もうすぐホームルームが始まる時間だし詳しい事は後で聞こうか。
キョン「はぁ、分かったよ。それよりそろそろ、そこをどいてくれませんか?俺の席なんです。そこ。」
少女「、、、?」
ハルヒ「はぁ?あんた何言ってんのよ。あんたこそ教室に戻りなさい。ホームルームはじまるわよ?」
何言ってるんだ、ハルヒ。
そこでようやくホームルーム開始の鐘が鳴る。
しかし、一向にその少女は席を退こうとはしなかった。
チャイムと同時に岡部教諭が教室のドアを開いた。
岡部「おーい、始めるぞぉ席に着け。ん?お前なにやってるんだ。早く教室に戻りなさい。」
それは明らかに俺に向けられた言葉だった。
いや、まさか、そんな。
キョン「なあ、ハルヒ、お前は、俺を知ってるよな!?」
ハルヒ「もう!知らないって言ってるでしょ!しつこいわね!」
20:
そんな。嘘だろ。
冗談は止めてくれ。
まさか俺の存在が消えているという事か?
何故だ、またハルヒの仕業か?
でもなんで・・・。
ハルヒがそう望んだからか?
俺の居ない世界を、ハルヒは望んだのか?
くそっ、そんなの酷いじゃないか。
ハルヒ、俺はこれからどうすればいい。
長門・・・
そうだ、こんな時は長門だ。
あいつなら何か分かる筈だ。
俺はクラスメイトからの冷たい視線をよそに、教室を飛び出した。
21:
文芸部室のドアを開けると、長門がいつもの席に座っていた。
キョン「居てくれたか、長門」
長門「・・・」
キョン「お前はホームルームに行かなくていいのか?」
長門「・・・いい。貴方を待っていた。」
キョン「そうか。ということはお前は今の状況を分かっているってことか?」
長門「・・・そう。」
キョン「よかった。なぁ、長門、知ってるとは思うがどうやら俺の存在が消えているみたいなんだ。」
長門「・・・消えていない。」
キョン「え?」
長門「私の観測上、この世界には貴方が二人存在している。」
キョン「・・・二人って、俺の他にもう一人俺が居るということか?」
長門「・・・そう。」
キョン「どこに。」
長門「・・・この学校にいる。」
23:
キョン「学校に?それらしいやつは見当たらなかったぞ。」
長門「・・・涼宮ハルヒは現在、貴方ではないもう一人の貴方を貴方だと認識している。」
キョン「・・・それじゃあハルヒは既にもう一人の俺と会っているということか?」
長門「・・・そう。」
なんだ、この違和感は。
27:
キョン「学校に?それらしいやつは見当たらなかったぞ。」
長門「・・・涼宮ハルヒは現在、貴方ではないもう一人の貴方を貴方だと認識している。」
キョン「・・・それじゃあハルヒは既にもう一人の俺と会っているということか?」
長門「・・・そう。」
なんだ、この違和感は。
29:
ハルヒは俺意外の俺を俺と認識している訳だ。
この時間、いつもなら俺はハルヒの前の席で授業を受けている。
しかし、今朝あの教室のハルヒの前の席は見知らぬ少女で埋められていた。
キョン「なあ、長門」
まさかな。
キョン「そのぉ、もう一人の俺ってのは女だったりはしないだろうな?」
長門「・・・」
キョン「・・・」
長門「・・・昨日の時点で、涼宮ハルヒは貴方を男性であると認識していた。しかし、今現在涼宮ハルヒは貴方を女性であると認識している。」
キョン「おいおい。」
長門「つまり涼宮ハルヒは男性である貴方を貴方とは認識できない。」
つまり、あのポニーテールの美少女こそがもう一人の俺であるわけか。
なんだか悔しい気分だ。
キョン「みんなが俺の事を知らないのも、ハルヒがそう認識しているからなのか。」
長門「そう。」
32:
これはまた、ややこしい事になったぞ。
というかハルヒ、お前は確かに女友達を欲しがっていたけれど、なにも俺を女にする事は無かっただろうよ。
女なんて世界中に沢山居るんだ。
既に男だった俺を女にする必要性は全くないよな?
本当にどこまでも、自由な奴だ。
とにかく、今はこの学校に俺の居場所は無いわけだ。
放課後まではこの部室で待機しておくとしよう。
気づくと、長門は自分の教室に戻っていて、部室には俺一人が残っていた。
考えてみれば部室で一人というのもあまり無い事だ。
俺はなんとなく、パソコンの電源を付けた。
33:
ハルヒは百合に目覚めるか
34:
久しぶりに朝比奈さんの秘蔵フォルダでも拝む事にしよう。
しかし、どこを探しても[mikuru]
というフォルダは見つからず、その代わりに[koizumi]という名のフォルダを見つけた。
まさかとは思いつつ、開いてみると案の定、古泉のサービスショットがずらっと並んでいた。
もちろん、このフォルダを作ったのは女盤の俺なのだろうが。
我ながら何をやっているんだ女の俺は。
顔か?顔だろうな。
結局女は顔しか見ないのか。
しかし、古泉のフォルダを見つけたときに俺は、「あー、本当に違う世界に来たんだな」と文字通り痛感したのであった。
そうこうしている内に、もう放課後だ。
この部室にも居られなくなるな。
俺は前もって長門にハルヒが帰ったらみんなで部室で待ってるようにと伝えた。
あとはハルヒが帰るまで、どこかで時間を潰していよう。
36:
二時間後。
そろそろハルヒも帰る頃だろうと、俺は再び部室へ向かった。
部室には、長門と古泉と朝比奈さんが待っていた。
そして、そこにはもちろん、女盤の俺もいた。
長門意外の皆は不思議そうにこっちを見ている。
なるほど、俺のことをちゃんと認識しているのは長門だけらしい。
キョン「えーと、何から話すべきか。」
みくる「どちら様でしょうか?。」
少女「あれ、あなた今朝会った自称ハルヒの知り合いじゃない。」
みくる「あれ?キョン子ちゃん。この人と知り合いですか?」
キョン「キョン子ちゃん!?お前、キョン子って呼ばれてるのか?」
キョン子「え?そうだけど、何か変か?」
キョン「いや、なんでもないんだ。」
俺が女になってもあだ名は大して変わらないのか。
37:
結果から言えばやはりハルヒの仕業らしい。
そりゃそうだ。
キョン「で、俺はこの世界でどうすればいいんだ?」
古泉「やはり、涼宮さんを満足させなければあなたが元の世界に戻ることはないでしょうね。」
みくる「私の未来もキョン子ちゃんは女の子のままですよ?」
キョン「はぁ。また俺だけ置き去りにされたのか。」
キョン子「また・・・?」
古泉「以前にもこのようなことが?」
キョン「い、いや、なんでも無いんだ。忘れてくれ。」
キョン子「・・・」
38:
結局俺は、自分の家。つまり、キョン子の家に泊まることになった。
なんと都合のいいことに、滅多に旅行なんかに行かない両親が今は外泊中らしい。
これもハルヒの仕業なのだろうか。
キョン子「さっきの話」
キョン「え?」
キョン子「あんたが世界に置き去りにされたって言ってた。」
キョン「・・・あぁ。」
キョン子「ハルヒが居なくなったことでしょ。」
キョン「・・・お前も経験してたのか。」
キョン子「うん。」
キョン「・・・」
キョン子「・・・」
やはり、俺の性別意外は全く同じ世界なんだな。
39:
キョン「ときにお前、なんでポニーテールなんだ?」
キョン子「なんでって、これが落ち着くからだよ。」
キョン「・・・そっか。」
キョン子「ふぅ、着いたぞ。ここが私の家だ。」
キョン「いや、知ってるよ。」
キョン子「あ、そっか。まあ、上がりなさい。兄弟もいるが、気にするな。」
キョン「・・・ん?ちょっとまて!その兄弟ってのは、妹で、いいんだよな?」
キョン子「安心しろ、ちゃんと妹だよ。」
40:
キョン「俺たちってそんなに似てるのか?」ピコピコ
キョン子「あんまり似てないと思うけどね。でも一応同一人物だしな。」ピコピコ
『You win!!』
キョン「勝った。」
キョン子「ずーーと同点だな。」
キョン「あぁ、つまらん。」
キョン子「そろそろ風呂が沸くけど、先、入る?」
キョン「いや、先に入れよ。めんどくせぇし。」
キョン子「えー、先に入っちゃってよ。私の後に入られたくないし。」
キョン「なっ!?俺って自分からも信用されてねーのかよ。」
キョン子「今は男と女だよ?」
キョン「はぁ。分かったよ。着替えはあんのか?」
キョン子「ジャージなら。」
41:
結局俺は一番風呂を頂いた。
ザブー
キョン「ふぅ。長い1日だった。しかし、女の俺ってのは結構美人なわけだが、もしかしたら俺も、そこまで悪くないんじゃ、、、?」
そう、いつも古泉と一緒にいたから俺が劣って見えたが、実際は悪くないのかもしれない。
そう信じて、鏡を覗きこんだ。
キョン「ふつー。」
やはり、普通だからモテないのだ。
キョン子「なにやってんのよ。」
キョン「いや、なんでもねーよ。」
キョン子「そう。」
キョン「・・・」
キョン子「・・・」
キョン「なに自然に入ってきてんだよ。」
キョン子「いいんじゃない?同一人物なんだから。」
43:
キョン「はぁ。」
キョン「しかし、残念な体だな。」
キョン子「人のこと言えないわよ」
キョン「顔はいいんだけどな。」
キョン子「・・・そう。あんたも結構いいんじゃない?」
キョン「そうか?普通だろ。今さっき自分で確認したばかりだ。」
キョン子「・・・聞いたことがあるわ。人って自分に似た人を好きになるんですって。」
キョン「似たもなにも、自分だからな。」
キョン子「そうね。」
キョン「なんか、気持ち悪くなってきた。」
キョン子「・・・そうね。」
キョン「そろそろ上がるか。明日も学校だ。」
キョン子「そうね。」
44:
寝床は妹と、俺とキョン子の川の字で寝た。
キョン子「これからどうするの?」
キョン「とりあえず、SOS団の奴に頼るしかない。特に長門は、この事態をいち早く察していたみたいだ。」
キョン子「そうね、ユキなら何か知ってるかもしれないわ。」
ユキ。
キョン「あいつには、迷惑かけてばかりだからな。申し訳ない。」
45:
翌日。
長門に呼び出された俺は文芸部室へ向かっていた。
長門「あなたを時空移動させる。」
キョン「突然だな、一体いつにタイムスリップさせるんだ?」
長門「二日前、あなたはこの部室で涼宮ハルヒといたはず。」
ああ、そうだ。
女友達云々の話もあの時聞かされていたんだ。
やはりあれが事の発端になっていたか。
長門「その時のあなたに今のあなたの記憶を共有させる」
キョン「むちゃくちゃなことを言うな。」
長門「期限は一度きり。そこで選択を誤れば、今のままになる。」
キョン「一度きり・・・」
長門「準備はできている。」
47:
一度きり・・・
突然やってきたチャンスだ。リスクは大きいが、これは確か、前にも経験したような試練だ。
キョン「・・・わかった。やろう。」
あの時の罪悪感を晴らすチャンスでもある。
ハルヒ、今度こそ俺を忘れないでくれよ。
長門がなにかを唱えた後、目の前が突然明るくなり、暗転した。
50:
意識が朦朧としている。
ここは、、、どこだろう。
ハルヒ「・・・っと身近な女友達と普通に過ごしたいのよ!わからないの!?」
あぁ、ハルヒ今のお前には俺が分かるのか。
キョン「・・・」
ハルヒ「ちょっと聞いてるの!?」
キョン「お前、いつかの自己紹介の時に言ってただろう普通の人間には興味ないって。」
ハルヒ「そうよ?だから身近にいる変わった女の子と友達になって普通に遊びたいんじゃない!」
身近にいる、変わった、友達。
ハルヒ「はーあ、毎日が退屈だわ。」
キョン「女じゃないと、だめなのか?」
ハルヒ「そう、より身近な存在がいいわ!」
キョン「俺じゃ、ダメなのか。」
ハルヒ「へ?」
51:
そうだ。こいつは世界を変えても、俺を、俺自身を女にしたんだ。そこになにか理由があるんだろう、ハルヒ。
キョン「自分で言うのもなんだが、俺は結構変わってると思うぞ。いや、変わってるやつが好きなのかもしれないが、それでも変わり者だ。」
ハルヒ「なにが言いたいのよ?」
キョン「あとは俺がもう少しお前に近い存在になれば、満足してくれるか?」
ハルヒ「な!?」
キョン「ハルヒ、世界はお前が思っている以上に面白い。退屈なんてしてる暇はないんだ。」
ハルヒ「えっと、えっと」
だからハルヒ、もう二度と俺を忘れないでくれ。
お前がご機嫌斜めだと俺が困るんだ。
おわり。
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